魔法は祈りに変わり、星は希望を示す   作:春夏秋冬夏蜜柑

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今回俺つえー系の表記が出てきます。
ご了承ください。





5話:ヒーロー基礎学

 

女子更衣室で皆に背を向けるように壁に向き合った。私は要望書に"動きやすく夜に溶ける衣装"としか書かなかった。だからどんなものかは全く分からない。どんな衣装になっているんだろうか。緊張しつつケースを開いた。瞬間、そこに収まっていたのは私のために作られた"ヒーローコスチューム"だった。

 

黒を基調にした軽装のジャケット。

チューブトップ型のインナーの胸元には白いラインが入り、過度な装飾はない。まるで"過度な虚勢はいらない"と言われているようで、思わず息を呑んだ。

 

制服から"私のために作られた"コスチュームに袖を通す。

 

黒い頑丈そうな手袋に腰を留める細いベルトと、身体にピタリと沿うパンツ。その上から編み上げられた膝上のブーツはつま先にだけ黄色いダイヤ型の装飾が施されている。

そして肩にかける深い灰色のマント。留め具の小さな青い石が胸元で揺れた。

 

鏡の前で全身をチェックする。

 

 

「これが…私のヒーローコスチューム」

 

 

思わず言葉が漏れた。ヒーローになるつもりはない身ではあるけれど、この衣装は特別に見えた。

布は体に馴染み、軽く、動きやすい。

それでいて背中のマントだけはふわりと重さをくれた。まるで――命を背負う意味を伝えてくれているようだった。

 

私は…――それから目を背けるように前髪を払っていつも通り横へ流した。

露わになった右目と、影に沈んだままの左目が並ぶ。

 

ほんの少しでも光が当たれば、星屑を散らしたように瞬いてしまう左目。

家族は“綺麗だ”と言ってくれた。それでも私は――その言葉を受け取れなかった。

 

あの夜、白を救うためなら何だって差し出すつもりだった。

勿論それに悔いはない。ただ、この目に宿った星々だけは、私がひとりで抱えるべきものだ。

 

前髪の位置を指先で確かめ、そっと息を吐く。

 

 

「……これでいい」

 

 

背後ではクラスメイトたちが自分のコスチュームをはしゃぎながら見せ合っている。

その喧騒の隙間に、私は静かに立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恰好から入るってのも大切なことだぜ、少年少女!!

自覚するのだ!今日から自分は…ヒーローなんだと!

 

さぁ!始めようか、有精卵共!!」

 

 

グラウンドβにコスチュームを着た状態でA組全員が集合した。緑谷君はちょっと着替えるのに戸惑ったのか、少し遅れてきた。

緑谷くんの頭のパーツはオールマイトの髪の毛を彷彿とさせる角があり、とても立派だ。好きなのかな。

あと雰囲気的に誰かに作ってもらったのかな?どこかで見たことのあるようなジャンプスーツだ。誰かに作ってもらったのなら…それはきっと愛情だね。とても愛されている子なんだろう。

まぁこれは私の推察なんだけど。

 

因みに雄英では個性届・要望書・身体情報を提出することで"被服控除"というシステムを使えるんだよね。

これは提出されたものを基に学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれる素敵なシステム。私もそれを利用した。

見た限りでは…緑谷君以外はそれを利用したようだね。

 

最後方からクラスメイトのコスチュームをざっと見る。

黒や赤、金色。皆それぞれがヒーローの色を纏っていて眩しい程だ。その中でも緊張している子、堂々としている子。様々いる。

…ただ一人だけ構造の分からないコスチュームの子がいる。片側を氷で纏っている、私と白を無関心そうに見ていた少年だ。なんだかコスチュームに意味がありそうに感じたけれど、私が踏み入れていい領域ではないように感じた。…そっとしていた方が良さそう。そもそも親しくない人から踏み込まれるのは嫌だろうし。

 

そこまで考えてふっと目線を外した。

…人を観察するのは前世で染みついた癖だ。

スポーツトレーナーとしてトレーニング中に体を痛めてないか、または痛みを隠してないか。そういった事を見つけるために常に観察していた。それがずっと抜けきらない。良くも、悪くも。

 

 

「良いじゃないか皆。カッコイイぜ!

