砂漠のアウトサイダー   作:上代わちき

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チャプター2「インサイダー」

 

 ターナーは、アーキバスのところの生まれだ。

 どういう経緯かファクトリーにぶち込まれ、コーラル漬けにされたらしい。

 

 何らかの実験の一環らしいが、詳しいことは知らない。

 知る気にもなれん。

 

 

 

「起きてください、ヨーダン」

 

 わかっていることは、こいつの何かがガリラヤ婆さんに引っ掛かったこと。

 だからアーキバスの施設から連れ帰ることになった。

 

 そんで、こいつの世話役を押し付けられた。

 まったくもって鬱陶しい。

 

 

 

「……頭がいてぇ」

「また酒を飲んだのですか。二日酔いするだけと学ぶべきです」

「うるっせぇなぁ……今何時だと思っている」

「朝の九時。普通の人ならもう職場に出勤している時間です。さぁ起きて、朝食ができましたよ」

「へいへい……」

 

 ターナーは、白い髪を伸ばした少女だ。

 俺の見立て通り見た目はやや幼いが実年齢はしっかり成人しているようで、身なりを綺麗にしたらそれなりに見れる面になった。

 所謂ボンキュッボンって具合で、経緯が違ったら今頃組み伏せていたかもしれん。

 

 まぁ実際にやる気にはなれん。

 それをわかっているから、ガリラヤ婆さんも俺に押し付けたんだろう。

 

 

 

 その長い髪を整えたり着飾ったりすることを怠る様子はない。

 ファクトリー出身のくせして家事も普通にできるし、存外メイド代わりにはなる。

 向こうからいわせりゃ「貴方が怠惰すぎるだけです」とのことだが、まぁ同じ部屋に置いといてもいいと多少思える程度には仕事ができることには違いない。

 

 ま、そうじゃなきゃ今頃追い出してるさ。

 

 

 

「……いただきますは?」

「お前は俺のママかよ。……いただきます」

「よろしい」

 

 

 肝心の料理の腕だが、まぁ可もなく不可もなく。

 強いて言えば未熟なところがある……ってのが特徴だ。

 

 経緯を思えば、まぁ悪いもんじゃあない。

 日に日にマシになっているしな。

 

 

 今日の朝飯は、シンプルな目玉焼きとトースト。

 それから、スーパーで買ってきたっていう野菜を使ったサラダだ。

 

 以前はコンビニの菓子パンやカップ麺で済ませていたことを思うと、ずいぶん健康的になっちまったもんだよ。

 

 

 

「ごっそさん」

「お粗末さまです。……ガリラヤさんから連絡が入っています。なんでも仕事の話だそうです」

 

 

 

 

 今回の依頼主はベイラム。

 まぁいつものだ。

 

 以前の作戦でコーラルプラントを入手したが、こいつを狙う勢力が他にもいる。

 

 

 

 ドーザー。

 コーラルをドラッグとして消費するならず者ども。

 本来はとある田舎惑星の集団を指す単語だそうだが、やってることが同じってことでこの辺りでも馴染んだ。

 そういえば、ガリラヤ婆さんも元はこういうドーザーの一人だったとか。

 

 ともあれ。

 こいつらがプラントを狙って襲撃してくるってなもんだから、迎撃しなきゃならん。

 

 

 

 まぁそれだけなら大したことはないな。

 だが、今回の奴らはサイレンス・イヴのところから大型兵器を購入したらしい。

 穏やかじゃない。

 

 だから、俺の出番ってわけだ。

 

 

 

 

 

「ところでヨーダン、本当に私が乗ってよかったのですか。この四脚AC、誰にも触らせなかったとガリラヤさんから聞きましたが」

「……まぁな。俺としても"そいつ"を戦場に連れて行きたくなかった。けど、久々にそいつの匂いが物語っていてな。渋々だ」

 

 それはそれとして、今回の作戦には手数もいる。

 ガレージ街で屯しているような独立傭兵じゃ物の数にも入らない。

 

 この俺ほどじゃなくとも、そこそこ使える奴が必要だった。

 

 

 本来ならワンダラーに連絡を取るのがこの手の相場だが、件の四脚から呼びかけられた。

 

 

 

 

 

 四脚AC「インサイダー」。

 レッドガンから持ち出した二機のうちの片割れ。

 

 大豊のバズーカ二丁と、二連六分裂ミサイルにガトリングキャノン。

 こいつらとC3フレームを載せた四脚型だ。

 

 

 

 この日までずっとガレージに眠らせていた。

 誰にも触らせなかったし、ガレージの外に連れ出すのもなしだった。

 

 勿論俺も例外じゃない。

 定期的な手入れは怠らなかったが、乗るようなことはしない。

 

