ウチの姉ちゃんと幼馴染、何とは言わんがデカい 作:himahy
「はぁ………疲れた」
夜の空気は新鮮だ、昼とは違う旨みがある。それにこうして自販機の前に持たれてゆっくりとブラックコーヒーを飲んでみれば、またまたカッコ付けができる。
カッコをつけると言うのは男の特権だ、ソレを言うなら女子もそうだが、いざという時にカッコよく決めるのはいつも男子だと学園生活を通して分かる。
───え何?マリーさんの後はどうなったって?俺がハスミ先輩とガチバトルした話はって?……別に聞いても良いことなんてないよ、ただ色々な請求代が来たってだけよ、ギリギリ予算が消し飛ぶくらいの。
内容を端的に伝えると「補習授業部顧問としての任期が終わったら一時的に正義実現委員会の活動を手伝うように」だってさ、実力認めてくれるのは嬉しいけどぶっちゃけめんどくさい。
請求代と言うのは、誤解とは言えハスミセンパイの銃や武器を少しは破壊してしまった事だろう、まぁ俺が『あ、それの請求は俺が払うので、いつでも。』と言っちゃったからなのだろう、今じゃなくて後でこいよ。
それより『え?!……か、カナタが正義実現委員会に!?』って驚いてた猫目ちゃんはどこですかね〜
「……あ。」
「………あ」
と思っていたら早速エンカウントしちゃった、噂をすれば人は来るって仮説が本当なんだと一瞬で思い知りました、コイツこんな夜に外で何してんだよ。
「!?……か、カナタ!?び、びっくりした…」
曲がり角を曲がれば俺がスタンバってたからか、コハルは体を飛び上がらせた。
「そんなに驚く事じゃないでしょ……と言うか、こんな時間まで何してるの?」
「……ぱ、パトロール?」
「まず試験に合格して、正義実現委員会としての活動ができるようになってからパトロールをしたらどうですか?」
「う、うるさい!それならカナタだって補習授業部の補佐になってるでしょ!」
「補佐は貴方達よりも位の高い人物なんですよ?……それで、何か飲みます?」
チャリンと小銭をちらつかせ、俺は自販機に200円を入れた
「え?……い、良いの?」
「はい、コハルはいつも頑張っているので…今日ばかりは奢ってあげますよ」
「でも……」
奢られることに悩んでいたコハルの視線が下に向き、何かに気づいたように目を開けた。
「じゃ……じゃあ、ブラックコーヒー……」
「…へ?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった、いやそれはそうだろ、コハルってブラックコーヒー飲むのか?と言うか飲めるの?
まぁコハル自身が頼んだのだから、俺が何も口出しできる権利はない。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう……ん…んん…!」
ブラックコーヒーを受け取ったコハルは、「あちっ…」と缶を開けるのに苦戦していた様子だった、正義実現委員会としてこんな非力で良いのかと心配になる。
だがここにいるのはそんな弱きものを助ける紳士高身長の聖園カナタ、サッとブラックコーヒーを取って颯爽と開けてしんぜよう。
「──あっ、開いた」
前言撤回、このクソボケを助けようとした俺が馬鹿だった
「んっ……っ…ぅぅ…」
「………」
あれから少し時間が経過し、コハルと2人で部屋に帰ることになったが、先程渡したブラックコーヒーを無理して飲んでいるように感じる。
「あの、コハル?別に無理して飲まなくてもいいんですよ?」
「!?……な、何!?….べ、別に無理なんかしてないから!」
止めたのにも関わらず、コハルは俺の言葉に便乗してブラックコーヒーを口に入れ、その度にとても苦そうな表情をする。
暫くの間この会話を繰り替えしていたが、とうとうコハルが「ぅぇっ…」と声を出してしまうようになったので、そろそろ止めることにした。
「ぅぅ……って、あ!!」
「無理して飲むんなら、さっさと捨てとけ。」
強引にブラックコーヒーを奪い取り、窓の外に投げ捨てた。
「な、何するの!?」
「何するのも何も、無理して飲むぐらいなら捨てろってことです」
「はぁ!?……別に……無理なんかしてないわよ!」
「……はぁ」
別にコイツを助けようとは思っていないが、丁度ポケットの中の小銭財布に目を通し、後一つくらいなら飲み物が買える額だと分かった。
そうして小銭を自販機に入れて、一番安い水を買った。
「ほいっ、落とすなよ」
「!…ひゃ、ひゃっ!?」
突然方向転換して水を投げたからか、コハルは咄嗟に受け取る事ができずに、水を廊下に転がして撮りに行くはめになった。
───まぁ奢ってやったんだから、そこら辺は許せ。
お釣りを取り、俺はコハルに背を向けて歩いた。
「……ん?」
自分の部屋に帰っている最中、先生の部屋のライトが付いていることに気付いた……もしかしてまだ寝てないのか?確認してみるか。
微かに開いていた扉の隙間を見ると、そこには体操服姿のヒフミとハナコが、先生と何かを話していた。
「ヒフミとハナコ……こんな時間に先生といったい何を?」
少し様子を見た所、分からない箇所を教えていると言う様子でもなさそうだし、かと言って会話はもう少し近づけないと聞こえないしで…あぁクソ、いっそのこと俺も部屋に行こ────
『───退学なんですっ!!私達は、トリニティを去らなければいけないんです…!!』
「…………」
ピタリと、ドアノブを握る手が止まった。
は?
