魔法は祈りに変わり、星は希望を示す   作:春夏秋冬夏蜜柑

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※一部誤字があったため修正しました(2025/11/25)


6話:遅れた個性把握テストと

授業が終わり、先生は急ぐように緑谷君がいる保健室へ向かった。講評を聞かせるためとは言いつつ、やはり無事かどうかも気になるんだろう。そう思った。

 

そして放課後。

帰りのホームルームが終わり、私は相澤先生の待つグランドに向かうため準備をしていた。

 

……緑谷君、大丈夫かな?

できれば無事かこの目で見たいけど…。

チラリと時計を見た。終わって間もないけど、相澤先生を待たせる訳にも行かないので早めに行かないと。

 

わいわいと高校生らしい賑やかな雰囲気の中、鞄と体操着を持って静かに教室の後ろから出ようとした。

 

 

「なぁ森羅!

今から皆で訓練の反省会しようと思うんだけど、一緒にやらねぇか!」

「切島君。…ごめんね、今から相澤先生と昨日皆がしたテストやるからできないや」

「今日やるのかぁ。まぁ確かに森羅昨日いなかったもんな。それなら仕方ないな!またやろうぜ、頑張れよ!」

「うん、頑張るよ!」

 

 

切島君との会話を聞いてたクラスメイトは各々がんばれーって見送ってくれた。それに手を振って教室を白と一緒に後にした。

 

すると途中でボロボロの緑谷君とバッタリ出会った。咄嗟に全身を見る。包帯は巻かれているけど、歩けてる以上は保健室にいる先生…リカバリーガール先生は大丈夫と判断したんだろう。先生の個性は確か"治癒"。それでも全部は治らなかったのか…。

胸がズキンと痛くなった。…この年頃の子が、する怪我じゃない。

それでもなんとか切り替えて緑谷君に話しかける。

 

 

「緑谷君、もう歩いて大丈夫なの?」

「う、うん、もう大丈夫…!」

「そっか、それなら安心した。

…会ったばかりの私が言うのもなんだけどね」

「う、うん」

「……あまり無茶すると、先生に怒られるよ?」

「う…その通りです…」

 

 

反省しきりの緑谷君の様子に少し笑ってしまう。

あまりの傷に私も治す手伝いをしたいと思うが、勝手に個性使っては怒られる。何より一生徒があまり出しゃばりすぎるのも良くない。

 

 

「じゃあ私は行くね。お大事に。また明日」

「ま、また明日!」

 

 

緑谷君と別れて更衣室で着替えてから先生が待つグラウンドへ向かう。すると先生は既に居て小走りで合流した。

 

 

「すみません、遅れました」

「大丈夫だ。早速だが準備はいいか?始めるぞ」

「はい」

「昼間は詳しくは話していなかったが、このテスト…個性把握テストは朝も言った通り個性を使用して行う。全力で取り組むように」

「分かりました」

 

 

相澤先生の指示に合わせ、私は短距離走から順にこなしていった。魔力を練って身体強化を施したり、魔法で更に踏み込んだ強化を施したり…『星間連結』を施したり。私には強化の術は色々ある。それらをしたおかげで身体は軽く、踏み切るたびに白が調整してくれた魔力が足元で弾けた。

 

今回とヒーロー基礎学で使ってる『星間連結』とは、白と共鳴(リンク)をした状態で発動できる術。発動すると私の魔法は強化される上、普段は必須の詠唱も破棄できる効果もある。これは白が魔力の流れも調整してくれるからできる芸当。因みに詠唱破棄は今の私が1人でしようとすると体に強い負荷がかかり最悪吐血する。

…本当は1人でもできるように鍛えた方がいいんだろうけど、今はいいか。

 

そうして個性把握テストは終了した。

 

 

「…よし、以上だな。お疲れ」

「ありがとうございました」

「順位気になるか?」

「…少し」

「まぁ上の中って言った所か。…お前の個性ならもっとできただろ、なんでしなかった?」

 

 

来ると思ったこの質問。

ちゃんと思ったことを正直に伝える。下手に偽って話すと何言われるか分かったものじゃない。

 

 

「…正直、もっと上を目指そうと思えばできました。けれど、コントロールが未熟な以上は無理するとどんな影響が出るか分からない。私の個性は自分だけではなく、周辺にも影響が出るようなものなので慎重になってしまいました。…でも、だからこそ、最小限の力で今できる最大のパフォーマンスを心掛けました」

「…うん、合格。除籍はなし」

 

「……除籍前提で話されてたんですか?!」

「お前の言葉次第では考えたよ」

「こ、こわ…」

 

 

思わず自分の腕をさすった。

ヒーローになるつもりは無いけど除籍は勘弁…。

 

