砂漠のアウトサイダー   作:上代わちき

4 / 5
チャプター4「別れ」

 

 

 

『続いてのニュースです。サイレンス・イヴが大豊のソリアーノ営業所を襲撃し、業務提携を結びました。イヴは同社別支部にも襲撃をかけた疑いがあり、同社との繋がりを強める狙いが……』

「何の何の何?!」

「このニュースの前半と後半の文章のつながり方、絶対何か間違っていますよヨーダン……」

「わからん。あの女だけは読めねぇ……なんで大豊を襲撃してんのに大豊と仲良くなってんだよあのドーザー」

 

 

 ダリのAC「ギャグ」を退けた作戦の後。

 流石にその日ばかりはターナーとも気まずい空気が流れたもんだが、数日経てば表面上は元通りになった。

 

 ……自分でビリヤニを作っても、あんましうまくできねぇんだよ。

 ターナーの作ったビリヤニの方がうまくってなぁ。

 

 

 

 

『……これに対しイヴは「いつかスマートクリーナー改修型で本社に突撃する。楽しみにしてて」とコメントを出しています』

「なぁこれ脅迫の類だよな? 仮にも業務提携している取引先に対する仕打ちじゃねぇよなおい? 何考えてんのあの死の武器商人」

「諦めましょう。あの人に関わっていいことはありません……。はい、晩御飯ができましたよ」

「おう。いつもありがとな」

 

 

 どうにも、俺は弱くなっちまったようだ。

 嫌でもこいつに気を使わないといけなくなった。

 

 こういうの、胃袋を掴まれるっていうんだろな。

 けど実際に美味いんだから仕方ねぇ。

 

 

 

 

『終わりに、ソリアーノの情勢をお伝えします。現在ベイラムはプラントを二つ保有しています。残り一つはアーキバスが占領していますが、これを奪取する狙いで……』

「あー……そういえば、そろそろ作戦が始まるかもってガリラヤ婆さんが言ってたなぁ」

「ヨーダン……」

 

 

 ま、それはあくまで表面上さね。

 アーキバスの話が出ると、理性よりも先に体が反応しちまう。

 

 

 

 惑星ソリアーノにあるコーラルプラントは三つ。

 既に二つがベイラムの手にあるが、上層部は残る一つもそろそろ獲る腹積もりのようだ。

 

 だがそれだけに、アーキバスも全力で防衛しにかかるだろう。

 

 

 

 前回ダリのホバータンクACを吹き飛ばしたが、あの感じじゃ五体満足で脱出している。

 間違いなく再戦となるだろう。

 

 その時に、全部決まる。

 

 

 

 

 ベイラムから大仕事が入った。

 アーキバスの"都市"を攻め、いよいよ最後のプラントを奪取する。

 

 

 今回の作戦はいたってシンプルだ。

 "都市"に詰めている二名のヴェスパー上位ナンバーを撃破する。

 

 残りは友軍MT部隊が始末するから、俺らとしてはやることは単純で済む。

 

 

 

 

「来たね。ヘルモンの猟犬」

 

 

 早速砂まみれのビル街を突っ切っていくと、ACが現れた。

 

 アーキバスのヴェスパーだ。

 だがダリのACじゃない。

 

 

 

「元レッドガンのエースパイロット"ヨーダン"。……まさかかの『最強』と戦場で相まみえるとは思わなかったよ」

「そういうアンタは、ホーキンスか。入れ替わりの激しいヴェスパーの中でもいやに"歴が長い"生き残り。……だがそれも今日までだ」

 

 

 ヴェスパー番号付き、ホーキンス。

 四脚AC「リコンフィグ」を操る兵だ。

 

 使用兵装はプラズマライフル・レーザーブレード・レーザーキャノン・プラズマミサイル。

 ほぼ全てEN兵装であるアーキバスらしい機体だ。

 

 

 

