ウチの姉ちゃんと幼馴染、何とは言わんがデカい   作:himahy

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なんかまた一番くじがある様ですね


皆様は引きに行きますか?ちなみに僕はミカとナギちゃんが居るので引に行きます。

高校生活……いやだぁ


加速する混乱

 

「……好きです、ナギサさん。顔も声も胸も性格も全部好きです」

 

その言葉が耳で捉えた瞬間、私の思考回路は、まるで過剰な電圧をかけられた機械のように停止しました。

 

裏切り、疑心、孤独、『ティーパーティのホスト』という仮面は、セイアさんの不在とミカさんの裏切りによって、もはや剥がれ落ちる寸前の皮でしかなかった。

 

 

 

───それなのに

 

 

 

「えっ……ぇ……カナ……ぇ……?」

 

喉の奥から漏れたのは、トリニティの生徒とは思えない情けなく絞り出た声、荒ぶっていた心臓が更に脈を打つトリガーとなった感情。

 

カナタさんは補習授業部の中でも私が最も傷つけたであろう人物です、彼の積み上げた努力を、私の身勝手な恐怖ゆえ。強く踏みにじり絶望の淵へと追いやった……。

 

謝罪すべきは私で、蔑まれるべきも私のはず、それなのにどうしてこの人は私を抱きしめ、あろうことか『好きだ』などと、眩しすぎる言葉を投げつけられるのでしょうか。

 

「顔も、声も……む、胸……?」

 

それに、カナタさんが好きだと言ったのは主に私の『体や性格』を示すもので、頬が熱くなる感覚と、私の中で何かが心に響いた感覚を味わった。

 

恥ずかしさと、困惑と、そして──心の奥底に溜まっていたドロドロとした不安が、彼の体温と体面を無視した告白によって、一気に洗い流されていくのを感じました。

 

 

ああ……本当に貴方はずるい、私が心底ずる賢いと思える人物です、カナタさん。

 

そんな言葉をこんな状況で言われてしまえば、『ティーパーティとしてのプライド』も『罪悪感という名の逃げ道』も、すべてが台なしではありませんか。

 

しかし、その様な反応を見せたのは私だけではなく、その言葉を口にしたカナタさんの表情も心なしか赤くなっていました。

 

「あ……いやその、これは……!!」

 

「え?……ぇ…ぁ…か、カナタ!!」

 

慌てて顔を真っ赤にして逃げ去っていく彼の背中を、私はただ呆然と見送ることしかできませんでした、追いかけようにも腰が抜けたように力が入りません。

 

静まり返った廊下に、私一人が取り残される。

けれど、先ほどまで私を支配していたあの『恐怖』の冷たさは、もうどこにもありませんでした。

 

指先で、そっと自分の唇に触れてみるれば、あの子が私を抱きしめた時の不器用なほど力強い腕の感触が、制服越しにまだ熱を持って残っています。

 

 

「……馬鹿な人。本当に……大馬鹿者です、貴方は」

 

 

独り言を呟いた私の声は、心なしか震えていました。

明日にはエデン条約調印式という、このキヴォトスに歴史に名を遺す行事が行われると言うのに。

 

それなのに、今の私の頭の中を占めているのは、『トリニティの未来』でも『ゲヘナとの和解』でもありませんでした。

 

明日、明後日、彼と会えるかはわからない、もし会えるとするならば。どんな顔をして彼に会えばいいのか?それだけが、今の私にとっての世界で一番難しい難題になってしまった。

 

 

 

 

『エデン条約の会場は火に包まれ、現在古聖堂の周辺は悲惨な状況となっております!これは一体どういう状況なのか───』

 

 

「…ふ〜ん……」

 

テレビ越しに伝わる悲惨な状況を、牢獄の中に囚われているミカは興味深そうに呟いた……しかし、その眼には色々な感情がこもっている様に見えた。

 

「ナギちゃん、カナタ……いつかは忘れたけど私言ったよね、私達はこういう世界に生きてるんだって。だから……やっぱりセイアちゃんの言う通り、そう言う世界なんだろうね。」

 

小さく溜め息を吐くと、ミカはベットに腰を掛けた、その表情には。以前の様な明るく天真爛漫な彼女は居ない、自分のした行いを考える、1人の哀れな少女だった。

 

ミカの心の中には様々な感情が混じっているものの、その中で『彼』が言ってくれた言葉だけが、彼女を一瞬だけ負の感情から手を差し伸ばしてくれる物になっていた。

 

