ウチの姉ちゃんと幼馴染、何とは言わんがデカい 作:himahy
『Vanitas vanitatum, et omnia vanitas』
聖園家にいた頃、自分の部屋代わりになっていた倉庫で偶然見つけた絵本の中に記されていた言葉だ
意味は人それぞれで解釈できるそうだが、子供の頃の僕にしっくりきたのは「全ては虚しい。どこまで行こうとも全ては虚しいものだ」と言う和訳だった
「…ぅ……ぁっ……」
「何してるの?…さっさとソレ持って出ていきなさいよ。」
背中を何度か踏み付けたと思えば、お母様は硬いパンを僕に投げると、お上品なブーツを履いて、薄暗い倉庫から出ていった。
だけれど、当時の僕は投げつけられたパンを一生懸命頬張った……理由は単純、お母様に褒めて貰いたかったから、お姉ちゃんと同じで頭を撫でて欲しかったから、「頑張ったね」ってみんなに言って欲しかったから。
朝昼晩と出てくるのは冷蔵庫の中にある冷たいパンか、何日か放置したであろうぬるい水だけだった…でも、当時の俺はそれが"普通"なんだって思った、テストで良い点数取っても何も褒められないなんて、みんなの中でも普通だと感じてた
みんな同じで僕も一緒、それで同じ"人間"と認めてもらえる、それで良いと思ってたんだ。
──────でも、違った
いつもお母様やお父様は僕なんかよりも"あの女"をずっと気にする、あの女と楽しそうな場所へ遊びに行く、「自慢の娘」だって言ってくれる
『聖園ミカ』
アイツが居たから、僕はこんな場所まで落ちてしまったんだ
全部、アイツが産まれてきたせい
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
全部嘘、大好きだよ、お姉ちゃん
補習授業部の補佐に就任してから、今日で三日が経過した……『補習授業部』と言われる面々なので、勉強については結構教え込む覚悟していたのだが…心無しか、補習授業部と言われている割には、全員が勉強熱心に見えてくる。
「カナタ君、この問題なのですが…」
「ん〜…何?」
"自称平凡な生徒"のヒフミは元々頭が良いのか覚えが良く、勉強で言えば平均的くらいだと思っている…うん、何で補修授業部入った?
「ハナコ、この問題はどう解けば良い?」
「どれですか?あぁ、なるほど……こう言う時はですね、倍数判定法を使って…」
初日に問題を起こしたアズサも今や勉強熱心な生徒に見えてきて、色々な意味で危険人物と感じたハナコは教えるのがすっごく上手……と言うかハナコは全部知ってるみたいな口ぶりをしてくる。
だけど、俺自身ハナコは勉強面では非常にリスペクトをしている……最初に出会った時はミカ姉ちゃんと同じオーラを感じ取ったのだが、どうやら気のせいな様だった。
「………?」
「コハル、どうかしたのか?」
「っっっ!!…ひゃっ!?」
しかし、俺にとって一番の問題なのは『正義実現委員会』所属のコハル……何と言うか、補習授業のプリントを見ても的外れな回答を幾つかしており、尚且つ喋ってると『大人』を頑張って演じているかの様に感じられる。
「コハル、そのページは今回のテスト範囲じゃないけど…どうかしたのか?」
「っ!?…べ、別に、知ってるわよ!…た、ただ…授業が簡単すぎるから、先の問題をやろうとしただけ!」
「あ、あはは……」
顔を真っ赤にしながら大声を出すコハルに、"本当にそうか?"と思わせる様な視線を送った……おいコラ先生、こう言う時にアンタの出番だろ、この子どうにかしてくれ。
"良い感じみたいだね。"
「はい!ハナコちゃんが何だかとっても凄くて…!それに、アズサちゃんも学習意欲たっぷりです!……コハルちゃんも実力を隠していた様ですし、これならもしかしたら、余裕で合格できてしまうかもしれません!」
「ヒフミ、あまり油断をしてはいけないぞ?……と言っても、俺自身あんまり偉いことは言えないんだけどな。」
"カナタは補習授業部の補佐をしてるんだし……全然言っても良いんじゃないかな?"
