せっかくのTS転生だし可愛い幼馴染を化け物にしてみた(責任取るつもりは一切ございません) 作:すっごい性癖
今回の話はその話の後ですので、なんか話が続いていないな?と思われた方は一つ前の話を見ていただければ幸いです
「なぁおい、聞いてんのかぁ?」
「えぇっと……」
じろり、とその高い身長から見下ろすようにこちらを睨みつけてくる彼女。
真っ赤に染め上げた長い髪と着込んだ一張羅の特攻服はザ・不良といったような容姿で、時代に即してはおらず明らかに周囲から浮いている。
「同じクラスの仲間だしなぁ、助け合いのセーシンってやつがジューヨーじゃねえか?なぁおい?」
(……不運にもほどがありますよ)
はぁ、と内心ため息をつく。
今日は日曜日で学校は休みだったから前から気になっていた本を買いに行っていた途中なのですが……。どうやら運悪く彼女、竜胆カザハと鉢合わせてしまい目を付けられてしまいました。
彼女はその見た目もさることながら、その中身までもが旧時代的と言いますか、はっきり言ってしまうと時代遅れのヤンキーです。
昭和から平成初期頃の少年漫画でならば学校で必ず一人はいるタイプの不良モデルといった感じの人間で、学校は良くサボる、課題やテストも平気でサボる、クラスメイトを恫喝することもしばしばで他校の不良と抗争に明け暮れる日々。
正直、彼女が進級できるような学校ならばカガリちゃんも進級余裕でしょうに、とも思いますが、噂によると学校の理事長と彼女の親とが親戚同士らしく、退学や留年は一族の恥となるから、と手を回しているのだと学校内で噂されていたのをこの間聞きました。
それゆえ生徒も教師も彼女には手を出せず、自由気ままに不良生活を謳歌している彼女はまるで王様気分で悠々闊歩しているのだとか。
要は大人の庇護下にいながら大人へ反抗しているつもりの痛い子、ということですね。
(さて……)
どうしたものか、と周囲を見渡す。
現在私は彼女に引っ張られる形で建物の陰へと連れて行かれており、周囲に人の眼は存在しない。
ここには今、私と竜胆さんだけであり逃げ出そうにも体格も体力も明らかにあちらの方が上。そもそも私は逃げるという選択肢を持ててはいない。
彼女の発言を短くまとめれば『金寄こせ』であり、つまりはカツアゲ。おい、ちょっとジャンプしてみろ?あぁん?なんだ今の音は、ポケットに何か入ってんじゃねぇか?のアレです。
私としては面倒ことは勘弁なのでお金を渡してさっさと話しを終わらせたいんですけれども、ねぇ……?
明らかに相手が昭和や平成の人間過ぎて、令和な私とは文化がかみ合っていないといいますか。ゆえにお金も渡せないと言いますか……。
「あのぉ、竜胆さん……?」
「あ?なんだ?」
「私、今お金持ってないんだけど……」
「はぁ?金持ってねぇって……、んなわけねぇだろ」
何言ってんだコイツ、と訝し気にこちらを見てくる竜胆さん。おちょくられたと思ったのか機嫌が悪そうに睨みのレベルを一段階引き上げました。
「お前が金持ってねぇってんなら大事そうに抱えてるその本はなんだよ?まさか盗んだってのか?」
「万引きなんてしてないよ~」
「んじゃやっぱり金持ってんじゃねえかよ、バカにしてんのか?」
(えぇ……)
多少胡乱な言い方はしたけど、コレで通じないとなると本当に同じ時代に生きている人なのか疑問に思う。本当に漫画の世界から抜け出してきたんじゃないでしょうかね。
しかしこのまま話を続けても埒が明かない。私は話を進めることにし、ポケットからスマホを取り出しました。
「……あん?」
「支払いは全部スマホでしたから現金を今持ってないんだよ。だからお金を出して、って言われても持ってないんだ」
「あぁ、あれか?流行りのデンシケッサイってヤツかぁ?」
「そうそう、それですよ」
人によっては財布を一切持つこともなくなった現代、スマホと身分証明書さえあれば都会でならば問題は生じないような社会において何かの災いの種になりうる現金を持たない人も少なくはないものです。