…ムム!?」

 

 

その言葉をキッカケにオールマイトに視線を移すと緑谷君を見て、ちょっと嬉しそうに口を覆っている。

そりゃ嬉しいだろうね。純粋に慕ってくれる人と出会うのは意外と難しいから。

 

その光景が微笑ましく見えて、ちょっと口元が緩んだ。

 

 

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」

 

 

ロボットのようなカッコイイコスチュームを身に纏った少年がオールマイト先生に質問した。

…ここは入試で使っていたのか。私はなんだかんやで推薦入試組だから、知らなかった。

 

 

「いいや!もう二歩先に踏み込む!

屋内での"対人戦闘"訓練さ!!」

 

 

その言葉を聞いて腕を組んで右手の指を口元に寄せて考える。

この世界に生まれて自分の力で情報を調べられるようになった頃から見ているものがある。…事件の統計だ。

どこでどんな事件が起こりやすいのかを知ることは、この物騒な世界で自分の身を守ることに直結する。

 

それを基にオールマイト先生の意図を推察する。

 

 

「…敵退治は主に屋外で見られるけど、統計的には屋内のほうが凶悪敵出現率は高い。

監禁・軟禁・裏商売…そう言った小賢しい敵は闇に潜んでる…だからこそ屋内での戦闘を訓練を通して経験する必要があるから…かな。間違ってたらかなり恥ずかしいけど…」

 

「森羅少女、正解だ!というか私が言おうとしたことほぼ全て言っちゃったな!!」

「へ?!あ、すみません!」

 

 

声に出てただけじゃなく、出しゃばりすぎた…。ちょっとしょんぼりして少しだけ肩を落とした。

 

 

「いや構わないぜ!というより抜群の分析力だな!それは今後に活きるから是非伸ばしていこう!

そしてそう、今森羅少女が言った通り…このヒーロー飽和社会、ゲフン、真に小賢しい敵は屋内(やみ)に潜む!!

 

君らにはこれから"敵役"と"ヒーロー組"に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

 

 

先生はそう高らかに告げた。

基礎的な訓練をしてない私たちに突然それをさせることは、基礎を知る為だから?

 

 

「基礎訓練もなしに?」

「その基礎を知る為の実践さ!ただし今度はぶっ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」

 

 

梅雨ちゃんが問いかけたことにオールマイト先生が答えた。やっぱりそうだったんだね。

なるほど、なるほど…。

 

 

「勝敗のシステムはどうなります?」

「ブッ飛ばしてもいいんスか」

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……?」

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか」

「このマントヤバくない?」

 

「んんん〜〜聖徳太子ィ!!!」

 

 

先生がまるで助けを求めるような声をあげた。あのオールマイトを追い詰めるA組は…その、凄いね?

 

先生はゴソゴソとポッケを触り、紙を1枚取り出した。

 

 

「いいかい!?状況設定は"敵"がアジトに"核兵器"を隠していて"ヒーロー"はそれを処理しようとしている!

"ヒーロー"は制限時間内に"敵"を捕まえるか"核兵器"を回収する事。

"敵"は制限時間まで"核兵器"を守るか"ヒーロー"を捕まえる事」

 

 

因みに制限時間は15分とのこと。

 

これらをもとに先生が提示した条件を分析しよう。

敵が核兵器を隠している、それはつまりヒーローはそれを見つけた上で回収しなければならない。勿論事前に核兵器の場所はなんて知らされない。実戦を想定するとはそういうこと。…これは敵役が圧倒的に有利な訓練かぁ。

でもヒーローはそれでも見つけ、回収しないといけない。不利でも負けない。それが"ヒーロー"だからだ。

 

考えを馳せながら隣にいる白を撫でる。

コンビは…どうやって決めるんだろう。白を除けばクラスは21人いる。1人あぶれるんだけど…どうするつもりだろう。

 

 

「コンビ及び対戦相手は"くじ"だ!」

「適当なのですか!?」

「プロは他事務所のヒーローと急遽チームアップすることが多いし、そういう事じゃないかな…」

「そうか…!先を見据えた計らい…失礼致しました!」

「いいよ!!早くやろ!!

……その前に!!」

 

 

オールマイト先生がこちらを向いた。

…なに?

