後書きにマリーの立ち絵のっけておりますんで良ければ見てってくだせぇ。
「昨日のみんなの様子から何か関係あると思ったんだが……」
「メリッタさんとかあのあともすげぇ吐いてたし。」
……それはいつも通りか。
俺は昨日みんなが俺の魔法(呪い)を見てからの異常な反応は、自分の呪いが彼女らに何らかの影響を及ぼしたと考え、術式の見直しを進めていた。
俺の魔法()は呪いを魔法の術式に無理矢理押し込んだ結果の産物だ。
本来魔力を通す道に異物をドバドバ流し込んでいるような物なので、正直、何が起きても不思議じゃない。
だがまぁ、何度見直しをしても今回使った魔法による影響は無い事がわかった。
まぁ実際今までもずっと見直しはしてきてたし、術式に異常が見られないこと自体は良いことなんだが…
「コレクションしてる呪物もまだ気づかれてないし、そもそも、みんな呪いは効きにくいはずなんだがな..」
そもそも、呪いは魔力に近い性質を持ってはいるものの、魔力とは反発し合うという特性がある。
そのため、潜在的な魔力の量によってはまず呪いは完全に弾かれるため保有する魔力の量が多ければ多いはそもそも感知することすらできなかったりする。
うちのパーティメンバーはみんなこのタイプだ。
そして、もし呪いにかかったとしても、後天的なものなら光魔法――つまり『光の属性を持った魔法』による治療で解呪出来る。
原理はわからん。
それに加えて、すべての生き物が基本魔力を生まれ持って生まれてくるこの世界では、微弱な魔力でも持っていれば、呪いと反発し『芯』まで到達するすることは少ない。
先天的に結びついたものの解呪は難しい…っていうか、普通はそんな状態で生まれてきたら赤子の免疫力では一年も生きられないし、そもそも前例が無いから治療法が確立されてもいない。
俺?――俺は…頑丈なのだけが取り柄だったからね、うん。
そんなこんなで普通の人間以上に呪いと付き合っていくうちに、俺にはいつからか
原理はよくわからないが…光魔法でも取り除けないような『芯』に到達しかけた呪いでも俺のならある程度は剥がせる。
――まぁ、剝がせるだけで解呪はできないからもれなく俺が『預かる』ことになるんだが…
とはいえ、いくら治療法があると言っても、呪い自体の研究が未だ進んでおらず、光魔法以外の対処法は確立されていない。
その上光魔法も使い手が少なく、扱えるシスターがいる教会が遠くにある場合はそこまでは足を運ばなければならない。
そして『芯』まで到達していない呪いでも、かかればそれなりに身体の調子を崩す。教会に向かう所を待ち伏せしていた魔物に奇襲され命を落としたり、精神的なトラウマを植え付けられる人も少なくない。
「みんな俺の呪いの事は知ってるけど、よく考えなくても俺の存在って脅威でしか無いからな……。」
実際昨日がみんなにとっては魔法として可視化された呪いを見るのは初めてだった訳だし…聞くのと見るのじゃやっぱり大分差があるのだろう。
それにあの取り乱した様だ。俺の呪いが人に移らないとはいえ、みんなにとって何かしらかの精神的なトラウマを想起させるものなのは確かだろう。
だが、そうだとしたら…
「…どうしてパーティ離脱にあんなにも否定的なんだ?」
星の数ほどいる荷物持ち達の中からわざわざ俺をパーティにおいておくメリットなくない?!
何がみんなをそうさせているんだ?
