「気合いを入れろよ、ルーデンス」
「次のランカーは第五位だっけ」
眠りについている、ルーデンスを見ながら、そばに寄り添うエヴァーレインにレイは尋ねた。
三人が来ているのは、ロックの名義で借りているステイツの駅近くにあるホテルである。
国内一のホテルはテックステイツの英雄・ロック・ボックスの広告が多く、配信ラクリマからもロックの声が聞こえていた。
三人が泊まっている部屋はその中でも特に高価な部屋であり、使っているベッドやテーブルといった品々は全て高級品である。
「
ランカー唯一、ベイルギガント級の《ベイルナイト》を使うわ」
エヴァーレインがタブレットを起動し、第五位の着装者と《ベイルナイト》が表示された。
その大きさは二八メイルの八〇〇〇キラとベイルギガント級。
平均が一メイル七〇センタの比較すると、オモチャと人間のサイズ感だ。
「ベイルギガントってあの神話の大戦の?
あんなの使ったら、勝負にならないんじゃない?」
ネリルと《ベイルナイト》の戦績のデータを眺め、ネリルが向けた疑問にエヴァーレインは右人差し指を横に振る。
「それくらい、ひっくり返せるくらいの隙があんのよ。
デカいってことは、力やスピードも確かに有利でしょうね。
でも、逆に
エヴァーレインはタブレットでネリルと《ベイルナイト》マグナスローネの動画を再生する。
すると、映像が映し出された。
『エキシビジョンマッチ、滅多に見られない特別なバトル!《ベイルナイト》飛行部隊ハウンズ所属、ニール・ヤードと
もう一度、再生してみましょう!』
実況は第五位の熱烈なファンらしい。
戦況はわずかに早送りされた状態で始まった。
『
金髪碧眼の美青年、ニールはどこか
出身国の言語でコールネームのヴォルフとライトショルダーアーマーに書かれているのが見えた。
『
かたや、ツーサイドアップの美少女は《ベイルナイト》を待機状態にした銃形態のものーーベイルガンを空へと撃ち上げた。
放たれた魔力の弾丸はネリルへと返り、巨大な鎧騎士、否、鋼鉄の巨大天使へと変わる。
頭部に巨大な
エヴァーレインの編集によるものか、実況の声は一切カットされている。
マグナスローネの攻撃は生粋の
ロック・ボックスがラッシュスターとなり、繰り出す技のすべては鍛え上げた拳だけのもの。
対し、マグナスローネは膂力とタフネスさがウリであり、ニール・ヤードは一撃でも受けたら終了である。
近接武装としている、大太刀を二刀へと切り替え、マグナスローネの攻撃を受け流していた。
マグナスローネはニールを弄ぶように追走機能を備えているらしい、エネルギー弾を射出する。
大きな標的となってしまっている、ベイルタルへの攻撃はマグナスローネが接近を許さないことで防がれていた。
ニール・ヤードの二刀による、同時攻撃を戦輪で防がれたことで隙ができるまでは。
マグナスローネの動作がわずかに止まったことでニールはすぐに飛び乗り、ベイルタルへと向かって駆け出した。
マグナスローネはパワーも武装も申し分ないが、着装者のネリルの荒削りなところが最大の弱点だと見抜かれたのだ。
しかし、そこはランカーである。
ネリルは戦輪を投げ捨て、すぐにマグナスローネの上を駆けるニールのヴォルフを
マグナスローネはヴォルフを鷲掴みにし、地面に叩きつけ始める。
鈍い音、砕ける音が響く。
しかし、ヴォルフ自体につく傷はわずかなものて、着装した本体にダメージが行っている。
子供の無邪気さゆえの凶暴さといえる、その所業も観客からは歓声が上がっていた。
よく見ると、ヴォルフはマグナスローネの手の中でもがいており、まだ闘志の炎は消えていない。
しかし、ベイルタルにダメージを受けての解除をする前にヴォルフの限界を超えたことで着装は解除されてしまう。
マグナスローネは血塗れになったニール・ヤードを投げ捨てると、勝利を宣言した。
カメラはニールを映し出す。
白い肌が裂け、血を噴き出したニールの姿は元の容姿が良いこともあり、見られたものではない。
おそらく、地面に叩きつけられているうちに両手足の骨折もしただろう。
だが、こんなものはベイルバトルでは日常茶飯事だ。
それがマグナスローネとネリルが“
「なにより気に食わないのが、こいつには姉ちゃんをババア呼ばわりしたことだ」
「ルーデンス。もう良いの?」
「俺は大丈夫だ。イヴ姉、レイ。ありがとう」
「いーえ。あたしに感謝しなさい」
再生が終わった頃、ルーデンスが口を挟み、レイが身体を労わる。
エヴァーレインは手をヒラヒラさせながら、柔らかく笑った。
その時、扉を開いてロックが入ってくる。
「ロック。このホテルはもしかして」
「まあな。俺様なりのアフターケアだ。それと、お前にこれをやる」
ロックはなんでもないように笑い飛ばし、ランカーに勝った証であるスターシールをおさめたアルビオンカラーのケースを開いて渡す。
「気合い入れろよ、
これからもっとキツくなるぜ」
「だとしても、俺は勝つよ」
ロック・ボックスは初めてルーデンスの名前を呼んだ。
ルーデンスはそれを受け取り、その変化を感じ取った。