カードゲームだけして生きていけば良い最高の世界にTS転生した 作:ティーカー
私、一応プロプレイヤーとしての資格を持っている。
という話は以前したと思う。
プロっていうのは、試験に合格すれば誰でも資格だけなら持つことが出来る。
そこから企業に所属してプロリーグと呼ばれるリーグに参加することでプロとなるのだ。
リーグは世界各地に色々あり、特殊ルールで運営されるリーグもあったりする。
バイクにのったり、タッグで戦ったり、チームで戦ったりするのだ。
だからまぁ、案外プロ資格は持ってるけどプロではないって人は結構いるんだよね。
何だったら、就職に有利だからって理由で資格だけ取る人もいるくらい。
アズライトさんもそうだし、フラットちゃんもプロになるつもりはないけど資格は取る予定だそうな。
フレアくんとアイスちゃんも何も言わなくても取るだろうし、私の知り合いはプロ資格をとりあえず取りそうな人が多いな。
そして当然だけど、実際にプロの知り合いもいる。
んで、プロ資格を持ってるとそんなプロの知り合いから、とある事を依頼されたりするのだ。
□
「いけー! 『ドリーム・フレイム・ドラゴン』!」
「ぎゃー!」
その日、私はフレアくんとバトルをしていた。
土曜の昼下がり、バイトではなく一人の客としてアズライトショップにやってきているのだ。
目的は言うまでもなく、ショップ大会に参加するため。
平日の大会はジャッジをしていることのほうが多いけど、土日はプレイヤーとして参加するのだ。
アズライトさんが終日いるから、バイトの募集が出されていないというのもある。
「はーい、それじゃあ今回の大会の優勝者はフレアくんね。おめでとう!」
「よっしゃー!」
「ぐぬぬ……」
「ドロねえ……私の分まで戦ってくれるって言ったのに……!」
そして私は、決勝でフレアくんに負けていた。
いやぁ普通に負けちゃったよね、さすが熱血主人公タイプ。
準決勝で私がアイスちゃんとぶつかって勝利したことで、アイスちゃんに負けないでと言われていたんだけど。
約束は果たせなかったよ、ごめんね……
「それにしてもドロアねえちゃん、また新しいデッキ組んだのか?」
「そうだよー、こないだパーツが揃ったから組んでみたの」
「ドロねえ、いっぱいカード買い集めてるものね」
「大人の余裕ってやつさあ」
んで、今日の私は新作デッキを大会に持ち込んでいた。
前にも話したけど、私はとにかくデッキをいっぱい組むタイプだ。
前世では汎用カードがとにかく足りなくて、一部のデッキはなくなく採用を諦めたり、汎用パーツだけ引っこ抜いて機能不全になったデッキがごろごろしてたなぁ。
この世界だと、金に物を言わせてカードを集めているから、パーツにこまることはないけど。
「っていうかさ、ドロアねえちゃんってどうやってそんな複数のデッキを使いこなしてるんだ?」
「そうそう、それは気になる。普通デッキって複数使い回せるものじゃないし」
「ああそれは私が――」
と、そんな時である。
ばぁーん、とカードショップの扉が開かれた。
「お邪魔するでござる!」
入ってきたのは、一人の忍者だった。
くノ一である。
ちょっとぴっちりした忍者っぽいスーツに身を包み、口元をマフラーで覆った女性。
サムライとかニンジャがしてそうな跳ねっけのある黒髪ポニテ。
ニンジャなのに店内に響き渡るような声で入ってきたのは――
「――ラピス、もう少し静かに入ってきてちょうだい」
「スマンでござるアズライト。しかし久々のアズライトショップ故、拙者少し気が高ぶってしまったのだ」
忍川ラピス。
アズライトさんとは幼馴染の関係にある忍者だ。
「あ、ラピスねえちゃんだ! こないだの大会見てたぜ!」
「ラピス
「うむうむ、フレア殿とアイス殿も壮健そうでなによりだ!」
んで、この人が知り合いのプロプレイヤー。
何を隠そう、先日とある大規模大会で優勝を飾った、世界トップクラスのプロの一人なのだ。
見た目はただの忍者の格好をした変な人なんだけど、バトルの腕だけは確かである。
