コールネーム、“アルビオン”   作:ふくつのこころ

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「迸れ、我が着装(あい)よ」

「少年、君が私に?ベイルバトルを?」

 

 ルーデンスの申し出にニールは目を見開いた。

そして、大声で笑い飛ばす。

 

「フフフ、それは魅力的な申し出だなぁ!」

「お、おい!アニキまでファングみたいなことを言い出すのか?勘弁してくれよ」

 

 ニールの後ろから《ベイルナイト》飛行部隊ハウンズのロゴが入った、バンダナを額に巻いてフライトジャケットを着た女性が顔を出す。

顰めっ面を浮かべ、ニールを睨みつけた。

 

「私が戦いたいのは、女王が着装(ベイルオン)したアルビオンだ。

生まれたて(・・・・・)の雛ではないよ、少年」

 

その後に続いたニールの台詞にバンダナの女性は安堵するが、すぐにツッコミを入れた。

 

「いやそこは断っておけよ!?女王相手でも軍属として!!私闘(ケンカ)はやんねえってよ」

「ルパ、彼女のアルビオンの強さに憧れないのか?気は確かか?それでも、君は私の部下か?《ベイルナイト》飛行部隊ハウンズの着装者なのかッ!?」

 

 バンダナを巻きつけた女性、ルパがニールにツッコミを入れれば、彼はくわっと目を見開いた。

ニールが声を張り上げて言うものだから、ルパは耳を押さえて片目を瞑る。

 

「う、うるせえ……。

や、着装者だし、憧れるけどよ。

ヒルダ強いし……あ、オレはルパ。

リオネル王国《ベイルナイト》飛行部隊ハウンズの所属でアニキ……ニール・ヤード隊長の部下さ。

第二位(ナンバーセカンド)のファングもハウンズのメンバーなのは言わなくてもいいよな?」

 

 明るく笑ってルーデンスやレイと握手するルパは素直だった。

隊長のニールの言葉をすぐ受け入れるくらいに。

 

それにニールとのやり取りの最中も、ルーデンスらへの気遣いも忘れない。

そんなところはランカーたちのぶっ飛んだ行動を目にし、お腹いっぱいなレイには新鮮に映る。

 ルーデンスらに胸を張って自己紹介したルパは第五位(ナンバーフィフス)以上に好感が持てた。

 

「私はレイ・クルス。

あなたみたいな人がランカーになるべきよ、ルパ」

「へ?オレがランカー?

ないない!だってよ、ランカーになるには、盛り上げ(エンターテイメント)力が必要なんだぜ?

チャンピオン・コウゼンだって言ってたろ?ベイルバトルはエンターテイメントでなくてはならない!ってよ。

オレはそういうの考えながらやるの得意じゃねえし……」

 

 レイの言葉にルパは照れくさそうにしながらも、まんざらでもなかった。

 ルパのようにマトモ(・・・)な着装者がランカーだったら、このしこり(・・・)がなかったろうに。

そんな彼女の想いはエヴァーレインの横槍で呆気なく消される。

レイは肩を落とした。

 

「レイ。

マトモな着装者なんかいないわ、特にランカー連中はね。

バカばっかりよ」

 

 エヴァーレインは肩をすくめ、鼻で笑ったあとにばっさり切り捨てた。

 

「武装無しの素手でやろう(・・・・・・)ってバカ、虫と人間くらいあるサイズ感のデカいので潰しにくるバカ、よくわかんない(・・・・・)バカ、距離無視して手数やばいバカ、バカみたいなことするバカ、独りよがりのバカとバカばっかりよ。

ランカーって。

アホルディ、ランカーってこれで全部?」

 

 指折り数えながら、ルーデンスに確認するエヴァーレイン。

ルーデンスの豊富な《ベイルナイト》の知識を信頼しているとも言える。

 

「六人。間違い無いよ、エヴァーレイン。

独りよがりのバカって?」

「私の愛しのヒルダの温めていた席に座っただけのヤツよ」

 

