登場する主人公「森羅 万(しんら よろず)」はオリジナルキャラクターであり、原作には登場しません。
※ぴくしぶにも同じ名前で投稿していますが、本人の手で投稿していますのでご安心ください。
以下の注意点をご確認いただけますと安心して読めます。
・hrak世界を知らずの転生です。
・個性の都合上、テ/イ/ル/ズ作品の魔法が多々登場します。
・俺つえー系の話にはしない予定ですが、そう感じる場合があります。
・沢山の地雷を無自覚に仕掛けている場合があります。その場合は即ブラウザバックを推奨します。
以上のことをお気をつけください。
「私は今回の体育祭に参加するなと相澤に言われたため、実況席から見ている。あと…左目が見えないように眼帯を持ってきた。使え」
そう白は告げ、去っていった。持ってきてくれた眼帯は有難く使わせて貰った。この夜空を閉じ込めたような左目は、誰かに見られると厄介だから。
にしても私と白は相互作用型の個性という事で共に雄英に来たのに、今回は参加しちゃ駄目なのか。そうなると今回は私の素の力を試されていると言う事?それとも何か他に理由がある?
1人、入場口で考えていると後ろから足音が聞こえてきた。振り向くとA組の皆がそこに居た。久しぶりに見た皆は元気そうで良かった。まぁ怪我したのも私だけって言う話だし、特にいらない心配だったか。
声かけておこうかな。そう思って笑顔で皆に声をかけようと口を開いた。
「皆元気そうでよかった」
「森羅ー!!!!!オマエ、オマエー!!!!もう大丈夫なのかよ!?てかその眼帯なんだー?!」
「森羅さん!退院出来たの?!」
「万ちゃん、退院できて良かったわ」
「森羅くんもう体は大丈夫なのか?!」
「1人だけ怪我したザコが!!」
「おい爆豪!森羅は先生守ってたって話らしいからそう言うなって!」
「うるせェ!ザコはザコだろーが!!」
「……うーん、オールマイト先生の初授業での気持ちが分かったなぁ」
思わず苦笑いを浮かべた。A組の皆は相変わらず元気だ。かなりワイワイしてるものの、なんか良いな…こういうの。ワイワイできるのも高校生の特権だね。
一部の子たちがワイワイしてるのを眺める。…なんか、戻ってきたんだな。私。
ぼんやり眺めていると1人の少女が側に来た。
「万ちゃん」
「どうしたの?梅雨ちゃん」
そこまで声をかけてふっと思い出した。
梅雨ちゃんは手を纏った男、確か死柄木弔と呼ばれた男に攻撃されそうになってた。それは寸でのところで相澤先生が防いでたし、私も補助はしたけど…怪我は大丈夫だったのかな。
それに咄嗟の事は言っても突き飛ばしてしまった。怪我させてないかな…。
「梅雨ちゃん。あの時突き飛ばしてごめんね。怪我とかなかったかな?」
「万ちゃんのおかげで怪我はないわ。あと、あの時のことは気にしないで」
「…ありがとう」
少しホッとした。もし私がキッカケで怪我をさせていたら、申し訳無さのあまり梅雨ちゃんの実家に菓子折り持って謝罪に行くところだった。
梅雨ちゃんは私の言葉に首を振った。…え、何か気に食わない事言ったかな私!?
ちょっと動揺したが、なんとか表に出さないように努めて梅雨ちゃんを見た。
「お礼を言うのは私の方よ、万ちゃん。…あの時助けてくれて、本当にありがとう」
「あ!オイラも!あの時助けてくれてありがとうな!あとなんかめっちゃキレイだったなアレ!」
「ぼ、僕も…!最後森羅さんの花?がなかったら危なかったかもってオールマイトに言われて…本当にありがとう!」
ああ、そういうことか。気にしなくていいのに。
私はただ、傷ついた人を見たくなかっただけなんだから。
「……3人が無事で良かったよ」
でもその時の私の顔はちょっと締りがなかったかも。どうしてもお礼を言われるとむず痒くなってしまって表情が緩む。
梅雨ちゃんが私の表情を見てもう一度口を開いたその時、会場から声が聞こえた。
《雄英体育祭!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る、年に一度の大バトル!》
プレゼント・マイク先生の声だ。…入場もそろそろかな。
皆の顔が引き締まったのが見て取れた。私もちょっとだけ気合いを入れた。
私に関係ないと言えど、全力で…無理しない程度に取り組まないといけない。それが体育祭に参加する子たちへの誠意だから。
《どうせてめーらアレだろ、こいつらだろ!?
敵の襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!ヒーロー科!1年!A組だろぉぉ!?》
その言葉を合図に緑谷君を筆頭に入場していく。私は最後尾からついていくつもりだったので壁に寄って皆を見送ったが、緑谷君とすれ違う瞬間に彼が「了解。オールマイト」って言った言葉が聞こえた。
オールマイト先生と仲がいいのかな?
