魔法は祈りに変わり、星は希望を示す   作:春夏秋冬夏蜜柑

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この作品は 『hrak』の二次創作です。
登場する主人公「森羅 万(しんら よろず)」はオリジナルキャラクターであり、原作には登場しません。

※ぴくしぶにも同じ名前で投稿していますが、本人の手で投稿していますのでご安心ください。

以下の注意点をご確認いただけますと安心して読めます。
・hrak世界を知らずの転生です。
・個性の都合上、テ/イ/ル/ズ作品の魔法が多々登場します。
・俺つえー系の話にはしない予定ですが、そう感じる場合があります。
・沢山の地雷を無自覚に仕掛けている場合があります。その場合は即ブラウザバックを推奨します。
以上のことをお気をつけください。


本編に入る前に、彼女の前世や家族、そして個性が発現した後、雄英に入学するまでを描いた序章(全4話) を用意しています。
世界観や「森羅 万」というキャラクターの背景をより深く知りたい方は、ぜひ読んでみてください。

もちろん「本編からすぐ読みたい!」という方は、プロローグを飛ばしても問題ありません。
――気になる方だけ、どうぞ覗いてみてくださいね。


プロローグ
0話:希望を守り、星空の下で


キャプションの注意点などご確認いただけましたか?

 

ご確認済みでしたら是非そのままお読みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は覚えている。

汗と消毒液の匂いに満ちたトレーニング室の空気を。

 

「呼吸を合わせて、無理をしないで。――大丈夫、着実に回復に向かっています」

――そう声をかけ続けた日々を。

肩に添えた手から伝わってきた温度を。

 

そして、あの瞬間も。

途切れる呼吸、閉じていく瞼。

最後は信じて希望を支えることしかできなかった自分を。

 

私は覚えている。

その記憶は、今も静かに胸に残っている。

――だから支える。それが変わらぬ私の本質だと思って。

 

 

 

 

 

あの日も普段通り、天田さんのトレーニングに付き添っていた。彼は一軍の舞台で戦うプロアスリート。

だが、その身体にはまだ前担当の裏切りの影が残っていた。 殺されかけた恐怖は、傷跡となって呼吸の奥に潜んでいる。

 

「呼吸を合わせて、無理はしないで。大丈夫、着実に回復しています」

私はそう声をかけ、肩にそっと手を添えた。

その温度が、彼に安心を伝える唯一の方法だった。

 

時計の針は静かに進んでいた。

――あと一時間で、私の命が途切れることを知らぬまま。

私はただ、目の前の人を支えることを選んでいた。

 

 

 

私は高校生まで陸上競技をしていた。そして途中、中学生の頃に競技者として致命的な怪我をした。あまりにも酷い怪我で、脳裏には『引退』の文字が浮かんだ。

 

それでもまだ走っていたかった。

 

だから当時とても評判の高かった1人のスポーツトレーナーさんのもとを縋るように訪れた。

本来ならプロのみを相手にしているその方は突然の訪問で嫌な顔をするどころか私のトレーナーさんとなってくれた。勿論合間時間でしかできないと念頭に置かれはしたが、そのトレーナーさんは私に誠実に向き合ってくれた。そのおかげで私は1年程の歳月を経て再び競技者として戻り、自分の意志で引退できるまで走りきった。

 

あの方の献身的なサポートがなければ私は競技者として戻れなかったという確信がある。それぐらいサポートしてくれて、本当に感謝した。

 

そして菓子折りを持ってお礼に行ったその時、私の未来は決まった。

 

「仕事だから気にしないで。…もし、もしね、どうしても気になるなら…将来スポーツトレーナーにならない?」

「……スポーツ、トレーナーに」

 

 

そこでふと思った。

私以外にも怪我したが故にサポートを求める人たちはいる。私が今回サポートしてもらえてその結果競技者として戻れたように…私もその道程をサポートしたい。

この方と…社会への恩返しとして。

迷いはなくなった。

 

「……――はい。私、スポーツトレーナーになります。私のように怪我した人を支えるために」

 

 

それからは必死に勉強をした。

高校卒業と共に競技者として引退し、大学はスポーツトレーナーにそういう勉強をしている科に入って、実習や座学に励んだ。 おかげで憧れの、目標の、スポーツトレーナーになった。

 

 

それからの日々は充実していた。

…でも、全てが充実することはなかった。

 

私が28歳の頃、同期の伊瀬谷(いせや)が、あろうことか担当していた天田さんに危害を加えたのだ。

理由は『希望に縋る様がみっともないから終わらせてあげようと思った』から。度し難い。許し難い。怒りが湧いていた。自分の中にどす黒い何かが湧き出てきた。

 