「思えば、みんなについてなにも知らないからな……そこに理由がある...のか?」
いやしかし、下手にそれを聞いて余計にみんなに嫌なことを思い出させたくないし…
悟られないようにさり気なく聞ければ…いや、駄目だ。俺こう言うの苦手なんだよなぁ。それに、みんな勘が鋭いし呪いの研究を隠し通すので精一杯の俺にはとても務まらない。
「…さすがに、これ以上迷惑かけられないよな。」
流石に若い女の子達に養ってもらうのは前世換算だといい歳した大人の俺には厳しいって。
まずは自分が今できることを考えるんだ。
俺にできる事は名をあげてみんなに恩を返す前に、まず自分が一人でももう大丈夫だと安心して貰う必要がある。
そして、安心してもらうためにはまず――
「数日この街を留守にして、隣町のギルドで冒険者資格を取りに行くようにするか…」
「なんで~?」
「最近は荷物の多くなる遠征の依頼も無いし、隣町のギルドで資格取りに行くって名目で数日開けて、落ち着いて話が出来るようになるまでに独り立ちの準備を進めようかなぁーって。」
まぁ、今日は本来なら、呪い魔法のお披露目の後初の魔物との実戦を交えてみんなに納得してもらおう、と思っていたが…なんだか私、凄く嫌な予感がします。
ということで、隣町の『地方都市マキナ』でこっそり資格を取ってこようと考えた。
なんでも地方都市マキナの冒険者資格試験は特殊らしく、面接、テスト、基本教習無し。審査基準は実戦のみ。かつ、成績によっては最初から高ランク帯も目指せるという魔法の適正を求められないというまさに俺の為の試験、といっても過言ではないようなものらしい。
「まぁ本当なら、往復で数日くらいかかるから先にパーティを抜けてから取りに行くつもりだったんだが…」
でも、ここで高ランクの冒険者資格を取れれば、みんなも俺の独り立ちを認めてくれるかもしれないし。
「ふーん。」
「…、…うん?」
振り返ると、ドアの前にパーティの3人が全員勢揃いしていた。
お、とっと。
「―――!?」
「おはよ。」
「おはようございます。」
「おはよう。」
「お、おはよう、えーと――」
「私達は、今来た所。」
一体いつから!?、と口に出す前に寝巻姿のままのハロが答える。
「うん。そしたら、難しい顔して突っ立ってたから、声かけちゃった。」
「あ、あ〜そうか。昨日の今日で会いに行くのはどうかと思ってたんだが、わざわざ会いに来てくれたって事は、もう体調は大丈夫なのか?」
念のため昨日の夜に気絶した3人を教会に運んでシスターに見てもらっていたので、身体の方が大丈夫なのはわかっているが、、、
「あ、うん、みんな何ともないよ。」
「そうか、本当に良かった。」
「…うん。」
「……はい…。」
しばらくの沈黙の後、マリーが恐る恐る切り出した。
「昨日はいきなり取り乱しっちゃったから、今日は、その、謝りに来たの。.....昨日はごめんなさい。」
「私も、本当に…ごめんなさい。」
「ごめん。」
マリーに続くように後ろの2人も同時に頭を下げる。
「あ、ああ!ぜ、全然大丈夫だ!気にしてない!――むしろこちらが謝るべきだ、あの時はいきなり過ぎたし、すまなかった。」
「そんなことは…」
「イズルは何も悪くない。」
「私たち、昨日の夜起きてちゃんと話し合ったの。本当に私たちのパーティから抜けたいなら、止はしないって。」
「......。」
「で、でも、私たちに迷惑をかけるのが嫌だとか、そういう理由なら、あなたのパーティ離脱には賛成できない。」
「…それは――」
「あ。――それとも、私達と一緒じゃ、嫌?」
「え?嫌なわけじゃ、ただ――」
急にみんなの顔が曇り始める。
「あ、やっぱり、そう…だよね。私みたいなのじゃ頼りないよね、ごめんなさい、でもすぐに強くなるから!嫌、見捨てないで…」
「お願いします。あなたしか、、、あなたしかいないんです。お願いします、お願いします、―――どうか。」
「私、嫌なところ治すし、何でも言うこと聞く。だからお願い、…いかないで。」
急にマリーが頭を抱えだしたのと同時に、ハロは爪を噛みながら震えだし、メリッタさんもその場にへたり込んでしまった。みんなの様子が…みんな目の焦点が合ってないし、そのままじりじりとにじり寄ってくる。今までこんなこと一度も、―――え、なに!?ちょ、怖い、、怖いって!?
「わ、わかった!お言葉に甘えて、もうしばらく世話になるよ。」
普通はこちらがの方から頼み込むようなことんだが…
「―――本当!?ねぇ。本当?、イズル!」
「私のぜんぶ、あなたの為に。」
「絶対、後悔、させない。」
「みんなっ?!ちょっと、近い近いって!?」
みんな一体どうしてしまったんだ!?