退学?……何を言っているんだ、ヒフミは……退学?何かは知らないけど退学?どうして?……え、マジでなんで?まさか何かやらかしたのか?いやいやそんな、銀行強盗でもしなきゃ退学なんてありえないだろ。
いや、待てよ。
───ならどうして今、"退学"と言うワードが出て来た?ヒフミや他の3人は補習授業部に入ったとは言え、そんなことをする子達ではないし、もし仮にそうだとしてもどうして"私達"なんだ?退学をするのは基本責任者のはずだろ?
こんな時期に"退学"なんてワードが出てくるのは……恐らくだが、『試験』についての話だと推測する、会話の全部は把握できていないが、ヒフミの仕草やハナコの困った様な表情。そして先生の真剣な眼差しで判断した。
だけも、それにしても退学するには様々な手続きや承認が居るし……やっぱり冗談なんだ、これも何かのドッキリなはず、何をしたとしてそんな簡単に退学なんて───
「…そんな……な……まさか」
トリニティの中では、知っている通り様々な派閥がある。もしだ、本当に1%未満の可能性だとして……俺が考えた中で、"退学"なんて事を簡単にできる派閥なんて
『あ!来た来た!やっほ〜カナタ⭐︎』
『お久しぶりです。ご入学おめでとうございます、カナタさん』
嘘だ、絶対にそんなの、そんなの……そんなの絶対にあり得ない。
『見てみてカナタ!イソギンチャクだよイソギンチャク!』
『俺が好きなのはチンアナゴだよ』
だけど、そうだとしても………何の手続きも無しに退学なんて荒技ができるグループなんて、一つしかない
『カナタ』
『カナタさん』
「ミカ、姉ちゃん……ナギサ……さん?」
雨が土砂降りの朝っぱら、薄暗い体育館に4人の少女と2人の男がたじろいでいた。
「さぁでは記念すべき第一回、補習授業部水着パーティを開催いたします」
「……。」
「あ、あうぅ…」
「なんで…どうして、こんなことに」
さて、本当にどうしてこんなことになってしまったのだろう?
「………」
ベットで寝転んでいれば、いつの間にか朝になっていた……朝といっても、天気は大雨だが。
結局、あの後何度もナギサさんとミカ姉ちゃんに電話をかけた、何度も、何度も、何度も……合宿所は遺本圏外だし、昨日のアレもヒフミの冗談だとわかっているはずなのに、俺の思い違いだと言うのに。どうしてこんなにも俺は必死なんだろうか。
そうだ……テストが終わってこの合宿所を出たら、またナギサさんとミカ姉ちゃんを誘ってどっか知らない所に遊びに行こう……そこで色んな思い出を作って、こんなことすぐに忘れよう
コンコンと、誰かがノックをした音が部屋中に響いた。
「カナタ君!…カナタ君、起きてますか!?」
「ん?……この声は、ヒフミか。」
ベットから立ち上がり、立ちくらみを起こしながら扉を開いた。
扉の先には、何やら急いでいる様子のヒフミが居た。
「おはようございますカナタ君!その、朝早くに申し訳ないですが助けてください!」
「助けてください?何かあったの?」
疑問を持つ様にそう言った時、ヒフミの後ろにびしょ濡れになった何かを抱えてダッシュしている補習授業部を見つけ、少しだけ嫌な予感がした。
よくよく思えば今日は大雨、洗濯物外に干してあったけど大丈夫だったのだろうか?