何より、最初は誰よりも希望を信じていた伊瀬谷がなんでそんなことをするのか分からなかった。なんで…どうして…君に、何があった。

でもすぐにクビになり、業界からも追放された。勿論警察に捕まった。ホッとしたのか、なんなのか分からない気持ちが私の心を占めた。

 

時々あの当時を振り返っても、気持ちは言い表せなかった。どうしようもなく、ぐちゃぐちゃになってしまった。

 

 

私はその事件の後、丁度手隙だったので伊瀬谷が担当していたアスリートの天田(あまた)さんの担当トレーナーとなった。 事件以降天田さんは人間不信になっていて私の言葉も届かなかった。当たり前だ。信じていた人に裏切られ、殺されかけたんだから。

 

でも、それでも…私の瞳の奥には活躍していた時の天田さんの姿が焼き付いて離れなかった。心から野球を愛し、楽しんでいたあの姿が。だから…どうしてもこのまま諦めて引退するという未来が、私は受け入れられなかった。

 

再びあの姿が見たい、それは私のエゴであることは承知の上でずっと寄り添い続けた。声をかけ、当時の私が持っているもの全てを捧げるように励まし続けた。

 

それが幸いしたのか、天田さんは徐々に私を信じてくれるようになった。そして1年前の春、再びリハビリに取り組むことを決意してくれた。嬉しかった。心から。

それからは二人三脚でリハビリに励み、時にはぶつかり合いながら…あれから1年経った今日、ようやく復帰の目処がついた。

 

「ありがとう。君のおかげで、俺は…また大好きな野球ができる…!」

 

 

そう言って泣いた天田さんに私も泣いた。

それ程までに、嬉しかった。

これでやっと天田さんは野球の世界に戻れる。心の底から大好きな野球ができる。きっと前以上にキラキラ輝いてるんだろうな。…そんな天田さんを見るのが楽しみだ。

 

 

「絶対にその姿、見せてくださいね」

「勿論だよ。――ちゃん」

 

 

2人でそう約束を交わして握手をした。

さぁ、不安なく戻れるようリハビリを続けましょう。

 

そう言おうと口を開いたその時、扉が勢いよく開いた。

咄嗟に扉の方を振り向くと、そこには伊瀬谷が。……なんで此処に?刑務所にいた筈では…?

いや、それよりも目が…血走っている。何をする気だ。

 

 

「希望に縋るだけしか能のないやつは!死ね!!!!」

 

 

状況が飲み込めない中、伊瀬谷が懐から出した物を見て咄嗟に天田さんの前に立った。…あれは、拳銃。

瞬間、発砲されその弾は私の心臓付近に命中した。

 

後ろ向きに倒れる中、天田さんに抱きとめられた。

こふっと口から血が溢れ出た。…痛い、寒、い。

意識が落ちる前、天田さんの目が深い悲しみと絶望を映していた。

 

 

「俺の……せいだ!俺が、君という希望に縋ったから…っ」

 

 

それは、違う。

天田さんは悪くない。……なんで天田さんだけ、こんな目に合うんだろうか。申し訳無さが胸を占めた。それでも天田さんだけは守れるように最期の力を振り絞り伊瀬谷のいる方を見た。

 

霞んだ視界ではハッキリと分からなかったが、警備員が入ってきて伊瀬谷を確保したような声が聞こえた。辛うじて暴れる伊瀬谷が見えた。

捕まったのか。……なら、もう大丈夫かな。

 

闇がひたひたと寄ってくる。

酷い眠気が訪れる。

でも…これだけは。これだけは言わないと…。

最期の力を振り絞り、口を開く。

 

 

「あま、たさん……」

「――ちゃん!」

「希望は、悪いもの、じゃ…ない…です。

人を、守る光です。

だから…どう、か…希望を…げほっ捨てないで…。私は、貴方の、活躍を…祈って、ます……」

 

 

これ以上は力を振り絞れない。

目を閉じる前、暖かい水が頬を濡らしたような気がした。

 

 

「――ちゃん、――ちゃん!

……助けて、くれ…て、ヒック…ありがとう…!守ってくれた…君のためにも…頑張るから…!」

 

 

……嗚呼、それなら、私の人生に意味はあったね。

闇が静かに訪れた。

 

 

 

 

 

闇が広がる中、ふわりふわりと浮いている。

私に未練はない。…そりゃ天田さんが活躍する姿を見られなかったのは残念。約束もしたのに。

 

それでも私は終わりを受け入れた。最後、自己満足だとしても守れたから。

それで十分。悔いはない。私の役割は終わった。

 

……それに私、実はヒーローが好きなんだよね。

自分の命をかけて人を守るあの人たちが途方もなく好きで、憧れた。もしも私の最期が少しでもそうであったのなら…十分過ぎる程満たされる。

まぁこれも自己満足なんだけど。

 