........。
「......昨日に続いて今日も、ごめんね…」
しばらく騒いだ後、マリーがふとこちらに向き直って申し訳なさそうに人差し指で頬をかきながら話かけてくる。
「あーいや、全然気にしてないよ。むしろみんなにこんなにも思ってもらえてるなんて思わなかったヵら、ちょっと嬉しいよ。」
「えへへ…」
「まったく。これだからリーダーはいつまで経ったっても背が――」
「――うん?」
「ひぇっ。」
「まぁまぁ。マリーちゃん落ち着いて…あと、ハロちゃんも。身体だけがすべてでは無いですからね〜」
「.....うん。確かに身体だけが全てじゃない。」
「まじまじと私を見ながら言わないで下さい。」
「――あ、そうだ。イズル。」
「どうした?マリー。」
「いやー、ちょっと聞きたいことがあったの思い出しちゃって」
「なんだ?俺にわかることなら何でも聞いてくれ。」
「そう?それじゃぁ――」
「『呪物コレクション』について、洗いざらい吐いてもらえるかな〜???」
マリーの目がガン開きになる。
――あ。ッスーーーー。
「私前に言ったよね?
だ、だって、それマリーさん絶対呪い払っちゃいますやん。
そうなったらもうただのガラクタなんですわ。
「あ、ああの…その、ええと。」
ゆっくり後ずさりし始めた俺をいつの間にか俺の後ろに回っていたハロとメリッタさんに腕をホールドされる。
「ゆっくりで大丈夫ですよ〜。」
「時間、たくさんある。」
………や、やっぱり隠しごとはよくないよね〜〜。
―――――――――――――――――――――
私は憧れていた。
真っ赤なマントを
私は生まれつき特殊な赤い瞳を持っていた。この目は神聖魔法に適性がある者の中で稀に産まれ持つ祝福の一つで、普通の人よりも保有する魔力が多い。
そして、その瞳を持っているのは、御伽話に出てくる英雄さま。
いるだけでみんなが笑顔になって、希望を与えてくれる存在。
だから、私もそんな人になりたいと思った。
なれると思っていた。
あの時までは。
「いえ、最近このあたりを荒らしている魔物について調べてて…」
「…何か情報はありませんか?」
「ここから東に森を走り回る狼は見かけたけど…」
「ありがとうございますッ!」
「あ、ちょっと?!まさか嬢ちゃん一人で行く気かい?!おい、ちょっと―――」
当時、私が教会に志願して、
こっそり教会を抜け出し、魔物を退治しに来ていた。
その頃の私は、結果ばかり求めて、焦っていた。
「早く、早く聖女にならないと――――――」
「ずいぶんと焦ってるな、どうしたんだ?」
「!?」
魔法で空を飛ぶ私に彼は
「――誰?」
「近くの村のただの村人だよ。」
「とりあえず止まってくれないか?足がもう限界だ。」
「あ、ご、ごめんなさい!」
咄嗟に私は彼の近くの木の枝に腰を下ろす。
「空も飛べるなんてやっぱすごいな、魔法ってのは。」
「いえ、私なんてまだまだです。あなたこそ、身体強化だけで私の光魔法に追いつくなんて、驚きました。」
「ん?いや、俺は魔法は使っていないよ。」
「え?」
咄嗟に私は彼の体を注視する。
しかし――――
「ほんとだ......」
彼の体には魔法を使っているときに出来る魔力特有の揺らぎが見られない。
それどころか――――
「魔力が…ない?!」
「え、そんなのまでわかるのか!光の属性魔法って!」
「あ、いえ、これは私の生まれ持った目のおかげで…ってそんなことより、魔力が無いって大丈夫なんですか!?」
この世の生き物のすべてに微弱でも魔力がある。魔法が使えない人がいるのは聞いたことがあるが、魔力すらない人間なんてそんなの―――
「――――死んでるみたいだろ?」
「――!?ごめんなさいっ」
「謝ることじゃないって!、俺が普通じゃないのは婆さんから嫌になるほど聞かされてるし、今んとこ体には何の異常もないし。」
「それでも、謝らせてください。でないと、私は――――」
「聖女になれない?」
「!?」
「君くらいの年の女の子がそんな苦しそうな顔するもんじゃないぜ☆彡」
「......。」
「ああ、いや、ごめん!ちょっと聞こえちゃって。ほんとごめん知らない人間の方が話しやすいかなぁ~ってつい出来心でちょっと――」
「―――です」
「へ?」
「お母さんが病院に入れないんです。」
「聖女として名前が与えられて正式に『聖女会』への参加が認められないと、お母さんを聖都の教会病院で診てもらえないんです。それで、教会が休みの日に今日みたいに魔物を退治して成果を集めてるんです。」