目があった私は首を傾げた。隣で白も首を軽く傾げた。

 

 

「森羅少女は白くんとの"相互作用型の個性"を見させてもらうためにもペアだ!よって森羅少女を除いてくじを引いてもらう!!いいね、森羅少女。

これ、実は校長先生にも頼まれていてね」

「そういうことなら。…はい、大丈夫です。オールマイト先生」

「……っ先生…!」

 

 

なんか先生呼びに感極まってる。…確かに平和の象徴としてのイメージが強すぎて、先生って呼んでる子少なそう。

 

さぁ皆くじを引くんだ!

先生に促されて1人、また1人とくじを引いていく。

どんな組み合わせになるんだろ。

……ってちょっと待った。大事な事を忘れてた。

1歩前に出て口を開く。

 

 

「先生。1つよろしいですか?」

「なんだい森羅少女!」

「私は白とペアなのは分かりましたが、相手はどうするのでしょうか?数的にどうしても私たちはあぶれますが…」

「勿論考えているさ!君たちの相手は…訓練をして尚元気が有り余ってる子にしてもらう!!因みに君たちは大トリね!」

「……と言うことは、1組だけ2回やるんですね?」

「そうさ!ただそれでは平等でも公平でもない。なので君たちにはハンデを設けさせてもらう。

条件は"ヒーロー役"固定かつ、制限時間は…"5分"だ!」

 

「5分!?それは短すぎじゃないッスか!?」

 

 

切島くんが思わず声をあげた。

確かに一見すると短すぎるけど…。

 

 

「初めての訓練では思ってるよりも体力を削られる…それを見越しての時間設定でしょうか?」

「そうさ!流石だな森羅少女!」

「いやでも…!」

「私たちは大丈夫だよ。気にかけてくれてありがとう、切島くん」

 

 

そう言って切島くんに笑いかける。

…それなら、いいけどよ…。まだちょっと渋ってる切島くんを見る限りめちゃくちゃ良い子だ。自分のことじゃないのにここまで気にかけてくれるなんて。良い子だ…。

 

 

そしてペアが決まり、トップバッターも決まった。

緑谷君とボブヘアーの少女ペアが"ヒーロー役"、不良少年とロボットのようなカッコイイコスチュームの少年ペアが"敵役"。

 

 

「敵チームは先に入ってセッティングを!

5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで観察するぞ!

 

飯田少年、爆豪少年は敵の思考をよく学ぶように!これは実戦!ケガを恐れず思いっきりな!

度が過ぎたら中断するけど……」

 

 

その言葉を聞いてロボットコスチュームの飯田君と不良少年の爆豪君は建物に向かって行った。そこから少し遅れて緑谷君とボブヘアーの麗日さんが向かった。

私たちは観戦組はモニター室へ移動。

 

…ただ、なんか引っかかるな。2組の後ろ姿を思い出した。

なんか、緑谷君と爆豪君…ちょっと危うくないかな。初めての実戦訓練で身構えてる、とは思えなかった。何かもっと深いところで何かがある。そう私の勘が囁いている。

訓練を見れば分かるかな?……それに訓練だし、酷いことにはならないだろうし。

 

 

 

 

 

 

そう思って静観で良いと判断した自分の見通しの甘さを、正直なところ殴り飛ばしたい。

 

ヒーロー役は……勝ちはした。勝ちはしたけれど、あの内容は“訓練”の域を越えていた。

見ていて胸の奥がぞわりと冷えた。

皆の講評を聞きながら手を強く握り締めた。

 

 

爆豪君は飯田君と連携が取れていないどころか…独断専行で戦い、緑谷君との戦いの最後の方は最早リンチに近かった。それでも緑谷君は相手をよく見ていたのか、最初の頃は見切っていた。よくついて行った。あれは日頃からよく考えて、相手を観察しないとできない芸当だ。

…2人は昔馴染みなのかな。

それにしても爆豪君の緑谷君に対する敵意は凄まじかった。何があの子をそこまで駆り立てる…?