『ミカ姉ちゃん、俺はアンタを助けたいって思ってる、この言葉は嘘じゃないし、口先だけの言葉でもない……俺の『本当の気持ち』だ』

 

「……何だかカッコつけちゃっさ、いっつもカナタはお姉ちゃんの前だけ一丁前の事言うんだから。」

 

昔から体が弱くて、初めて外の人間と会った時も「……お姉ちゃん…」って言いながら私の膝の上で丸くなってたあの子が、今はこんなことを言えるまで成長したのだと、感慨深い気持ちになる。

 

ナギちゃんやセイアちゃんが『大好き』って言う感情なら、カナタの事は『愛してる』って言う表現が最適だと思う。

 

弟を愛してるって言っちゃえばそれこそ『ブラコン』とか『溺愛してる』なんて世間から言われるかも知れない、でも私はそれでいい、だってカナタの事を愛しているから。

 

 

『ミカ姉ちゃん、俺はアンタを助けたいと思ってる。』

 

貴方は本当に馬鹿だよ、カナタ……私はもう救いようのない人間なのに、悪い事をした悪い子なのに。どうして救おうとしてくれるの?何で、助けたいって言ってくれるの?

 

「お姉ちゃんの事嫌いって言ってきたくせに、次の瞬間には私の事を助けたいとか。手のひら返しにも程があると思わないかなぁ……。」

 

ミカはポツリと呟き、『エデン条約会場が炎上!!』というワードが横流しされているテレビに目を向けた。

 

 

 

 

 

 

エデン条約調印式は、長年にわたるゲヘナのトリニティの関係を修復する為に行われるはずだった、しかしこの状況は何だ?得体の知れない何かが、二つの学園の生徒を無差別に攻撃している。

 

調印式が行われる会場に関しては、何者かによってミサイルの爆撃を受けた。そのせいで街中は怪我人で溢れ返っていて、俺は人混みに紛れたせいでアズサとはぐれてしまった……探したくても、コイツらのせいで探す事ができない。

 

お腹から滲み出る血を必死に手で抑え、目の前のガスマスクを装着している黒い()()を睨み付けた。倒しても倒しても数が減ることはない、徐々に倒れていくのは正義実現委員会で活動を共にした仲間達だけ。

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 

もう少し救護騎士団の部室で休んでおくべきだったのだと、俺は怪我で地に伏した時に痛感した……これでも最初は、ミカ姉ちゃんに付けられた傷を抱えたとしても数体は撃破できた。

 

「……どうして…これで、これで全部終わるはずだったのに……クソ…クソ……」

 

だけど今は、コイツらの巣があると疑いたくなるほど大量に出現している。一人一人の単体性能もトリニティの中では上澄みと言っても過言ではない、2つの学園で力を合わせても押されてきている。

 

 

 

なんで、動けないんだよ

 

 

「きゃぁぁぁぁ!?」

 

 

目の前で助けを求めている人物が山ほど居ると言うのに、なんで俺はここに倒れているんだ、なんで俺はあの人達を助ける事ができないんだ。

 

 

「誰か!誰かぁぁぁぁ!!!」

 

もしもあそこで助けを求めているのがヒフミだったら、コハルだったら、ナギサさんだったら、ミカ姉ちゃんだったら、俺は損傷を理由に見ることしか出来ないのか?

 

 

 

 

 

そんなの───

 

 

 

 

 

 

 

ジジッ……!!!

 

 

 

そんな事があってしまったら、自分を赦してはいけない、『聖園カナタ』という存在を……ん……あれ、あれ、あれ?

 

 

聖園カナタって、誰……?なんだっけ、それ………ダメだ、なんだか上手く思い出せない。

 

 

 

俺って……何、だっけ?

 

 

 

 

「……っ…!ダメだ…ダメだ、ダメだダメだダメだ!」

 

それだけは忘れちゃいけない、これだけは絶対に覚えておかなきゃいけない!何で俺は忘れそうになった、どうして自分を見失いそうになったんだ!

