登場する主人公「森羅 万(しんら よろず)」はオリジナルキャラクターであり、原作には登場しません。
※ぴくしぶにも同じ名前で投稿していますが、本人の手で投稿していますのでご安心ください。
以下の注意点をご確認いただけますと安心して読めます。
・hrak世界を知らずの転生です。
・個性の都合上、テ/イ/ル/ズ作品の魔法が多々登場します。
・俺つえー系の話にはしない予定ですが、そう感じる場合があります。
・沢山の地雷を無自覚に仕掛けている場合があります。その場合は即ブラウザバックを推奨します。
以上のことをお気をつけください。
くじ引きによりトーナメントの組み合わせが発表され、レクリエーション競技をした後に最終種目"ガチバトル"は始まった。
因みにレクリエーション競技は私自身やる気満々…だったんだけど、お腹の包帯を見た相澤先生により出場は禁止されてしまった。なんて日だ。
こう言うのをやれるのは高校生までなのに。貴重な機会を1回損した…。何しても疲労がすぐに回復できる若者の特権が…。ああ、残念。
まぁ気持ちを切り替えていこう。
そう思ってA組の観客席からステージを見下ろした。
セメントス先生の個性"セメント"で作られたステージは先程までと変わっていた。
尚今回は人吉君たちは大人しく自分たちの科の観客席で観戦している。している…が、行くまでちょっとダダをこねていた。「森羅と見るー!!」って。
勿論最終的には同じクラスの子たちに連れていかれた。…言い方悪いけど、あれはなんだかおもちゃ売り場にいる親と子どもみたいだった。なんでそこまでして私と一緒に居たがってくれたのは分からないけど…そういうノリ、私好きだよ。
さて…第1戦目は緑谷君と心操君か。
パワー系の緑谷君と恐らくテクニック型の心操君。どんな戦いになるんだろう?
心操君の個性にかかれば流石の緑谷君でも切り抜けるのは困難だと思う。私ならどう対処するかな…多分白との連携が肝になるかな。
そう思って見守っていると、開始早々緑谷君は個性にかかってしまった。
聞こえ辛かったけど、心操君は緑谷君に話しかけ、緑谷君はそれに感情的に答えた事により完全停止――個性にかかった。
見た限りでは、心操君の"問いかけに答える"ことをトリガーに個性をかけるのかな。それなら騎馬戦でも静かに勝ち進んだことに納得がいく。初見殺しのような個性だ。
ああ、かかってしまったか…。
そして心操君の言葉によって、緑谷君は場外に向かって行く。でもこのまますんなり緑谷君が負けるとは思えない。
――その時、緑谷君は自身の個性を暴発させ、心操君の個性を強引に解いた。
やっぱり。君ならこの状況を打ち破ると思っていたよ。
…でも、凄い無茶だ。指がボロボロになっている。
雄英にいるからあの傷は綺麗に治るのであって、本来なら治るのに相当な時間がかかる上、リハビリも必要なぐらい酷いものだ。正直こう言う無茶は体がいくつあっても足りない。
そう思って眉を潜めて試合を見つめる。
心操君は個性が解かれた事に動揺しつつもう一度個性をかけようとするが、もう二度は通じない。
最後は取っ組み合いになり、緑谷君が心操君を場外に出したことによって緑谷君が勝利した。
会場内には2人を称える拍手が送られる中、心操君の事を称える言葉も多くあった。
そりゃそうだろう。ヒーローとして敵確保にとても優位に働く個性だ。どこも喉から手が出る程自分の事務所に迎えたいはず。
そして第2戦目の瀬呂君と轟君の試合は…すぐに決着がついた。
轟君が全てを凍らして瀬呂君を行動不能し、勝利。
会場内に響いた瀬呂君へのどんまいコールは正直不愉快だった。何がどんまい、だ。一般客は分かるけど、プロヒーローとしては他にかける言葉あるだろう。腹立つ。
努力してきた高校生に対する敬意のなさ、短慮的な言動。ヒーローを名乗るなら…その努力を尊重するって言うことも大事だよね?