そこまで考えて、目を閉じた。

私はこれからどうなるんだろう。このまま闇に溶けて――消えるのだろうか?それも、いいか。きっと私の役割は終わったから。

 

 

 

 

――そう思ったその時、闇の奥から幼い声が響いた。

 

 

『貴方の役割はまだ終わってないよ』

 

 

柔らかく、されど強制力を持つ声。

声が聞こえた先から闇がほどけていく。

ほどけた先に見えたのは満点の星々。

 

1つの星がその中でも一際眩く輝いている。

ぼんやり見つめる中、その星は私目掛けて飛んできた。眩しく感じたけれど、それだけじゃない。

柔らかな光。暖かな光。…心地いい光。

その光に包まれ、私は目を閉じた。

 

 

そして目を開けた。

――赤ん坊の泣き声が世界を満たしている。

私は『森羅 万(しんら よろず)』という女の子として、新しい世界に生まれ落ちた。

 

 

――――――――――――――

――――――――――――

――――――――――

 

森羅 万として命を授かった私は、あれから4年の歳月を過ごした。

 

日本家屋である実家の縁側でさっきまで読んでた本を太ももに置き、池を眺めてこの4年で分かった事に思いを馳せた。

 

この世界はどうやら【個性】と呼ばれる超常の能力を人類の80%程が保有しているらしい。驚きだ。ファンタジー世界なのかと最初は思った。

 

でもテレビを両親と見る中で、世界には個性を使って犯罪行為を行う"敵(ヴィラン)"と呼称される人たちがいる事と、それに対抗する"ヒーロー"という職業がある事が分かった。

【個性】の法整備が整わない間にヒーロー活動をした人たちがいたことが始まりらしい。そこからヒーローは市民権を得て、公的職務となった。

 

そして得る。

国から収入を。人々から名声を。

 

でも私はそれを良しとは思わない。

私の中でのヒーローとは、名声に目が眩まない。見返りを求めない。どこまでも人のために戦う人たちの事を指す。

 

さて、ここでこの世界のヒーローについて考えよう。

悲しいかな。収入や名声を得る事に重きを置くヒーローがこの世界では大多数を占める。それは拝金主義者と呼ぶのではないのか、と私は思った。

 

そんな拝金主義者をヒーローと呼ぶなんて私は受け入れられない。好きじゃないとさえ思う。…けど、それを口に出しては後ろ指を指されてしまう。

世の中は拝金主義が当たり前で、人助けは二の次のこの世界では私の考えは異端。…だから、誰にも言わない。言えない。

そう思うと私も憧れた、好きだったヒーローとは違うんだなとわかってしまって辛いな。けど私はヒーローになるつもりはないから、いいか。

 

 

 

 

本に視線を戻した。読んでる本の内容は"詩"。

この世界で初めて詩を読んだ時から私は詩を読むのが好きで、空いた時間ができたら縁側で詩を読んでいる。勿論4歳児に分かるように平仮名ばかりの本だ。

 

ただ私は前世では30歳まで生きたから、日本語の読み書きはできる。だから漢字で書いてる方が本当はいい。

ただ今は4歳児。4歳がスラスラ教わってもない漢字を読んでみなよ。

絶対に不審がられる。

だから私は平仮名を教わるまで本は我慢した。そして教わった今は意気揚々と本を読んでいる。しかし平仮名ばかり。

 

ちょっと不便だな。

 

なんて思うことも沢山あるけれど、意外と幼児向けの本も侮れない。端的に言うと面白い。私が幼い頃に置いてきたものをもう1回手に取れた感じがして嬉しい。

 

 

ペラ…ペラ…。

本を読み進める。

風が優しく頬を撫でて心地いい。

 

詩はいい。

詩は人の気持ちがこもったものだ、何より響きが綺麗で美しい。そんな詩を読んでいる間は人の優しい気持ちで満たされるような気がして安心する。

そう思いながら捲ったページに、印象的な詩があった。

なんとなく口に出して読む。

 

 

「わたしはその時感じたのです。

祈りはなにも役に立たない。腹も満たさない。

 

けど、祈りは生き物が捧げる最も尊いもの。

それに気付いた私は、祈りを捧げるのも悪くないなと感じたのです。

祈りを込めて、雨乞いする。

祈りを込めて、勝ちを信じる。

祈りを込めて、誰かの手当をする。

 

─全て、尊いものに見えました」

 

 

歌うように口から出た言葉。いつもは子どもらしい発声を、言葉遣いを心がけていた。けど今だけは前世の私のように言葉に出した。

だって、それ程までに美しいと思ったから。

 

すると、足元から光が溢れ出た。……――何、これ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹の、万の声が聞こえた。

 