 ダリのホバータンクほどじゃないが、それでも高火力なのがウリだ。

 とりわけ、レーザーブレードが馬鹿にならない。

 チャージされたら広範囲を薙ぎ払われる。

 避けにくい癖に、当たったら無事では済まない。

 

 

 

 

 だが、好都合だ。

 

 

 

「ターナー! ちょうど奴さんは独り身だ。ダリと合流される前に仕留めるぞ!」

「承知」

 

 

 奴はMT部隊こそ率いているが、一気に肉薄してアサルトアーマーで一掃する。

 割と捨て身気味にやったおかげで、そこはスムーズだった。

 

 後はホーキンスのACとタイマン張るだけ。

 適当に相手していたら、ターナーが空中から爆破する手筈だ。

 

 

 

「……やるじゃないか。ダリ君が土をつけられるわけだ」

 

 

 リニアライフルのチャージショットでスタッガーに追い込み、そこをターナーが爆破する。

 だが仕留めきれず、離脱される。

 

 もう一度スタッガーに追い込もうとミサイルとガトリングをぶっ放すが、今度はパルスアーマーを展開された。

 アサルトアーマーはまだ使えない。

 やはりというべきか、こいつはその辺の奴とは"何か"が違う。

 

 

 

「さて。そろそろかな」

「何を……っ?!」

 

 おもむろに、ホーキンスがレーザーキャノンをぶっ放しやがる。

 放った先は俺ではなく、ターナーだ。

 

 

 まぁそれを喰らうほどターナーは馬鹿じゃない。

 しっかりレーザーを避けた。

 

 が、避けた先が不味かった。

 

 

 

 

「レーザータレット……!」

「自動追尾する自立兵器って奴か。これで分断したつもりかよ!」

 

 

 ターナーが回避した先には、レーザータレットが仕込まれていた。

 アーキバスの"都市"らしいトラップだ。

 

 おかげでしばらくターナーは回避に専念せざるを得ない。

 

 

 

「っ……!」

「ご生憎様、こちとら一人でもやってけるんだ! タイマンならどうにかなると思ったら大間違いさね!」

 

 

 けど、それで致命傷になることはない。

 ターナーの支援が見込めないが、ならタイマンで潰せばいい。

 

 奴の軌道を読んで、そこにパイルバンカーをぶち当てる。

 超威力の一撃だ。

 それだけでホーキンスのACは一気に体勢を崩す。

 

 

 

「ここまでか。後は頼んだよ、ダリ君」

 

 後は予めチャージしたリニアライフルで、ACの急所を貫くのみ。

 それでリコンフィグは終わりだ。

 

 

 ホーキンスは仕留めきれていない。

 そういう匂いだ。

 

 だがACさえ落とせば、後はどうにでもなる筈だ。

 だからひとまずはこれでいい。

 

 

 

 

 問題は、奴らの本命だろうダリだ。

 

 

「ヨー、ダン……」

「ターナー? ……ターナー?!」

 

 

 

 

 ホーキンスのACを尻目に、ターナーが放り込まれたエリアへ向かう。

 

 複数のビルに囲まれた広場だ。

 あちらこちらにレーザータレットや射出装置が火を噴いている。

 

 

 そのエリアの中央で、ターナーのACも墜ちていた。

 俺自身の内に流れる血が、冷えていく気がした。

 

 

 

「インサイダー……てめぇ!」

「遅かったな、ヘルモンの猟犬。……次は貴様だ」

 

 下手人は、ヴェスパー番号付き"ダリ"。

 この作戦の撃破目標だった。

 

 

 

 

 

「……そいつがてめぇの本来の機体か、フェゲラスの処刑人」

「存外冷静だな貴様。侮れん……!」

 

 

 ダリのACは、以前とは何もかも違っていた。

 前回のAC「ギャグ」がホバータンク型だったのに対し、今度のはオーソドックスな中量二脚型だ。

 

 

 

 中量二脚型AC「オセロット」。

 アーキバスの標準フレーム「VPシリーズ」で統一された、平凡な機体だ。

 見た感じ腕部だけ派生型の見慣れない奴だがな。

 