「…ごめんなさい聖女見習いとしてあるまじき考えですよね。」
「――――それのどこが駄目なんだ?」
「え?でも、聖女さまは、みんなに希望を与えるのが使命で――」
「聖女だって人間だろ?家族を大事にして何が悪いんだ?」
「聖女も、人間…。」
「そうそう、大切なのは君が後悔の無い選択をすること。君が正しいと思ってした選択の結果がどうなろうと、だれかに決めさせるよりかは幾らかマシさ。」
「少なくとも俺は君みたいな優しくて可愛い人にこそ、聖女になってほしいな。」
「か、可愛い…!?」
「っと、そうだった!さっき婆さんから配達頼まれてるからここらで失礼するよ!」
「あ、はい。......あ、あの!」
「なんだ?」
「ありがとうございました!またどこかで!」
「…ああ、またどこかで!」
「―――…あ、名前聞くの忘れてた......」
そして私は、ほんの少しだけ前向きに魔物の捜索を再開した。
―――――――――――――――――――――
「――狼型の魔物ってあれだよね...」
案外、魔物はすぐに見つかった。
村外れの森の中、人目に付きやすいような広い道を一心不乱に走っている一匹の魔物。
本来、狼型の魔物は大きいだけで一般的な狼同様、家族でのコミニティを持つ。それ故厄介な魔物なのだが。
しかし、今回村の周辺を荒らしているという個体は一匹だけでここ周辺では他の魔物は確認されていない。
――だから、思い至らなかった。
その魔物に迫る存在があるという事に。
「よし、今だ!」
勢いよく魔物の前の前に飛び出し、魔法を発動させ――。
――グシャ。
目の前で魔物がバランスを崩し、そのままの勢いで血の跡を引きずりながら私の後ろの崖へと滑り落ちる。
そして、辺りが静寂に包まれる。
本来であれば、私はこの後嬉々として退治の証の替わりに爪を持ち帰ろうと急いで魔物の後を追いかけてしていた。
しかし、そうしなかった。いや、出来なかった。
なぜなら――
「私の魔法…まだ発動してない。」
つまり、他の何かが魔物にトドメを刺した。
しかし、周囲には何も見当たらない。
「一体何が――」
体勢を立て直そうとした瞬間、私は一瞬で宙に投げ出された。
「はッ!?」
油断はしていなかった。
その証拠に私の周りに張り巡らせていた魔法障壁で身体への衝撃は分散できた。
しかし、通常なら砕ける事の無い魔法障壁が今の一撃だけで粉々になっている。
(何かに攻撃されてる!?でも、一体何に!??)
地面に着地し、急いで距離を取り、開けた場所に出る。
すると夕方の西日に照らされ、『ソレ』が現れる。
「――――――えっ。」
それは闇だった。
光を一切反射しない黒く霞がかった闇。
目は見えないが、『見られている』という感覚に陥る。
(何なのっ!?そうだ、一旦障壁を張りながら後ろに…)
再度展開した魔力障壁がいとも容易く切り裂かれ、その衝撃で後ろの岩肌に叩き付けられる。
「―――あがっ!」
「駄目。違う、こんなハズじゃ…うぐっ」
頭を打った拍子に以前近隣の教会のシスターから耳が痛く成る程聞かされた話を思い出した。人間と同様にこの世界には、魔物の中にも特別な能力を持った個体が現れる。
その中でも特にこの特徴を持ったものにもし出会ってしまったら、見てしまったら、――逃げろ。決して戦おうとするな。命が惜しければ。その魔物は蒼黒い呪いの焰を身に纏い、群れを持たず、目につく全てを蹂躙する事にのみ固執する群を抜いた異彩。
「――あぐっ、ま…さか、
聖王都市の魔物は、一般的なCランク冒険者が一人でも対応可能なのがDランク。3人以上で対応可能とされているのがCランク。というように対処に必要な人数によって階級が分けられている。
しかしそれより更に上、Bランクからは、人数ではなく、冒険者としての経験や、ランクなど、様々な観点から、対処可能であると冒険者ギルドからの認可される必要がある。そして最高ランクはAランクとされている。
しかし、その中で、更に《特定の条件を満たした個体》には個別に名がつけられる。
その条件は――
『都市を一つ壊滅させられる』事。
Aランク厄災級
それが目の前の闇の名前だ。
―――――――――――――――――――――
先程から絶え間なく降りかかる幻狼の攻撃を何とか耐えしのいでいたが、じわじわと攻撃を削る速度が上がっていく。
「でもこれなら反撃でき―――」
幻狼の足元に魔法陣が展開される。
(しまった!)
