せっかくのTS転生だし可愛い幼馴染を化け物にしてみた(責任取るつもりは一切ございません)   作:すっごい性癖

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深淵を認知したとき、深淵もまたこちらを認知している

 

「……ママ」

 

「大丈夫、怖くないよ?」

 

ぎゅう、と私の後ろに隠れるようにしながらしがみ付くカガリちゃん。

 

場所は早朝の学校、教室前の扉前。彼女にとって実にニか月ぶりの登校でした。肌を突き刺すような寒さも緩和し、暖かい日も増え桜の開花もニュースで話題となる今日この頃。

 

「そもそもまだ朝早いからきっと教室には誰もいないからさ。そっちの方が緊張しないでだろうって昨日話したでしょ?」

 

「……うん。そーだったよね」

 

基本私はいつもこの時間帯に登校しているのでちゃんと知っているのです。別に怯える必要は無い。

 

「むしろここでずっと止まってた方が後から来た子に注目されちゃうからね」

 

教室の前で棒立ちする二人組とか嫌でも注目されちゃいますから。

 

そう付け加えるとカガリちゃんはゴクリ、とつばを飲み込み覚悟を決めたような顔をしました。

 

少しずつ腰を掴む力が弱くなっていきました。

 

「そ、だよね。うん、そう。学校にはもう来てるんだ……。逃げられないし、逃げちゃダメ……。よしっ」

 

がしり、と教室入口の扉を強く掴む彼女。覚悟はもう決めたらしい。

 

別に誰もいない教室の扉を開けるぐらい、なんてことは無いと思うのですけれどもね。数か月サボった後の教室の扉というのは岩山よりも重いのでしょう。優等生なので私には分からない感覚です。

 

「――すぅ」

 

大きく息を吸い込み、しばらく溜めて吐き出す動作を繰り返しているのを後ろから眺める。深呼吸とはまたベタな、と思いますが実際緊張にはこれが一番ですしね。

 

「ッ――!」

 

気迫が背中から伝わってくるようなそんな熱量。大分長い覚悟期間も終了し、真の覚悟を決め込んだらしい。

 

腕に力を入れ横へとスライドしようとしたその瞬間。

 

ガララッ。

 

「――さっきから教室前でうるさいわよ、貴女た、」

 

「ギャアアアアアアア!!」

 

「えぇっ、何事よッ?!」

 

カガリちゃんが開く前に自動的に横へと移動した教室扉と、中から現れ注意の言葉を述べる見覚えしかない顔。

 

想定していなかった事態にパニックとなったカガリちゃんはコレまで聞いた声の中で断トツで一番の悲鳴を上げながらピシリと固まってしまっている。

 

仕方ないでしょう。私がこの時間帯に生徒は居ない、と言っていて実際は居たんですから。

 

……これは、まぁ。私が悪いですね。

 

でもまぁ、ずっとこのまま固まっているカガリちゃんを放置していても事態は進展しない。私は彼女を引っ張りながら教室に入っていきます。

 

あっ、もちろん朝の挨拶も忘れずに。

 

「キッカちゃんおはよ!」

 

毎日学校で会っていますが、なんだか久しぶりに会った気がしました。

 

 

 

 

 

「うぅ、ママの嘘つき……!」

 

「あははっ、ごめんねぇ。これはママが悪かったよ~」

 

「は?ママって……、はぁッ?!」

 

三者三様それぞれが異常な反応を示し混沌となる朝の教室。この教室に現状まともな人間は居ませんね、私を含めて。

 

カガリちゃんは私の腰に再度抱き着きながらプルプルと震え、珍しく文句を口に。私はそんな彼女をなだめるように頭を撫でて、キッカちゃんはそんな私たちの関係を急に見せつけられて頭がショートしてしまっている。

 

まぁキッカちゃんに関してはしょうがないですよね。幼馴染が不登校の子と仲良さそうにしていると思ったらママとか呼ばれてて、本人も一切否定しない、どころか自分のことをママだと言っているんですから。

 

……なんか、自分の今の状況を冷静に見つめるとホントなんでこんなことになってしまったんでしょうかね。そう思わずにはいられません。

 

「ちょっとユリ!!ママってどういうコトよ!?」

 

「あはは~、なんなんだろうね~。私が一番知りたいよ~」

 

それが分かるなら私はココまで苦労していませんって。説明したくてもできることなんてほとんどないですもん。

 