 

それに素人目だけど…最後の爆豪君の攻撃を受ける事を選び、麗日さんが核兵器を確保するサポートを選択したのは並大抵の人間ではできない。だってアレは、あの攻撃は…恐ろしい程に殺傷力が高かった。事実緑谷君はその後気を失った。酷い傷だった。自己犠牲が過ぎると、そう思った。

 

…緑谷君も緑谷君で、爆豪君に対して並大抵ではない感情を抱いてるのは見ていて分かった。この2人の間に何がある?よく見ていないと取り返しのつかない事になりそうで、怖い。

 

 

……一応、私なりの総評もまとめておこうかな。

 

飯田君と麗日さんは、飯田君の方が設定に適応して行動ができていた。だからこそ最後の豪快な一撃に驚いてしまったのだと思う。

一方麗日さんは訓練が頭の中にあったのかちょっと甘い面が見えた。でも緑谷君の事を信じて行動していたのは彼女の良いところだと思う。

 

 

爆豪君と緑谷君は…爆豪君は感情で動いていて、緑谷君を叩き潰す事しか頭になさそうだった。訓練終わりの様子を見るに…今回の負けを受け入れられてなさそうだ。それでも戦闘センスは随一。磨けば光るのは確実。それでも…それが良い方に転ぶか悪い方に転ぶか、私には判断がつかない。

 

爆豪君は文句なしに強い。それは心から賛同する。でも、だからこそ、感情で動く現状は危ない…何より感情を向ける先を誤った今回のような時が怖い。

 

 

緑谷君も緑谷君で、爆豪君に勝つ事に執念を抱いていそうだった。

それでも最後は自己犠牲で勝利。……それは、良くない。

そして見たところ体も個性に耐えられていない。運ばれていった姿を見たら個性を使ったであろう腕がボロボロだった。

自己犠牲を良しとするのはヒーローとしては良いのかもしれないが、あれでは体がいくつあっても足りない。危うい在り方だと思う。

 

何より、緑谷君の自己犠牲は…そう言った優しいものではない。

"自分の命を軽く扱う癖"だ。そんなの、ヒーローが…いや、人が抱えていい癖ではない。

どうかその癖が彼の身を蝕まないようにと祈ってしまう。

 

 

……この子たちは、よく見ていないといけない。それはスポーツトレーナーとして生きていた前世だけで判断したのでない。ただの、直感に似た何かだ。

 

 

「……万、大丈夫か」

 

 

小さな声で白に声をかけられた。

いつの間にか他のペアの訓練を見ていた目を白に移すと、酷く心配そうな目で私を見ていた。その目から視線をモニターに戻し、隣の白に少しだけ寄りかかった。

 

私の顔色の悪さが、バレたようだ。やっぱり鋭い。

 

 

「……多分大丈夫ではない、けど…大丈夫だよ」

「…あまり、無理はするなよ」

「ありがとう、白」

 

 

そうして授業は進んでいく。

頭の中には緑谷君と爆豪君の戦いが離れず、ずっとあったまま…ついに私たちの番が回ってきた。

 

目を閉じて少し深呼吸をする。頭の中のスイッチを切り替える。……よし、いける。

白と一緒にオールマイト先生の近くに進んだ。

 

 

「では最後!森羅少女たちと戦いたい有精卵はいるかー?!」

「「はい!!!!」」

 

 

そう言って殆どの子が手を上げた。…かなり元気だね?これが若さなのか…。

先生は手を上げたペアの子たちを確認して、VILLAINと書かれた箱にボールを入れた。くじを再度するんだね。それは確かに公平だ。

 

ちょっと緊張しながらオールマイト先生がボールを取り出す仕草を見守った。

 

 

「森羅少女と戦うのは…C!八百万少女と峰田少年ペア!」

 

「まぁ!森羅さん、よろしくお願いいたしますわ!」

「よろしくな!」

「うん。こちらこそよろしくね。八百万さん、峰田君」

 

「さ!配置に着いてくれ!準備時間は勿論5分取るぞ!けど最初に言った通り、今回の制限時間は5分だからな!注意してくれ!