「わたしはその時感じたのです。

祈りはなにも役に立たない。腹も満たさない。

 

けど、祈りは生き物が捧げる最も尊いもの。

それに気付いた私は、祈りを捧げるのも悪くないなと感じたのです。

祈りを込めて、雨乞いする。

祈りを込めて、勝ちを信じる。

祈りを込めて、誰かの手当をする。

 

─全て、尊いものに見えました」

 

 

いつもよりハッキリと発せられた言葉は不思議とオレの心に残り、離れたところにいたオレは惹かれるように万の所へ向かった。

いつも詩を読んでいる9歳離れた大人しい妹。今日もきっと詩を読んでいるんだろう。なんの詩を読んでいたか、聞いてみよう。きっと…美しい詩が多い本なんだろうな。

 

そう思い、縁側に通じる襖を開けたオレの目に飛び込んできたのは柔らかな光を纏う万の姿。

そして空気が、風が、万が纏っている光を庭にある池に運ぶ。

光が水に触れたその時、水が柔らかな光を帯びて空に上がっていった。

 

オレが知るどの個性とも違う、幻想的な光景に目を奪われた。

何も理解できなかったが、ただこれだけはわかった。

 

 

「綺麗、だ」

 

 

驚きでも否定でもない、ただ美しさに心を打たれた人間の素直な感情だった。

 

万がこちらを振り向く。怯えた目をしていた。

目が合ったその時に光は徐々に光量を落としていって、やっと光の発生源が分かった。万の足元にある…マンガで見たような魔法陣から生まれていた。幾何学のような、不思議な線が円の内側を走っていた。

 

……万は今年4歳だ。そうすると個性が発言したということだろう。ただ森羅家の誰も魔法陣なんて出せない。それでも万は出した。発現した。

……なんて美しい個性なんだろう。

 

 

「おにい、ちゃん……わたし、は」

 

 

怯えた妹の声にハッと現実に戻った。

今は個性が発現したばかりの不安定な妹を支えるのが先だ。

足早に万に近寄り、抱きしめる。

 

 

「大丈夫だ。…すげぇよ、万は。オレには…いや、誰にもできない。綺麗な、力だ」

 

 

力強く抱きしめる。怯えた妹に、その力は怖いものだと伝えたくて。

 

そうして震えが止まるまで抱きしめている内に家族が集まってきた。

大婆様、爺様、婆様、父さん、母さん。

皆どこかしらで万の個性発現の瞬間を見ていたようだ。

 

 

爺様は目を閉じていた。

「遠くの誰かに届いている気がする」

千里眼の個性で何かを感じ取ったのかもしれない。

 

婆様は微笑んでいた。

「流れが違うけれど、綺麗な音がするね」

水の調律の個性で水の流れを見たのかもしれない。

 

父さんは万の頭を撫でた。

「俺には作れない。でも、万には"生まれる"んだな」

想像による具現化の個性と万の個性とは違うのか。

 

母さんは優しく万の手を取った。

「歌じゃないけど、貴方の声は心を震わして…誰かを癒すと思うわ」

セイレーンとも違う、でも…心を震わすのはわかる。

 

でも大婆様だけが厳しい表情をしていた。

「…これは、森羅家のものではない」

水脈視で何かを見たのか…?

万が息を呑むのが分かった。オレは咄嗟に大婆様に抗議しようとした。でも大婆様は続けて静かに告げた。

「けれど…――命を守る力だ。尊い、力だ。大切にしなさい」

 

 

その日の夜は家族で万の個性発現のお祝いをした。

そして寝る前にオレは1人で考えた。

 

オレの個性は水を媒体に瞬間移動する『水瞬』だ。速く、正確に、水がある場所に移動するだけの個性。

けれど万の個性は違う。

"届く力"だった。

言葉が、光が、想いが、誰かの心に届く。

それはきっと…瞬間移動よりも、ずっと遠くまで行ける力だと思った。

 

なんて素敵な個性なんだろう。俺にはできないことができる個性。でも同時に大婆様が言ったように、森羅家の流れにはない個性。

だからこそこれから戸惑うことが多いだろう。その時オレは…何をしてやれるだろう。何より大切な、オレの妹に。

…残念なことに、今のオレには何もしてやれない。

だからこそ経験がいる。そして沢山のものを見聞きする必要がある。

 

そのためには…ヒーローになるのが手っ取り早い。

ヒーローであれは経験も、沢山のものも見聞きする立場に必然的になる。…誰かを助けるためではなく、妹のためだけにヒーローになるオレを世間はなんて言うんだろう。

 

でも構わない。妹の、万の手助けができるのならなんだってやる。そうと決まればヒーローになるための勉強と特訓をしないと。

 

その夜、オレは心に決めた。

妹のためのヒーローになることを。

 

 

 

 

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