詳細を省けば引きこもっていた彼女にやさしくしてあげたら勝手にママ呼びしてくるようになった、ってだけですから。だけ、と呼ぶにはぶっ飛びすぎていますけどもそれは無視します。

 

「それよりキッカちゃん、なんでこんな朝早くに居るんです?一緒にお勉強する時間にしても早いですよね?」

 

私とキッカちゃんは早朝の教室で二人いつも勉強をしています。一緒に教科書を拡げて、分からない問題があれば教え合う二人だけの秘密の勉強会。それは中学の頃からの習慣でして、この一年も続けていたことです。

 

しかしだからこそ私はその時間よりも三十分早く学校に来て、絶対大丈夫だろうと踏んでたんですけれどもね。

 

ほんと、なんでいるんでしょうか?

 

そう思ってキッカちゃんに問いかけるとはて、と首を横に倒し

 

「なんでって……、なんでかしら?」

 

「いや、こっちが聞きたいんですけれども……」

 

なんて心底不思議そうにしている。あなたが知らなければ誰も知らないですって。

 

……あぁ、そう言えば最近はこういうことなくて忘れてましたけどそもそもキッカちゃんってこういう人でしたっけ。

 

彼女はその成績の良さからよく勘違いされますが、どちらかと言えば直観型の人なんですよね。なんといいますか、脳筋なんですよ彼女。

 

どっちかといえば頭脳戦漫画や恋愛漫画に出てくる秀才キャラじゃなくて、ゴリッゴリの戦闘漫画に出るタイプの委員長さん。それがキッカちゃんの根本。

 

一年生にしてバスケ部エースの座を掻っ攫っているのは伊達ではない、ということです。

 

メチャクチャ身体能力高いですし、メチャクチャ運動神経いいですし、メチャクチャ勘が良い。そんなフィジカル全振りみたいな身体に生まれた女の子です。

 

だから彼女の行動は割と理性ではなく本能で決定されます。自然の嗅覚で自分にとって最良の選択肢を選ばそうとしてくるのですよ。

 

あくまでフィジカルの人。そこにさらに勉強を頑張るという真面目さが合わさってキッカちゃんという女の子になる。おバカじゃない脳筋ちゃんというのが一番彼女を適切に表現していることとなると私は思います。イチ幼馴染からの解説でした。

 

「……まぁ多かれ少なかれ他のことも接することになりますからキッカちゃんだっただけマシ、と思いますか」

 

「マシって何よ、マシって。ユリ?」

 

「あっ、あっ、小突かないでぇ……」

 

あ~キモチ。最近キッカちゃんとはこういう会話の中での僅かな悪態を感じ取るとこうして些細ではありますがきちんと手を出してくれるようになりました。

 

今も私の『マシ』という言葉に反応してうりうり、と頭を小突かれます。いやぁ、私の努力がこうして日常に現れると頑張ったかいがあったってものです。

 

実際、教室に居たのがキッカちゃんだったのは幸いだったと私は思います。

 

だってキッカちゃん、カガリちゃんのイジメにまったく関与していないので話をしやすいですし、いい練習相手になりますし。

 

いや実際関係しているかどうか、私もそこまで完璧に把握はしてないんですけどね?

 

ただキッカちゃんだけは絶対関与していないってわかりますから。というか、参加するような子なら私がキッカちゃんにしている調教ももっと簡単に終わってましたし。それに事の発端がカレンちゃんとなれば億が一にも参加するわけがありませんしね。

 

 

とりあえず私は彼女のイジメに関しては隠して、引きこもっていた彼女と接しているうちに懐かれてママと呼ばれるようになった、と簡単に説明だけしました。

 

 

「ユリを疑うんじゃないのだけれどね?懐かれただけでママなんて呼ばれるの?」

 

「いやぁ、呼ばれちゃったんだよね~」

 

「それで、久しぶりの復学だから誰もいないであろう時間帯を狙って学校に来た、と」

 

「そうなんだよ。で、来てみたらビックリ、というわけ」

 

なる、ほど?と余り納得いってはいなさそうですが、実際目にした以上疑っていても仕方がないと割り切るかキッカちゃん。やっぱりこういうところで理屈に閉じこもらないで割り切れるのがキッカちゃんが脳より体寄りの人間ってことの証明でしょうかね。

 

せっかくならクラスの子とお話する練習相手をしてあげて?とお願いすると二つ返事で了承するキッカちゃん。

 

