ウチの姉ちゃんと幼馴染、何とは言わんがデカい   作:himahy

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やべぇよ、やべぇよ


1人の少女への謝罪と、混乱。

 

 

 

「……ごめんなさい、ナギサさん」

 

「……………」

 

「本当に、ごめんなさい……僕のせいで、こんな。」

 

桐藤ナギサの心は、とっくに限界を迎えていた。

 

同じ立場にある友人がこの世を去り、少しでも助けてくれると信じていた先生からは拒絶され絶対に守ると誓った幼馴染には命を狙われて、寝るのも惜しんで介護した弟には『出て行け』と強い言葉を浴びせられた。

 

彼女自身ティーパーティのホストという立場を担っているからには、この様な仕打ちも耐えなければいけない、だけど桐藤ナギサとて1人の’’子供,だ。

 

子供は大人よりも心が未熟で、間違った行動を何度も繰り返してしまう、その事を思い返し反省して、次に進んでいくのが子供の仕事だ。

 

しかし、今の桐藤ナギサの立場はどうだ?ティーパーティのホストとと言う役割を担っていながら、『失敗』の2文字を道に置くことは許されているのか?

 

彼女の心は疑心暗鬼の闇で覆尽くされ、誰からも光を差し伸ばされることなくただ1人で闇の中を彷徨っていた。

 

ナギサがここまで追い詰められている原因は、『聖園カナタに否定された』と言うことが一端でもある……いいや、一旦では無く『ほとんど』が聖園カナタのせいだ。

 

初めて異性として見た人物から拒絶された気持ちを考えて見て欲しい、さぞ苦しかったことだろう。

 

その事を痛感したのか、聖園カナタは───夜の月明かりが通っているのにも関わらず、桐藤ナギサの目の前で額を地面に擦り付けて土下座をしていた。

 

「カナタ、さん……どうして?何故、貴方が私に謝罪をするのですか?私は、貴方の事を騙して酷い仕打ちを……。」

 

「……確かにあれは酷いと思ったよ、でもさ。身近に『死』の恐怖が迫っていれば、誰だって冷静な判断をできなくなるはずだ。」

 

「っ………!?…」

 

「セイアさんが暗殺されてしまった時……’’次はきっと私だ,,って、ナギサさんは思ったんでしょ。」

 

ナギサさんは目を大きく見開いて口を小さい開閉していた、彼女だって1人の人間だ。どれだけ高い位に居ようと図星の時の反応を隠すことはできない。

 

こうなったのなら俺の想っている事を誠心誠意ぶつけて、ナギサさんの心にどうにかして響かせる。

たとえその言葉が、聖園カナタという存在を否定することになっても。

 

 

「……カナタさんには…関係ない話ですっ……。」

 

「っ……!?…関係無いって、どういう……。」

 

「私が、貴方にどれほどの仕打ちをしたと思っているのですか……私はあの日、この目で見てしまったんです、カナタさんが私のせいで苦しんでいく瞬間を……。」

 

「………あっ」

 

ナギサさんが言っているのは、きっと補習授業部でゲヘナに行って起こってしまった出来事、ナギサさんを『嘘つき』と定義して1人で絶望の淵に堕ちたあの日。

 

 

 

 

 

……ぅっ…ぁ…ぁぁ……ぁぁぁぁ!!!!

 

 

 

「…………………」

 

「本来ならば、補習授業部はあの試験で卒業していた……しかし、温泉開発部の介入でそれも叶わず。カナタさんの努力して積み立てた物を、私がこの手で崩してしまったんです……。」

 

 

「貴方が成長する事を1番に望んでいた私が、醜い自らの心に飲み込まれて、貴方のことを裏切ってしまった。」

 

 

「この場で謝るべきなのは、私です、頭を下げて土下座しなければいけないのは、必ず私の方なのです……本当にごめんなさい、カナタ……貴方のことを裏切ってしまって、ごめんなさい。」

 

 

ナギサさんは何度も目を伏せた、何度もこちらを見て言葉を綴った、彼女の口から出てくる言葉が、俺の胸に想いとして入り込んできた。

 

 

 

「ごめん、なさい…………。」

 

 

「…………………。」

 

 

土下座をしている状態から、力を込めてゆっくりと立ち上がった、今度は彼女が月明かりに照らされていた。こんな時でもナギサさんは綺麗な人だ。

 

ゆっくりと、一直線にナギサさんへ足を向けて歩く。その一つ一つ足取りが、彼女の表情が近付いて見える度に、今の俺にとっては何よりも重い物だと感じる事ができた。

 

これから彼女に向けて放つ言葉が、彼女の心にとって最善か最悪なのかは本当に考える暇がなかった。ただ一つだけ、桐藤ナギサという人物だけを見つめて歩いた。

 

 