 

「ところで…お前の意見を聞かせて欲しいものがあるんだが、いいか?」

「…なんでしょう?」

「緑谷と爆豪についてだ」

「…そうですね。今日見ただけですけど、それでもいいですか?」

「構わない」

 

 

少し、考え込んで頭の中を整理する。

そして言葉を選びながら口に出す。不安ばかり口に出すと良くないかなと思ったので、なるべくプラス方面で話をする。

 

白は足元で丸まった。この話にはノータッチでいくらしい。

 

 

「爆豪君は自尊心の塊でしょう。プラス自信家。自分が世界の中心だと思う典型的なタイプに見受けられます。ただ多分、今日の出来事で一回心を折られてる…そんな気がします」

「何故そう思った?」

「表情が演習前後で違いましたので。でも多分勝手に立ち直ります。恐らくですが…今の自分の立ち位置を把握して心が折れてしまった。それでも彼にはそれを乗り越え、前に進む力があると思います。…これは勘が入ってるので参考にはならないと思いますが。

でも個人的には緑谷君に対する敵対心がどう転ぶか分からないので怖いというのが一番です。ちゃんと見とかないと、いつか取り返しもつかないことになりそうで…」

 

 

爆豪君のことも緑谷君のことも、今日見た以上のことは分からない。でも、それでも見て取れたものもある。

 

 

「そうか…緑谷は?」

「緑谷は自己犠牲の塊…もしくは"自分を犠牲にすることに迷いがない子"だと思いました。

いつかそれが緑谷自身の首を締めないかが心配です。個性も扱い切れてないから余計に。

…でも、その中でも最小限の犠牲で最大限の結果を出そうと工夫してるのは痛い程伝わってきました。何より、とっさの判断力が凄い。あれは一朝一夕でできるものではない。常に相手を分析して、自分ならどう立ち回るかを考えてるように見えました。そこは緑谷の長所ですね」

 

 

一気に話したせいか、ちょっと息が詰まる。

とんとんと胸を叩いて落ち着かせる。

先生は私の意見に何か考える素振りを見せた。…まぁ所詮は今日見ただけの印象。合ってるかどうかも分からない。あくまでも"私は"そう思っただけ。

 

…ああ、大事なことを言うのを忘れていた。

 

 

「緑谷君は、きっと爆豪君が怖かった」

「…そうだろうな」

「それでも恐怖を押し殺して立ち向かった。怖いものから逃げるのは生物として当然のことなのに、立ち向かえる緑谷君を私は尊敬します。

…きっと、私に足りないものの一つはそれなんでしょう。

 

でも、あれは……"命を軽く扱う癖"だとも思いました。どうか、これからの学校生活で自分を大切にすることも学んでほしいなと、勝手ながら思います」

 

 

私は怖いものから逃げたり目を背けたりすることが多い。

 

…中学時代の敵との遭遇事件の時は無我夢中だったから立ち向かえたけど、あれをもう一度しろって言われたら多分できない。個性にしろ、何にしろ…怖いもの・嫌なものから目を背けて生きてる私には眩しかった。

 

落ち着いた今はこう思う。

勇気って、こういう瞬間に出るものなんだなと緑谷君を見ていて思った。勿論自分の身を大事にすることも彼は覚えなければならないけども。

 

 

「…確かにお前に無くて緑谷にはあるものはある。

でも…冷静に、客観的に、相手とその場を把握できるのはお前の強みだよ」

「…先生」

 

「大丈夫だ」

 

「っ…ありがとう、ございます」

 

 

励まされた事実が途方もなく嬉しくて、頭を下げて礼を言った。

 

 

「爆豪と緑谷についての意見、参考になった。ありがとう。…さて、もう遅いし今日は帰っていいぞ」

 

 

先生のその言葉に腕時計を見た。結構な時間が経ってたことが分かった。通りで暗いなと…。

 

 

「…わ、もうこんな時間…」

「また明日な」

「はい、ありがとうございました!白、帰ろうか」

 

 

今日は疲れた。早く寝よう。

 

 

――――――――――

――――――――

――――――

 

 

次の日。

私と白は目立たないように他の生徒の登校時間よりかなり早く登校したので、朝のマスコミ騒動は噂話程度にしか知らない。…どうやらマスコミは許可なしに雄英の敷地内に入ろうとして、門がしまったらしい。まぁ当然のことだよね。にしても…、過激な取材姿勢は世界が変わっても変わらないのか。

前世でもプロのアスリートを相手に仕事していたこともあり、マスコミからあの手この手で情報を探られたこともあった。当時の私はなんとかやり過ごしていたけど、その時からマスコミはちょっと苦手だ。

 