腰に抱き着きながらずっと静かにしていたカガリちゃんの頭を軽く叩いてこちらに注意を向けてもらう。

 

「キッカちゃんがクラスメイトとのお話の練習をしてくれるそうなのでせっかくですからカガリちゃん、頑張ってみませんか?」

 

「……やる」

 

こくり、と私の提案をこちらも二つ返事で了承するカガリちゃん。

 

つい最近まで部屋に入れることすら拒絶していた彼女が今ではこんなに立派になって……。と、少々感じ入ってしまうのは彼女に感化されすぎでしょうかね。

 

「それで、えっと……。花火、さん?」

 

「……なに、かな?」

 

「なんでユリがママなのかしら?」

 

「なんでって……。ママだから、としか言えないけど」

 

うんうん、ちゃんとお話しできているようでママ嬉しいですよ。お話しできているのか微妙ですけど、ここ最近のトンチキ会話のせいで慣れてしまったせいか私にとってはこれは成功しているように見えました。

 

キッカちゃんもこれ以上追及しても納得のいく回答は得られないのか話題を変え、あれこれと会話を展開していきます。

 

基本キッカちゃんがカガリちゃんに質問をする、という形式でカガリちゃんは答えるだけでいいので気が楽なのでしょう。少しずつ会話の間も生じなくなり出しだしていました。

 

「花火さんは好きな食べ物ってあるの?」

 

「えっとね、ママが作ったご飯ならなんでも!一番はオムライス!」

 

「そう、オムライスが好きなのね。ちゃんと答えられて偉いわ」

 

「えへへっ」

 

だいぶ二人も打ち解け合ったみたいですね。二人は思ったよりも相性が良かったのでしょう。

 

私の子供としての精神に変化したカガリちゃんと、基本誰にでも優しい、例外はカレンちゃん、みたいなキッカちゃん。キッカちゃんは純真なカガリちゃんを気に入ったのか、口角を上げながら柔らかい口調で彼女を褒めている。カガリちゃんもカガリちゃんでキッカちゃんからのお褒めの言葉はまんざらでもないのか嬉しそうです。

 

これが癒し空間ってやつですかね。私にとって主食じゃあありませんが、それでも和みますよ。

 

あれ、そういえば今の今まで疑問に思ってなかったですけど私、今まで一回も彼女に料理なんて作ってませんよ。オムライスだって作ってません。

 

……なんか私、彼女の勝手に創り出す記憶に慣れてきてしまっていますね。もういいですけど。

 

「ねぇねぇ、今度は僕が質問してもいい?」

 

「もちろんよ、何でも聞いてね?」

 

「うんっ!」

 

おー、もう逆質問まで出来るようになりましたか。成長著しいですね、流石は私の娘。優秀。

 

「キッカちゃんとママってどんな関係なの?」

 

「そうねぇ、一言でいうなら……幼馴染?」

 

「そうだね~、私とキッカちゃんはちっちゃい頃から仲良しだったんだ。いっしょによく遊んでたんだよ?」

 

「へ~っ!ママのちっちゃい頃かぁ、想像できないな!」

 

「小さい頃のユリはとっても可愛らしかったわよ。可愛いというか、愛らしいというか、みんなにやさしい子でね……」

 

「ちょっと、恥ずかしいからやめてよ~。ちっちゃい頃の話とかさぁ」

 

こう何回もキッカちゃんに可愛い、可愛い、って言われると恥ずかしいものですね。

 

恐らく好感度が高いって言うのもあるんでしょうけど、同時期一緒にいたのがカレンちゃんですからマイナスフィルタがかかってもいるんでしょう。実際は合ったばっかりのカレンちゃんは私の手もほとんど入って無かったのでごく普通の美少女でしたが。

 

記憶はねじ曲がっていくものなのです。私は痛いほどそれをここ最近で痛感していますからよくわかりますよ。

 

「幼馴染かぁ、いいなぁ……」

 

「ふふっ。なんだったらユリがママなら私がパパでもいいわよ?」

 

「いや、パパは良いかな。ママがまた捨てられたら可哀そうだもん」

 

おぉう、キッカちゃんが急にギアを上げたと思ったらカガリちゃんの方ももっとギアを上げてきましたよ。これにはキッカちゃんもびっくり。ぽかんとお口を開けています。

 

一方カガリちゃんはメチャクチャ座った目でじっとこちらを見つめてくる。怖い。

 

それにしてもまた、センシティブな設定を勝手に生やしてきましたねぇ。

 

「ママは若いときにパパに捨てられて女手一人で私を育ててくれたの!今更父親面するような人いらない!」

 

その設定、私も知らなかったですねぇ。何か知らんうちに私にシンママ属性まで付けられてたよ。

 

えっ、私、カガリちゃんの中では男に捨てられた設定なんです?マジですか?だいぶショックなんですけど。私、どっちかと言えば捨てる派閥じゃないですかね?

