『続いてのニュースです。サイレンス・イヴが大豊のソリアーノ営業所を襲撃し、業務提携を結びました。イヴは同社別支部にも襲撃をかけた疑いがあり、同社との繋がりを強める狙いが……』
「何の何の何?!」
「このニュースの前半と後半の文章のつながり方、絶対何か間違っていますよヨーダン……」
「わからん。あの女だけは読めねぇ……なんで大豊を襲撃してんのに大豊と仲良くなってんだよあのドーザー」
ダリのAC「ギャグ」を退けた作戦の後。
流石にその日ばかりはターナーとも気まずい空気が流れたもんだが、数日経てば表面上は元通りになった。
……自分でビリヤニを作っても、あんましうまくできねぇんだよ。
ターナーの作ったビリヤニの方がうまくってなぁ。
『……これに対しイヴは「いつかスマートクリーナー改修型で本社に突撃する。楽しみにしてて」とコメントを出しています』
「なぁこれ脅迫の類だよな? 仮にも業務提携している取引先に対する仕打ちじゃねぇよなおい? 何考えてんのあの死の武器商人」
「諦めましょう。あの人に関わっていいことはありません……。はい、晩御飯ができましたよ」
「おう。いつもありがとな」
どうにも、俺は弱くなっちまったようだ。
嫌でもこいつに気を使わないといけなくなった。
こういうの、胃袋を掴まれるっていうんだろな。
けど実際に美味いんだから仕方ねぇ。
『終わりに、ソリアーノの情勢をお伝えします。現在ベイラムはプラントを二つ保有しています。残り一つはアーキバスが占領していますが、これを奪取する狙いで……』
「あー……そういえば、そろそろ作戦が始まるかもってガリラヤ婆さんが言ってたなぁ」
「ヨーダン……」
ま、それはあくまで表面上さね。
アーキバスの話が出ると、理性よりも先に体が反応しちまう。
惑星ソリアーノにあるコーラルプラントは三つ。
既に二つがベイラムの手にあるが、上層部は残る一つもそろそろ獲る腹積もりのようだ。
だがそれだけに、アーキバスも全力で防衛しにかかるだろう。
前回ダリのホバータンクACを吹き飛ばしたが、あの感じじゃ五体満足で脱出している。
間違いなく再戦となるだろう。
その時に、全部決まる。
◆
ベイラムから大仕事が入った。
アーキバスの"都市"を攻め、いよいよ最後のプラントを奪取する。
今回の作戦はいたってシンプルだ。
"都市"に詰めている二名のヴェスパー上位ナンバーを撃破する。
残りは友軍MT部隊が始末するから、俺らとしてはやることは単純で済む。
「来たね。ヘルモンの猟犬」
早速砂まみれのビル街を突っ切っていくと、ACが現れた。
アーキバスのヴェスパーだ。
だがダリのACじゃない。
「元レッドガンのエースパイロット"ヨーダン"。……まさかかの『最強』と戦場で相まみえるとは思わなかったよ」
「そういうアンタは、ホーキンスか。入れ替わりの激しいヴェスパーの中でもいやに"歴が長い"生き残り。……だがそれも今日までだ」
ヴェスパー番号付き、ホーキンス。
四脚AC「リコンフィグ」を操る兵だ。
使用兵装はプラズマライフル・レーザーブレード・レーザーキャノン・プラズマミサイル。
ほぼ全てEN兵装であるアーキバスらしい機体だ。
ダリのホバータンクほどじゃないが、それでも高火力なのがウリだ。
とりわけ、レーザーブレードが馬鹿にならない。
チャージされたら広範囲を薙ぎ払われる。
避けにくい癖に、当たったら無事では済まない。
だが、好都合だ。
「ターナー! ちょうど奴さんは独り身だ。ダリと合流される前に仕留めるぞ!」
「承知」
奴はMT部隊こそ率いているが、一気に肉薄してアサルトアーマーで一掃する。
割と捨て身気味にやったおかげで、そこはスムーズだった。
後はホーキンスのACとタイマン張るだけ。
適当に相手していたら、ターナーが空中から爆破する手筈だ。
「……やるじゃないか。ダリ君が土をつけられるわけだ」
リニアライフルのチャージショットでスタッガーに追い込み、そこをターナーが爆破する。
だが仕留めきれず、離脱される。
もう一度スタッガーに追い込もうとミサイルとガトリングをぶっ放すが、今度はパルスアーマーを展開された。
アサルトアーマーはまだ使えない。
やはりというべきか、こいつはその辺の奴とは"何か"が違う。
「さて。そろそろかな」
「何を……っ?!」
おもむろに、ホーキンスがレーザーキャノンをぶっ放しやがる。
放った先は俺ではなく、ターナーだ。
まぁそれを喰らうほどターナーは馬鹿じゃない。