あと森羅少女、これが見取り図だ!ちゃんと見るんだぞ」

 

 

オールマイト先生の言葉を聞いてから白と指定場所に向かった。歩きながら渡された見取り図を見る。

見取り図を見れたおかげで、訓練の難易度がちょっと下がったように感じる。ただ勿論油断はしない。さっきの訓練を見た限り、峰田君のぶどうの実みたいな丸い物体は気をつけないといけない。理屈は分からないけど、一度引っ付いたら取れなさそう。そういう特質を持った個性か…。

 

八百万さんは推薦試験でもちょっと見たけど、物質を創造する個性のようだ。これを用いたら罠も作って仕掛けることは可能。

 

訓練の舞台になる建物を見る。

 

 

「……さて、どう出ようか?白」

「どんな作戦でも完璧にサポートする。任せろ」

「心強い」

 

 

白の言葉にくすりと笑ってすぐさま気を引き締める。

1人なら難しかったかもしれない。でも…白がいるなら大丈夫。

 

…5分が経った。インカム越しにオールマイト先生の開始を告げる声が聞こえた。

 

さぁ、頑張ろう。

 

 

「行くよ、白」

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

――オールマイト視点

 

さて、森羅少女と白くんはどう出てくる?

ノートを手にモニターを見つめる。モニターには物音なく侵入した1人と1匹の様子が映った。

 

この子たちは特別だ。白くんは"知能"の個性を持った狼。そして森羅少女は"魔法"の個性を持っている。一見すると相互に作用するとは思えないが、推薦試験の様子を映像で見させてもらったところ…互いの個性が呼応するかの如く作用している。

どうしてなのかは分からない。しかし、現実としてそれは明らかだった。

 

……根津校長と同じ、動物にして個性が発現した稀有な例。そして珍しい相互作用の個性。ここまで無事に成長できたのが奇跡のような子たち。何より高い将来性。

ヒーローとして、いや…大人として見守ってあげなければ。

 

だがそれはそれとして厳しく採点するがな!

 

 

《罠はまだ無さそうだね。あと…今は様子見してるのかな?それはそれで好都合。…白、やるよ》

《了解した》

《――共鳴(リンク)、"星間連結"》

 

 

その会話が聞こえた瞬間、森羅少女を中心に光の輪が浮かび上がり、同時に森羅少女の隣で白くんにも同じ輪が現れた。

ふたつの光の輪は淡い一本の光で結ばれ、それはまるで絆を示すように揺らめいている。

 

これが森羅少女の個性…魔法か。そして相互作用の個性。

 

 

「わぁ…綺麗…。それと、凄く神秘的…」

 

 

芦戸少女のうっとりしたような声が聞こえた。

その言葉が現すように、森羅少女は一種の絵画のような神々しさを放っていた。控えるように姿勢を低くしている白くんの純白の毛並みが、その印象をより一層強くしている。

 

目を閉じ、まるで祈りを捧げるように槍を持つ森羅少女。魔法陣から発生している微量の風が髪を舞い踊らせている。

 

 

《白き御手よ、無慈悲な抱擁を今。

――アブソリュート》

 

 

その声を合図に白くんが咆哮をあげた。

刹那、峰田少年と八百万少女たち"だけ"頭を除いて氷に包まれた。

 

 

「なっ?!轟と同じ個性ー!?」

 

 

驚きの声がA組から上がる。

 

 

《さ、さみー!》

 

 

…轟少年も先程建物を氷に包んでみせた。

ただ違う点は、純度。そして建物全体ではなく2人をピンポイントで凍らせた精度の高さ。

森羅少女が出してみせた氷は透明度が非常に高く、不純物や濁りが殆ど無い。何よりどこにいるか分からない2人をピンポイントで凍らせるなんて。索敵している様子は見せなかったのに、どうやって?

 

そのまま建物内を駆けて八百万少女と峰田少年のいるフロアに着いた森羅少女は白くんを連れて核兵器に触れた。

 

 

《核兵器、確保しました》

「敵チーム…WIIIN!!!!」

 

 

私のその言葉を合図に氷は霧散し、2人は解放された。

熱による氷解ではなく、霧散する形で消えていった氷は幻想的だった。

 

 

《ごめんね、寒くない?》

《いえ、大丈夫です。…それに、思ったより冷たくなかったですわ。あれはどういった理屈ですの?よろしければ後学のために教えていただきたいです!》

《いやあれ冷たかっ…いや確かに思ってたより冷たくなかったな……?》

 

 

そうしてヒーロー基礎学は終わった。

 

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