 武装は、範囲型パルスガン・レーザーブレード・六連プラズマミサイル・拡散レーザーキャノン。

 ゴリゴリの近接型だ。

 まともに付き合ったらレーザーで消し飛ばされる。

 

 

 

 しかも、この感じ……慣れてやがる。

 ダリといえば色んな機体パーツに適応できる柔軟性がウリのパイロットと聞いていたが、その中でもこいつがお気に入りのようだ。

 

 

 

 

「力を持ちすぎたもの。秩序を破壊するもの。アーキバスには不要だ。再教育センターやファクトリーに送るまでもない、排除だ」

「ハッ! てめぇも大概普通じゃねぇって自覚がないのかよ。俺が狂犬なら、てめぇはバケモンだ!」

 

 だが幸いこっちも頭が冷えている。

 伊達に戦場を生きてきたわけじゃあない。

 

 

 ダリは左肩のレーザーキャノンでチャージを始めている。

 だがそいつはブラフだ。

 

 プラズマミサイルをばらまいて、そこを避けたところにレーザーブレードを叩きこんで来た。

 チャージで出力を上げた、全周囲を薙ぎ払う連撃だ。

 

 

 

 だがこいつは高低差に対応できない弱点がある。

 死のリスクがおっかないから大抵の傭兵は対応できないが、俺ぐらいならどうにか回避できる。

 

 後はそこへリニアライフルのチャージショットで反撃するだけだ。

 

 

 

 

「……貴様はレッドガンを脱し、ソリアーノのプラントの一つを強奪した。独立傭兵には許されない戦果だ」

「知ったことかよ。自由気ままにやるのが、この職だ」

「ああ、そうだな。実にうらやましい限りだ。……だが」

 

 

 今度はパルスガンで射撃戦を仕掛けて来た。

 ぱっと見は単なるシャボン玉だが、馬鹿にならない火力だ。

 多分ジェネレータで強化している奴だろう。

 

 

 生憎こっちのジェネレータは地上戦特化型だ。

 すぐ着地して、それからQBを吹かして避けまくるしかない。

 

 

 

 それが狙いだったんだろうな。

 今度はダリの奴がトップアタックを仕掛けて来た。

 俺のACの上面を陣取って、チャージした拡散レーザーキャノンをぶち当ててきやがった。

 

 

 

「世の中には、逸脱しすぎた者がいる。奴らは戦場を荒し、秩序を荒し、世界を荒す」

「今度は何の講義さね」

「わからないのか? イレギュラーなのだよ。やりすぎたのだ、貴様は!」

 

 

 奴の追撃はパルスガンだ。

 オーバーヒートもおかまいなしにガンガン撃って、こっちのACを溶かしてくる。

 

 しかもよく見たらレーザーブレードを構えている。

 広範囲の薙ぎ払いで仕留めるつもりだろう。

 

 

 

 

 アサルトアーマーは無し。

 一度見せた札を使えば、同じ札で切り返される。

 

 だが、こっちは体勢を立て直している。

 

 

 

 ならやりようはある。

 

 

 

「らぁっ!」

「っ?!」

 

 パイルバンカー。

 ほぼ捨て身でぶち込んで、レーザーブレードと衝突した。

 

 多分、奴としてもこんなカウンターは想定してなかったと思う。

 俺としてもがむしゃらだったしな。

 

 

 

 

「……アーキバスは、貴様を許すことはない……いずれ、狩られるぞ」

「俺は、そのつもりだったよ……」

 

 そんで、偶然俺の方の打ちどころがよかったんだろう。

 勝負は俺が勝った。

 

 奴の生死まではわかっちゃいないが、ACは仕留めたんだ。

 作戦完了だ。

 

 

 

 また、生き残っちまった。

 

 

 

 

 

「……よー、だん」

「っ! ターナー!」

 

 かと思いきや、だ。

 ターナーは、まだ生きていた。

 

