カードゲームだけして生きていけば良い最高の世界にTS転生した   作:ティーカー

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5 たまにはVのモノ

 私もVのアバターは持ってる、って話は何回かした。

 だけどなんで持ってるかと言えば、前世と比べてあまりに手軽に手に入るからだ。

 なにせこの世界は立体投影など様々な技術が前世と比べて発展している。

 キャラクリみたいにアバターを作ることも可能で、私のVとしてのアバターもそれ仕様だ。

 名前はドロシー、ドロアの捩りだ。

 安直だけど、わかりやすさって大事だからね……

 

 そんなドロシーは、登録者数は十万ちょいのVの者。

 個人配信者としては多いが、荒見フラット先生は登録者数百万人超えの配信者なので、上には上がいるって感じ。

 というか、私の配信頻度は本当に少ないので、配信頻度に比べたら破格といえる。

 数カ月に一回とかだからね。

 大学を卒業してからは環境が変わったのもあって、殆ど配信してなかったな。

 もしかして、前回配信したの……半年くらい前かもしれない。

 

 そんな状況で、私はフラット先生と配信をすることにした。 

 配信中にカードバトルをして、新たなカードを創造するためだ。

 何を言っているのかと思うかもしれないが、バトル中にカードを創造するとかよくあることだから、何も問題はない。

 余計わからないって? まぁ、そこは……フィールで感じるんだ。

 

 

 □

 

 

 ――その日、個人配信者ドロシーのファンに激震が走った。

 ドロシー半年ぶりの配信。

 しかも内容はコラボ配信。

 相手はあの荒見フラット!?

 荒見フラットと言えば、SNS上に顕現した創作の中の締め切りに追われる漫画家キャラの擬人化にして、全身撮れ高の配信者人間。

 登録者数百万オーバーの超有名配信者。

 以前からドロシーとフラットに交流があるという噂はあった。

 しかしそれが事実だと判明した上に、いきなりコラボ配信ともなればドロシーファンの衝撃は計り知れない。

 内容はカードバトル配信という()()()()()のものながら、ドロシーファンが幻想(ユメ)を取り戻すには十分だった。

 

 あるものは、戦闘機の訓練中その事実を知った。

 即座に帰還した彼は上司に今日の早退を告げる。

 

「なんだと、なんのためだ!」

「配信を見るためです」

 

 毅然と言い放ち、上司に背を向けた男に、上司は困惑混じりに叫ぶ。

 

 

「まるで意味がわからんぞ!」

 

 

 またあるものは、自慢のバイクが完成した直後にその事実を知った。

 

「邪魔はさせない……俺達が配信を見るまで――」

 

 そしてバイクにまたがり、宣言する。

 

「行くぞ、黒外!!」

 

 直後。

 

 

「うるせー!」

 

 

 ちゅどーん。

 

「黒外ーーー!!」

 

 突如として現れた悪のプレイヤーにバズーカで吹き飛ばされた。

 

 かくして、世界中のドロシーファンが配信サイト「CardTUBE」へと集まり――配信は始まる。

 

 

 □

 

 

 この世界の配信は、電脳世界で行われる。

 なんかこう、メタバース的なアレが更に発展し、気軽に誰でもVRの世界にフルダイブできるようになったのだ。

 私とフラットちゃんも、自身のアバターで電脳空間にアクセス。

 配信枠を通して、視聴者の前に姿を現す。

 

「というわけで、お久しぶりでーす! ドロシーだよ!」

「は、始まってしまいましたわー! おはおはですわ! 漫画家で配信者の荒見フラットですわー!」

 

 私達が今いる場所は電脳空間のスタジオ。

 現世の姿を一旦忘れて、仮想の姿に変身したのが今の私。

 といっても髪の色とかは基本そのままで、髪型とか雰囲気をちょっと変えた感じ。

 服装は大胆に変化してるし、髪型も普段のストレートからツインテに変えてるけど、それ以外はだいたいドロアのままだ。

 それだと現実で身バレするんじゃ、と思うかもしれないがこの世界じゃ白髪青インナーはありふれた髪色だ。

 なので身バレはそうそう起こらない。

 起きても一部の人には何故か認識されなかったりするしね。

 

『フラット先生原稿して』

「してますわ! 実はドロシーちゃんとは以前から仲良しで、原稿を手伝ってもらってたのですわ! 今回とある事情から必要にかられてバトルをすることになったんですわー!」

『そんな事ある?』

 

 ドロシー、つまり私とフラット先生のつながりは噂レベルだった。

 いきなりその噂が肯定されたかと思ったら、更にはフラット先生の漫画のアシスタントまでやってるんだから、視聴者としてはびっくりだろう。

 