なんて思いながら皆の後から入場した。
入場した瞬間に熱狂する客席が目に入った。分かってはいたし、見てもいたけど…凄い人の数だ。前世で選手として出場した最後の大会と同じくらい…いや、それ以上に多い。
やっぱりこの世界では雄英体育祭がオリンピックと同じくらいの熱狂を生むのか。
地面が震える程の大歓声を聞いて思った。
そして前世との差を痛感し、胸が痛くなった。
私はスポーツが好き。それは変わらない。けれど…スポーツでここまでの熱狂はもう二度と見ることができないと分かってしまい、悲しくなった。
「森羅さん、顔色ご優れないようですが…体調がよろしくないのですか?」
「八百万さん。…ううん、大丈夫。ちょっと緊張しただけだよ」
口からデタラメを吐いてちょっと嫌になったが、ここで正直に話しても意味はない。
「あら…森羅さんでも緊張するのですね」
「私も人だよ?緊張の1つや2つぐらいするさ。…まぁ今日はお互い頑張ろうね」
「ええ!負けませんわ!」
その会話を交わし、A組の皆の列に入った。
その後はぼんやりと主審のミッドナイト先生による司会進行から爆豪君の選手宣誓を見届けた。
爆豪君の選手宣誓は至ってシンプルで"俺が1位になる"。それだけだった。スポーツマンシップも何もない。やるのはいいけどなんで私たちA組も巻き込むのか。まぁ…それが爆豪君という人間なんだろう。
因みに他の生徒たちからブーイングを受けていた。当たり前の話しすぎて私からのコメントはありません。
選手宣誓の次は早速第一種目に入った。これがどうやら予選になるらしい。種目は"障害物競争"。名前は普通の体育祭にあるようなものだが、此処は雄英。そんな生温いものではないだろうとは簡単に予想がついた。
計11クラスによる総当りレースで、コースはこのスタジアムの外周4km。尚コースさえ守れば何をしても構わないとのこと。と言う事は妨害なんかも有りなんだろう。やだなぁ…他を蹴落とす事が当たり前のこの感じ。
…でも他を蹴落とす事が当たり前と言う事は、私も蹴落とし、蹴落とされる側に回るという事になる。
まだお腹の傷が完全には治ってないこの体でどこまでできるか分からない以上は無理は禁物だ。でも全力でする。さっきも言ったけど、それが私なりの誠意だ。
ギチギチに詰まってるスタートゲートの最後尾に立って開始の合図を待つ。このまま突っ込めば身動きが取れない。となると此処が最初のふるいと見て間違いない。
スタートのランプが灯っていく。そして告げられる。
《スターーーーート!!》
そうして突っ込んでいく生徒たち。そして予想通り身動きが取れていない。想定通りだ。そして多分、聡明な轟君ならここで仕掛けてくる。
チラリと地面を見ると氷が前から順に足元に波及していくのが見て取れた。やっぱりなぁ。
ひょいっと飛んで氷の波及を避けて、凍ってしまった他の生徒たちの間を通る。見たところA組の皆は避けた。でも他クラスも避けている子が多い。
……普通科や他の科はヒーロー科を落ちたから受けた子たちが多い。そのためある程度鍛えてる子が多いんだろう。流石雄英だね。1人1人のレベルが高い。
分析しつつ走っていると、先頭を走っている轟君の前を巨大なロボット達が道を防いだ。
《さぁいきなり障害物だ!!まずは手始め…第一関門、ロボ・インフェルノ!!》
名前カッコイイな。
周りの声に耳をすませると、どうやらヒーロー科の一般入試時の仮想敵だったらしい。こんな大きな敵と当時の中学生が戦ったの?凄いね。
さて、私はどうやって通ろうかな。
頭を働かせる中で先頭の轟君の様子を人の間から伺うと、彼はロボットを不安定な体勢で凍らせた。…と、なると多分倒れるな。近付いたら危ない。
そう感じたその時、ロボットが倒れた。やっぱり危ないな。巻き込まれる子がいなきゃいいんだけど。
そこまで思った私の目に飛び込んできたのは、倒れる先に逃げ遅れた生徒がいた現実。
――駄目だ。あのままじゃ、巻き込まれる。
逃げ遅れた生徒は倒れ込んでくるロボットに気が付き、恐怖で顔が歪んだ。駄目だ、駄目だ!危ない!!
ぐっと地面を踏みしめ、加速した。
そして……ロボットは大きな音を立てて倒れた。
「……く、そっ、重い…な…!」
砂煙で視界が制限されているが、大丈夫。ちゃんと盾でロボットを受け止められた。
ただ…傷が開いてきたのか、お腹に巻いた包帯に血が染みるのを感じる。ぐらりと視界が揺れる。このままではいつまで支える事ができるか分からない。この状態が続けば私の身も危ない。個性を、使わないと。
ぐっと盾を支える手に力を込めて魔力を練る。ある程度ためているとは言えど、ちゃんとした手順で個性を使わないと危険だ。
……後ろから「なんか止まったぞ!」「チャンスだ!」「行け行け!」そう言った声が聞こえる。そうだ、そのまま行ったらいい。雄英体育祭はそう言った場なのだから。
とにかく私はこの場をなんとか切り抜けないと。
1つ、深呼吸をした時…後ろから声が聞こえた。
「な、んで…助けて、くれる…の?」
恐らくロボットの倒れる先にいた生徒かな。
にしてもなんで助けてくれるのか、かぁ。そんなの1つしかない。
「私はただ、目の前にいる人を守れないような人間に…なりたくないだけだよ」
そう言って魔法陣を展開させる。チラリと周囲を見ると此処を避けるように走っていく生徒たちがいた。それだと派手な魔法は使えないな、巻き込んでしまう。
かと言って私の知っている魔法は大体派手だ。どうしよう。
――それならいっそ、作ればいいのでは?
