盲目少女が縄文から呪術の開祖になる話   作:ぷに凝

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ようやっと暗い所から出れたわー。いやー、気持ちいいー!

 

まさかマジで自力で脱出することになるとは思わんかったな。しかも手枷だけじゃなく壁もぶち抜いて。最強の脱走犯かっての。

 

まぁ実際、今の私ならどんな監獄に囚われたって自力で脱出できる気がする。ホント魔力さまさまだよー。魔力がこの世界に存在しなかったら私は絶対あの洞窟の中で死んでたね。間違いない。

 

それにしても、どれくらい閉じ込められてたのかわかんないけど少なくとも1週間程度は経ってたと思う。よく飲まず食わずで生きられたもんだな私も。まぁ、洞窟内に雨水が溜まってから一応水は飲んでたけど。

 

最初はちょっとした空腹感があったんだけど、それもいつの間にか忘れちゃってたんだよね。それくらい魔力の鍛錬に打ち込んでたってことかもしれないけど、飯を食わずにいれる理由にはならない。

 

それだけじゃなくて、今こうして外に出てみてわかったけど私って異様に体の感覚が鈍いんだよね。素足で外に出てるんだから石ころやらなんやらで多少足が傷んでもいいだろうに何も感じないし、なんなら壁をぶち抜いた時もほとんど拳に痛みとか感じなかった。

 

あと、暗い所から出たっていうのに私の目はいまだに見えないままだ。魔力を感知すれば周囲の様子を探ることはできるけど、目に見えるわけじゃない。本当にかすかな光すら感じないから、こりゃ失明してんな。マジでどうなってんだ私の体は。

 

いや、それにしても壮観だなぁ外は。目に見えなくても魔力を感知すればわかる。この世界がどれほど魔力に満ちていたのかってことが。魔力を感知するだけでここまで世界がガラッと変わって見えるってのはちょっとした衝撃だ。

 

さて。

 

「──!?」

 

少し遠くの方からざわざわと声が聞こえて、それが少しずつ近づいてくる。魔力を感知すると、それが4人の魔力を持った人型の生き物だということがわかった。

 

私は岩陰から身を出して、その人型の生き物の前に姿を現した。

 

「! ──!! ──!?」

 

うん、人だね。殺します。

 

いや殺さないけど、とにかく人だ。大人の男性が4人。手に斧やら槍やら弓矢の形をしたものを持って私のことを警戒した視線で睨んでいる。言語はわからないけど、イントネーションが若干日本語っぽい?かも。

私が岩壁を派手にぶっ壊したもんだから、かなり怖がらせちゃったみたいね。そりゃあんなデカい音立てたらそうなる。反省反省。

 

というわけで友好の証としてスマイルをプレゼントします。

 

「──っ!!」

 

いやなんでもっと警戒するねーん!

 

武器を構えて、完全に臨戦態勢に入った気配の男たちを見て私はズッコケかけた。

 

いやいや、私見ての通りのか弱い……か弱い? 女の子なんですけど! ってか洞窟にずっと閉じ込められてたせいですっぽんぽんなんですけど! そんな子に大の大人が武器向けるってどんな世界観やねん!

 

そもそも私、幽閉されてたんですけど!? こんな近くに人がいたならさっさと助けてくれてもよかったじゃん! 助けが来なかったせいでこっちはわざわざ魔力で体鍛えて……。

 

いや、そうか。わかったぞ。

 

多分、私を閉じ込めたのこいつらだ。だから最初から警戒してたし、武器持って完全装備だったんだ。普通裸の女の子が立ってたら警戒するより保護しようとするでしょ。その様子が全くないってことは最初から私のこと知ってんだわ、こいつら。

単独犯かと思ったら複数犯だったとは……いや、そもそも前提からして間違ってたんだ。

 

私の体だけじゃなく、多分時代も私が元いた21世紀じゃなくなってる。

 

男たちの装備は原始的な形の武器に薄い布のようなものを身に纏っている。かなり原始的な装いだ。そして首元の骨が擦れ合う音から動物の骨やら貝殻やらのアクセサリーをつけているようだから、文明のようなものがすでにあることはわかる。

 

弥生……いや、縄文時代かな。多分? そうでなくともどこかの地域の石器時代っぽい。

その頃にはすでに今みたいな格好をしてたって、朧げだけど習った記憶がある。顔つきがわかれば日本なのか海外なのかも予想つくんだけど。今んとこは使ってる言語が日本語に似てるように聞こえるってことしか、ここが縄文時代って根拠がないんだよね。