 

 こいつは、俺のACじゃあないからな。

 

 

 

「……そろそろミッションが始まります。敵性MT部隊を確認しました」

「おーらい。じゃあやりますか。……間違っても"そいつ"を壊すなよ」

 

 正直ターナーに乗させてよかったか今でもわからん。

 だが、結局は嗅覚に従った。

 

 

 

 

 

「おい、ACが出て来たぞ!」

「ありゃぁ野良犬のヨーダンじゃねぇか、おい話が違うぞ!」

「どう違うって? 詳しく聞かせてもらおうか……その体になぁ!」

 

 早速仕事だ。

 いきなり人のことを犬呼ばわりとはマナーがなってねぇ。

 

 すぐ突撃して穴あきにしてやった。

 パイルバンカーでな。

 

 

 

「馬鹿が、奴に"犬"は禁句と教えた筈……っ?!」

「誰が、犬だって? よく聞こえねぇな!!!」

 

 かと思ったらお隣の四脚MTも大概デリカシーがない。

 どうやらまとめて健全育成が必要そうだ。

 

 まずはミサイルとガトリングでハチの巣にして、いいところでリニアライフルでぶち抜く。

 

 

 

「今だぜターナー」

「承知」

 

 そのまま体勢が崩れたところを、ターナーのバズーカが襲う。

 ばぁんと小気味いい爆発が眼前に広がる。

 

 この感じは久々だ。

 

 

 

 

「お、おい……あの四つ足も普通じゃねぇぞ……?」

「どこの奴だ? あの動きで、無名だってのかよ……?!」

 

 

 ターナーの駆るインサイダーは、見た感じそこそこできる。

 以前の持ち主と同じか、もしくはそれ以上にな。

 

 シュナイダーACの時は違って、生き生きしているようだ。

 あの時はそれだけ自我を殺されていたのか、はたまた相性が悪すぎたのか。 

 

 

 いずれにしろ、悪くはない。

 あんなに生きているインサイダーは、本当に久々だ。

 まさか、また肩を並べることができるとは思わなかった。

 

 

 

 

「MT部隊の殲滅を確認。……次が本番ですね」

「ああ。……来るぜ、RaDの化け物機体が」

 

 

 ターナーが次々とMTを爆破したところで、デカブツが現れた。

 

 EC-0803。

 通称"スマートクリーナー"。

 ……その試作モデルってとこらしいが、まぁとんでもない。

 

 

 

 

「ははは、まるで火山を背負ったヤドカリだなぁ。見ていて"笑える"よ」

「RaD製大型無人重機EC-0803。通称試作型スマートクリーナー。……流通を担ったのは、サイレンス・イヴという話でしたか」

「といっても、あのロリババアはただの中立だ。目くじら立てても仕方ねぇよ。……どっちかっていうと、一介のドーザーがあれを購入する資金を持ってる方がおかしいんだけどな」

 

 

 

 どうせアーキバスの工作だろうがな、とぼやきつつも奴さんを改めて見やる。

 

 

 スマートクリーナーの特徴は、真っ赤に染まった二振りのチェーンソーだ。

 巻き込まれたらただじゃ済まない。

 

 だがそれ以上に厄介なのは、まともに攻撃が効かないって点だ。

 正面の開口部か、背中に背負った煙突に攻撃をぶち込むしかないってわけさね。

 

 

 

 

「オーダーを、ヨーダン」

「正面は俺がやる。その間にお前は空中からバズーカを叩き込め」

「承知」

 

 まぁスマートクリーナーとの戦闘自体は、ひとまずは順調だったよ。

 接敵して早々の段階じゃ特筆することはない。

 

 チェーンソーを避けて、開口部にチャージショットをぶち込んで、その間にターナーがバズーカで煙突内部を爆破。

 その繰り返しだ。

 

 

 

「……んぁ? なんだぁ?」

 

 "笑える"のはここからだ。

 内部爆破を繰り返しているうちに、スマートクリーナーの行動パターンが変わった。

 

 

 

「回転破砕機をパージ……? いや、内部が異常燃焼しています! このままでは熱が噴き出て……!」

「いや、そいつが狙いらしい。……気をつけろ、あの火炎放射に巻き込まれたら一瞬で溶けるぞ! ENだけは絶対に切らすな!」

 

 

 スマートクリーナー内部が、異常燃焼している。

 意図的なシロモノらしく、パージされたチェーンソーの代わりにとんでもなくでかい炎が噴き出てやがる。

 

 さながら炎でできた"ヒュージブレード"ってとこか。

 だがいくらなんでも馬鹿すぎる。

 

 

 

