コールネーム、“アルビオン”   作:ふくつのこころ

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「我々のバトルはエンターテイメントであることを!」

『我らがラッシュスター()とアルビオンが打ち合う!ロック・ボックスの拳闘戦でもここまでの戦いは見応えがある戦いはなかった!

おいおい、これがスマッシュリング開戦前に見ていいものなのか!?』

 

「(あんなアルビオン、見たことない(・・・・・・))」

 

 レイはアルビオンとラッシュスターの繰り広げる殴打の応酬から目が離せなかった。

エヴァーレインやルーデンスらに言ってなかった武装(ギミック)をアルビオンが発揮しているように見える。

 ルーデンスが武装を掠奪する効果を発揮させようとしたのは見えているが、武装を使う普通の《ベイルナイト》に対し、第六位はそうではない。

不可視(インビシブル)早撃ち(クイックドロウ)の異名通りの視認できない(・・・・・・)拳を高速で繰り出すからだ。

 ロックの言葉を信じるのであれば、これまでに何人ものチャレンジャーがロックの拳を捉えようとしたのだろう。

その都度、ロックはそれを返り討ちにしてきた。

着装者としてではなく、一人の拳闘家としての実力で。

 

 ルーデンスがロックと殴打の応酬を繰り広げられるのは、《ベイルナイト》を着装(ベイルオン)しているからだと気づいた。

ラッシュスターの武装として申し分ない、ロック・ボックスの鍛え上げた拳(・・・・・・)

このままでは、ルーデンスは敵わないだろう。

これが拳闘戦(しあい)だったらの話に限るが。

 

「(さっき、何かを掴めそうな感覚があった)」

 

 意識すると、白銀の魔力のオーラをルーデンスは感じられる。

 武装を支配する能力を発揮することはできなくても、魔力を纏わせることはできる。

 武装がないのなら、今ここで調達すればいい(・・・・・・・)

 

「弟くん、お前はやれる(・・・)ヤツだぜ!こんなに楽しいバトルは久しぶりだ!武装を奪えなくても、ここまでやれるなんてなあ!!」

 

 流星群の如き拳のラッシュを繰り出す中、ロックはそんな軽口を叩く。

ただ、ロックは余裕を崩さないでいるように振る舞っているに過ぎなかった。

 

「(ここまで食らいついてくるなんてなぁ!ただのベイルバトルオタクにしちゃあ、やりやがる!)」

 

 事前に聞いていた、“病弱でおとなしい少年”の(ヒルダ)の評した言葉が嘘ではないかと内心舌打ちするも、身内の言葉なら仕方あるまい。

ロック自身、自分の身内のことはフィルターに入れた見方をしてしまうからだ。

 そんな思案に耽っていたところ、白銀の拳が魔力を纏って直線に飛んでくる。

 

「(こいつぁ、良い一撃だな!)」

 

 直撃は避けられない。

だが、この楽しいやりとり(時間)を締めくくるにはこれほど良いものはないだろうと思っていた時だった。

 

「……そこまでだ。その勝負、このキングが預かろう!!」

 

 アルビオンの白銀の拳、さらにラッシュスターの流星群の如き拳のラッシュ。

それを赤い《ベイルナイト》が指一本(・・・)で受け止める。

 

 アルビオンの白銀の拳は右手の中指。

 ラッシュスターの拳は左手の人差し指。

 

 肩慣らしどころか、ひと息つくために伸びをするような気軽さでしてみせた。

 

『ステンバー・アイズ、ってことはエンジュ・コウゼンか!?でもなぁ、キング!今は我らがラッシュスターと、ブリュンヒルドの弟がやり合ってたんだ!野良でもバトルは禁止されちゃいねえ!お前にそんな権利はあんのかよ?』

 