しっかりレーザーを避けた。
が、避けた先が不味かった。
「レーザータレット……!」
「自動追尾する自立兵器って奴か。これで分断したつもりかよ!」
ターナーが回避した先には、レーザータレットが仕込まれていた。
アーキバスの"都市"らしいトラップだ。
おかげでしばらくターナーは回避に専念せざるを得ない。
「っ……!」
「ご生憎様、こちとら一人でもやってけるんだ! タイマンならどうにかなると思ったら大間違いさね!」
けど、それで致命傷になることはない。
ターナーの支援が見込めないが、ならタイマンで潰せばいい。
奴の軌道を読んで、そこにパイルバンカーをぶち当てる。
超威力の一撃だ。
それだけでホーキンスのACは一気に体勢を崩す。
「ここまでか。後は頼んだよ、ダリ君」
後は予めチャージしたリニアライフルで、ACの急所を貫くのみ。
それでリコンフィグは終わりだ。
ホーキンスは仕留めきれていない。
そういう匂いだ。
だがACさえ落とせば、後はどうにでもなる筈だ。
だからひとまずはこれでいい。
問題は、奴らの本命だろうダリだ。
「ヨー、ダン……」
「ターナー? ……ターナー?!」
◆
ホーキンスのACを尻目に、ターナーが放り込まれたエリアへ向かう。
複数のビルに囲まれた広場だ。
あちらこちらにレーザータレットや射出装置が火を噴いている。
そのエリアの中央で、ターナーのACも墜ちていた。
俺自身の内に流れる血が、冷えていく気がした。
「インサイダー……てめぇ!」
「遅かったな、ヘルモンの猟犬。……次は貴様だ」
下手人は、ヴェスパー番号付き"ダリ"。
この作戦の撃破目標だった。
「……そいつがてめぇの本来の機体か、フェゲラスの処刑人」
「存外冷静だな貴様。侮れん……!」
ダリのACは、以前とは何もかも違っていた。
前回のAC「ギャグ」がホバータンク型だったのに対し、今度のはオーソドックスな中量二脚型だ。
中量二脚型AC「オセロット」。
アーキバスの標準フレーム「VPシリーズ」で統一された、平凡な機体だ。
見た感じ腕部だけ派生型の見慣れない奴だがな。
武装は、範囲型パルスガン・レーザーブレード・六連プラズマミサイル・拡散レーザーキャノン。
ゴリゴリの近接型だ。
まともに付き合ったらレーザーで消し飛ばされる。
しかも、この感じ……慣れてやがる。
ダリといえば色んな機体パーツに適応できる柔軟性がウリのパイロットと聞いていたが、その中でもこいつがお気に入りのようだ。
「力を持ちすぎたもの。秩序を破壊するもの。アーキバスには不要だ。再教育センターやファクトリーに送るまでもない、排除だ」
「ハッ! てめぇも大概普通じゃねぇって自覚がないのかよ。俺が狂犬なら、てめぇはバケモンだ!」
だが幸いこっちも頭が冷えている。
伊達に戦場を生きてきたわけじゃあない。
ダリは左肩のレーザーキャノンでチャージを始めている。
だがそいつはブラフだ。
プラズマミサイルをばらまいて、そこを避けたところにレーザーブレードを叩きこんで来た。
チャージで出力を上げた、全周囲を薙ぎ払う連撃だ。
だがこいつは高低差に対応できない弱点がある。
死のリスクがおっかないから大抵の傭兵は対応できないが、俺ぐらいならどうにか回避できる。
後はそこへリニアライフルのチャージショットで反撃するだけだ。
「……貴様はレッドガンを脱し、ソリアーノのプラントの一つを強奪した。独立傭兵には許されない戦果だ」
「知ったことかよ。自由気ままにやるのが、この職だ」
「ああ、そうだな。実にうらやましい限りだ。……だが」
今度はパルスガンで射撃戦を仕掛けて来た。
ぱっと見は単なるシャボン玉だが、馬鹿にならない火力だ。
多分ジェネレータで強化している奴だろう。
生憎こっちのジェネレータは地上戦特化型だ。
すぐ着地して、それからQBを吹かして避けまくるしかない。
それが狙いだったんだろうな。
今度はダリの奴がトップアタックを仕掛けて来た。
俺のACの上面を陣取って、チャージした拡散レーザーキャノンをぶち当ててきやがった。
「世の中には、逸脱しすぎた者がいる。奴らは戦場を荒し、秩序を荒し、世界を荒す」
「今度は何の講義さね」
「わからないのか? イレギュラーなのだよ。やりすぎたのだ、貴様は!」
奴の追撃はパルスガンだ。
オーバーヒートもおかまいなしにガンガン撃って、こっちのACを溶かしてくる。
しかもよく見たらレーザーブレードを構えている。
広範囲の薙ぎ払いで仕留めるつもりだろう。