やっぱり……プロヒーローは受け入れられない。
いや…"嫌い"だ。
プロヒーローへの嫌悪感が私の中でハッキリと形作られた。
今までは無意識に直視を避けていた部分が、私の中で無視ができないところにまで来てしまった。
今世でずっと私なりにプロヒーローの事を見てきて、そう結論が出た。こんなんでもヒーローと名乗れるのは安いな。だからこそ…"ヒーロー"という響きに価値がない。
その気持ちを抱いた私を置いて、ガチバトルは滞りなく行われていく。
3戦目の上鳴君とB組塩崎さんの試合は塩崎さんの勝利。
飯田君とサポート科の発目さんは、発目さんのサポートアイテムのお披露目の場となった。飯田君は恐らく耳障りのいいこと言われて騙されてサポートアイテムを装着したんだろうなっていうのが一目で分かった。そして10分まるっきり使った後、発目さんは満足して自ら場外を選んだ。ある意味清々しい。
他の試合はすんなり進んでいく。
私はその様子をぼんやり見つめていた。
プロヒーローへの嫌悪感と、他の子の熱気にあてられて頭がうまく働かない。
そんな中、ポケットが震えた。…スマホか。何か通知が来たのかな。
スマホを取り出し確認すると、そこには『瞬』と表示されていた。兄さんが、体育祭中の私に連絡?
――何か嫌な予感がする。
スマホを手にそっと席から離れた。
人気のない通路で兄からの着信を取る。少し、手が震える。
兄はこういう時、絶対に電話をかけてこない。何か緊急事態なんだろう。
「はい。万です」
『体育祭中すまない、万。今…大丈夫か?話がある』
そう言った兄の声はいつも通り落ち着いている。でも、妹の私には分かった。
奥底に、わずかな緊張と動揺がある事を。
なるべく刺激しないように声をかける。
「私は大丈夫。どうしたの?」
『万はインゲニウムってヒーロー覚えているか?』
「お兄ちゃんの友人だよね、覚えているよ。…その人が、どうしたの?」
『……敵に襲われた。そして第一発見者はオレだ』
その言葉に息を呑んだ。
インゲニウムさんはお兄ちゃんと仲が良く、とても心優しいヒーローだ。
尊敬する兄、そして実直なインゲニウムさん。2人のお陰で私は今日までプロヒーローへの嫌悪感をハッキリと抱かなかった。
…その人が、襲われた?
息が一瞬止まった。
『状態は非常に悪く、普通の治療では"間に合わない"と医療班は判断している』
お兄ちゃんはあくまで冷静に淡々と話している。
でも一瞬聞こえた吐息は震えていて、冷静に見えるように振る舞っているだけなのだと分かった。
『このままでは危ない、だからこそ全国の医療機関…そして雄英の医療チームとも連絡を取らせてもらった。
結論として…今回最もインゲニウムを助けられる可能性があるのは…万だと判断された。だから身内のオレから連絡を取った次第だ』
その言葉を理解するのに時間は必要なかった。
『勿論これは強制じゃない。でも可能なら…ヒーローではなく、1人のオレの友人を助けてほしい。
2週間前の敵襲撃事件の時に消太さんを、イレイザーヘッドを助けたように…オレの友人を助けてくれ。
――頼む…!』
切羽詰まった兄の言葉。
その言葉で気持ちは決まった。
「勿論。私でよければ…力を貸すよ」
『万…!すまない、ありがとう…!雄英にはオレから連絡を入れておく。だから用意して外で待っててくれ。
あと、白も今回連れていく。交渉して入れるようにした』
「分かった、ありがとう」
『…礼を言うのはオレの方だ。ありがとうな、万』
電話が終わり、席に戻って近くにいた障子君にこっそり声をかけた。
「障子君。ちょっといいかな?私ちょっと事情ができたから体育祭抜けるね」
「そうか、分かった。ただ…大丈夫か?表情が硬いぞ」
まさか表情の硬さを指摘されると思ってなくて、ビックリしたけど…すぐに優しく笑った。
今、私が硬くなっても仕方ない。
「――大丈夫。ありがとうね」
そしてロッカーに入れていた荷物を取り、もう事情を知った白と一緒に会場の外に出た。
会場の外ではヒーローコスチュームを着た兄の姿があった。
兄の個性は"水瞬"。水を媒体に瞬間移動するもの。水の操作もできる、水の事ならお任されあれな個性だ。
「急だがもう行くぞ」
「分かった。…瞬、急ぎすぎて私と万を置いていくなよ」
「…ふっそこまでは大丈夫だ。万と白の顔見て、少し冷静になってきた」
「それは良かったよ、お兄ちゃん」
「ありがとうな。…じゃあ改めて行くぞ」
