ゆるゆるすっくんなオリ主   作:雨曝し

4 / 7
決断

 

 

 

「「「めんそーれー!!!」」」

 

 俺と五条と天内の声が重なる。

 砂浜で水着姿になってはしゃぐのはいつになっても楽しいものだ。

 天内と黒井の水着姿も拝めるし、心も休まる。

 

「宿儺って海ではしゃいだりするんだ…」

「俺とて元は人間だぞ。人並みの感性は持ち合わせている」

 

 夏油の溢した疑問に答えながら天内と海水を掛け合って遊ぶ。

 その様子に夏油も黒井も微笑ましいものを見るような目を向けた。

 

 折角だしあの技を見せるか。

 俺は勢い良く海に向かって突っ込んだ。そしてパチャパチャと海面を走る。

 

「見ろ。海面走りだ」

「おお!!漫画のキャラみてえ!!」

「凄いのじゃ!妾もやりたい!!」

「コツさえ掴めば簡単だ」

 

 これは空間を面で捉える技術の応用だ。

 原理は単純で素早く水の面を蹴り上げて走っている。

 

 天内は真似しようとして失敗し、五条は術式を使ってズルしている。

 そうして遊んでいると夏油が時間だと声を掛ける。

 今日の15時に沖縄を発つ予定だからだ。

 

「あ。もうそんな時間か」

 

 五条の言葉に天内がシュンとする。

 それが可哀想で俺は思わず口出しした。

 

「戻るのは明日でも良いだろう。懸賞金の取り下げから同化までは時間がある。その間に高専に着いていれば問題なかろう」

「俺も賛成。天気も安定してるし、東京より沖縄の方が呪詛人(じゅそんちゅ)の数は少ないしな」

「もう少し真面目に話して……まあその方が手堅いのは事実だな」

 

 夏油は五条の戯れに呆れながらも了承した。

 そして何やら五条に耳打ちする。細かい内容までは分からないけど多分五条が術式を解いていないことに関してだろう。

 まあ俺を警戒してのことだろうな。俺はいつ爆発するか不明の核爆弾みたいなものだ。

 それが側にいては安心もできまい。

 

 俺は天内も五条も殺す気はないんだがな。

 同化するってなったら羂索が手を出すまで五条と遊んでいれば良いしな。

 まあ指一本分の俺なんて大したことないから結構ガチることになるとは思うけど、その時はその時だ。

 

 天内もこれだけ生きたいと思うように仕向ければ同化を拒否するだろう。

 俺にとっての最善は天内が同化しないこと。それが一番平和に終わる可能性が高い。

 天元の進化だって良い方向に動く可能性はある。というか進化というのなら自我は残る筈だ。なのでそこまで心配もしていない。

 

 逆に最悪は天内に懸賞金をつけた奴が天内を暗殺して天元が人類に敵対的な進化を遂げた場合。

 そのケースは俺の心が果てしなく荒れることになるだろうな。

 

 

 そんなことを考えながら天内達と遊び、うどんを食べて水族館に向かった。

 様々な魚達が悠々と泳ぐ様は壮観で自然の美しさを感じさせてくれる。

 

 天内も初めて来る水族館を存分に楽しんでいるらしく、無言であちこちを見て回る。

 魚達に見入っているその瞳には生命の輝きが映っていた。

 

 

 

 

 同化当日、15時。呪術高専筵山麓にて俺達は集まっていた。

 そこで夏油が優しく笑って口を開く。

 

「みんなお疲れ様。高専の結界内だ」

「これで一安心じゃな!!」

「……ですね」

「さて、どうだかな」

 

 俺の言葉にみんなが視線を集中させる。

 忘れているようなので改めて口にしておこう。

 

「忘れたか。俺は縛りで動かされている」

「っ…!黒幕がいるのか!!」

「その通り。そして奴がどう出るかは俺も知らん」

 

 羂索なら保険として天内を殺すとかやり出しそうだからな。

 あれほど邪悪な輩はそれくらい平気でやる。

 4人が息を呑む。しかし夏油はすぐに持ち直してみんなを落ち着かせる。

 

「……ここまで来れば早々出し抜かれることはない。侵入者があればアラートが鳴るしな」

「そうだな。あぁー疲れた…」

 

 五条が息を吐き、術式を解いたその瞬間。

 五条の腹を刀が貫いた。

 

「アンタ。どっかで会ったか?」

「気にすんな。俺も苦手だ。男の名前覚えんのは」

 

 五条が術式で貫いた犯人である口元に傷のある男を引き剥がす。

 その隙を逃さず夏油が呪霊で飲み込んだ。

 

 そして心配した傑が五条の元へと駆け付ける。

 それを手で制した五条は大丈夫だと嘯く。

 

 しかし直前で内臓を避ける勘の良さは驚嘆に値する。

 生まれ持った才能が他と一線を画すのだろう。それはさぞ生き難いだろうな。

 誰も自分と同じ目線にいないというのはそれだけ孤独なものだ。

 俺も裏梅と出会うまでは孤独に苛まれていた。

 

「天内優先。アイツの相手は俺がする。傑達は天元様の所へ行ってくれ」

「油断するなよ」

「誰に言ってんだよ」

 

 五条と夏油は熱いやり取りを交わして別れる。

 俺は天内達について行って共に薨星宮へ向かう。

 参道に来た辺りで黒井が立ち止まる。

 