アサルトアーマーは無し。
一度見せた札を使えば、同じ札で切り返される。
だが、こっちは体勢を立て直している。
ならやりようはある。
「らぁっ!」
「っ?!」
パイルバンカー。
ほぼ捨て身でぶち込んで、レーザーブレードと衝突した。
多分、奴としてもこんなカウンターは想定してなかったと思う。
俺としてもがむしゃらだったしな。
「……アーキバスは、貴様を許すことはない……いずれ、狩られるぞ」
「俺は、そのつもりだったよ……」
そんで、偶然俺の方の打ちどころがよかったんだろう。
勝負は俺が勝った。
奴の生死まではわかっちゃいないが、ACは仕留めたんだ。
作戦完了だ。
また、生き残っちまった。
「……よー、だん」
「っ! ターナー!」
かと思いきや、だ。
ターナーは、まだ生きていた。
ギリギリのところで、脱出装置を起動したんだろう。
多少怪我はあるようだし、意識もやや朦朧としているようだが、見た感じこれから死ぬって感じじゃない。
「申し訳、ございま……貴方のACを壊して……」
「……もう、いいさ。とりあえずお前が生きてるなら、まだいい」
ターナーを拾い上げて、コックピット内で抱く。
ああ、まだ生きているってのがわかる。
自分の体に流れる血が、熱を取り戻したのを感じる。
存外生き残ってよかったかもしれない。
この感覚は、ヘルモンの姉さんと作戦に出た時以来だ。
……もう、何年になることやら。
「あばよ、インサイダー。……今まで世話になった」
オリジナルヴェスパーキャラが主体の話ですが、ワンクッションが欲しかったのでホーキンスさんに出勤していただきました。
AC「リコンフィグ」らしさを出せている自信はありませんが、一方で彼の抜け目ない戦士らしさは演出できた……と考えていますが、いかがでしょう。
ダリ
アーキバスグループ強化人間部隊ヴェスパーの番号付き。
第七世代の成功作であるダリは、大幅なパーツ変更に耐えうる貴重なパイロットである。
それ故にアーキバス本社からの信頼も厚く、アーキバスの敵を例外なく排除する"処刑人"として恐れられた。
「フェゲラスの処刑人」とは、自身の故郷であったコロニー「フェゲラス3」を滅ぼした実績に由来する。
AC // オセロット
ダリの操る中量二脚AC。
武装は範囲型パルスガン・レーザーブレード・六連プラズマミサイル・拡散レーザーキャノン。
フレームはアーキバス量産フレーム「VPシリーズ」で統一しつつ、腕部パーツだけ「Vp-46D」に換装。
内部は「FLUEGEL/21Z」「FCS-G2/P05」「VE-20C」の組み合わせ。
拡張機能は「アサルトアーマー」。
広範囲のレーザーブレードや、拡散レーザーキャノンでスタッガーをとり、128ジェネで強化したパルスガンで追撃するスタイル。
が、レーザーブレードにしろ拡散レーザーにしろ高火力なのでスタッガーをとる頃合には大抵の傭兵は溶けている。
作中ではホバータンク型よりも歴が長い設定であり、アーキバスが誇る処刑人の象徴となっている。
メタ解説
まさかのサルバドール/ダリの機体第三弾。第一弾と第二弾は「一般ルビコニアンデス傭兵の話」なのに、なんで別作品で第三弾やってんだわっち。
というのも、ホバータンクACから別ACに乗り換えて再戦すると決めた時、シュナイダーACは色々と不都合だろうと考えて新たに組んだ経緯がある。
コンセプトとしては「サルバドール/ダリの中量型」&「アーキバス製ナインボール」。
作中では絶望の象徴として立ちふさがる一方で、ナインボール本来のミサイルやグレネードはそれぞれプラミサと拡散レーザーキャノンに換装。
あくまで"アーキバス製"なので、EN一色に。
なおトップアタックからの攻撃をするなら拡散レーザーキャノンよりプラズマキャノンの方が望ましい。
……のだが、それに気づいた時には色々手遅れだった。と同時に、もしプラズマキャノンにしたらレーザー機体感もなくなるので泣く泣く没に。
本作におけるダリのポジションは、フロイト&ラスティ。ヴェスパー枠であると同時に機体乗り換えをこなす枠。
そのおかげで「情勢上のライバルはヒューロン」……というキャラの筈なのに、絡みとしてはヨーダンの方が濃い感じになってしまった。
元レッドガンVS現ヴェスパーという構図になってしまったし、ヒューロンとはあくまで情勢上の関係だし、こういうこともある。
今回ゲスト登場したホーキンスさんとは「番号ではダリの方が上だが、歴としてはホーキンスの方が先輩」というイメージ。