ウチの姉ちゃんと幼馴染、何とは言わんがデカい 作:himahy
アズサの裏切り者白状からいざこざがあった、話によると日が昇る手前に’’アリウス分校,,の生徒がナギサさんのことを狙いに突撃してくるらしい、そして話をして全会一致でナギサさんを守る事に決定、騙されたというのにずいぶん心が広い連中だ。
ハナコが言うには
「正義実現委員会の部員とゲリラ戦の達人とティーパーティからの偏愛を受ける自称平凡な人。トリニティのほぼ全てに精通した人……そして、恐らくトリニティ一年生の中で最強と言える人が居るのですから」だそうだ。
「後はナギサさんを守りに行く人員ですね……」
「……俺が行く、ナギサさんには謝らなきゃいけない事が山ほどあるんだ」
「………カナタ君」
元より俺がそばに居れば、こんな事にはならなかったのかもしれない……ナギサさんが疑心暗鬼なのに関わらず。俺はそんな事にも気付かずに接していたんだ。
「俺はナギサさんが疑心暗鬼だったのにも気付けなかった、ずっと側にいたくせにさ……だから、謝りたい」
「では、私もついて行って良いでしょうか?あの猫ちゃんには、色々と言わなければならないことがありますから。」
「猫ちゃん……まぁ、あながち間違ってはいない。」
ようやく理解できたんだ、俺のやるべきことを……「ナギサさんが疑心暗鬼なのに気付けなかった事を謝罪して、これからは側で支える」これを言わなきゃならない。全てが終わった時には、ミカ姉ちゃんにもナギサさんの支えを手伝うように言わなきゃならない。
アリウス襲撃に向けての作戦が立てられた。ナギサさんの保護は俺、ハナコ、アズサが派遣されることとなった。ナギサさんを保護した後に体育館に集合して全員を迎え撃つ。アズサから聞いた通りだと一人一人の個体値は大したことないようだから。
「そう言えば、明日は試験もあったな……やっぱり俺が1人でやろうか?」
「まさか♡カナタ君1人には背負わせませんよ。」
「こうなった以上、任務を最後まで遂行する。」
「ふふっ」と、不適な笑みを残すハナコと。任務遂行の覚悟を決まった表情をするアズサ。何故かトリニティ一年生の中で最強と決めつけられた俺。敵に回すのは嫌だけど味方になった瞬間凄く頼もしいとかそんな感じがした。
来る作戦開始時刻、俺達はそれぞれのグループに分かれて作戦を決行する。先生のグループは体育館で罠の準備をして待機。ハナコのグループはナギサさんの保護を開始。
「お願いしますね、カナタ君」
「……お願いします?なんで?」
「恐らく、今のナギサさんを疑心暗鬼の闇の中から救い出せるのは……カナタ君しかいません。」
「……分かった。」
恐ろしいほど速い速度でハナコが掌握したナギサさんの居る『セーフハウス』に移動中。ハナコがそんな事を耳打ちしてきた、分かったとは言ったものの本当に俺がナギサさんのことを救えるかは不安だ。
セーフハウスにいる警備を軒並み倒して、とうとうナギサさんのいる部屋に突入となった……ハナコからの指示通りにフードを被り、最初はハナコが部屋に入る事になった……何かナギサさんを壊すトリガーを引かないか心配だ。
コン、コン、コン。
3度に分けてノックをしたら、大きな扉の中から「……紅茶なら結構です」と聞こえてきた。間違いない、ナギサさんの声だ。ハナコが笑みを浮かべてカウントダウンをすると、俺達は部屋に突入した。
「可哀想に、眠れないのですね……それもそうですね、正義実現委員会がほとんど側にいない状況、寝息を立てて寝れるわけもありませんね?」
「う、浦和ハナコさん……!?どうしてここに!」
「……どうやってここを突き止めたのか、とお聞きになりたいのですか? ふふっ、そんなの決まっています。ティーパーティーの裏も表も、私はすべて把握していますから」
