カードゲームだけして生きていけば良い最高の世界にTS転生した   作:ティーカー

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1 カードゲーム世界を生きる適当美人お姉さん(TS)

 昔から、転生とか冗談じゃないと思っていた。

 だって一般的な転生といえば、文明レベルの低い異世界に転生して無双することが殆ど。

 はっきり言うけど、漫画やスマホの無い世界に普通のオタクが転生して、果たして馴染むことができるのか?

 私はムリだと思っていた。

 そういう転生モノを創作として楽しむのは普通に好きだし、今の人生をつまらないと思うことはある。

 でも、自分がその当事者になりたいかといえば、はっきり言って否だった。

 

 だが、私は転生してしまった。

 しかも女子として。

 これやばいじゃん、憎たらしいイケメンに囲まれてメス落ちするか、えちえちなことをさせられてメス落ちするかのどっちかじゃん。

 とか思っていたけれど、私の転生した世界は現代世界だった。

 まぁ、現代に転生するってパターンも創作の中ならよくあるし、別に問題はない。

 でもどうせ現代に転生したって、世界の裏では悪の組織と正義の味方が争ってるんだ。

 私はそれに巻き込まれ、大変な目に遭うのだろう……と思っていた。

 

 

 その世界がカードゲーム至上主義の世界だと知るまでは。

 

 

 カードゲーム至上主義。

 すなわちありとあらゆることがカードバトルで決定する素晴らしい世界。

 私は前世の頃からTCGが大好きだったので、すぐさま馴染んだ。

 現代で、しかもカードゲームだけをして生きていけば良い世界。

 容姿にも恵まれ、ちやほやされて生きていける。

 なんて素晴らしい世界なんだろう。

 

 私は心に決めた。

 自分の思うがままに、やりたいことだけやって生きていく。

 休みたい日に休み、仕事をしたい日に仕事をし、カードをしばきたい時にだけしばく、

 そんな人生を送ってみせる、と。

 

 たまにカードゲームで世界が滅びかけたりもするけれど、そうそう巻き込まれることなんてないだろうしね。

 

 

 □

 

 

 私、札山ドロアの朝は遅い。

 たいてい日を跨ぐまで起きて、そこから七時間以上の睡眠を常に心がけているからだ。

 今日の起床時刻は十時、どうやら八時間眠っていたらしい。

 うーん、健全健全……でもないけど。

 

 そして起きると直ぐに、軽く身だしなみを整える。

 ぶっちゃけTS女子に化粧の機微なんて解るはずもないけれど、寝癖を整えるくらいならできるのだ。

 というか、それで十分なくらいに私の容姿は優れている。

 背丈は小柄ながらも、出るところはかなり出ていて、割と眼福。

 美しい白髪に、蒼い瞳。

 髪は腰のあたりまで伸びていて、一部に青のメッシュが入っている。

 衣服は寝起きなので適当なTシャツ一枚、胸元に「ボチヤミサンタイ」の呪文が印字されたものだ。

 自作である。

 ここから適当にズボン履いて外出することもあるから、気合を入れて自作しないといけないな。

 

 身だしなみを整えたら、朝食を食べながら今日の予定を考える。

 食事は昨日の残りか、買っておいた惣菜か、パンにジャムをつけたものか、インスタントのどれかだ。

 朝に食事とか作るの面倒だし。

 これでも前世と比べると夕飯は自作することが増えただけ進歩である。

 今日の朝食は昨日の残りのカルボナーラ、チーズがいい感じで大変美味。

 んで、今日の予定は基本的にその時の気分だ。

 

 普段の私は、いわゆる前世におけるタイミー的なもので日雇いのバイトをしながら暮らしている。

 といってもバイト先はほぼ固定化していて、向こうが「人が足りないから来てよ」と希望を出し、その中から私がその日の気分で選ぶ感じ。

 そんなんで生活できるのか、と思うかもしれないが、ぶっちゃけメイン収入はこっちではないから問題ない。

 人間って、完全にニートで自由に生きることにすら適性が必要なんだよね。

 私の場合は、気が向いた時に労働してないと気が滅入るからこういう日雇い労働は非常にありがたいのだ。

 

「――今日はアズライトさんのところでカドショ店員かなぁ」

 

 選ぶ仕事は、当然ながらすべてカードに関わるもの。

 カドショ店員の他には、カード教室の臨時講師や、カード博物館のスタッフ等がある。

 地味にどれもプレイヤーとしての実力が求められる仕事だ。

 私としても、溜め込んだカード知識を披露できるのでそこそこにやりがいがある。

 定職に着くのは(前世のブラック労働を思い出し)……勘弁してね!

 

 

 □

 

 

 この世界のカードゲーム、「リブルーム」はいわゆる遊戯王的な非コスト制TCG。

 世界各地で多くの”プレイヤー”がリブルームをプレイしており、ここ「アズライトショップ」でもそれは変わらない。

 アズライトショップは美人女性店長である月上アズライトさん(二十七歳、独身、彼氏募集中)の経営する個人ショップ。

 土日以外は開店が子供達の下校時間に合わせてか午後からになっているおかげで、私としてもバイトしやすいのが非常に助かるところ。

 あの後色々と作業をしながら時間を潰し、少し遅めに昼食を取ってから出勤した。

 

「はーい、じゃあ今日もショップ大会やっていくよー」

「わー!」

 