瞬間左足に激痛が走る。
「―――うぐっぅぅぅぅぅゔゔ!」
幻狼が発動した魔法に左足を貫かれ、途端にその場に崩れ落ちる。
すかさず幻狼が距離を詰めてくる。
「―――がっ!」
何とか魔法障壁の展開が間に合ったが、攻撃の勢いを殺せず10メートル以上地面を転がる。
幻狼は私を弄ぶようにとどめは刺さず、私の方へゆっくりと歩を進めてくる。
(こんなの、勝てっこない……)
幻狼が一歩ずつ近づいてくるたびに、濃密な死のにおいが漂ってくる。
「お母さん…。」
『―――大切なのは君が後悔の無い選択をすること。』
――――いや、まだだ。
前方に魔力障壁を多重展開する。
勝てなくたって、泥臭く最後まで足掻いてやる。
「こい!
「―――よく言った!」
「あなた、さっきの?!」
「いやー偶然だね。」
「私のことはいいから逃げて!」
「それはできないな。」
「どうして!?」
「君を助けたいから。」
「!?」
「それにこういう奴に対する対処法は心得てるんでね。」
幻狼が彼をしばらく警戒していたが脅威ではないと判断したのか距離を詰めてくる。
「危ないっ?!」
「ほらな、油断した。」
そして、彼は
次の瞬間、
ギャアァァァ!と苦痛の声をあげながら幻狼は地面に倒れ、纏っていた黒いオーラが霧散して狼のような頭部が露出する。
そこにすかさず彼が薄い片刃の剣を取り出し、一突きでとどめを刺した。
「―――な、あ…。」
「なんとかなった、か。あ。」
そのまま彼が吹き飛んだ左腕から血を流しながら、地面に倒れる。
「あなた、いったい何を―――」
「破壊の呪い。」
破壊の呪い――
「?!あなたまさか!」
「左手にかけてあいつにわざと咥えさせた。」
「どうしてそこまで?!」
「持ち合わせがこれしかなかったんだ。でも、こいつをこのままにして置いたら村のみんなに被害も出る。だから早めに片づけておきたかったんだ。」
「そういう事じゃなくてっ!」
「それに、君の魔力障壁のお陰でちょっとの致命傷で済んだ…なんちって。」
「ふざけないで!!自分の命を軽く見ないでよ!」
「――――軽くなんて見てないよ。」
「ッ?!」
「俺には魔法の適正もなければ魔力もない。だから、こんな戦い方でしかまだ誰かを守れないんだよ。君でもそのケガだ。魔力障壁も使えない俺が普通に正面から戦たって無駄に死体が増えるだけだ。」
「それに、君だって、空を飛んで逃げれば逃げ切れたかもしれないのにそうしなかっただろ?」
「それは……わかりましたとりあえず止血して魔法で応急処置をするので、傷をこっちに見せてください。」
「腕をはやすような離れ業、教会のシスターか『聖女会』の人じゃなきゃできないので、ちゃんと村に戻ったら一緒に行きましょうね。」
「そうか、助か―――ちょっと待ってくれ。あの魔物、
「?、いえ、私の
「伏せろ!!」
「――え」
二人は気づいていなかった。
この魔物が厄介なのは
以前、『幻狼』によく似た狼型の魔物が聖都周辺の町に現れたことがあった。
その魔物は生まれつき保有する魔力の量が多く、常に体を黒い魔力で覆っている。そして、単純な量だけで見れば他の聖都の
当時もその存在が確認された当初は国を挙げての研究が進められた。
しかし、研究の結果、討伐に要する労力はどの
要は魔力の消費量と保有量のバランスが悪いだけの特殊個体。当時はそう位置づけられていた。
討伐に向かった聖都の部隊が
その名も
己が骸ごと、余すことなく滅ぼす超新星の如き爆発。
二人にこれから訪れる未来を予感させるほどに『幻狼』に限りなく近い性質を持つ