カードゲームだけして生きていけば良い最高の世界にTS転生した 作:ティーカー
私がこの世界に産まれて二十年と少し。
その間、私はかなり好き勝手生きてきたと思う。
小中高とカードをしばくことばかり考えて生きてきた。
両親が優しい人で、学校の成績と普段の生活態度がある程度ちゃんとしていれば、何も言ってこない人でなければ、私はもっと不自由な生活を送っていたはず。
ただ、大学を卒業したあと。
一人で社会を生きていくとなった時、私はどうしても進路に困ってしまうのだ。
カードゲーム世界でカードに関わって生きていこうと思うと、複数の手段が考えられる。
まず第一に挙げられるのがプロになること。
プロ資格と呼ばれる資格を試験を突破して入手し、企業所属としてプロリーグに参加するのだ。
一応私も、プロ資格はもっている。
しかしそれでプロになりたいかと言われると、答えは否。
まず企業所属ってのがどうしてもね、自由が少なくなるからね。
加えてプロは死ぬほど忙しいから、気ままな生活も送れなくなってしまう。
最強の称号に興味がないわけじゃないけど、アマチュアでも参加できる世界規模の大会があったらそれに参加するくらいで、私としては十分かな。
次に悪のプレイヤーを倒す正義の味方になること。
一般的には「ヒーロー」と呼ばれる職業だ。
文字通り、警察だったり個人だったり、探偵だったり秘密組織だったりする人たちが日夜悪と戦っている。
こちらも資格が必要で、それも私は取得しているけど使ったことはあまりない。
事件に巻き込まれた時色々スムーズだから持ってるだけの資格だし、私はあまり事件に巻き込まれない体質みたいだからな。
他にもカードショップの店員や店長、カード塾の講師、カード博物館の職員など色々方向性は存在する。
中にはカードを制作する会社に就職するという選択肢もあるだろう。
でも、どれもこれも定職につくってことなんだよな。
前世でひたすらブラック企業に疲弊させられた身としては、ホワイト企業にすら就職したくない。
定職にもつかず、プロやヒーローにもならないとなると、次に考えられるのはカードアイドル。
文字通り、プレイヤー兼アイドルとして活動するのだ。
特に配信者なんかは、時間にある程度融通が利くしいいかもしれない。
私の容姿もあいまって、やってみないかと声をかけられることは多いというのもある。
だけど、私は人前に立ちたいわけではない。
ネット社会で顔を晒したら、逃げ場がどこにもなくなるじゃないか。
せめてVのモノくらいの匿名性は欲しい。
というか、一応Vのアバターはもっている。
でも、それを軸足にしたいか、というと話はまた別。
あれもやりたくない、これもやりたくない。
じゃあ、どんな方法で私は稼いでいきたいんだ?