そんなことを思いながら朝のホームルームを受ける。相澤先生が教壇に立っている。

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見させてもらった。爆豪。

おまえもうガキ見たいなマネするな。能力あるんだから」

「……わかってる」

「で、緑谷はまた腕ブッ壊して一見落着か。

"個性の制御"…いつまでも"出来ないから仕方ない"じゃ通させねぇぞ。オレは同じこと言うのが嫌いだ。

"それ"さえクリアすればやれることは多い。焦れよ、緑谷」

「っはい!」

 

 

相澤先生の言った言葉は私の心にも刺さった。

個性の制御…できないから仕方ないじゃ通さない。それは私にも同じことが言える。

私も昨日は散々分析はしていたが、個性の制御がうまくないのは緑谷君と一緒だ。私も、焦らないとこのままでは人を傷つける。

…昨日は、白のバックアップがあったから最小の個性行使で済んだ。魔力調節と強化・そして相手の位置特定。あれがなければ5分で決着させるために轟君のように建物を凍らせていた。それも加減ができず、フロア内も何もかも氷の中に閉じ込めていた…そんな気がする。

 

 

「さてホームルームの本題だ…急で悪いが今日は君らに…学級委員長を決めてもらう」

「学校っぽいの来たーーーー!!!」

 

 

その言葉を皮切りに教室内は立候補する子たちの声で満たされた。

基本学級委員長というものは雑務のイメージもあってこんなにも立候補する子はいない。けど此処はヒーロー科。集団を導くというトップヒーローの素地を鍛えられる役として人気なんだろう。

私は立候補しないけど。私はそういうのより支える方が好きだ。適材適所だね。

 

 

「他をけん引する責任重大な仕事だぞ…!"やりたい者"がやれるモノではないだろう!!

周囲からの信頼あってこそ勤まる聖務…!民主主義に乗っ取り真のリーダーを皆で決めるなら…。

 

これは投票で決めるべき議案!!!」

「そびえ立ってんじゃねーか!!なぜ発案した!!!」

 

 

鋭いツッコミだ。でも確かに飯田君の手は存在感を感じるぐらいそびえ立っている。

頭では分かってるけど心はやりたくて仕方ないんだろう。

 

 

「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

「そんなん皆自分に入れらぁ!」

「だからこそここで複数票を獲った者こそが真にふさわしい人間ということにならないか!?

どうでしょうか先生!!!」

 

「時間内に決めりゃ何でも良いよ。

…じゃあ集計と進行は森羅。お前やれ。俺はここで見ている」

 

「…え?!」

 

 

先生の突然の指名に心底驚いた。

皆のこと眺めていただけなのに…!?

 

クラス中の視線が私に集中する。ちょっと居たたまれない。

 

 

「お前さっき手挙げてなかっただろ。だからやれ」

「いや、でも…」

「やれ」

「……はい」

 

 

生徒は先生に逆らえないよね。というか逆らったら後が怖い。

教壇から少し離れた寝袋に入った先生を横目に代わりに私が教壇に立った。

ついでに紙を1枚持ってきたから、皆を見ながら人数分に紙をちぎりながら口を開いた。

 

 

「では、今から紙を配りますので、そこに推薦する人の名前を書いてください。書き終わった人から書いた紙を机に伏せて、机の隅に置いてください。

全員分回収したら集計をして黒板に出します。その時声をかけるので、それまでは顔をあげないでください。…それでいいかな?」

「「はーい!!」」

 

 

元気な声を聞いてから皆に紙を配った。さて、私は誰に投票しようかな…。と言っても決めていたんだけど。

サッと紙に書いてから伏せた。

 

そして顔を全員が記入を終えて顔を伏せた。何人か素直に伏せないと思ったけど、意外と素直に皆伏せてくれた。ありがたい。こういうところは高校生だね。

全員分の紙を回収して集計し、黒板に結果を出した。

結果は…。

 

 

「僕3票ー?!」

 

 

緑谷君3票、八百万さん2票。そして他1票。

飯田君が落ち込んでいるが、そうも落ち込まなくても…というか自分に入れなかったんだね。

 

 

「では票数的に緑谷君が委員長。八百万さんが副委員長…で、よろしいでしょうか先生?」

「ああ。お疲れ」

 

 

その言葉と共に私は解放された。ちょっと変な疲れが出たな…。

そうして朝のホームルームが終了していった。

 

 

 

その後は平和に終わっていき、昼休みになった。

食堂の裏口へ向かいお弁当を受け取り人気のない木陰に移動した。

 

 

「美味しそうなお弁当だね」

「そうだな」

 

 

そんな会話を交わしてからお弁当を食べた。

人気のない場所だから、人の喧騒から外れているのでとても静かだ。風に吹かれた木々の音と遠くでうっすら聞こえる人の声。とても心地いい。

 