「……。」
口を挟んできた先生に対し、俺はやけに刺々しい視線を送った……先生とは言え、あの腐ったミカンのバーゲンセールと同じ『大人』だ…少しでも信頼する素振りでも見せて背中を見せて仕舞えば、すぐに尖ったナイフで刺される。
だからこそ、俺はこの大人と距離を取った状況を取らなければならない……相手が一歩踏み寄ろうとしたら、こちらは一歩後退する。
そして何の関係を持たないまま、ヒフミ達が補習授業部を卒業することが出来たら…すぐにこの大人から離れて、二度と関係を持たなければ良いだけ
そんな思いを胸に、俺はまた補習授業部の生徒達へ視線を向けた。
"…………"
『───だから、私の弟と会う時は気をつけてね?⭐︎』
彼と視線を合わせた時、ふとティーパーティと面談をした日の『ミカ』の言葉が釣り上げられた……その言葉は、彼女からの警告。
『…特に、先生みたいな『大人』はね』
あの時は、ミカの言葉の意図を一歳理解する事ができなかったが……今ならば彼女の言葉を理解できる…彼が私に向ける視線には、明らかな憎悪や怨みを感じられた。
◇
「……ふぅ…」
色々と困難はあったものの、ようやく迎えた迎えた『第一次特別学力試験』……試しに俺が一度解いてみたのだが、まぁ余裕で満点を取れた、と言うか取れないとおかしいな。
と言うか、問題を見ていると補習授業で教えた所が大半だ…皆んな授業はきちんと聞いていたし、それに足してこんな80〜90点は取れるであろう問題ばかり……勝ったな、ミカ姉ちゃんの胸見てくる。
ちなみに俺はと言うと、特別学力試験は用事があって席を外していたので、あの4人の頑張りを何も見れていないのだが……まぁ、ハナコやヒフミもいるし確定で合格をする事ができる
いやー良かったよかった、週末はミレニアムサイエンススクールの作品展示会を見に行こうと思ったし……これで補習授業部の補佐からも脱出……勝ったな、ナギサさんの顔見てくる
ルンルンと心を踊らせながら、俺は先生から貰った試験用紙の紙に目を通した。
しかし心の中ではどこか"これで1人でも不合格になったら俺のせいだな…"と、少しだけ不安が残っていた。
───ヒフミ 72点『合格』
うんうん、やっぱりヒフミは地頭が良いのかな?…よーし、よくできました。
───アズサ 32点 『不合格』
はいはい、アズサも合格おめでと────ん??
どこぞの最強が領○展開をしたかの如く、俺の頭には無数の情報が流れ込んできた…ん?32点?もしかして62点の間違いか?そうだよなそうに違いないはずだ……あんな熱心に勉強して32点?いやいや流石にないでしょ
用紙を裏返して、再度アズサの点数を確認した
\\32点//
「………………………………………」
恐る恐る、残り2つの用紙にも手を伸ばした。
───コハル 11点(不合格)
「………」
……じゅ…じゅう、いち?
散歩帰りの犬みたいに、段々と息が荒くなっていく……それと同時に、一番最初に脳内に浮かんできた言葉は『あれ?これ全部俺のせいにされるんじゃね?』という物だった
あーでも、まだハナコがいる…ハナコとヒフミと俺と先生であの2人にさえ教えれば、絶対合格まで…!!!
───ハナコ 2点(不合格)
「全ては…長い夢だったよ」
ガタンゴトンと大きな音を立てて、先生と俺を含めたバスは山奥へと走っていく…途中でバスの中から「ふむ…私ならあそこに罠を置く」とか物騒な言葉が聞こえた、マジでやめろよアズサ
正直に言えばめちゃくちゃ帰りたい、一次試験に落ちたら全員で合宿とか聞いてねえよ、しかも俺も巻き込まれて一週間程度部屋に帰れない。
はぁ……ナギサさんが恋しい……。
瞳を閉じれば脳内から溢れてくるのはナギサさんのグッドスマイルやグッド紅茶ガブガブ……ミカ姉ちゃん?あんまり恋しくないよ
そんな事を考えている内に、山奥にある一つの建物に到着し、俺たちは荷物を持ってバスを出た。
「ようやく着きましたね、ここが私達の…」
「はい、合宿の場所です……はぁ…ようやく着きましたね」
「しばらくは使われていない別館の建物と聞いたので、冷たい床で横になって寝ないといけないのかと思っていましたが…」
「可愛いベットもありますし、これならば夜中にみんなで『裸』で寝る事もできますね♡」
「……ん?」
「さっきから何でちょいちょい『裸』を強調するの!?と言うかベットも人数分あるから!」
「せっかくの合宿ですし、そう言うお勉強も必要ではありませんか?」
ちょい待て待て待て待て待て待て待て今『裸』て言った?……女性しか居ないキヴォトスでミカ姉ちゃん以外見た事ないあの裸?
しかし、補習授業部のみんなの破廉恥な姿が俺の脳内に映し出された、普通に胸も体も良いヒフミとアズサ、πがミカ姉ちゃんレベルのハナコ……そして、ロ○コンが好きになりそうな体型のコハル
補習授業部の補佐として、考えてはいけないと脳では理解している…だがしかし!もしもコイツらがマジで夜中裸でヤバい事をするのだとしたら…その誘惑に俺は耐えられるのだろうか?
江戸な音出たら俺はもう無理やで?ホンマに無理やで?ミカ姉ちゃんの裸見てギリギリなレベルなんだから、他の人の裸なんか見たら……
飛ぶぜ………
「カナタ君?…ふふっ、どうかしましたか?」
「!?…べ、別に何にも…」
「あら?そうですか?……ソレなら良いのですけど…」
いやらしい目付きで見つめてくる彼女に、俺と言う変態でも心底"浦和ハナコ"には敵わないと感服した
ハーメルンの書き方難しすぎる……上手い人誰かアドバイス頂戴