 ルーデンスが頷くと、エヴァーレインは片目を閉じて皮肉を言った。

肩をすくめ、満面の笑みを見せる彼女の舌の鋭さは今日も変わらずらしい。

 

「バカみたいなことするバカ……、アニキ、たぶん、ファングだ」

「同じバカでもファングのように夢があるバカは私も好きだがね」

「部下がバカと言われていることは否定しないのかよ!?」

 

 自らの部隊の隊員がバカと言われていることは気分を悪くするどころか、ニールは声をあげて笑った。

 

「空に憧れ、《ベイルナイト》を愛したバカ。

それならば、我々は甘んじて受け止めるべきじゃあないかね?

我々は《ベイルナイト》を愛する、ベイルファイターなのだから」

キャップ(隊長)がそう言うんなら、止められねえけどよ」

 

そんな様子に困り果てたように笑うルパ。

ニールはルーデンスを見定めるように見つめると、ブレスレットを見せる。

《ベイルナイト》が待機状態となっている、ベイルブレスである。

 

「それは私が個人的に使っている、《ベイルナイト》だ。

これはザトスでもない、ディースでもない。

エニバグという、ザトスの発展型だ。

……いや、“不可視(インビンシブル)のロック”撃破を成し遂げた君は知っていたかな?

敵の武装を簒奪する武装で徒手空拳のロック・ボックスと渡り合った君ならば」

「エヴァーレインの店では置いてない。

けど、エニバグ自体は取り扱ったことあるよ、修理だけど。

騎士タイプの《ベイルナイト》だろ?」

 

 ルパがニールの態度の変化を感じる中、ルーデンスはニールから向けられる視線に興味が込められているのを感じる。

 

「その通り。

私は不破の“ブシドー”に強い感銘を受けた。

不破にはサムライの《ベイルナイト》があるそうだが、手に入らなくてな。

であれば、と私はエニバグを持っている。

軍から支給された《ベイルナイト》は私の強烈な象徴(シンボル)のようだからね。

野外(ノラ)でやるには難しい。

けれど、私自身のモノならいいだろう?」

 

 東にある不破国の品、特に《ベイルナイト》は希少で手に入ることが少ない。

 ニールがベイルバトルを熱く語る様子は紛れもなく、第二位(ナンバーセカンド)を彷彿とさせる熱意が込められていた。

 

「プライベートでなら野外(ノラ)は許されるってこと?

アンタ、結婚できないわね?ニール・ヤード」

「心配無用だ、レディ」

 

 鼻で笑うエヴァーレインの皮肉にニールはニヤリと笑う。

 エヴァーレインを彼女の《ベイルナイト》らしい、センチピード(ムカデ)と呼んだファングに対してニールはまだ礼節があるらしい。

 

「私の運命は常に戦場にある。

それと、女王と交わす一戦(あい)こそ!私の運命に他ならない!

気が変わったぞ、少年!野外(ノラ)のベイルバトルはハウンズを率いるキャプテン・ヴォルフならば許されんだろう!!

しかし、いち着装者ニール・ヤードなら(・・)構わんはずだ!」

 

 ニールのベイルブレスにはめ込まれた、ベイルタルが妖しく輝く。

 ニール・ヤードは軍人であるのと同時に一人の着装者だった。

 

「迸れ、我が着装(あい)よ!!!」

着装(ベイルオン)!!」

 

 ベイルブレスから放つ光が輝きを放てば、紅の鎧(ヒヒイロ)がニールを包み込む。

 ベイルバングルから白銀の輝きがルーデンスを包み込む。

 

「ベイィィィルバトォォォル、GO!」

 

 昆虫のようなシルエットと四本角を持つ、不破国の鎧を思わせる、《ベイルナイト》エニバグ・ヒヒイロとアルビオン。

ニールは雄叫びを上げながら、アルビオンと距離を詰めた。

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