食べ終わって少し白とゆったりしていたその時、警報の音が鳴り響いた。

予想もしていなかったことに思わず近くの道に出た。白は木々の中で警戒している。

 

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください』

 

「セキュリティ3。確か校舎内に誰かが侵入してきた…ってことだったっけ」

「ああ。学校側から入学時に渡された資料にはそう書かれていたな」

「…早めに此処を移動しよう」

 

「あ!!生徒発見しました!!お話聞かせてください!!!」

 

 

その場を後にしようとしたら、声が聞こえた。その方向を見ると視線の先には報道陣の姿が。…門を突破した侵入者ってこの人たち?どうやって突破した?

いやそれより…少し離れたところにいる白と目を合わせる。

生徒としか言っていないということはまだ白の姿は見られていない。

 

 

「白、相澤先生呼んできて。それまでの間は私が対処する。あと呼んだら暫く身を隠していて」

「…見つかったら面白がって記事にされる可能性があるからか」

「可能性ではなく、確実に」

「……それなら分かった。今呼んでくる。無理するなよ」

「勿論。ありがとう。それと、よろしくね」

 

 

白は頷いてその場を去った。

それから間もなく報道陣に囲まれた。

 

 

「オールマイトはどこにいるのでしょうか?!」

 

 

この人たちオールマイト先生が目的か。想像はできてたけど…今興奮状態にあるな。あまり刺激させないように話さないと。

 

表情を意識的に優しい表情に切り替えた。そして続けて申し訳なさそうな表情に切り替え、口を開いた。

声もなるだけ申し訳なさそうに聞こえるように。

 

 

「申し訳ございません。私は一生徒ですので、現在先生がどこにいるかは分からず…ただ今日は一度もその姿は拝見していません。お力になれずすみません」

 

 

嘘は言っていない。それに先生は今日、非番の可能性がある。

居たら誰かしら今日も見られたねって話をしているはずだ。なのに今日はその話は一度も聞いていない。だから非番の可能性がある。

 

そもそもトップヒーローだ。忙しくて今日は学校に来ることができないとかあり得る。

 

 

「ではオールマイトの授業を受けた感想をください!!だって貴方ヒーロー科所属ですよね?!」

 

 

…制服の微妙な違いで私がヒーロー科と分かったか。興奮状態にありながらもそこまで見ることができるのは流石。

ゆっくり落ち着きをもって会話をする。

 

 

「オールマイト先生の授業はヒーローとしての素地を鍛えてくれるようなものでした。何よりトップヒーローとして、私たちを導いてくれているような気がします」

「流石オールマイト!!」

「次は俺の質問に答えてください!!!」

 

 

いや俺だ。邪魔だ。私よ。そう言った声をあげながら報道陣は私に次々と質問を投げかけてくる。

それに答えつつも決して本音・本心、実際にあったこと、そのどれも話していない。けれど報道陣はそれに気付いていないようだ。…そこまで興奮しているのか。

ただ何人かは落ち着いてきたのか、小さな声で「…興奮してて気付かなかったけど、俺らまずくね?」「立派な不法侵入じゃん…」「やば…今のうちに帰るか?」よし、いい感じ。

 

でも…先生、まだかな。

少し気が緩んだ。

 

 

「というか君とても綺麗だね!前髪で隠れている目はもしかしてオッドアイ?!見せてよ!」

 

 

その言葉と共に伸びてきた手に咄嗟に左目を庇うように手で隠しつつ一歩引いた。

瞬間、誰かの手が私を後ろに引いた。それに抗うことなく後ろに下がると、替わるように前に出た人がいた。――相澤先生だ。

そしてバランスを崩した私を支えてくれたのはプレゼント・マイク先生。

 

よかった。間に合った。少しほっと安心した。

 

 

「あとは俺たちに任せな!」

 

 

その言葉通り先生たちは警察が登場するまで庇ってくれた。

報道陣の話はオールマイト先生ばかりだったけど。

 

警察に連行されるその姿を見送って私はちょっと絞られた。これ以上中に入らないように時間を稼いだのはよくやったが、無茶しすぎだ。

その言葉にすみませんと返して、門の方を見た。遠くに見える門は崩れたような形跡がある。

 

 

先生に絞られた後、教室に戻って午後一で他の委員決めが行われた。

その中で飯田君が食堂で皆を落ち着かせる活躍をしたようで、緑谷君が飯田君を指名して委員長は飯田君となった。

 

にしても、どうして中に入ってこれたんだろう。

マスコミにそんな芸当できるとは思えない。…誰か、そそのかしたのか?

 

不安が胸を占めた。

 

 

 

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