 このままじゃ自壊するだろう。

 だがその自壊の前に、俺達を吹き飛ばす腹積もりらしい。

 

 

 案の定、暴走したスマートクリーナーはそのヒュージブレードで薙ぎ払ってきた。

 

 

 

 

 

 ターナーは大丈夫だ。

 空中でホバー移動している。

 

 上から左斜め下へ袈裟斬りするヒュージブレードの軌道上当たることはない。

 

 

 

 後は、気合で避けるだけだ。

 

 

 

 

 

「いいぜ、来なよ。それで俺を殺せるならな!」

 

 

 さぁコイントスのお時間だ。

 ヒュージブレードの懐に潜り込む。

 

 もはや弱点の開口部を狙う必要はない。

 こいつを避けるだけで、勝負はなる。

 

 

 

「……っ」

 

 

 ビリビリと全身が逆立って、音が消える。

 一瞬死んだかと思った。

 

 

 

 だが、コインは俺の方に微笑んだ。

 なんとなくインサイダーの声が匂った方へQBを吹かせたら、たまたまうまくいけた。

 

 

 

 

 

「ヨーダン!」

「生きてるよ。……ああ、また生き残っちまったぜ」

 

 はっきりいって、今回は運がよかっただけだ。

 一歩間違ったらすりつぶされていた。

 

 だが、どうにも俺ぁこういう時の悪運が強いらしくてな。

 

 

 

 スマートクリーナーが自壊するところを、この目で拝めた。

 ありゃ課題点大ありだよ。

 

 もう二度と相手したくないがな。

 

 

 

 

 

「それで、状況は?」

「スマートクリーナーが残党を焼き尽くしました。ミッション完了です」

「まじで馬鹿だなあれ。製作者の顔が見てみてぇよ。……じゃあ戻るか。家に帰るまでが遠足だからな、油断はするなよ」

 

 

 今回は散々だ。

 生きた心地がしなかった。

 

 だがまぁ、ターナーは最後までインサイダーを生き残らせた。

 その点だけは評価してやってもいい。

 

 

 

 しばらくはこのまま乗せてやってもいいかもしれんな。

 

 

 





 スマートクリーナーの品番が食い違うのは仕様です。あくまで試作品故。(原作では「EC-0804」、本作は「EC-0803」)
 ……それにしたってちょっと馬鹿すぎる。味方のドーザー燃やし尽くすって何よ。





 ターナー

 独立傭兵ヨーダンの助手。

 ターナーはもともとアーキバスのファクトリーに収容されていた実験体である。
 とりわけコーラルを用いた実験に供されており、その結果旧世代の強化人間に相応する機能を得ている。

 コーラルに対する耐性を有する実験体であったが、実際の戦闘ではその適性を無視する運用がなされた。
 結果ヨーダンに鹵獲され、彼の助手として利用される末路を辿った。



 AC // インサイダー

 ターナーが駆るベイラム製四脚AC。インサイダーとは「内部者」転じて「組織にいる者」を意味する。

 武装は大豊製バズーカ二丁・二連六分裂ミサイル・ガトリングキャノンを搭載。
 フレームはC3シリーズで統一しつつ、脚部だけベイラム製四脚パーツに換装。
 内部は「BST-G2/PO4」「FC-008 TALBOT」「DF-GN-06 MINH-TANG」
 拡張機能はパルスアーマー。

 二丁のバズーカで相手を爆破しまくりつつ、取り回しの良い軽量ガトリングキャノンで相手を牽制する機体。
 もともとヨーダンのAC「アウトサイダー」との協働が前提の機体であり、地上でヨーダンが敵部隊を乱してその隙にバズーカを叩きこむスタイル。
 塗装されたエムブレムは「二匹のアラビアオオカミ」。



 もともとはレッドガンの機体。それをヨーダンが自身のACと共に持ち出したもの。
 今話までずっとガレージに眠らせていたが、ヨーダンの嗅覚曰くターナーを新たな持ち主として見出したらしい。
 当然前の持ち主も存在していた。ヨーダン曰く「ACのセンスは平凡だが、いい女だった」とのこと。





 メタ解説
 定期的に組みたくなるバズーカ機体シリーズ。次々と敵を爆破していくの楽しい。
 前回のコンゴ機体はバズーカ四丁構成と言うバカみたいな機体だったのに対して、今回は肩ガトを組み合わせて少しマイルドな仕上がりに。

 本来は「一般ルビコニアンデス傭兵の話」の番外編機体として運用予定だったが、気が変わってヨーダンの僚機として流用。
 どのみち元レッドガン機体の設定だったため、都合がよかった。
 システム上は割と普通のACだが、本作的にはそこそこ重要な機体。ある意味主役機の「アウトサイダー」以上に。
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