「理子様。私はここまでです。理子様…どうか…」

 

 天内は黒井の言葉を遮って抱き締める。

 そして涙ながらに愛を口にする。

 

「黒井、大好きだよ!ずっと…!!これからもずっと…!!」

「私も…!!大好きです…」

 

 それが答えか。ならば、水を差すようで悪いが口にせねばならない。

 俺は穏やかに抱き合う2人へ声を掛けた。

 

「なら同化はなしだな」

「良いの?」

「何がだ?」

 

 俺は質問の意味が分からず疑問を返す。

 天内は涙の滲む瞳で俺を見た。

 

「星槳体なのに…同化しないで生きてて良いの…?」

「生きる権利は誰にでもある。それをどう使うかは貴様次第だ。生きたいと思うなら生きろ」

 

 俺の言葉を聞いて天内は静かに涙を流した。

 そして涙声で己の願いを口にする。

 

「私は…生きたい!!友達と遊びたい!!もっと色んなことをしたい!!もっとみんなと一緒にいたい!!」

「そうか。なら俺がそれを叶えられるように護ってやる」

 

 ここに呪術界の命運は決まった。

 天元との同化は白紙となり、俺という術師が誕生した。

 差し当たって初任務は天内の護衛といった所かな。

 

 俺はそんな他愛もないことを考えながら天内に向かって飛んで来た弾丸を切り落とした。

 

「チッ。何だ今の。斬撃か?」

「俺の術が見えているのか。思っていたより楽しめそうだ」

 

 五条を殺したか気絶させて来たんだろう。

 口元に傷のある男がエレベーターの上に立っていた。

 これは中々食い応えがある獲物が来たな。千年振りに楽しめると良いな。

 

 俺は無言で斬撃を飛ばす。

 それを男は山勘で飛んで避けた。背後の壁が大きく抉れる。

 華麗に地面に着地した男は冷や汗を流している。

 

「大したことないと思ってたんだが……こんな隠し玉がいたとはな」

「ケヒ。知らんのも無理はない。受肉したのもつい先日のことだ」

「受肉ね。それにその四つの目。まさかとは思うが……」

 

 男は警戒を最大限にする。

 現代では俺は呪いの王として有名人らしいし、俺が誰か思い至ったのかもしれない。

 

「誰であろうとどうだって良かろう。大切なのは俺は天内の味方で貴様が敵であるということだ」

「宿儺。理子ちゃんは私が護る。だから─」

「貴様では相手にならん。五条がやられたのだ。力の差は貴様自身が良く分かっているだろう」

「くっ…!」

 

 夏油は悔しそうに唇を噛んだ。

 今この場では足手纏いだと自覚したようだ。

 俺は無言で男を牽制しながら策を考える。

 

 並の攻撃は避けられる。今の俺の出力でコイツを殺すには俺自身の成長が必要になる。

 さて、どうしたものか。

 

「来ねえならこっちから行くぞ」

 

 男はそう宣告して肩に乗せた呪霊から刀を取り出して突貫してくる。

 途轍もない速度だ。呪力強化した俺の目でさえ追うのに苦労する。

 俺は正面から斬撃を放つ。男の刀は斬撃を切り裂いて凌いだ。

 

 成程。あの呪具は恐らく何であろうと切り裂く刀だ。

 狡いと言う勿れ。不可視の斬撃を放つ俺の方こそ狡い。

 

 俺は格子状に斬撃を飛ばしてみる。

 すると幾つかは切り落とせずに男の体を裂いた。

 血が舞い地面を汚す。

 

 今のままではジリ貧だな。

 どうにかして奴を殺す一撃を編み出さねば。

 成長する為に必要なことは……。

 

「ふむ。これならどうだ?」

 

 俺は閻魔天印を結んで術式対象を世界まで拡張した斬撃を放つ。

 それは通常の斬撃よりも速く飛んでいき、男の右腕を切り落とした。

 

「世界斬とでも言おうか。術式対象を世界まで広げた」

「……そうかよ。ったくとんでもねえ奴が控えてたもんだ…」

 

 男は腕から血を流したままその場に立ち尽くす。

 どうやら死期を悟ったらしい。

 

 俺が術式対象を世界まで拡張できたのは異世界転生という知識があったからだ。

 世界というものを他者よりも明確に捉えているからこそ世界を対象にした斬撃を放てた。

 転生者でなければ早々この策は思い付かないだろう。

 

「言い残すことはあるか?」

「ねぇよ……」

 

 男は素っ気なく返したかと思うと何かを思い出したかのように呟いた。

 

「2、3年もしたら俺のガキが禪院家に売られる。好きにしろ」

 

 その言葉を最後に俺は男の首を切り落とした。

 

 禪院家というと御三家だ。その家の関係者だったのか。

 どうせならその子供も引き取ってやるか。

 

 俺は男の死体を眺めながら今後について思案したのだった。

 

 

 





・すっくん
この度世界斬を覚えた。
新しい技にウキウキしている。

・理子
すっくんに対して好感度が爆上がりしている。

・美里
すっくんが思いの外優しいのだと気付いた。

・傑
己の無力を恨んでる。
闇落ちの兆しあり。

・悟
反転覚えて復活!リベンジ戦!と思ったらすっくんに先を越されてた。

・伏黒甚爾
子供の味方をするなら任せられるだろうと考えて遺言を残した。
和解ルートも存在した。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。