「まぁまぁ、今回こうやってフラット先生とバトルすることにしたのは、フラット先生が行き詰まってて気分転換をするためって理由もあるんだよ」

「そうだったんですのー!?」

『フラット先生が驚いてて草』

 

 まぁそこら辺の理由はついでだから。

 そもそもこういう時フラット先生が気分転換になるかって、その時次第なんだよ。

 いい感じに気分転換出来る時もあれば、できないときもある。

 でも人間ってそもそも気まぐれな生き物だから、それが普通だよね、とは思う。

 ここで敢えて説明したのは、視聴者が納得しやすい理由を提示するためだからな。

 

「んじゃ、早速始めるよフラット先生!」

「わ、わっかりましたわー!」

『そういえばドロシーちゃんのバトル初めて見るな』

『どんなデッキ使うんだろ』

『ふふ、そうかドロシーちゃんがデッキ使うところをみるのは初めての新人か……殆ど配信しないから、知らないこともあるよね。俺はドロシーちゃんの配信を見続けてすでに三年になるんだけど初めて知ったよどんなデッキ使うんだよ』

『草』

 

 と思っていたら、なにやら私の使用デッキで盛り上がるチャット欄。

 言われてみると表舞台でドロシーとしてバトルしたことないな私。

 まぁ、もうすぐ始まるんだし、すぐに分かることだろう。

 

「ふふふ、どうやら皆様ご存知ないようですわね! ドロシーちゃんのデッキは……とっても可愛いのですわ!」

「え? そう?」

 

 プレイボードを構えて、デッキに視線を落として思う。

 いや、このデッキは――あ、もしかして私の普段遣いのデッキの話してる?

 まぁいいや、ここはフラット先生にいい感じに三味線引かせたほうが撮れ高になるだろう。

 天然のフラグ建築能力は、さすがフラット先生。

 何にしても、私達は――

 

開花(ブルーム)!」

「開花、ですわぁ!」

 

 バトル開始の合図を口にした。

 初期手札は五枚、先行はドロー不可。

 そして先行は私だ。

 手札から、早速最初のカードをプレイする。

 

「ふふふ、お見せくださいまし! ドロシーちゃんの可愛い可愛いモンスターを!」

「私は『デビルキメラ・ハウンドドック』を場に!」

「……はえ?」

 

 私が普段使うモンスターを呼び出すと思っていたフラット先生が、間抜け面を晒す。

 チャット欄にも『草』が大量に生えてきていた。

 私が呼び出したモンスターが、若干悍ましいよりのモンスターなのだから当然だ。

 

「あ、あのー……ドロシーちゃん? ドロシーちゃんってそういう趣味の方でしたっけ?」

「あはは。冷静になって、今回私達が配信してる理由を思い出してみようか」

「……あっ!」

『あ、この「デビルキメラ」モンスターって、今フラット先生の漫画に出てるカードじゃない?』

 

 そういうことだ。

 今回、私は漫画で発生したミスを何とかするためにバトルをしている。

 そのためには、このデビルキメラデッキを使わなくてはならないのだ。

 どうして持ってるかって? 私、前世の頃から新しいデッキをいっぱい組むのが好きなタイプだったので……

 

『つまり今回の配信はフラット先生の気分転換をしつつ、漫画で使ってるデッキを実際に回すことでフラット先生のアイデア出しも手伝おうってわけか』

『ドロシーちゃん有能』

 

 他には、カードを創造するためにはバトルで発生するエナジーを利用する必要がある。

 お祭りが盛り上がるとなんかカードが出来上がる、この世界だとそれが常識だ。

 配信はそのために、最適なプラットフォームというわけ。

 フラット先生にとっては気分転換とアイデア出しとカード生成による帳尻合わせ。

 視聴者にとってはバトルが見れて楽しい。

 皆にとってもフラット先生にとってもお得なバトルというわけ。

 じゃあ私の場合は?

 これはとっても単純で――

 

「ふふふ、初めて他人相手にデビルキメラデッキ使える……楽しい!」

「ドロシーちゃんがなんだか怖いですわぁ!」

 

 今までずっと一人回しでしか使ってこなかったデッキを、実戦投入できるってことだよぉ!

 というわけで楽しくデッキを回しつつ、辻褄合わせのカードの生成にも成功。

 たまにだったら、こうやって配信するのも悪くないかなぁ、などと思うのだった。




割と気軽にブルーエンジェルみたいなことが出来るようになると思うんですよね、こういうカードゲームの世界。
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