2人で白の背に跨り、兄の個性で移動をした。流石に兄と言えど、静岡から東京までの移動を一瞬で移動はできない。
だから途中にある池や湖、川などを経由して向かう。
日本にある水辺の殆どをお兄ちゃんは把握しているからこそできる芸当だ。素直に凄いと思う。
そうこうしていると、10分程でとある病院に着いた。
此処にインゲニウムさんがいるのか。
白から兄が降りたのを見て、私も降りた。
外に出てきていた医療従事者の方の案内の元、集中治療室へ通された。その途中で清潔にした上で白も私も手術着を着た。白の手術着はどうやって用意したのか…どうやらこの短時間で服を作れる個性の看護師さんが作ってくれたらしい。案内してくれている人がそう教えてくれた。
ありがたい。
そして入室した集中治療室で酸素マスクをつけて治療を受けているインゲニウムさんの姿に絶句した。
あまりに酷い怪我、何よりこの傷では下半身不随になる。…いや、言い方は悪いがまだ"それで済めばいい"。何故ならこのままでは…インゲニウムさんは死ぬ。
今はまだ息はある。それでも、このままでは死ぬ。そう直感的に分かった。
…そんなの、させない。
「――白、《共鳴(リンク)》」
「ああ、完璧に補佐する――≪星間連結≫」
白と1本の光で繋がった状態で挟み込むように両脇に立つ。
「これから治療させていただきます。ですが…最中に何かあったら声をかけていただけますか?」
「ああ、私が監督しよう。君は気にせず治療を」
「感謝します」
執刀医の先生の隣でインゲニウムさんの体に手をかざす。――絶対に死なせない。
脳裏に優しく笑いかけてくれたインゲニウムさんの姿が過ぎった。
深呼吸をして魔力を全身に巡らせる。治出先生との修行で魔力を溜めること事ができるようになっていたからか、すんなり魔力は満ちていった。
インゲニウムさんの体に手をかざし、魔法陣を足元に展開した。
「万物に宿りし生命の息吹よ、すべてを癒せ――リザレクション」
私の回復魔法は万能ではない。相澤先生の怪我も全ては治しきれなかった。
でも、それでも…この力で守れる命があるのなら、私は躊躇なく使う。ヒーローではなく、1人の人間として。
魔法陣から浮かび上がった光がインゲニウムさんの傷に触れていく。
ふわり、ふわりと浮かんでは触れていく。そして光が触れた先から徐々に傷が癒えていく。
その光のせいなのか分からないが、傷の具合が手に通るように分かってきた。刀のような鋭利な傷もある中でな私は1つの傷に注目した。不規則でギザギザな傷。
武器で切られたのか、はたまた個性でついた傷かは分からないが…そのせいで傷口が不規則になっているし、周りの組織の損傷が大きい。治りも遅い。でもこの傷は治さないと日常生活に支障が出てしまう。
「万、回復速度が低下してきている。このままだと治療が適切に行えん。少し上げられるか?」
「いける。教えてくれてありがとう、白」
白の補助を受けながら魔力を更に練って治療速度を先程と一緒ぐらいになるよう調整をかける。一気に治すと…恐らくインゲニウムさんの体に負荷がかかるからって言うのと、私自身への負荷も出てくるから。
ただ…回復魔法を維持をし続ける事なんて、私はしたことがない。ゲームでも見たことがない、と思う。
それでもここで止めるのは駄目だ。血がまた出るし、中途半端な治療はかえって毒だ。
ふぅ…と息を吐く。
正直白の助けがあっても凄くしんどい。それでも無理難題を、超える。こういう時にあるんだよね雄英の…Plus Ultraって言葉は。あんまり好きじゃないけど、今だけは拠り所になる。
更に神経を研ぎ澄ませていく。
隣で指示を出してくれるお医者さんの言葉に沿って治療を続けた。
「――うん。ここまで治ればあとは大丈夫。ありがとう。森羅さん」
「…はい」
20分を超える治療の末、インゲニウムさんはなんとか一命を取り留めた。でも…全ては治しきれなかった。このままでは下半身不随は、免れない。
自分の至らなさに病院内のベンチで項垂れた。
白は兄と一緒にいる。
ただこのまま順調に回復していったら、インゲニウムさんのリハビリがスタートするはずだ。
…リハビリなら、私に一日の長はある。前世での私の得意分野の1つだったし、何よりこの世界に生まれてからもそういったことに関する勉強はやめたことはない。だから少しでも力になれるかもしれない。…でも、ただの高校生の言葉を誰が信じてくれる?