「……昔からそうですよね、ナギサさんって。好奇心旺盛だけど、人一倍悪いことをしてしまったら思い詰めてさ。」

 

「………当然、です……落胆してもらっても構いません、これが貴方の目指している、ティーパーティのホストとしての’’桐藤ナギサ,,なのですから。」

 

「……はぁ……そういうところですよ。」

 

 

「?……何を言って……。」

 

 

彼女が言葉を言い終わる前に、俺の体は無意識にも動いていた……これ以上ナギサさんが壊れるのを、見ていられなかったから。

 

ナギサさんの背中をそっと腕で包み込めば、彼女の温かくも冷たい体温が伝わってきた。互いの息が止まるほど、ギュッと優しく抱きしめる。

 

 

「!?……か、カナタさん………?!」

 

「……ごめん…本当に、ごめん。」

 

「!……ですから、この件はカナタさんが謝るべきでは───!」

 

「確かに、’’補習授業部の補佐,,としてだったら、こんな事はしてはいけないと思う……だけど、これは。」

 

 

『聖園カナタ』という人間が、桐藤ナギサに謝らなければいけない事だから。」

 

「!!……」

 

彼女を抱きしめる力を強くした、それはナギサさんが痛く無いと思う程度に、2人の体の温かさを再認識できる程度に、そっと抱き締めた。

 

 

 

「俺さ、ナギサさんに裏切られた時からずっと考えて……俺がずっとナギサさんの側に居たら、こんな事は起こらなかったのかもしれないってさ……。」

 

「……それは違います、カナタさん……」

 

「何にも違わなくない、俺のせいだったんだよ。全部……ナギサさんをここまでさせてしまったのも、ミカ姉ちゃんがあんなふうになってしまったのも。」

 

「……っ……。」

 

ずっと思い悩んでいたことを、ナギサさんに吐き出した。全部俺のせいなんじゃなかったのかなって、ミカ姉ちゃんがトリニティを裏切ったのも、ナギサさんがこうなってしまったのも……絶対に違うと分かっていても。俺のせいだって何度も思ってしまった。

 

「俺は本当に弟失格だ、姉がずっと悩んでいることにも気づかずにさ……ずっと昔からナギサさんの側に居たってのに、何にも気付けなくてさ。」

 

「……………」

 

「ミカ姉ちゃんは俺に言ったよ、『他人だから』ってさ。だけど、そんな他人でも、せめて心に寄り添う事はできるんじゃ無いかって思いました。」

 

「……カナタ、さん……。」

 

「俺とナギサさんはどこまで行っても他人です……しかし、先程の言葉に沿えば。ナギサさんに寄り添う事ならできるんじゃ無いかって、安直ですが考えました。」

 

改めて、彼女ときちんと目を合わせた。ナギサさんの眼は少しだけ赤く腫れているようで、今にも泣き出しそうな雰囲気だった。

 

ナギサさんにこんな顔をさせてしまうだなんて、俺は本当にダメな弟だ……だからここで弟としての立場を脱却をする、弟ではなく聖園カナタとして、彼女にこの言葉を伝えなければいけない。

 

「だから……これからは、俺をナギサさんの隣で寄り添わせてくれませんか?ナギサさんの苦難を、俺にも背負わせてください。」

 

「っ……どうして、カナタさんがそこまでする必要があるのですか。貴方がここまでする義理なんて……どこにもありませんよ。」

 

「……そうですね、俺がナギサさんにそこまでする義理などありません……何故なら、ここからはもう’’私情,,の領域なので。」

 

「私情の、領域……?。」

 

次の言葉が脳裏に浮かぶ度に、俺の心臓は段々と早くなっていった、ついにこれを言う時が来たのかと。昔からの想いを伝える日が来たのだと緊張して仕方がない。

 

怖い、本当に怖いすぎる、この言葉でナギサさんがどんな反応を見せるのか、この想いは実るのかぶち壊されるのか……もうここまできたのだから、全部言うしかない。

 

 

 

 

「───好きです、ナギサさん、性格も全部好きです。」

 

 

 

「えっ……ぇ……カナ…ぇ……?」

 

 

「………………ぁ」

 

 

ヤカンのように沸騰したナギサさんの顔を見て、自分がどれほど空気の読まないことを言ってしまったのかすぐさま理解してしまった。

 

後退りをして、強く口を抑えて、この女神のようなナギサさんにどれほど「キモい」と思われる言葉を言ってしまったのか、顔から血の気が引いていった。

 

「ぁ……いやその、これは……!!とりあえず!ナギサさんの側には俺がいるってことを分かってくれたらもうそれでいいので!じゃあ俺はこれで!!……あ、さっきの言葉は全然忘れてくれていいですから!!後俺含めて補習授業部はもう怒ってないので!それじゃ!!」