 

大昔。呪術やら占いが大真面目に信じられていた時代には他人と違う子供……“異端”は簡単に虐げられ、殺されたり迫害されたりしたのだと言う。

 

目も見えず、足も動かず、ご飯を食べなくても死ぬことがなく。

 

そういう私って存在は、この世界ではきっと異端なんだ。

 

だから、少し遠くに見える村から離れた洞窟の中に幽閉されて、死ぬまで放置された……そんな所だろう。

 

胸糞わりー。

 

「──!!」

 

そうこう私が考えているうちに、動かない私に痺れを切らしたのは集団の先頭に立っていた斧を持った男が大声をあげて襲いかかってきた。

 

いや、正確にはまだ襲いかかってきてはいない。だけど体内を流れる魔力の動きから襲い掛かろうとしてるんだろうなってことがわかった。ただ、私の“目”にはそれが酷く緩慢な動きに見えた。

 

大声を上げて、走り出して、斧を振り上げて、振り下ろす。私のところに攻撃が届くまでに4手必要だ。しかも最初の大声は必要ないし。

 

そんなノロノロとした動きを目の前で見せられて、攻撃に当たれって方が無理がある。まだ私を見た瞬間に斧を投げた方が勝算があった。

 

……って、喧嘩もしたことないのに落ち着きすぎだな私。魔力が見えるとこんなに有利なのかよ。

 

そんな訳で、私の目の前で振り上げられた斧を認識してから身を躱して、左脇を通り過ぎる斧を持つ両手を左手で叩いて斧を取り落とす。落ちた斧は蹴っ飛ばして手の届かないところにやって、無手になった男の襟元を右手で掴みながら、体勢を崩した男の足元を払って転ばせた。

 

そして転んだ男の顔面に向けて左のストレートを打ち込み、当たる寸前で止める。

 

「……」

 

男は目の前で止まった拳に、両目を限界まで見開いて驚愕している。ガクガクと足を震わせながら動けないでいるようだ。

後ろの男たちも同様に、一瞬で無力化された男の様子を見て呆けて固まっていることがわかる。

 

寸止めを食らった男が数秒遅れて泡を吹いて倒れ、私は立ち上がって男たちを見る。

 

「──!?」

「──っ!!」

「──!」

 

男たちはまだ武器を構えていたが、引け腰であまり戦意は感じられない。

そんな中で唯一弓を構えた男だけが意を決した様子で弦を引き絞った音がした。

 

それは正解に近い行動で、この距離なら矢は当てやすいし、こっちも至近距離から放たれた矢を躱せるほどの反射神経はまだない。そして命中すればこの小さい体にとっては致命傷と言える傷になるだろう。

 

ただ、矢は躱せなくても気配や視線を読めるし、洞窟の中で試したことあるからわかるけど、矢のような飛び道具にも魔力は乗る。

 

私は弓矢の男の指先が弦を離した瞬間、大きく胴体を逸らして体の位置を変えた。

数瞬のちに私の胴体があった場所を矢が風を切りながら通過し、遠く彼方まで飛んでいった。

 

男は、二度目の驚愕の様子を見せながら固まった。目が見えればあんぐりと口を開けた表情が拝めそうだ。

 

というわけで、一矢を放った弓矢の男は次を放つまでに時間がかかるから、その内に無力化して──。

 

「──!!」

「──! ──っ!!」

 

……と思ったら。

 

男たちは私が走り出した瞬間、絶叫しながら踵を返して逃げていってしまった。

躓いて転んだりしながら、男たちが来た方向へと駆け出していく。向かう方面には、複数の魔力の気配。

 

その先には人里があるようだった。

 

私は、足元に転がった男を見下ろしながら悩む。あの男たちを追いかけるべきか、と。

 

そして、こくんと頷いた。

 

面倒くせぇからいいや!!

 

私は地面に倒れる男から衣服を剥ぎ取り、遠くに蹴飛ばした斧を腰に下げると、逃げていった男たちとは真反対に歩き出した。

 

世界は広いのだ。今回はいい結果にならなかったけど、もっといい関係を築ける人たちも、きっとどこかにはいるはず。

 

そんな人に出会えるまで、この古の世界を歩き回るのもいいもんだろう。

 

……ってか私コミュ障なんで。あんま関わりたくないです。はい。

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