本作のすっくんは性格が非常に緩いのでゆる〜い気持ちで見てくれると助かります。
永遠にも思える時間を只管にぼーっとして過ごす。
生得領域内の骨の山の上に座り込んでやることもなくプラプラ足を揺らす。
俺は転生者である。
生まれた先は呪いであった。その自覚が充分にある。
前世の名を捨て、得た名前は両面宿儺。本名ではないが人々がそう呼ぶからそれに合わせてみた。
同時に沢山の人を殺した。術式で切ったり焼いたり、兎に角向かって来る奴は可愛い子以外みんな殺した。
そうしたら呪いの王だとか呼ばれるようになっちゃった。
そんで羂索とか言う訳分からん奴に絡まれるし、サラッと死後呪物になる縛りを結ばされるしで散々だった。
アイツはどげんかせんといかん、と固い決意を抱いたが縛りの所為で下手に手出しできない。
受肉したらなんかやらされるらしいし面倒なことこの上ない。
そんな人生の中でも裏梅という従者と出会えたのは幸運だったな。
呪物になってからもこうして一人で考え事をする日々。
退屈でしょうがない。裏梅の料理が食べたい。裏梅とイチャイチャしたい。
なのに受肉する気配はさっぱりだ。
そうして遂に千年ぐらいが経過した!
生まれたのは平安だったしそろそろ俺の前世と同じ年代になって来た。
良い加減受肉してくれ。暇で死にそう。死んでるのに。
本当に裏梅が側にいた時は良かった。
身の回りの世話はしてくれるし、料理は絶品。夜の相手もしてくれた。
裏梅がいない生活なんて色褪せているに違いない。実際今心が死んでるしな。
早く受肉して一生裏梅とイチャイチャ生活するんだ!と息巻いていると二十に分割された内の一つの指に変化があった。
お!あの見覚えのある額の縫い目は!!
羂索じゃないか!!やっと受肉の時が来たか!!
なんか前より美人な姿になってるな。これならまあ許せんこともない。
羂索は俺を気絶させた人間に受肉させる。
すると俺本来の四つ目に四本の腕、腹に口という異形の姿へと変貌する。
羂索が俺ににこやかに話しかけて来る。
「おはよう宿儺。千年振りだね」
俺は受肉した肉体の感覚を確認してから問いを返す。
「裏梅はどうした?」
「まだ良い素体が見つかってなくてね。その内受肉させるさ。それも縛りの内容だからね」
「そうか。なら良い……それで何をさせる気だ?」
俺がそう問うと羂索は悪辣な笑みを浮かべた。
どう見ても悪いことを企んでいる顔だ。やはり消すべきか。
世の為じゃない。俺と裏梅の為に必要だ。
「天元と星槳体の同化を阻止して欲しい」
「俺と六眼をぶつけるのか。その間に貴様が星槳体を殺すと」
「その通り。君ならできるだろ?」
「俺が六眼と戦う必要すらないな」
俺の言葉に羂索は疑問符を浮かべた。
羂索みたいな悪人なら当然だろうな。
「話し合いで解決する。現代人なら同化なんて拒否するだろう。その心を煽って自分から同化を拒否させる」
「なるほど!話し合いか。私にはない発想だ」
「まあ常に悪辣なことを考える貴様なら当然だろう。そんなことより俺は現代の生活を楽しみたい。さっさと終わらせて来る」
俺はそれだけ言って寂れた廃屋から出て行った。
◇
さて、カッコつけて出て行ったは良いがどうしようか。
取り敢えず高専にコンタクトを取るか。
という訳で正面から突撃!!!
