せっかくのTS転生だし可愛い幼馴染を化け物にしてみた(責任取るつもりは一切ございません) 作:すっごい性癖
「……」
カタカタカタカタ、と無感動にキーボードを叩き続ける。そこに思考や感情は乗せてはいけない、と自分を律して。それでは終わるものも終わらないでしょうから。
春先に任命された二年二組の担任という業務への苦悩も今は大分前の話。
既に季節は巡り、もう少しで冬休みを迎えるという師走の入り。年の瀬の顔を拝み見る今日この頃。
私はかじかむ指先を堪えながら仕事に没頭するのでした。
「……ん」
かすむ目に目頭を揉むことでなんとか誤魔化してブルーライトを取り込み続ける。教員が仕事でパソコンを使う場合、プログラムやなんだ、といった使い道ではなく、ひたすら書類作成と数値操作が主なので技術よりも結局忍耐力と時間がものをいってきます。
効率も重要ですが、それ以上に根気です。
生徒の人数分、それは担任している、生徒だけでなく受け持つ授業の生徒の人数分の成績を記録する必要がある以上絶対数は学校の規模によって無制限に増えていく。
それに授業資料や学校運営に携わる文面の作成も必須となり、特に若手の私はパソコン操作にも慣れているだろうとオーバーワーク気味の仕事も勝手に振られて。もちろん残業代なんて期待できません。だって公務員ですから。公務員は自動的に残業のサブスクに登録される、というのは有名なお話です。
しかもこれらの仕事に加えまして、
「守連先生、ちょっといいかな?」
「……あぁ、はい」
作業中、頭上から声をかけられ、鈍る頭から少し遅れるようにして返事を返す。目を向ければそこには山中先生――三年一組の担任にして私のクラスでも化学を教えてもらっている――の姿が。
「今日の化学の授業でね簡単な実験を行ったんだけど、そこでまたふざける様な子が出てきたんだよ」
「あぁ、それは。申し訳ございません……」
「はぁ、あまり言いたくはないけどね?コレで何回目かな。たしかにちょっと問題のある子たちのクラスだってことは理解しているけど、こう何回も起きると……。ね?」
「すみません、私の指導不足です」
「気を付けてくださいね?実験とはいえ場合によってはケガや命にかかわることもありますから」
それからは多少の小言とお叱りをつらつらと。実際私の指導不足の面は否めないのだから口答えなんてできるわけもなく、申し訳ございません、すみません、と頭を下げ続けるだけ。
暫くして気が済んだのか彼は彼で自身の業務へと戻っていった。
最近の彼は三年生の担任と、受験生を受け持つことへのプレッシャーからかことあるごとに他人にあたる。特に小柄な私は格好の得物なのかその対象になりやすかった。わかりやすい問題クラスの担任、ということもありますから。
「……はぁ」
しかし、それにしても。
ただでさえ終わるのか微妙だった仕事量が更に増えてしまった。
山中先生にお聞きしたところ、今回起きたらしい騒動の主犯は美山カレンさんと竜胆カザハさんの二人らしい。
正直、その二人の名前がこうして上がってくることに私は一切の疑問を抱かなかった。むしろ、でしょうね、と言いますか、またですか、といった呆れの感情しか抱けませんでいました。
夏ころからなぜか急に学校をサボることが無くなった竜胆さんの姿に私たち教員一同も大きく驚きました。あの不良娘が一体全体、何があったらこうも変わるのか、と。
そしてその中でも私は特に驚き、そして喜んだ一人でありました。
自分の受け持つ生徒、その素行不良っぷりに一年前からかなり頭を悩ませていましたが、その苦しみからやっと解放されると。これからは警察や他校へと謝りに行かなくても済むだろうと。
しかしそんな希望が打ち砕かれたのもすぐの話。
たしかに学校に来るようにはなりましたが彼女は依然、素行不良のまま。授業は聞かない、問題は起こす、言うことは聞かない、と外での面倒ごとが内で起こるようになっただけ。
しかもそのせいで私は半ば教員間でも針の筵となってしまっています。
これまではどんな揉め事も、他校の誰々を竜胆さんが殴った、とタレコミがあって私が出向謝罪する、といった流れでしたので一切のかかわりのない他の先生方からは同情の目を向けてもらえました。
しかしそれが校内、つまり殴った誰々が自分のクラスの可愛い生徒となれば話が変わります。
不運にも凶暴な犬を見ていなければけなくなった可哀そうな人から一転、私はその凶暴な犬を躾けることもしないダメな飼い主として。悪感情とまでは言いませんが、少なくともいい目で見られることは極端に減ったのは事実です。
そして学校教員という職場はある種の独立社会。その中で嫌われる、というのは一つの村八分を意味しています。
結果、優先的に振り分けられる膨大な仕事量と、勝手に沸いて出る生徒の問題への対応も通常業務に乗せられることとなり私はアホみたいな仕事量に押しつぶされそうとなっていたのでした。
……ただでさえ私のクラスは問題が多かった。美山さん筆頭に、真面目と呼べるような生徒は殆どいなくていうコトは聞かない。私の業務が通常よりも多いというのも今年に始まったことではない。
しかし、明らかに夏からの竜胆さんの一件からラインを飛び越えた、といいますか。私が対応できる範囲を逸脱してしまった、と言いますか。
はっきり言ってしまえば私はもう限界でした。