「合計87箇所におよぶセーフハウス。そして、その運用ローテーションまで……。記録上は完璧でも、人の動線までは隠せませんよ♡」
ハナコが何かナギサさんの心を壊させるようなことを言わないか本当に心配だ、今ですらナギサさんは警戒心MAXの表情をしている。よく考えれば自分がフリーの時に襲撃をされているのだから当然か。
「……っ!?」
「イレギュラーな運用もおおよそ把握済みです。たとえば……今のように心から不安で押し潰されそうな時は、決まってこの『秘密の屋根裏部屋』に隠れる、とか」
「なっ……!?」
核心を突かれ、ナギサの顔から血の気が引いていく。
その動揺に追い打ちをかけるように、重いブーツの音が室内に響いた。
「動くな」
「……!」
現れたのは、ガスマスクを装着し、冷徹な殺気を放つアズサだった。
「ああ、ご心配なく。ここへ至るまでの警備の方々は、すべて『片付けさせて』いただきました。ですからこうして、堂々とご挨拶に伺えたわけですが」
ハナコの言葉に、ナギサは震える手でカップを離さなかった。
突きつけられた銃口と、逃げ場のない密室。彼女の瞳には、かつてないほどの警戒心と絶望が宿っていた。
「白洲アズサさん、浦和ハナコさん……! まさか……『裏切り者』は一人ではなかったということですか……!?」
「ふふっ、相変わらず単純な思考回路ですね。私やアズサちゃんは、ただの『駒』に過ぎません」
ハナコはさらに一歩踏み込み、毒を吐くように囁いた。
「この盤面を動かしている『指揮官』は、別にいます」
「……!! それは、誰なのですか……!」
ナギサの声は震えていた。ティーパーティーの権威も、用意周到に準備したはずの防衛策も、目の前の少女が浮かべる「完璧な微笑」の前では無意味だった。
ハナコはふっと目を細め、芝居がかった仕草で言葉を紡いだ。
「その前にナギサさん、ここまでする必要はありましたか?……補習授業部のことです、ナギサさんの心労はよくわかりますが……『シャーレ』まで動員して、ここまでする必要はあったのですか?」
「…………」
「最初から怪しかった私やアズサちゃんはともかく、ヒフミちゃんとコハルちゃん、そしてカナタ君に関しては……あんまりだと思いませんか?」
「……っ!!」
俺の名前が出され、ナギサさんの表情は更に引き締まった。何だかもうそろそろ俺の出番が来る気が。何故だか分からないけど直感が叫んでいる。
「そうですね…それから……あら?」
「もういいよ、ハナコ……こっからは俺が。」
「………ぇっ」
俺の生声を聞いて。ナギサさんのか弱く出された小さな声が深く被っていたフードを外す手を更に早くさせた。完全に顔が晒された時、ナギサさんの表情は’’警戒,,から一転して目を大きく見開いた。
「……カ…ナ………カナ、タ?」
絞り出すようなその声は、形を成す前に空気に溶けて消えてしまいそうだった。目の前に立つ人物――長らくその不在が彼女の心を蝕んでいたはずの「彼」が、あまりにも唐然とそこにいたから。
「やぁ、ナギサさん……久しぶりだね」
穏やかで、聞き馴染んだその声。
それはナギサにとって、何よりも待ち望み、同時に最も現実味を欠いた福音だった。
「──は……? へ……は…?」
喉の奥が引き攣り、酸素が上手く肺まで届かない。驚愕という感情が飽和し理性が情報の処理を拒絶している。
「……ま、まさか……!?」
ナギサさんの見開かれた瞳が、次第に潤みを帯びていった
夢か、あるいは悪質な幻覚か。
問いかけようとした言葉は、震える呼気となって彼女の唇から溢れ出すばかりだった。
「私を……本当に……?」
「……本当にって……逆に言えば、本当に俺の事を疑ってたんだね。」