「あの、もしかして……洗濯物が?」
「は、はい!その通りです!その通りなんです!……と、とにかく!人手が足りないので助けてください!」
「……わーお」
なぜこんなに自分が冷静なのか分からない、別とは言え外には俺の服も干していると言うのに。いいや、今はそんなことよりも洗濯物を片付けなければ。
ヒフミの言われた通りについていくと、どうやら洗濯物だけではなく電気もダメになっていたらしく、俺が部屋で寝転んでいる間に色々な事が起きていた様だ……。
「……む?遅かったな、カナタ。」
部屋を開けてみれば、補習授業部の面々が揃っていた。
「あはは…すいません、少し睡眠を…」
「そうか、睡眠を取ることは大切なことだ、だがいざという時はお姉ちゃんが隣で寝てあげることにする」
「あぁ、まだ続いてたんですね。その設定……」
もう今頃アズサの姉弟設定にとやかく言うつもりはない。それよりもまずい事が山ほどある、洗濯物がダメになったせいで着る物がなくなった。
と言うかこの様子だと、俺が起きてくるのを待っていてくれたのだろう。少し申し訳ない気持ちだ。
「それで…これ、一体どうするんですか?」
「どうするって?」
「見たところ服も全滅みたいですし、僕の服貸しましょうか?」
「!?…ふ、服を貸す!?え、エッチなのはダメ!死刑!」
「ちょっとちょっと、寝起き早々死刑を宣告しないでください。」
と言うか服を貸す行為のどこに死刑宣告するポイントあるんだよ、もうちょいハナコの体型とかπとかいうところはあるはずなのに。
「それで、どこの電気も付かないんですが……どういうことですか?」
「あぁ、それは…」
「ついさっき雷が落ちた、そのせいで洗濯機も蓋も何もかも使えなくなった」
「……わーお」
今日で2度目のわーおを獲得した、いらねえわ。
あれ、ということは結構不味いのでは?本気で俺の『ぶるーあーかいぶ』Tシャツを貸すしかないのか?貸すとしても4着くらいしかないんだけど。
「ふふっ…それなら、私に良い提案があります」
その時、ハナコが不適な笑みを浮かべて意味深な発言をし、俺たちに手招きをした。
ハナコのこう言う時は、必ずろくな事がないのだ、俺のこの一週間の経験が物語っている。
「───それで、どうして水着パーティをするんだ?ハナコ」
「うふふっ、決まっているではありませんか?……これも合宿の花を咲かせると言う物です、お互いの隠している部分を曝け出して───」
「!?───だ、ダメよ!絶対に!そんなの!」
「あらあら、コハルちゃん?私は何も、さらけ出すまでしか言っておりませんよ?」
「あ、あはは……2人とも、もう少し…」
そうして水着でパーティをする4人を、俺は脱力した表情で見守っていた、あん中に俺が入って行っても変態扱いされるだけだろ、すでに変態は居るけども。
しかし、話が突出しすぎているとは思えないのだろうか?あそこからどうやったら水着パーティをする事になっていくんだろうか?あ、何かヒフミがアズサに抱き付いた。
"カナタは混ざらないの?あの4人の中に"
「先生こそ、混ざらないんですか?」
そんな俺を見かねたのか、先生が声をかけてきた。
"そっか…でも、混ざったら楽しいと思うよ?"
「混ざったら楽しい、か……」
『?あの、この汚らしい子供は?』
『あぁ……!申し訳ございません、私共のゴミ箱があんな所に…!すぐにお片付けいたします!』
ペチンと頬を叩かれ、強引に手を引っ張られた。
『貴方のせいで、恥をかきそうになりましたわ…!ゴミ箱としても使えないなんて!』
「……混ざったとして……あんなことしか、言われないんだろ」
"?…カナタ、何か言った?"
「あぁ、いや……なんでもありませんよ。」
とりあえずあいつらについていく様にして体育館に来たのは良いものの、本当にやる事がない。
「とりあえず、俺は戻っときますので…後は頼みますね。」
"?………うん、分かったよ"
悪いけど、俺にはまだ調べなければならない事が山ほどある……昨晩のヒフミの言い方、あれが本当にフェイクなのか、本当なのか……調べ尽くしてやる。
補習授業部の4人にバレない様に、俺はこっそり体育館を出て行った