お酒の力を借りようと思いますわ! 作:名無し
コンコン
「ん?こんな夜更けに誰だ……?」
数時間前。当時、父から譲り受けた領地経営に関する資料を読んでいたロイドは唐突に鳴ったノックの音に首を傾げていた。チラリと、時計を確認すれば時計の針は深夜の一時を指しており、ほとんどの人間が寝ている時間でこんな時間に訪ねてくる人間なんて普通ならいないのが常識だ。
(一体誰だ……?まさか父上か?)
そうロイドは疑問符を浮かべて少し警戒心を持って扉を見つめるが、その疑問は扉の向こうから聞こえてきた声によってすぐに解消されることになる。
「あの……ロイド様……ワタクシです……レオノーラですわ……」
「レオノーラ嬢……?」
その名前にロイドは驚いた。なぜならこのレオノーラという名前はロイドの婚約者レオノーラの名で現在公爵家に花嫁修業の一環で滞在中の伯爵令嬢であり、そして彼女はひどく内向的な性格でロイドがどんな完璧な振る舞いや理想的な言動を心がけても全く靡かず、それどころかロイドが彼女の為にやること全てに喜ぶどころか「ああ」とか「はあ」とか「そうですか」とか素っ気ない態度を取ってくる何とも扱いづらい令嬢なのである。だから、そんな彼女が……自発的にはロイドに関わろうとしてこなかった彼女が部屋の前に来ているという事実にロイドは困惑するが、困惑しつつも取り合えず何かあったのかと思い、
「あ、ああ……今開けるね」
と言って、慌てて自室の扉を開けた。次の瞬間、ロイドは大きく目を見開き、絶句した。なぜなら……
「すうーはあー……ふふ、ロイドさまの匂いがしますわあ……」
「!!?」
なぜなら扉を開けた瞬間、レオノーラは突然ロイドに抱き着き、その上無遠慮にロイドの体の匂いを嗅いできたからである。
(え?は?え?な、なんだ?なんだこれは……?レオノーラは一体何をして……?)
あまりにも普段とかけ離れたレオノーラの行動と態度と言動にロイドは目に見えて動揺するが、そんなロイドの動揺など知らないと言わんばかりにレオノーラは
「ふんふん……やっぱり夜だから昼間と違って香水をつけてない分濃厚にロイド様の匂いが堪能できますわね……すううううう!」
と、変態じみたことまで言い出して思いっきりロイドの匂いを吸い込み始めたものだからロイドはたまらずレオノーラを無理やり体から引き離して、そして叫ぶように言った。
「れ、レオノーラ!き、君はさっきから一体何をしているだい!?」
「んえ?なにをって……ロイド様吸いをしていただけですわ……?」