膨大過ぎる仕事量にも、腫物のように扱ってくる同僚にも、まったくいうことを聞かない生徒にも。
こんなこと、教員という立場で絶対に思ってはいけないのでしょうが。それでもどうしても考えてしまう。
竜胆さんがもし、あのまま学校を休むままだったら。
竜胆さんだけではない。例えば花火さん関連もなんだかんだ言って学校を休んでいる間の方が楽でした。
自分を救ってくれたからか立花さんへの愛情が行き過ぎている花火さんは度々それ関連で大きな事件や問題を起こす。この間は立花さんへの悪口をしていたのを聞いたから、と消火器を勝手に使用し他クラスの生徒に吹きかけてしまった。
後で聞き取り調査をしたところ、陰口自体は事実ではありましたが、それはそれとして明らかに行き過ぎた行動は当然当事者と私と相手方のクラスの先生、それに加えて当事者たちの両親の登壇までエスカレート。
基本親御さんまで出たら面倒と言いますか、あれこれとこちら側の問題を叩かれるのですが、それはそれとして事件の話し合い自体はスムーズにいくもの。第三者の大人が介入すれば理屈や感情を抜きにして速攻解決の為に敵味方関係なく折り合いをつけるものですから。
しかしその事件ではそうはならず、むしろ火に油を注ぐように問題が拡大してしまった。
花火さんのお母様も娘さんの復学に協力してくれた立花さんにはすごく感謝しているのか、妥協を許さなかったのだ。
そのせいで事件解決までに予想の三倍もの期間を要し、その分業務も滞る。
花火さんは竜胆さんと違って自分から問題を起こすことは滅多にないですが、それでも波風を立てない生徒であるとは口が裂けても言えません。
それ以外にもまだまだ、問題児といえる子たちに富んでいるのが二年二組。
授業中の私語で私たち教員の声は掻き消え、気を抜いたら問題ごとを起こし、気を抜かなくても事件を生み出す。
もはやどう手を加えても修復は不可能で、むしろその中身が漏れ出ることを嫌ってか他の先生方もクラスに関わろうとはしない。クラス内の問題児の一人がもしも自分のクラスへと流れてきたら、もしかしたら自分のクラスも同じような惨状に陥るのではないかと皆がそう考えている。
一喝して指導をしたくても、問題児筆頭が理事長関係者の竜胆さんであることも教員の及び腰に拍車をかけています。
もはや二年二組は隔離された牢獄として、問題児たちを外へ漏らしださない役割だけを期待されている。
そしてつまり、その役割は当然来年度も求められるわけで。
来年度もクラス替えなど望めるわけもなく、そのクラスの担任もきっと『一番そのクラスの生徒と深くかかわっているはず』と。
私、守連スミレが任命されることになるんです。いまだ人事は発表されてはいませんが、これはもう誰もが確信しています。
つまり私は生贄。もうあと一年あのクラスの担任という忙殺業務の地雷原に満開一致で差し出されることが確定している状態。
ただでさえ今でも厳しいというのに、さらにそこに受験関連の仕事まで乗っかってしまったらもう、過労死という言葉を笑うこともできません。
それに……。
(生贄は、私だけではない)
私のクラスは確かにほとんどが問題児でしたが、決して全員が問題児なわけではありません。
クラスの人数は学年の人数をクラス数で分割して決定する都合上、問題児数がきっかりクラスの人数と一致しない限りそんなことにはならないのです。
真面目に勉学、部活動に勤しむ子たちも数少ないですが確かに存在しているのは事実。だけれども、そんな子たちを一クラスという形式にするためだけに人数合わせのため補完されているのもまた事実。
可能ならばそう言った生徒たちは他のクラスに来年度から受け入れてもらいたいのですが、しかしその子たちが真面目で良い子、ということが分かるのはあのクラスと二年弱ちゃんと付き合ってきた私だけ。
外から見れば問題児クラスの一員でしかなく、そんな子をうけいれるというのはリスキーでしかない。
だからそんな要望も通ることは無い。
(立花さん……)
思考の中にふわり、と可愛らしい少女の笑顔を浮かべる。人に好かれそうな朗らかな笑み。
去年から私は彼女には助けてもらってばかりで、頭が上がらない存在。
普段の授業関連の仕事も嫌な顔せず手助けしてくれて、クラスの問題児であった花火さんのことを相談したら一か月も放課後に通ってくれて解決してくれた人。
普段の授業でも彼女は極めて優秀で優等。
静かに話を聞いてはノートを取り、自主学習にも勤しんで成績は学年トップ。
私は自身を生贄、と形容しました。どうしても必要な問題児クラスを成り立たせるために必須な教員という人柱が自分自身なのだと。
しかし真に生贄、という呼称がふさわしい人間が存在するとするならば。それは疑いようもなく、彼女のことでしょう。
全ては私の不甲斐なさが招いた自体です。
私が叱ることも出来ないでいたから生じた学級崩壊。私語も問題も揉め事もサボりも、全部なぁなぁにせずしっかり りつけていればこうはならなかった。
立花さんにこうも苦労を掛けることも無かった。
もし、もしも。
例えばの話ですが。
立花さんが今のクラスの現状を嘆いて、自身の今の立場を憂いて。
クラスの変革、絶対的な統治を望むようでしたら。
「私は鬼にならねばなりません」
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