まぁ日本は現金派も多いので他国と比べれば現金を持たないことによる厄介は多くなるものでもありますが。付近の本屋に本を買いに行くだけならばスマホ一台で十分事足ります。
「お金を、ということでしたら送金するってこともできますが……。その様子ですとアカウントをお持ちでなさそうですし」
だからお金を渡せないんです。そう彼女に簡潔に伝え私は彼女の様子をうかがう。もう私から言えることは無くなった。後は彼女の判断を待つしかないですからね。
できれば賢明な判断をしてもらえるとありがたいんですけれども。
「よくわかんねぇけど……。んじゃあ要は今はスマホが財布ってことだろ?んじゃそのスマホ寄こせ」
そんな賢明な判断ができる様な人が不良になんてなるわけがございませんという話。
「私のスマホを持っていかれても支払いは出来ませんよ?」
「あぁ?!めんっどくっせぇな!だったらどーすりゃいいんだよ!!」
「どうって……。強いて言えばこれから私の家に帰って現金を用意してから手渡す、とかですかね?」
「それじゃあお前が家に引きこもるかもしれねぇじゃねえか!ベンキョーできるからって頭はわりぃな!」
そういう貴女は勉強できない割にはそう言うことはちゃんと考えられるんですね。
さっきのスマホでの支払いについてもちゃんと理解していましたし、頭自体は悪くは無いようです。まぁ教養と教育がゼロなので褒められる水準にはありませんがね。
「……それじゃあ私が貴女についていって支払いを代わりにする、とかですか?」
要は私が支払い用のカードになるようなことです、と付け加えると彼女はニヤリ、と厭らしい笑みを浮かべ
「んだよ、手っ取り早い案があるじゃねえか。サッサと言えよな?」
と、そう言うと再度私の右腕を強くつかむ。ここへと連れてこられた時と同じように。
あぁ、平和な休日はどうやらもう終わりらしいようですね。
そう諦めて私は彼女の進む方向へとついていこうとして、
「えっ……」
「テメッ、うッ、ぐぎっ……!」
視界の隅から流れるように入り込んでいた黒い影が前を行く竜胆さんへと絡みつき、苦悶の声を上げる。とっさの急襲にぱっと掴まれていた腕が離され圧迫感が無くなった。
しかしいったいどうして、なんで、こんなところに。
そうした疑問が無数に浮かんで私は珍しく困惑に囚われる。
「……キッカちゃん?!」
「大丈夫、ユリ?」
竜胆さんを後ろから締め上げ、声だけで返事に応じるキッカちゃん。獰猛にもがく竜胆さんをものともせず、無情に首を締めあげて緩めない。
彼女生まれついてのイチバンの才能、フィジカルモンスターっぷりをいかんなく発揮して圧倒していました。
「貴女、たしか同じクラスの人間よね?カツアゲなんて無様な真似、子供じゃないでしょうに」
「はなッ、せッ!……クソッ、離れねぇ!」
相手は喧嘩に明け暮れる現役の不良、勢い十分、実力も申し分なしでしょうにそこには大人と子供の様な明確な差が存在している。
「知ってるかしら?強制的に気絶した人は糞尿を漏らすこともあるの。失禁、って一度は聞いたことがあるでしょう?」
「っ、だからっ、どうし……、ぎっ!」
「いえ、もう二度とこのような軽挙に弾まないよう決定的な釘を打つのもアリかしら、と。そう思っただけよ。気にしないで、貴女の知らないうちにすべては終わっているから」
「……って、めぇッ!!」
少し時間を置いてキッカちゃんが何を考えているか悟ったのか、抵抗がさらに激しくなった。
しかし悲しいことにその猛りとは裏腹に身体には限界が着々と近づいてきており、顔はもう真っ青。今にも倒れてしまってもおかしくはない。抵抗する力も激しくはあってもどこか弱弱しい。
「……わかっ、た!わかった、からッ!もう手は出さねぇから、約束するッ!」
「……本当に?」
「あぁッ、本当だ!嘘じゃ、ねぇッ、信じろっ!」
「……わかった」
暫く悩んだ後、キッカちゃんは腕に込めていた力を抜き去る。
すぐにその腕の間から逃げ出した竜胆さんはこひゅっ、こひゅっ、と必死な呼吸を行い、地面を見つめるように膝に手を置きながら息を整える。