思いついた魔法を強くイメージして詠唱を口にする。なるべく関連のある言葉で――。
「重力は、沈黙する――グラビティ・クワイエット」
ロボットが一瞬だけ光を帯び、私に伝わっていた重さはふっと無くなった。――よし、成功だ。
ロボットを持ち、ゆっくり横に倒した。他に影響が出ないように、静かに…慎重に。その際、鋭い痛みを感じたけど無視した。
因みに今作った魔法は重力操作の魔法。効果としては対象の重力を操作する。それだけ。
倒し終えてふぅと一息ついた。
思い付きで作ったものだけど上手くいって良かったな。ただ即興で作った魔法なので完成度は全く高くない。だからほんの数秒だけ重力を操作できるだけの、小さな魔法。割り当てるなら…初級レベルの魔法かな。
まぁそんな事よりまずは後ろの子だ。怪我はないかな?
振り向くと尻餅をついた状態で、女の子は私を見上げていた。その顔は呆然としている。どんな気持ちなのかは分からない。でもとにかく今は安心させてあげないと。
私は安心させるように優しく微笑んで手を差し出した。
「もう大丈夫だよ」
私たちの横を生徒たちが追い越して行く。
女子生徒はゆっくり私の手を取った。
優しく、けれどしっかり立ち上がれるよう引っ張り上げた。そのままザッと怪我がないか全身をチェックする。幸い怪我はなさそう。でも見えないだけで怪我はあるかもしれない。
努めて優しく声をかける。前世でアスリートに声をかけていたように、優しく。
「痛いところはないかな?それか違和感を感じるところはない?」
「腕、が…。多分氷が当たったせいだと思うんですが…痛い、です」
「分かった。教えてくれてありがとう。怪我の状態を見たいからちょっと端に寄ろうか。いいかな?」
「は、い」
女子生徒の了承を取ってから他の生徒とぶつからないように端に寄った。お互いしゃがみ込み、そこで痛いと言った腕を見えるように袖を捲くってもらった。症状は打撲、か。それもちょっと酷いやつ。これ結構痛かっただろうに…。
…しゃがみ込む際にまた感じた痛みと滲むような感覚は無視した。今は見て見ぬフリをするしかないから。
治すために手をかざし、魔法を使う。ふわりと魔法陣から発生した柔らかな風が髪を舞い踊らせた。
「癒やしを――ファーストエイド」
幸い酷い打撲とは言っても初級魔法であるファーストエイドで十分治るもので良かった。かざした手と足元から溢れる光が女子生徒の患部に集中し、宙に溶けて消えた。傷も綺麗さっぱり無くなっている。
女子生徒は驚いたように腕と私の顔を交互に見ている。
「え、え?!痛く…なくなった?!」
「治しはしたけど、念の為リカバリーガール先生にこの後診てもらってね?」
「あ、は、はい!……あの!ありがとう、ございました!」
「どういたしまして」
優しく笑って女子生徒を立ち上がらせ、私も立ち上がった。これ以上引っ張ったらこの子の順位が下がる一方だ。
「さぁ、先に進もう……」
『ニンゲン、コロセー!!!!!』
『ツブセー!!!!!』
機械音声が聞こえたと思ったら、後ろからど派手な音が聞こえてきた。地面を叩き割ったような音。
バッと振り向くと、そこにはロボ・インフェルノが勢い良く腕を振り回して生徒を吹き飛ばしながら地面を叩き割っている光景。
……流石にやり過ぎだろう!雄英!!!
「ヒッ…!」
「貴方は此処に…いや、安全な所へ避難を!ごめんね、本当は一緒に行ってあげたいけど…私行かなきゃ」
「ど、どこに行くの?!」
「あのロボットを止めに」
私はヒーローになりたい訳ではない。
それでも――目の前の光景に背を向けたくない。ここで背を向けたら、私は私でなくなってしまう。
手に長柄武器を顕現させてロボ・インフェルノに突っ込んでいく。何人か倒れ込んでいるその光景は、とてもじゃないけど体育祭とは思えない程の悲惨なものだった。
ロボットがさっきの氷でセンサーが狂ったのか、それともただの演出なのか…。事実は分からないけど、この状況はほっとけない。
A組やB組のヒーロー科生徒はもう全員このエリアを抜けている。他の科の子たちもレベルが高いとは言っても…突然のロボ・インフェルノの行動に怯えている子が大半だ。
その中でも戦おうとしてる子もいるが、圧倒的に人手が足りない。……なら、私がやる。
これ以上子どもたちに危害を加えさせるか。