コールネーム、“アルビオン”   作:ふくつのこころ

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幕間-1
幕間:王者と拳闘家


「スマッシュリングの成功には、貴様の()にかかっている。

期待しているぞ、ロック・ボックス」

「へいへい、わかってますよっと。

しっかし、コウゼンさんよぉ。俺が切り込み隊長でいいのかい?」

 

 絶対王者コウゼンの言葉にロック・ボックスは肩をすくめながら頷く。

 この《ベイルナイト》によるベイルバトルが主流となった時代で拳闘チャンプとしての人気が揺るぎないカウボーイハットを被り、トリコロールカラーのインナーカラーを入れた青年。

ガンホルダーを腰につけているが、そこにおさまるべき銃の代わりに水晶が輝くグローブが

 絶対王者の住まう城の一室で世界最強のベイルバトルチャンピオンのエンジュ・コウゼンと対峙する青年。

 肘掛け椅子に座り、窓の外を眺めながらも、一切の隙を見せないコウゼンの様子に青年は舌打ちする。

 

「(ケッ、油断も隙もありやしねえ。相変わらず、可愛げねえことで)」

 

 ランカー第六位、ロック・ボックス。

 技術研究を行っている(ノース)テイツ、ダウンタウンになっている(サウス)ステイツに分かれたテックステイツの《ベイルナイト》着装者。

ロック自身、南ステイツに生まれたという身の上を持つため、ランカーとなったロックはステイツドリーム(身一つの成り上がり)を表している。

 

「当然だ。キングである私のベイルバトルはエンターテイメントでなくてはならない。

我らランカーの第六席にいる以上、わからんわけではあるまい?

その拳だけ(・・)でランカーとなった貴様の実力は私も買っている」

 

 ロックに向き直ったコウゼンは白いロングコートに赤毛のウルフカット、グレーのスーツでバックルは竜の(あぎと)を模したもの。

それはスポンサーからの非常に高価な防衛戦記念の品であり、ドライグの再来と謳われるコウゼンにピッタリだというお世辞(・・・)つきだった。

 

「フットワークも忘れんじゃねえ!拳闘にはなぁ、三つのモンが欠かせねえんだ!

拳、フットワーク、それと、」

「……観察力(・・・)、だろう?

貴様の別名は不可視(インビシブル)のロック、あとは早撃ち(クイックドロウ)のロックだったか?

貴様のその銃口(・・)、向けるべき相手を間違えるな」

 

 ロックの語る、スリーワードの続きを受け取るようにすれば、音も気配もなく繰り出された拳をコウゼンは易々と指二本(・・・)で受け止める。

ロックは予備動作無しにグローブを装着し、一瞬のうちに異名通りの不可視の拳を繰り出したことで書類は舞い上がり、チャンピオン防衛記念の盾にわずかに傷がついた。

 衝撃波を放つ拳を撃つ(・・)、そんな芸当を見せるロックをコウゼンは買っていた。

ランカーの第一位から第六位までの選定理由を惜しく思うくらいには。

それは、ランキング上位にいる者は強者であり、かつエンタメ(・・・・)に優れているかだ。

不可視のスピードで拳を放つロックは決して劣っているわけではない。

 

「……バケモノかよ」

 

 ロックが冷汗を垂らす。

 予備動作無しにグローブを装着したロックの拳を受け止めた、コウゼンの指。

 人差し指と中指、そしてコウゼンの右手もまた着装(ベイルオン)の宣言なく、展開を行なっていた。

 王者の《ベイルナイト》、ステンバー・アイズの紅い手甲がコウゼンの手を包み込んでいる。

 

「私は貴様と違う。なぜなら、私はキングだ。

私は貴様程度の考え、読むことは造作もない。……気に入らんのは、いまも逃げた先代の支持がなくならんことだが」

 

 絶対的王者として余裕を見せていたコウゼンだったが、白銀の(アルビオン)ブリュンヒルドのことを思い出す際に見せた顔は怪訝なもので不快感を見せていた。

コウゼンの不機嫌な表情に不敵にもロックは笑い返す。

 

「……なんだよ。アンタ、そんな顔もできんのか?確かにあの姉ちゃん、綺麗だったもんなぁ」

「減らず口を叩くな。あの女の弟はスマッシュリングに参加するだろう、潰しておけ」

 

 ニヤッとロックが笑い返すと、コウゼンは眉間に皺を寄せたまま、ロックに命じる。

 ロックは拳を打ち合せ、衝撃波を起こし、コウゼンの部屋に置いている書物や記念品を巻き上げる。

 

「任せなって!不可視のロック、|早撃ちのクイックドロウ》の真髄、見せてやるぜ」

 

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