カードに関わるだけなら、方法は無数に存在する。
その中で私は考えて考えて――一つの結論に行き着いた。
それは――
□
その日、私は完全に自室に引きこもっていた。
「時、できる。場合、できる」と印字された自作Tシャツに身を包み、カタカタとパソコンで書き物をしているのだ。
というのも、これが私の本業というやつなのである。
ライターというやつだ。
そう、顔出しをしたくなくて、名前も出したくなくて、定職にも就きたくない。
そんな私に取って最適な職業がwebでライター業をすることだった。
カードゲームとなんの関係もないのでは? と思うかもしれないがそんなことはない。
むしろカードゲームと大アリだから、喜んで私はライター業をしているわけ。
「えーと、今日のテーマはやっぱりこれかな。悪のプレイヤー組織『ダイアーク』のまとめ記事」
私が普段遊んだり仕事をしている最中に考えて適当にまとめたネタ帳の中から、一番良さげな記事のネタを選択する。
私が記事にするのはその全てがカードに関わることだ。
最近話題になっているカード関係の時事をネタに、色々と語るってのが趣旨。
どこかの情報サイトに原稿を出しているわけではなく、個人サイトに記事を出して広告収入と有料記事で稼ぐのが私流。
いや、昔は情報サイトに記事を書いて原稿料をもらってたんだけど、最近は個人サイトの広告収入だけで食えるようになっちゃったからね。
これでも人気のインフルエンサーなのだ、私。
「ダイアークは、子どもたち相手にいたずらと称して嫌がらせを行う悪質な悪の組織である。
ダークバトルによるプレイヤーのカード化や強制アンティによるカードの強奪は行っていない。
しかし、いたずらを仕掛けてバトルを強要し、さらに使うデッキもいわゆるロックデッキであることから、子どもたちには嫌われている」
記事の内容はさっきも言った通り時事ネタがメインだ。
だってこの世界、あまりにカードゲーム系の時事ネタが多いから。
今回私が話題に上げている『ダイアーク』だって、世間に認知されたのは一昨日のこと。
その直前に私は『アクアーク』という組織が、地元小学生プレイヤーに倒されたことを記事にしたばかりだ。
おかげで、私みたいなカードに関する記事でバズってインプレションを稼ぎ、収入を得ているインフルエンサーは多い。
そして記事にする内容をえり好みできるからこそ、私は自分の記事にある制約を課していた。
「ダイアーク自体は、大人からすれば”またこの手の組織か”と思うことだろう。実際、強制アンティ等のダークバトルが発生していない分、あまり注意してその動向を観察する必要は無いように思える。
多くの場合はそのとおりで、たいていこういう組織は子供達によって運営されている事が殆ど。
別の子どもが親玉を討伐し、いつの間にか解決していることが多い。
しかし私はここで一定の警鐘を鳴らしておきたい。そういった子どもだけで運営されている悪の組織は悪のプレイヤーが関わっていない方が後々危険なことがあるのである」
それは端的に言えば
今回のダイアークの件、言ってしまえば子どもの微笑ましいいたずらである。
中にはダイアークを完全にネタ組織として扱っている記事も多く、そういった記事はかなり人気だ。
実際、ただインプレッションを稼ぐだけならそういうネタ記事を書いたほうが受けはいい。
でも、この世界は本当にカードに関する事件が多いから、えり好みができるんだよね。
「悪のプレイヤーが関わっているということは、それがこの事件の黒幕だ。しかし関わりが見えてこないということは
無論、そもそも悪のプレイヤーが関わっていない場合もあるだろう。子どものいたずらが行き過ぎてしまったという可能性は確かにある。
だがその場合、彼らの使用するデッキがロックデッキであるということが問題だ」
考えてみてほしいんだけど、もし仮にこの一件をネタとして扱った後にもっと大きな事件が起きてしまったら?
ネタじゃ済まなくなる、人気インフルエンサーだったら炎上待ったナシだ。
そして私は自慢じゃないが、そういった炎上を避けるのが得意である。
前世で培った、ホビアニに関する知識が豊富だからだ。
今回の一件も、普通に考えたら子どものいたずらだと思えるような内容に、ある違和感を感じたのである。
「ロックデッキは、基本的に子どもが好むデッキタイプではない。相手の行動を縛ることを目的としたデッキだからだ。だが、それ故に子どもからのヘイトを稼ぐのに有効で、私にはダイアークが
もし仮に悪のプレイヤーが関わっていたら、という話になるので、これが杞憂であればいいのだが」
そうやって、私は比較的真面目で堅い記事を書いていた。
無数にある時事ネタの中から、話題にできそうなものを選んで書く。
文字数は大した文字数ではないし、話題には事欠かない。
これでインプレッションが結構稼げて、喰っていく分には困らないのだから本当にありがたい話だ。
何より
特に悪の組織に関する記事を書いてほしいというリクエストは多く、一体誰がリクエストしてるのかは知らないけど、向こうから話題を提供してくれるのは面倒くさがりな私としてはありがたい話だ。
主人公のTシャツはとんでもない枚数あるぞ!