数十秒後、呼吸が整ったのか空気の漏れ出る様な呼吸音も消え去り、息を整えることに必死だった彼女は顔を上げてこちらを再度強く睨みつけていた。
どうやら約束をそうそうと破り去るつもりらしい。
「不意打ちなんてしやがって、ぜってぇに許さねぇからなお前!」
「……あぁそう、私も貴女のことを許せる気がしないから別にいいわよ」
二人は間に二メートル弱程度の距離を置き向かい合う。互いに視線をぶつけ合っているというのに、方やそれは憎悪の炎に燃えていて、方や冷徹に凍える様な目をしていた。
「おいおい、知ってるぞ私は。お前、バスケ部期待のエースって持て囃されてたヤツだろ?夏で大会も近いだろうに、ここで怪我したらどうすんだ?部活の仲間に申し訳ねぇって思わないのかぁ?」
「はっ、安い挑発ね」
「あぁん?」
吐き捨て目の前の三下をこき下ろす。キッカちゃんにとって竜胆さんの挑発は意味を持っていないと、そう断言して。
「馬鹿にしないでくれる?確かに私にとって部活は大切なものよ。――けど」
一拍、キッカちゃんは置いて息を吸い、これ以上ないほどに強い語気で告げた。
「けれど、幼馴染の無事と比べればそんなものは大したことじゃない。とっくの昔から私の中で順位なんて決めているのよ。一番大切なモノは、当たり前だけれど一つあれば十分よ」
「……っは、言うねぇ」
「それに……」
ニヤリ、とキッカちゃんには珍しく相手を侮るような、見下すようなそんな表情を浮かべて
「貴女ごときにケガをするはずがないでしょう?」
「ごふぅッ?!」
瞬間、彼女の姿が搔き消え、気が付けば二人の間の距離はゼロとなり、鋭い拳が一切の防御も無く相手の鳩尾を貫射いていた。
「さぁ、帰るわよユリ」
か、かっけぇ……。
翌日、休日も終わったので学校へと行くと、
「おっす、キッカにユリ!」
なんか、竜胆さんが親し気にこっちに話しかけに来た。
「……いったいなんのつもり?」
「なにって、そりゃあ話に来たんだよ!いやぁ、昨日はオレがノックアウトしてる内に消えやがってよ!」
「そう、まだ懲りてないってことね?」
腕に力を籠め立ち上がるキッカちゃん。
そんな彼女の様子に慌てたように両手を横に振って
「違う違うっ!昨日の御礼参りってわけじゃあねえよ!」
「なら何の用よ?」
「キッカの強さに惚れたんだよ!」
結果を纏めよう。
竜胆カザハが仲間に加わった。
……というのは冗談として、この一件から竜胆さんは学校をサボることが無くなった。どうやらキッカちゃんの強さに惚れた、というのは本当らしい。
『なあっ、オレに喧嘩を教えてくれよ!』
『教えられるわけないでしょう、そんなこと。したことも無いのに』
そんな風な掛け合いを毎日見ることとなり、キッカちゃんは心底面倒そうにしている。
特に、
『キッカちゃんから離れろーっ!この、ママを襲った暴漢野郎めッ!』
『あぁん、なんだこのヒョロガキは?』
『カガリちゃん、そんな教育に良くない人に近づいちゃだめよ?ほら、こっちに来て?』
懐いているキッカちゃんと親と慕う私との両方を襲ったという存在に大分ご立腹なカガリちゃんは事あるごとに竜胆さんに噛みつきに行く。
半年も前まで引きこもっていたとは思えないような勇猛さに、お母さん涙が止まりませんねぇ。
それはそうとカガリちゃん。ママもそのお姉さんは悪影響の塊だから近づいてほしくないですよ。反抗期も非行少年化もノーサンキューですから。
竜胆カザハの話は今回で殆ど終わりです 彼女もカガリちゃんと同じように主人公との接触云々関係なくモンスター寄りの人間なのであまり触れることもありませんし
次回から時間を少し進めて高校二年の冬へと飛ばせていただき、最後のヒロインの話を展開する予定です
彼女の話をもってこの作品はいったん完結、さらに閲覧注意を加えた上でもう一話だけ、ある種のトゥルーエンドとして投稿させていただきます
残り短い間ですがお付き合い、よろしくお願いします
R18版希望調査
-
カレンちゃん
-
キッカちゃん
-
スイレンちゃん
-
カガリちゃん
-
カスミさん
-
スミレ先生
-
シスターキキョウ