コールネーム、“アルビオン”   作:ふくつのこころ

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「せいぜい、映えるくたばり方してよねェ!」

 血湧き肉躍るバトルができた礼にとニールは宿を手配してくれた。

そこまでする義理はないというルパを制したのも、未来を担う若人(わこうど)のためと言う。

その上で“散弾天使”とマグナスローネへの所見について、白い龍と赤い龍が異なる方向を向くシンボルが目立つホテル・“ホワイタレッド”での食事の際に語ってくれた。

 

「マグナスローネのパワーは凄まじい。

捕まったら、一瞬でアウトさ。

あの巨体でパワーは言わずもがなだが、なにより、決して鈍いわけではないのがタチが悪いな」

 

 天使の羽休めにある宿の中でも一番であり、内装は非常に豪奢なものだった。

エントランスに入ってアンティークな品のランプや机がフロントにあり、アルビオン・ブリュンヒルドが無敵のチャンピオンに君臨する以前から全ての品は紅白で統一されたホテルだ。

 

なにより、エヴァーレインが目を見開いたことがある。

それは、ハウンズとしての経費でなく、ニール・ヤード個人のポケットマネーから出ている点だ。

 

「ヒルダは金がなかったってのもあったから、チャンピオン特典(特別待遇)使いまくってルーデンスを甘やかしたのに……」

 

「ベイルロード(鉄道)乗ったの初めてだったなぁ」

 

 ルーデンスの肩に手を置き、懐かしむように思い出を振り返るエヴァーレイン。

幼馴染二人の言葉にレイはやれやれ、と肩をすくめた。

 

 秘伝のタレで味付けをした、スペアリブを手にとってニールは戦いを振り返る。

齧れば、肉汁が溢れ出す肉はジューシーそのものだ。

エヴァーレインの店に居候しているが、そう食べられる質のものではないだろう。

 

マグナスローネに自慢の《ベイルナイト(愛機)》をボロボロにされたにもかかわらず、楽しい思い出を語るように。

ニールはマグナスローネに叩きのめされたが、その巨体に飛び乗り、速攻でベイルタルを狙いに行った。

 

 アーカイブを見ることやエヴァーレインの下で働くことにより、ルーデンスは《ベイルナイト》の知識を深めてきた。

しかし、実際に《ベイルナイト》を見た上、着装者本人から聞ける話に勝るものはない。

 

「実際にボコボコにされただけ、説得力あんじゃん。アニキ」

 

「だが次に勝つのは私だ」

 

 ルパが茶化すように言うと、ニールは気にせず、力強く頷く。

ニールはルーデンスにスペアリブが載った皿を差し出す。

 

「少年、強くなれ。

そして、さらに強くなった君と私は戦いたい。

不肖の隊員(ファング)の話では、彼がスケイルルプスを使ってない遊び(・・)にしろ、勝ったそうじゃないか」

 

 ルーデンスはその皿を受け取り、スペアリブを手に取って齧り付いた。

 

「今度はちゃんと決着つけよう」

 

 その力強い眼差しにニールは無敵のチャンピオンの面影をみた。

 

 

「着装(メイクアーップ)!!」

 

 特別リングでは、ネリルがベイルガンを天に打ち上げて着装する。

美少女から天使を彷彿とさせる、巨大な《ベイルギガント》に着装(ベイルオン)すれば、観衆が熱気に包まれる。

 

 ネリルは愛機・マグナスローネとなる。

巨体を物ともせず、内股でくるりと回ってみせたり、可愛らしいポーズを決める。

 

「着装(ベイルオン)!!」

 

対戦相手の着装者たちが水色のエニバグ、赤いザトス、ネイビーのディースに着装する。

その中にはブラックオックスの着装者、アステル・クレスと我らがアルビオンの姿もあった。

 

ランカー、第五位(ナンバーフィフス)。

世界最強の着装者六人で唯一、先の大戦・魔鎧大戦で人類と戦った《ベイルギガント》を使う着装者。

マグナスローネ、天使の名を冠する巨体のそれは手にした専用戦輪を振り回した。

 

ルールは乱戦、誰と誰がマグナスローネを組んで狙っても構わない。

マグナスローネでしな(・・)を作ったり、他の《ベイルナイト》と比べ、大きなベイルタルの下で片腕を添える。

 

「ほらほら〜♡よ〜〜く、狙ってごらーん?

大きくってぇ、あんたたちの好きなやつ♡」

 

巨乳美人が腕の上に胸を乗せ、扇情的なポーズをとるように。

とはいえ、見てくれは天使であれ、怪物が女性的な仕草をとるのは不気味だ。

 

「くっ、舐めた真似を……ぎゃああああ!!」

 

エニバグはマグナスローネに腕を踏みつけられ、ガンッガンッ!と地面に叩きつけられる。

隙をついて背後から回ってきたザトス。

そのベイルタルをマグナスローネが持つ、砲門「イチイバル」から魔力弾を発射し、撃ち抜く。

ザトスは着装が解除された。

 

人形のように遊ばれるエニバグは叫び続け、ディースは地獄の様相から逃げ出してしまった。

残ったブラックオックスは《ブースト・アックス》を構え、アルビオンは白銀の魔力を纏う。

それぞれの必殺の構えに“散弾天使(バーサークスローネ)”は上機嫌に鼻歌を交え、立ち上がる。

 

「あはっ!あたし、牛肉とそのまっさらなの好きなんだよねえ」

 

 エニバグの腕をむしると、叫び声が上がる。

しかし、観衆のほとんどはネリルのファンだ。

古代ローマのコロッセオで観衆は残虐な見世物を望むように。

そして、戦輪を手に狙いを定める。

 

「真っ赤に染まる肉と、白い鎧って興奮すんの!

だから、せいぜい映えるくたばり方してよねェ!」

 

 巨大天使との戦いは始まった。

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