 んで、今日は平日ショップ大会の日。

 私にバイトの依頼が来たのは、この進行をやってもらいたかったから。

 この世界はカードゲームがとにかく盛んなため、平日の午後でもショップ大会が行われている。

 そしてショップ大会進行はジャッジも業務に含まれるため、普通のバイトじゃできない。

 専門の資格がいるんだよね。

 アズライトショップでそれを持っているのはアズライトさんと――ヘルプとしてたまに入る私だけ。

 子供達の楽しげな歓声を聞きながら、私は慣れた手つきで進行を進める。

 今日のルールはスイスドローのダブルエリミネーション。

 基本的にバトルはテーブルで行われる。

 遊戯王の王国編で出てきたような感じの、テーブルの上に立体投影を行う技術でモンスターが浮かび上がり、大迫力のバトルが繰り広げられるのだ。

 

「おっしゃあ、行けぇ! 『ドリームフレイム・ドラゴン』!」

「……っく、参りました」

 

 んで、今は決勝戦。

 いかにも熱血主人公っぽい子と、クールなライバルっぽい女の子が戦い――そして決着がついたところだ。

 

「決まったね。勝者遊田(ゆうだ)フレアくん。優勝おめでとう。篠木(しのぎ)アイスちゃんも惜しかった!」

「っしゃあ! ありがとなー、ドロアねえちゃん!」

「……次は負けないわ」

 

 フレアくんとアイスちゃんは因縁のライバル、常にしのぎを削り合っている。

 

「これで1016勝1015敗! 俺のほうがつよいってことだ!」

「……明日には私のほうが強くなってるから」

 

 ふたりとも小学生ということもあり、たいへん負けず嫌いだ。

 私としても、二人のライバル関係は見ていて微笑ましいので、どんどんやってほしい。

 まぁ――

 

「……ドロねえ、私と修行して」

「え、私?」

「あ、ずるいぞ!?」

 

 ――私もその渦中に巻き込まれる事が多いんだけど。

 

「俺だってドロアねえちゃんと戦いたい!」

「いいでしょフレア、あんたは勝ったんだから。これはあんたに勝つための修行なんだから、私と戦うべきよ」

「え、えーっと、私まだバイト中だからぁ……」

 

 と行って、店のカウンターでオリパを作っているアズライトさんに視線を向ける。

 するとアズライトさんは「今日のバイトはショップ大会の進行だけだから、終わったら上がっていいわよ」と視線で返される。

 ってことは……やるしかないかぁ。

 ま、私としてもこういうのは嫌いじゃないけどね。

 とか思っていると――

 

「……ん?」

 

 ふと、私はあることに気づいた。

 それは、ショップの外から誰かがこっちを覗いているということだ。

 なんだか、寂しそうにこっちを見ているから、私はそんな彼女に思わず声を掛ける。

 

「――ねえ君、君も混ざらない?」

「……ドロねえ、誰に言ってるの?」

「え、あの子だけど」

「あ、ホントだ……なんで見てるだけなんだ?」

 

 どうやらフレアくんやアイスちゃんは気づいていなかったようで、私の指差す方に女の子が一人いることにようやく気づいたらしい。

 三人で入口の方へと向かう。

 

「え、あ……なん、で……」

「なんでも何も、そんなに寂しそうにしてたら、放っておけないじゃん」

「そうだぞ。見てるだけなんてもったいないぜ!」

 

 そうやって、女の子を店の中に招き入れる。

 

「で、でも……」

「――きっと楽しいよ」

「え……」

「だって、カードゲームなんだから」

 

 私はためらう女の子に、そう呼びかけた。

 これは、本音。

 この世界に生まれてから、ずっと私は楽しく生きている。

 カードゲームがあるからだ。

 そしてこれからも、きっと楽しく生きていく。

 

「……行こっか!」

「……う、うん」

 

 楽しいことだけをして、生きていくのだ!

 

 

 □

 

 

 札山ドロア。

 彼女の暮らす「御札市」において、その名を知らない人間はいない。

 容姿に優れ、この街一番のカードショップ「アズライト」でジャッジを務め、有名カード教室では臨時講師もしている。

 言うなれば、街の看板娘。

 何と言っても、子供達からの人気がすごいのだ。

 理由は単純――強いから。

 カードゲーム至上主義のこの世界において、バトルに強く、容姿端麗で、子どもに優しい。

 そんな存在が、魅力的でないわけがないのだ。

 

 何より、彼女はただただ生きることを楽しんでいる。

 楽しいことしかしたくないということは、毎日が楽しくて仕方がないということだ。

 だから、()()()()()()少女に、ドロアはあまりにも特効である。

 

 沈黙霊(サイレント・ゴースト)

 それが、今回ドロアが声をかけた少女だ。

 その特性は、「人の寂しさの集合体」。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、という特性を持つ少女である。

 本来ならこの沈黙霊は、人々の寂しさを吸って大きくなるはずだった。

 そしてフレアのような主人公気質のプレイヤーと出会い、一度は仲良くなるものの正体が判明して沈黙霊がプレイヤーを拒絶。

 最後は自身の起こした事件の責任を取って消滅する――はずだった。

 

 

 が、その未来は今、なくなった。

 

 

 寂しさを感じないドロアが、少女を見つけてしまったから。

 ドロアはこのように、周囲の運命を大きく変えてしまうのだ。

 ついでに性癖も。

 ――かくして、今日もドロアはカードゲーム世界を生きていく。

 周囲のあれやこれやをしっちゃかめっちゃかにしながら。

 楽しいことだけをして、生きていくのだ。




TSいいよね、カードゲームいいよね、好き勝手生きたいよね……
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