……私が失礼なことを言っているのは、この人に家の片付けをバイトとして頼まれて後悔したことがあるからだぞ。
「お、ドロアもいるではないか。見たところ、ショップ大会に出ていたのか?」
「そーですよラピスさん。まぁフレアくんに負けちゃいましたけど」
「なんと! ドロアにかったのかフレア殿! これは将来が楽しみだ!」
「そうだぜ! ま、今日のねえちゃんは新作デッキだったけどな!」
当然ながら、デッキというのは使い込んで練度を上げていかないと行けない。
どれだけ強いプレイヤーでも、効果すら把握していないデッキを握って常勝不敗は不可能だ。
なので私は、デッキを組んだ直後が一番弱い。
一番使い慣れたデッキを使えば、フレアくんにだってラピスさんにだって負けないぞ。
「――もしや、使ったデッキは『ドレスドローン』デッキか?」
「あ、鋭いですね。先日の大会でラピスさんと対戦した相手のデッキだから組んでみたんです。なかなか面白い動きしますね」
「ふむ……」
そう、ちょうど大会の中継を見ていてこのデッキのカード私も持ってるな……と思って倉庫から引っ張り出して組んだのだ。
んでラピスさんは難しそうな顔で腕組みをしている。
こうなると、この後の展開は何となく読めるというものだ。
「……やりますか? スパーリング」
「良いのか?」
「いつも通りでよければ。アズライトさんもいいですよね?」
「いいわよぉ」
「恩に着る。実はこのデッキの使い手ともう一度戦うことになっているのだが、そやつが悪の手に堕ちている可能性があってな」
要するに悪落ちしている相手ともう一度戦う可能性がある、と。
それはアレですね、敗北フラグですね。
前回と同じと舐めてかかって敗北するのは、こういう場合のお約束みたいなところがある。
もし負けたら私かフレアくんかアズライトさんが敵討ちすることになるんだろうなぁ。
ともあれ。
「では、いざ尋常に」
「お願いします」
「おお、楽しそうだなアイス!」
「あんまり興奮しないの」
私はこれから、ラピスさんとひたすらスパーリングをすることになる。
具体的には――
嬉しいことに、これには報酬が発生する。
なにせ私は資格を持っているプロだからね、そんな相手に対局を頼むと指導料が取られるのは、前世の将棋や囲碁の世界と変わらない。
頼んでいる側もプロだけど、私には私にしかできない付加価値みたいなものがあるからね。
相手の求めるデッキを回せるという付加価値が。
普通、この世界の人間は一つのデッキを使いこなすものだ。
新しいカードを手に入れたりして、デッキに変化が発生することは多々あるけれど、複数のデッキを使いこなすプレイヤーは数少ない。
私が、その数少ない例外ってわけ。
「ふふふ……やっぱり楽しいね……新しいデッキを思う存分回す感覚は……!」
「拙者としても、ドロアが仕上がっていくのを肌で感じるのはなかなか面白いぞ。使っているデッキが『ドレスドローン』なのは気に入らぬでござるが……」
「そこは妥協しなよ……練習のために握ってるんだからさ……」
「しかし……しかしだ……!」
そんなこんなでバトルをしながら、何やらラピスさんが悔しそうに零す。
「闇落ちした挙げ句に拙者をカマセにするなど……許せん……
――と。
「だいたい、何が”あなたは深淵を知らない”でござるか! 解った顔で不幸自慢など、目立ちすぎていて片腹痛い! 拙者こそがこの世で最も目立つプレイヤーなのだ。あんな小娘ごときに見せ場を譲ってなるものか!」
実はこのラピスさん、とにかく目立ちたがり屋なのだ。
だからこうしてプロになったわけだし、今も目立つために努力をしている。
その姿自体は、決して間違ってはいないと思う。
だけど、それはそれとして、言いたいことはある。
目立ちたいんだ……忍者なのに――
しかしその矛盾を、今まで指摘したものはいない。
私も指摘したらどんなバグが発生するか怖くて、指摘できないでいるのだった。
目立ちたがり屋の忍者と死ぬほどいっぱいデッキ持ってる系TSお姉さんです。