 ギリギリのところで、脱出装置を起動したんだろう。

 多少怪我はあるようだし、意識もやや朦朧としているようだが、見た感じこれから死ぬって感じじゃない。

 

 

 

「申し訳、ございま……貴方のACを壊して……」

「……もう、いいさ。とりあえずお前が生きてるなら、まだいい」

 

 

 ターナーを拾い上げて、コックピット内で抱く。

 ああ、まだ生きているってのがわかる。

 自分の体に流れる血が、熱を取り戻したのを感じる。

 

 

 存外生き残ってよかったかもしれない。

 この感覚は、ヘルモンの姉さんと作戦に出た時以来だ。

 ……もう、何年になることやら。

 

 

「あばよ、インサイダー。……今まで世話になった」

 

 

 




 オリジナルヴェスパーキャラが主体の話ですが、ワンクッションが欲しかったのでホーキンスさんに出勤していただきました。
 AC「リコンフィグ」らしさを出せている自信はありませんが、一方で彼の抜け目ない戦士らしさは演出できた……と考えていますが、いかがでしょう。



 ダリ

 アーキバスグループ強化人間部隊ヴェスパーの番号付き。

 第七世代の成功作であるダリは、大幅なパーツ変更に耐えうる貴重なパイロットである。
 それ故にアーキバス本社からの信頼も厚く、アーキバスの敵を例外なく排除する"処刑人"として恐れられた。

 「フェゲラスの処刑人」とは、自身の故郷であったコロニー「フェゲラス3」を滅ぼした実績に由来する。



 AC // オセロット
 ダリの操る中量二脚AC。

 武装は範囲型パルスガン・レーザーブレード・六連プラズマミサイル・拡散レーザーキャノン。
 フレームはアーキバス量産フレーム「VPシリーズ」で統一しつつ、腕部パーツだけ「Vp-46D」に換装。
 内部は「FLUEGEL/21Z」「FCS-G2/P05」「VE-20C」の組み合わせ。
 拡張機能は「アサルトアーマー」。

 広範囲のレーザーブレードや、拡散レーザーキャノンでスタッガーをとり、128ジェネで強化したパルスガンで追撃するスタイル。
 が、レーザーブレードにしろ拡散レーザーにしろ高火力なのでスタッガーをとる頃合には大抵の傭兵は溶けている。
 作中ではホバータンク型よりも歴が長い設定であり、アーキバスが誇る処刑人の象徴となっている。



 メタ解説
 まさかのサルバドール/ダリの機体第三弾。第一弾と第二弾は「一般ルビコニアンデス傭兵の話」なのに、なんで別作品で第三弾やってんだわっち。
 というのも、ホバータンクACから別ACに乗り換えて再戦すると決めた時、シュナイダーACは色々と不都合だろうと考えて新たに組んだ経緯がある。

 コンセプトとしては「サルバドール/ダリの中量型」&「アーキバス製ナインボール」。
 作中では絶望の象徴として立ちふさがる一方で、ナインボール本来のミサイルやグレネードはそれぞれプラミサと拡散レーザーキャノンに換装。
 あくまで"アーキバス製"なので、EN一色に。

 なおトップアタックからの攻撃をするなら拡散レーザーキャノンよりプラズマキャノンの方が望ましい。
 ……のだが、それに気づいた時には色々手遅れだった。と同時に、もしプラズマキャノンにしたらレーザー機体感もなくなるので泣く泣く没に。


 本作におけるダリのポジションは、フロイト&ラスティ。ヴェスパー枠であると同時に機体乗り換えをこなす枠。
 そのおかげで「情勢上のライバルはヒューロン」……というキャラの筈なのに、絡みとしてはヨーダンの方が濃い感じになってしまった。
 元レッドガンVS現ヴェスパーという構図になってしまったし、ヒューロンとはあくまで情勢上の関係だし、こういうこともある。
 今回ゲスト登場したホーキンスさんとは「番号ではダリの方が上だが、歴としてはホーキンスの方が先輩」というイメージ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。