今回は私に実績があったから依頼された事。この後は…専門分野の人に任せる方がいい。
でも、今は誰もインゲニウムさんの未来の話をしていない。そう思った。
……なら、できることはある。
兄から貰ったドリンクをぐっと握り締め、飲み干してゴミ箱に捨てた。
そしてスマホにリハビリメニューを書き込んでからベンチから腰を上げ、歩き出した。
まだ手が届くなら、私にできることがあるなら…やってみよう。後悔なんてしたくないから。
そしてインゲニウムさんの病室前に行くと、そこには兄と白、そして担当医師がいた。…丁度いい。
皆こちらに気付いた様子だ。
…お兄ちゃん、少し顔色よくなった。
その事実に少し安心した。
「万。もう大丈夫なのか?」
「白、私はもう大丈夫だよ。あと…まだ私にも力になれることがあったことに気付いてね」
「力になれること…?」
それに頷き、先生たちに私の組み立てたリハビリメニューを見せた。
「これは…リハビリメニューかい?」
「はい。本当はその道のプロの方にお任せした方がいいと思ったのですが…それでもまだ私にできることがあるんじゃないかと思ったら、書いてしまいまして」
「そっか…ちょっと拝見させてもらっても?」
「はい。どうぞ、先生」
そう言ってお医者さんが私のメニューに目を通していった。
真剣に見てくれている。
そうして暫く見ていると、口を開いた。
「これは…よく練られている。メニューに対しての理由も書いていて、なんでこれを行うかの意図も理解しやすい。何よりこれは…プロが作ったメニューのようだね。
是非私たちの方で参考にさせていただきたい。貰ってもいいかな?」
「はい、勿論です」
私のリハビリメニューは印刷され、先生の手に渡った。
プロ、か…まぁ前世では一応プロだったので、同世代の子よりもそういった事の知識は豊富だ。
あとは私のリハビリメニューがちょっとでも参考になるといいんだけど…。
その時、病室の扉が開いた。恐らくご家族の方だろう。なら私は離れないと…。
兄と白とアイコンタクトをしてその場から離れようとした。
「森羅くん!」
その声に扉の方を見ると、飯田君がそこにいた。
もしかして…インゲニウムさんが時々してくれていた弟さんの話って、飯田君のこと?
そう言えば、弟さんは15歳下だと言っていたな。それから考えるとドンピシャで同い年。しかも飯田君、インゲニウムさんに似てるね。なんで今この瞬間まで気付かなかったんだろう?
そうは思ったが、顔には出さないように飯田君と向き合った。後ろからお母さんらしき人も出てきた。
「兄さんの傷を治してくれたのが、森羅くんだと先ほど聞いた。
――本当に…ありがとう…!!あのままでは兄は危なかったと、聞いた。本当にありがとう…!」
「…私は、私にできることをしただけだよ。でも完全には治せなくて、ごめんね」
「今は生きてくれていたことが私たち一家には一番の話よ…!本当にありがとう…!」
そう言って飯田君とそのお母さんは私に頭を下げた。
それに少しだけ考えて、言葉に出した。
「インゲニウムさんは傷が癒えてからが本番です」
「本番…?」
「復帰に向けてのリハビリです。怪我の治療中にどうしても筋力は落ちますし、完治後もすぐには元通りにはいきません。何より回復には時間がかかりますのでその時に心理的に負担が出てきます。いわゆる"先が見えない不安"…ですね。
そう言った意味でもリハビリは大変です。だからこそ、その時はご家族皆さんで支えてください。ただ、もし…その時に私がお手伝いできる事があれば遠慮なく申し付けてください」
「……何故、森羅くんはそれ程まで兄に良くしてくれるんだ?」
まぁただのクラスメイトとしては不思議だよね。ここまでやるなんて。
頭を上げた飯田君親子を見つめる。
でもね、私にもそれなりに理由はあるよ。
「誰かを助けるのに理由いる?強いて言うならうちのお兄ちゃんの友人だから…と言うよりも、私もお世話になった方だから助けになりたくて。勿論基本は医療機関に頼るのが一番ですが…気分転換の話し相手ぐらいはできます」
そう言って優しい笑顔を心がける。
こういう時不安な顔や強張った表情をすると、かえって不安になるのが人だから。
元々私が前世でスポーツトレーナーになったのは、こういった人たちを支えるためだった。だからこそ、今世でも変わらずに手を伸ばしてしまう。
ただ、それだけ。でもそれを言うと前世…?ってなるから言わない。これは私だけの秘め事だ。
飯田くんとお母さんは、私の言葉を聞いて私にもう一度頭を下げた。そのまま飯田くんのお母さんと連絡先を交換してから私と兄、白は描写を後にした。
うーん、魔力がかなり減ったからちょっとしんどいかも。今日はゆっくり休みつつ魔力もまた溜めないとなぁ。…でも、私の魔力1つで誰かの助けになれるなら安いものか。