 

「ぇっ、ぁ……か──カナタさん!?」

 

道中で誰にも見つからないように、絶対に後ろを振り返らないように爆速で部屋に帰った。帰っている最中で、先程の発言が頭の中に焼き付いていた。

 

 

 

やってしまった

 

 

 

ミカ姉ちゃんの裏切りの件やらエデン条約の件やらで疲れていたナギサさんに、あんなとてつもないことを言ってしまった……今度こそ嫌われたかな、俺みたいなやつが告白して嫌われちゃったかな……。

 

「くっそ……なんであんなこと言ったんだよぉ……」

 

部屋に戻ってからは、男らしくない声を何度も出して後悔した。憧れのナギサさんにあんなことを言ってしまって、色々と心配事しかなかった。

 

ナギサさんに1人ではないと伝えまでは良かったけれど、そこから想いを伝えてしまったのが、本当に心の中の足を引っ張っているんだ。

 

「散々心の中でナギサさんのこと言ってたくせに……実際にこうなったら、なんで俺はこうも恥ずかしがっちゃうんだぁ……。」

 

明日は念願のエデン条約調印だと言うのに、ナギサさんも気が気でないだろうな……。

 

補習授業部からも明日、俺の無事を祝ってお店で集まろうと言う話になっているから、今日は早めに寝て歴史に残る瞬間をこの目に収めよう。

 

 


 

 

 

「───馬鹿っ!!」

 

「いって!?……な、何すんだコハル!?」

 

「うるさい!馬鹿ったら馬鹿なんだから!」

 

ぷんすかと背中を叩いてくるコハルが、食事中の俺には相当効いた、向かいの席のハナコが微笑ましそうに見ているのを俺は見逃さなかった。

 

 

「うふふっ♡許してあげてください、カナタ君。コハルちゃんはカナタ君の事が心配で心配で、自分を慰める行為も碌にできずに──」

 

 

「!?……は、ハナコ!?アンタ何言ってんのよ!?……あ…違う!違うからね!?誤解だから!!」

 

「俺はまだ何にも言ってねえよ……はぁ。」

 

補習授業部は解散したとはいえ、相変わらずこのメンバーは変わっていないし、何なら前よりも仲が良くなったように見えてきた。

 

今日は待ちに待ったエデン条約調印式が行われる日、長年に渡って渦巻いていたゲヘナとトリニティの関係を、少しでも持ち直そうと行われる事だ。

 

「今日はついにエデン条約調印式ですよ、カナタ君!歴史的偉業がここで産まれる日です!」

 

「そのせいか、学校も休みになって……まぁ、俺的にはそれが良いんだけどな。」

 

「カナタ、体調の方はどうだ?念の為に包帯を持ってきている。」

 

「アンタはここに何しにきたんだ。」

 

溜め息を吐いてしまうほど、補習授業部は元気で盛んなグループだ……ここの補佐として生まれてしまった以上、この運命は避けられない事なのかもしれない。

 

まぁ、今日は本当にめでたい日だから、これくらい許してやっても良いか。

 

「………ん……?」

 

「カナタ……どうかしたの?」

 

「俺の直感が正しければ……今何かが『反応』した気がする。気のせいかもしれないし、本当に微弱だけど。」

 

「反応……?どう言う事ですか、カナタ君?」

 

「…………」

 

何か嫌な予感がして、会計のお金を置いて店の中を出た。補習授業部は驚いていたものの、何か本当に嫌な予感がして仕方がなかった。

 

一通りの多い場所に出ると、みんなエデン条約調印を見る為にガヤガヤと集まっていた……やはり気のせいだったのかと、俺は安心して息を吐いた。

 

「カナタ!」

 

「ん……あれ、アズサさん?」

 

「突然どうかしたのか?……それに、この人の集まり方は………。」

 

「いえ、やっぱりなんでもありませんでした、心配をかけてすいません、本当に気のせいだった───」

 

 

───!?

 

 

「え……今、何か変な音しなかった?」

 

「な、なに!?」

 

背筋がゾクっと立つのを感じた、空から妙な音がしたのを感じ取って、すぐさま後ろへと走った。

 

 

「カナタ!伏せろっ!!」

 

 

「……っ!!!」

 

 

アズサが俺に覆い被さった瞬間、大きな音と共に街中が揺れに襲われた、何が起こった?一体何が起こってしまったんだと、今はそう考えるしかなかった。

 

少しだけ揺れが収まり、守ってくれたアズサに感謝を述べて、俺は街中を見渡した。

 

 

 

 

「……な……なんだよ、なんだよ、これ……」

 

先程まで共にこの場所で立っていた人が次々に倒れ、そこら中のビルには大量の炎が燃えて……そして、向こうから迫り来る『何か』が目に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





始まってしまいましたね。
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