「……まさか、指揮官と言うのは…!!」
「いや、それは俺じゃ無い。」
チクタクと音を鳴らす時計を横目に、潮時だ───そう思った俺はハナコに目線で合図を送った。
おかしいな、そこまで俺はナギサさんに疑われるような事をしたのだろうか?……それも含めて後々2人だけで話し合いたいと思っているし、今は考えないでおこうか。
「ふふっ……では改めて、私たちの指揮官からナギサさんへ、メッセージをお伝えしますね」
合図を受け取ったハナコは不適な笑みを浮かべ、いよいよと言った様子だ。
「『あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ』……とのことです」
「は……え、は、へ……は?……ま、まさか……!!」
パンッ!!……と、ナギサさんが言葉を言い終わる前に。アズサが無慈悲にも引き金を引いた、椅子から落ちそうになるナギサさんにそっと手を添えた。
ナギサさんをお姫様抱っこしてみると、俺の力が強いとはいえあまり健康とは言い難い状態だった。こんな状態になるまで無理するなら俺やミカ姉ちゃんにでも言ってくれればよかったのに。
「……ふふっ♡ではアズサちゃん、ここからは敵の誘導をお願いできますか?カナタ君は、ナギサさんを安全な所へ。」
「了解、それでまだ何処かにいる『本当の裏切り者』に嘘の情報が流れるはず。」
「そのハナコの想定が正しければ、敵を誘き寄せれて裏切り者も見つけれて一石二鳥だな……そんじゃアズサ、頼むぞ。」
「……………」
ナギサをお姫様抱っこして気を引き締めるカナタを横目に、ハナコは何かと憂いのある表情をしていた。彼女は個人的にほとんど確信していたのだ、’’本当の裏切り者,,にいつて。
その正体にほとんど確信を持っているからこそ、ハナコは心底彼が壊れてしまわないか心配なのだ。
「……ところで、さっきの最後のセリフ。必要だった?」
「あ、それは俺も同感。」
「あぁ、アレはヒフミちゃんの頑張りの分と言いますか、少しくらいショックを受けてもらおうかと思いまして」
底知れぬ笑みを浮かべるハナコを見ると、思わず「ヒェッ」と声を出してしまいそうだった。
間も無く作戦が決行すると。アズサはアリウスの部隊がいるとされる方面へ突っ走り、ハナコもぼちぼち体育館に向かった。俺は速球にナギサさんを誰にも気付かれないような場所に隠した。
「……ナギサさん」
「…………」
目を閉じて気絶している彼女の頬にそっと手を添えた、ナギサさんの顔は本当に冷たく。今にも凍死しそうなくらいに不安定な感じがした。
正直に言ってナギサさんは補習授業部には悪い事をした、その部分は流石に俺でも擁護はしきれない。だけど根っこから考えてみればナギサさんはまだ高校生、つまり『子供』なのだ。
子供は何度も間違いを犯せばその度に成長を成す、しかし今のナギサさんはティーパーティのホストという立場を担っている。だからこそ一度の失敗でも命取りになる。
その責任がありながらも、ナギサさんは自らの危険を無視してトリニティを守る為に裏切り者を探した……政治的に見ればアウトだろうが。それでも俺は声を掛けたい。
「『何も気づけなくてごめん』って謝ろう……それで、これからは俺やミカ姉ちゃんでナギサさんを支えよう。」
そうポツリと呟いて、ナギサさんの頭を勝手ながら撫でさせてもらうと、俺はその場所を全速力で外に出た。もうそろそろみんなが体育館に集まる時間帯だ。
……よくよく考えれば、ミカ姉ちゃんは今頃どこにいるのだろうか?いやミカ姉ちゃんの事なんだから。アリウスの連中に負けるとかは無いだろうけど……。