「何の騒ぎだ!?」
「侵入者です!!」
「相手は何者だ!?」
そんな騒ぎが遠くから聞こえて来る。
俺の元に来るのも時間の問題だろう。
そう思っていると先に到着する人物が二人いた。
片方は白髪に青い瞳の高専生ともう片方は前髪が変な高専生。
タッグを組んで俺に挑むつもりらしい。
「見たまんま宿儺だな」
「これは過去最大級の敵だね。悟、自信の程は?」
「態々聞くとかビビってんの?ウケる!」
「は?」
何故か内輪揉めを始めたが、警戒度は最大級。俺という脅威を正しく理解しているからこそ油断なく見据えている。
それに対して俺はというと、無言でそのやり取りを見て青春してるなぁとほんわかしている。
「ククッ。別に貴様等を賽の目に切り裂いてやっても良いが生憎俺の目的はそれじゃない」
「あ?じゃあなんだって正面から侵入して来たんだよ?」
「お前を呼び出す為だ。六眼持ちの無下限呪術使い」
そう言えば目の前の男、五条悟は警戒を強めた。
俺が五条悟について知っているのは単に受肉先の記憶だ。
受肉先は呪術師だったらしく現代の呪術の知識はモリモリだ。それによると目の前のもう片方の男は夏油傑だ。
どちらも油断ならない潜在能力を秘めている。それと同時に今はまだ取るに足らない羽虫のような存在だ。
「俺に何の用だよ」
「話し合いがしたい。天元の同化についてだ」
「話し合い〜!?宿儺が!?」
「俺を何だと思っている。敵対されなければどうということはないぞ?」
二人は疑わしい目を向けた。
まあ俺から溢れ出る呪力が剣呑過ぎてそう思うんだろう。
しかしこれは厳然たる事実だ。
実際平安でも敵対的な行動さえ取られなければ殺し合いなんてしなかった。
まあ向こうが勝手に盛り上がって突貫して来たけど。
何もしてないのに興奮して来る相手って怖いよね。俺の存在感があり過ぎる所為だけど。
本当にいきなり襲い掛かって来るから困ったものだった。
俺が比較的穏やかな性格をしてると理解してくれたのは裏梅くらいのものだ。
マジで理解者がいてくれて良かった。でなけりゃやさぐれて本当に呪いを振り撒く化け物になるところだった。
俺が何もせずに黙って突っ立っていると向こうも漸く俺が本気で話し合いをする気だと理解したらしく一応構えを解いた。
それを見て俺は安堵の息を吐いた。人殺すの好きじゃないんだよなぁ。
グロいし、血生臭いしで良いことなし。俺はなるべく穏便に済ましたい派だ。
「それで天元様の同化が何だって?」
「ああ。天元の同化を阻止したいんだが、星槳体は何処にいる?」
二人は再度警戒度を引き上げた。何故に…。
俺は話し合いがしたいと言った筈なのに。
「そう急くな。俺は星槳体を殺す気はない」
「なら星槳体に会ってどうするつもりだ?」
「同化を拒否して欲しいと伝えるだけだ。いきなり首を切り落とすような真似はせん。何なら縛りでも結ぶか?」
「………いや、それは良い。君が本気で言っていることは理解した。取り敢えず先生方に報告するから教室で待っててくれ」
そうして俺は一先ず教室に案内されて高専の教師方と話し合いすることになった。
現在目の前には高専の教師が勢揃いしている。
皆が全力で俺を警戒している。剥き出しの刃みたいな呪力を叩き付けられればそうもなろう。
俺は呪力の抑え方を覚えるか、と思案しながら教師達が口を開くのを待った。
「天元様の同化を阻止したいとのことだが、その理由は何だ?」
「単に縛りだ。協力を強制させられている。相手は話せん。目的も知らん。以上だ」
「宿儺が縛りで動かされているのか。厄介な…下手すれば天元様の進化よりも恐ろしいことになるぞ」
「天元の進化か、俺と戦争か。好きな方を選べ。期限は同化の日までだ」
そうはっきりと口にすれば高専の教師方は喧々轟々と話し合いを始めた。
俺はその間茶菓子として出された栗饅頭を食べていた。お茶と合わせて非常に美味である。中々良いのを仕入れている。
星槳体って可愛いのかなぁ。なんてそんな下らないことを考えながら答えが出るのを待つのであった。
・すっくん
前世の記憶があるのでゆるゆるした性格をしてる。
裏梅が大好き。
・裏梅
主君が自分を好いてくれていることも主君の性格も理解してる。
すっくんが大好き
・羂索
すっくんが大好き(邪悪)
・高専一同
助けて…。