 

……。

 

ちょっと頭が痛くなってきたので私はそろそろ机の移動を始めます。

 

昨日の夜、スミレちゃんに相談してカガリちゃんの席を私の横に移動してもらったんですよね。カガリちゃんが窓側の一番端、その右隣に私。教室の一番後ろ側なので恐らくこれが一番周囲の人と会話しないで済み位置でしょう。

 

「それでもっ、幼馴染がつらい目にあっているのを見過ごしては置けない!お願いっカガリちゃん、貴女たち家族を私にも支えさせてッ!」

 

「やだっ!キッカちゃんは好きだけどパパはいらないの!」

 

 

なんかヒートアップしているおバカ二人は置いておきましょうかね。

 

キッカちゃん、だいぶ熱が入ってますね。

 

多分カガリちゃんの記憶がカガリちゃんにとっては事実となっているからでしょう。野生の嗅覚みたいなやつで彼女の言葉の真実を嗅ぎ取ってしまったから同調してしまっている。

 

ほんと、思ったより相性がいいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れたところから聞こえる二人の声をラジオのようにしながら後ろの席の子の机とカガリちゃんの席とを移動します。

 

(……そういえば)

 

ふと少し一人になって思考に隙間が空いたからか余計なことを思い出してしまいます。

 

それは花火家での最後に行った会話の記憶です。

 

登場人物は私とカガリちゃん。そして、カスミさん。

 

学校に行くこととなったのですから報告の意味を兼ねて話さないわけにはいきませんでしたから。

 

 

『僕、明日から学校に行くことにしたよ』

 

『そう……。ユリちゃんはもうウチには来てくれないの?』

 

あの親子二人が並ぶのを初めて見ましたが、互いが互いに全く興味を持っていない感じで私の方がアタフタしましたよ。ホント、会話が成り立ってないって言いますか、二人とも視線を私に向けないでって話。

 

相手の眼を見てお話ししましょうって小学校の先生も言ってますよ。

 

でもまぁそんな風に大分ヒヤヒヤする会話でしたけど、結果としては丸く収まったのも事実。

 

課程は大きく省きますが、大まかに説明すればカガリちゃんが私のことを『ママ』と、そしてカスミさんのことを『おばあちゃん』と呼んだことに起因しています。

 

それまで全く興味をカガリちゃんへと向けなかったカスミさんが初めて視線をカガリちゃんに向けていましたよ。

 

 

なんか、彼女たちの間でちょうどいい落としどころとなったっぽいです。

 

私を娘にしたいカスミさんと、私をママにしたいカガリちゃん。親子二代間ではどうしても成り立たない関係も、三代間へと拡げれば一切の問題なく収まる。

 

そもそも娘を娘とも思っていなかったカスミさんはカガリちゃんが孫になってもどうでも良く、娘のポジションには私が入る。

 

母親のことをもう母親とは覚えていないカガリちゃんにとってはもう、自分の中の記憶が正義でママが私なら他はどうでもいい。

 

この奇跡的なマッチングによって花火家の親子間断絶は私を橋渡しにして終了しました。

 

 

……えぇ、私が橋渡しです。

 

 

つまり……。

 

(逃げられなくなっちゃった……)

 

さっさとあのサイコパスとは縁を切りたかったんですけれども、カガリちゃんとの縁を繋ぐ限りはカスミさんもついてきてしまう。

 

カガリちゃんとの縁は高校卒業まで切りようがない。

 

 

というわけで私、あと二年はあの家と距離を置けなくなっちゃいました!!あははっ!!

 

 

あはは……。ははっ。

 

 

 

はぁ。机移動しよ……。

 

 

 

 




これにてカガリちゃん関連のお話は終了です 次回から学年が繰り上がって二年生に、ヒロインも新登場の予定

残りのヒロインにはあまり話数を使う予定はないので、順当に行けばあと十話ちょっとで完結すると思います 残り短い間ですがお付き合いよろしくお願いします

R18版希望調査

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