 

それにさっき、何だか頭の上からノイズみたいな音がした……もう何が何だかわからない、何を真っ先に考えればいいのか分からなくなってきた。

 

 

走り、走り、走り

 

 

悲鳴が聞こえる箇所にひたすら走り続け、黒いマスクを付けている奴らを倒しまくる、それが何の正体なのかは分からない、だけど、早く倒さなきゃ。

 

戦って、勝って、見てもらって、みんなに自分の存在価値を認めてもらう。

 

 

それこそが───『聖園カナタ』という男の、証明なんだ。

 

 

 

ジィィィィィィ………!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……聖園カナタ」

 

彼が無我夢中に聖徒に走り続ける場面を、私は先程から何度も見ている、その姿はまるで。羽が無いのに空へ羽ばたこうとする一匹の雀の様だった。

 

私には’’予知夢,,というものがある、それが何なのかは私自身にもよく分からない。

 

しかし、あってはならないものだということは理解できる。予知夢を見るのは睡眠を取る際、何度も、何度も。この先にあってはならない結末を見た。

 

それは私にとって見苦しく、思わず目を逸らしてしまいたくなる様なものさえあった……だが、そんな私の予知夢には、最近になって’’変数,,となるものが現れた。

 

 

「…私が見た『本来の物語』とされる物に、君は居なかった。結末へ辿り着く前に生き絶えてしまったからなのか、はたまた……元から居なかったなのか。」

 

聖園カナタ、君は変数だ。シャーレの先生を凌駕するかも知れない、この物語の結末を改変する事ができるかも知れない、極めて稀少な存在だ。

 

私は君にあったあの日から、様々なことを考えている、キヴォトスでは稀な『男』の身体を持つ君、ミカの弟でありながら、その姉とは対比するような性格を持つ君……。

 

極め付けに……あれ程までに、ナギサが惚れ込んでしまっている男。

 

「疑心暗鬼の闇に飲まれつつあるナギサの心を、君はほど解いて触れてみせた……何故だ、どうしてそんな事ができた、昔から関わっていたから?……違う、もっと別の何かがあるはずだ。」

 

シャーレの先生ですら出来なかったことを、聖園カナタは安易にやってのけた……もはや人間関係の話では無く、聖園カナタだから成し得たことなんだ。

 

それこそ私が言った言葉の通り。彼はこの物語を変える事のできる存在の1人、だからこそ彼が本来手の触れてはいけないところに手を伸ばしてしまい、物語の本質が変わったのかもしれない。

 

「物語の本質が変わった……これから訪れる未来で、彼が救うはずだった人間を、今度は君が救うことになるかもしれないね。」

 

この先にある物語は、暗い暗い海が続く様な展開だ。君が介入するかしないか、二つ道に分岐する箇所ばかり。

 

 

 


 

 

「あ、アズサちゃん……カナタ君……!!」

 

エデン条約会場が爆撃されてから、数時間が経過した。ヒフミは落ちている瓦礫や銃弾を避けながら、合流できていないカナタとアズサのことを探していた。

 

コハルは正義実現委員会によって呼び出され、ハナコはシスターフッドの指揮をしている。先生は───大怪我を負って意識不明、もはや話す事さえままならない様だ。

 

この状況で2人を探せる人物は、どこの部活にも無所属のヒフミ以外居なかった。

 

「2人とも……2人とも、一体どこへ……!」

 

無我夢中に走っている最中も、スマホの通知音が鳴り止まなかった。エデン条約会場が爆撃されて、メディアも混乱を起こしている。

 

「!!……あれはっ……!」

 

路地裏を見つけた、薄暗く電柱の光さえも灯っていない。何故その場所に目が入ったのかは分からない、でも、そこに行かなきゃって思ったから。

 

血の生臭い匂いが鼻を伝った、思わず声に出してしまうほど、ぐにゃりと表情を歪ませてしまうほど。路地裏の奥からは酷い何かを感じ取った。

 

 

だけど、行かなきゃ、早く。

 

 

 

あそこに……きっと、あそこに。

 

 

 

 

ようやく光が落ちている場所を見つけた時、ある1人の少女を見かけた。紛れもなく、その少女はアズサちゃんだ。

 

「………アズサ、ちゃん……?」

 

 

「っ……ヒフミ……」

 

 

「……どうして……アズサちゃん、なんで。」

 

 

ようやくアズサちゃんを見つけられた、ガスマスクを付けて顔が分からないけど、間違いなくアズサちゃんだった……だけど、再会を喜ぶ事は出来なかった。

 

見てしまったから、アズサちゃんが胸ぐらを掴んでいる人を、返り血を浴びてピンク色だった髪型が、徐々に赤に染まりつつあるその人物を。

 

 

 

「どうして……カナタ君の、胸ぐらを掴んでいるんですか……何故、カナタ君が……」

 

 

「…………ヒフミ、私なんかより……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……カナタが、おかしくなった。」

 







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