ミカ姉ちゃんは精神が少し不安定になる、だから小さい頃は俺が隣で支えた。直ぐに依存気味になるから、時には塩対応にして、時には丁寧に接していたし……心配だな。
「──ふっ!!」
「なっ!?……ぐぁぁ!」
体育館前にゾロゾロと集まって来ていた連中を吹き飛ばし、強引にでも体育館内に入らせてもらった。既に補習授業部と先生が臨戦体制で待っていた。
"待ってたよ、カナタ。"
「どうも……じゃあ、終わらせよう。」
「えぇ、一先ず仕上げと行きましょうか♡」
先生の指揮を通して、アリウス部隊との戦闘が開始された。先生の指揮を受けている身としたら。まるで未来が見えているかの様に戦いやすかった。
体育館内に集まっていたアリウスの部隊を蹴散らして、後に迫り来るであろう増援の為に短い作戦会議をする事となった。
「……ひとつ難所を乗り換えましたね。次のフェーズに移行しましょう。」
「確か、正義実現委員会が来るまでの時間稼ぎ……だったかな?まぁ、この調子ならいくら来ても退けられる。」
「あ!は、ハスミ先輩には連絡しておいた!直ぐ返事くるはず!」
「はい♡ありがとうございます、ティーパーティの命令下にある正義実現委員会が動けるとしたら、ティーパーティの身辺に問題が生じた時だけ。」
……作戦担当から言わせて貰えば、ハナコの知識や作戦能力は恐ろしく高いと言える。テキパキと指示を続けて先の未来を見据えている様な作戦を立てる。
「………!?」
その時、体育館中に大きな爆発音が響き渡った。音のした方面に視線を向けてみると、先程と同じガスマスクを装着した部隊が体育館に流れ込んできた。
「アリウスの増援……こんなにも早く!?」
「え、えっ……?」
「どう言う事だ……それに、数が多すぎる。アリウスの大半が……。」
「…………」
おかしい、ハナコの見立てでは正義実現委員会が来るまで増援は来ないとの話だったはず。何どうしてこんな数が一気に流れ込んできた……おかしい、何か引っ掛かる。
「まだ正義実現委員会は動かないのか……まさか、本当の裏切り者が先に手を打ったと言うのか…?」
「それは仕方ないよ」
「………!?」
足音が、聞こえた。
『ティーパーティ』の象徴とも言える服装を煌びやかに見せつけて1人の人物がこちらに歩いて来た。俺はその人物と声に嫌な程聞き覚えがあった、嫌なほどに見覚えがあった。
俺を含める全員が、驚きのあまり声を出すことができなかった、作戦担当のハナコでさえも声を出せず目を大きく見開き。こちらにゆっくりと歩みを進める人物を見つめた。
やがて、その人物は全員が見渡せる所で足を止めて。ニヤリと笑い人差し指を上げた。
「やっ、久しぶりだね?カナタ」
「み……みか、……ミカ……姉、ちゃん?」
「へぇ、ちゃんと覚えててくれたんだ?てっきり忘れられたのかなって思ってたよ。」
「お姉ちゃんが居なくて寂しくなかった?……そうだよね、カナタはお姉ちゃんが居ないと何にもできないから、合宿の時も心配になっちゃったよ〜⭐︎」
一歩、二歩、後ろにたじろいでミカ姉ちゃんを凝視した。何度も幻覚なんじゃ無いかと疑った、何度も夢なんじゃ無いかと頭の中で思った。
瞬きをしても目の前に見えてくるのは、アリウスの部隊を引き連れた愛しの姉……現実を見に染みて感じてしまう程、彼女のこの行為が嘘だと信じて凝わなかった。
信じたくなんて無い、でもこの状況を……『現実』を見てしまったら、次に考えられる事は一つだけだ。
「まさ、……まさ、か……ミカ姉ちゃん、ミカ姉ちゃんが……ほん、本当の、本当の………」
「あははっ!相変わらずカナタは察しが良いね?まぁ当然だよね、私の弟なんだから……うん、そうだよ。」
ミカ姉ちゃんはその場にいる全員に見せつける様に、高々に宣言。いいや、告白をした。
「私が、本当のトリニティの裏切り者。」