 実況を担当していた、ファンが怒声を上げながら憤る。

 張り上げた声がするのは配信用ラクリマを積んだ、飛行ユニットだった。

小型の無人《ベイルナイト》、というよりは大きめのスケイルと言った方が近い。

『我らが星、ロック・ボックスを応援しよう!』と書かれたお手製のテナントを下げている。

 周囲からもステンバー・アイズことエンジュ・コウゼンに向けられた非難(ヘイト)は止まらない。

 

「もう良いぜ、やりてえようにはやれた」

 

 ラッシュスターの着装を解きながら、ロックは右手を挙げて制する。

観衆はロックの言葉で落ち着き、続くコウゼンの言葉を待つ。

コウゼンもステンバー・アイズの着装を解き、冷たい眼差しをロックとルーデンスに向ける。

 

「だろうな。

……貴様が励むべき場所はスマッシュリング本番だ、ゆめゆめ忘れないことだな」

 

 ロックはコウゼンの言葉に息を吐いた。

その後、コウゼンはルーデンスを見下ろす。

一七五センタ(百七十五センチに相当)ある姉より若干低いルーデンス。

そんなルーデンスより十センタ以上高い、ロック以上の貫禄がコウゼンにはあった。

 

「ブリュンヒルドの弟」

 

 コウゼンは品定めをする眼差しをルーデンスに向ける。

 

「貴様もだ。少し(・・)ばかり、ベイルバトルの腕が立つようだが。

マグレ(・・・)を過信するなよ?」

「忠告感謝するけど、勝てる戦いを取りこぼした連中は何度も配信で見た。同じ間違いをするなんて思われんのは心外だな」

 

 ルーデンスが眉を顰めると、コウゼンは小さく笑った。

 

「姉のように(・・・)口が聞けんものかと思っていたが、そうじゃないらしいな?」

「先生が何の関係あんのよ!?」

先代(・・)はロクな物言いもできなかったからな、その弟もさぞやそうだろうと思ったまでだ」

 

 コウゼンがヒルダを馬鹿にする言葉を吐いた時、ルーデンスより先に食ってかかったのはレイだった。

 ヒルダの弟を思い、バトル後のコメントを簡潔に済ませたのはコウゼンのように良く思わないものも多い。

 

 チャンピオンはチャンピオンらしい振る舞いを。

 

 圧倒的な強さで人々を魅せつつも、あくまで(ルーデンス)を養うための手段でしかないヒルダ。

そんなヒルダが一部の者からよく思われていないのは仕方がないことだった。

 

「姉ちゃんは関係ないだろ?」

「本当にそうだと言えるか?まぁ良い。

貴様が勝ち上がってきたなら、このキングが貴様を叩き潰してくれる。

キングらしい(・・・)ベイルバトルでな」

 

 ルーデンスの言葉を鼻で笑うも、コウゼンの言葉に頷くロックのファンはいなかった。

辺りからコウゼンへの野次が飛び交う。

 

観衆(ギャラリー)共!貴様らにはこのバトルはどう見えた?」

 

しかし、そのコウゼンの言葉で一気に静まり返る。

見るものに熱を与えるのがロックの持つ魅力だとすれば、有無を言わせない雰囲気を作るのがコウゼンの魅力である。

それが《ベイルナイト》の着装者として、栄光のランカーに選ばれた六人のトップに立つ者が持つ才能。

 

「盛り上がりを邪魔すんじゃねえ!!」

「お前が来なけりゃあ、最後までアルビオンとラッシュスターのバトルが見れたんだ!」

 

通常ならば、こんな言葉をコウゼンは浴びせられるだろう。

だが、今の場はどうか。

 

「我々はスマッシュリングで今以上のバトルを約束する!

我々のバトルはエンターテイメントであることを!」

 

 すっかり、場を支配していたコウゼンの短い演説にはルーデンスも聴き入ってしまった。




スマッシュリングがついに開幕した!
しかし、迫るのは不穏な影、ベイルギガントを崇めるカルト宗教、マキナ教団!
開会式に現れた彼らをランカーたちはデモンストレーション代わりに打ち払う!
波乱の幕開けとともにスマッシュリングが開幕する!
ベイルバトル、GO!
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