《ベイルナイト》、ブラックオックス。
一般流通の武装である、《ブーストアックス》が映えるように上半身は大きく見えるよう、改良を施している。
夢にまでみた、チャンピオンのコウゼンとステンバー・アイズとのバトル。
自慢の《ベイルナイト》でチャンピオンに傷をつけてやろうと意気込んだアステルだったが、生涯にわたってアマチュアからプロへの昇格する機会を失った。
ベイルバトルにはプロリーグとアマチュアリーグがあり、年に一度だけ、アマチュアリーグから昇格することができる。
その対戦相手は世界最強の数人の《ベイルナイト》着装者、ランカー達が行う。
戦略や洞察力をチェックするためであり、その勝敗は合否に影響はない。
ただ、ほんの出来心だった。
圧倒的な力で一切の小細工を無用とばかりに君臨していた彼女に対し、新しい王はこちらの力を利用し、踏みつけてくる。
しかも、ノせられるポイントを踏み抜いてくるものだから、タチが悪い。
そんなこんなで茶髪にシルバーのメッシュを入れている、アステル・クレスは世界中の配信ラクリマを何者かが
「……アイツ、もしかして」
苛立っているアステルの目に入ったのは、見慣れない紅白の装束に身を包んだ少女風貌と一緒にいる黒髪にブルーの瞳の少年。
アステルより背が低いが、その顔が失踪した絶対女王にそっくりなため、見過ごすことはない。
ガラクタ山で赤いコウモリのような《ベイルナイト》とのベイルバトルが配信されていた時、確かに顔が映っていたからだ。
「おい、
アステルが少女風貌と談笑しているルーデンスの肩を掴むと、ルーデンスの顔が歪んだ。
アステルがルーデンスに因縁をつける、少し前。
エヴァーレインの
「アレ、もしかして」
「ブリュンヒルドの弟だ。アイツまで参加すんのかよ?紅いヤツと戦って、さぞ浮かれてるんだろうな」
「お姉ちゃんの
「全く、あんな目立ちたがりな奴のために人生縛られるなんてなぁ!あんな弟さえいなかったら、もっと自由だろうよ!」
例の紅い《ベイルナイト》とのベイルバトルで話題はすっかり持ちきりであり、わざと声量が大きいまま、ルーデンスのことを話している。
突如、姿を眩ましてしまったヒルダのことはよく思われておらず、憶測のまま、ヒルダを侮辱する言葉が聞こえる。
「ベイルバトルに参加されますか?……あら」
食ってかかりそうなレイの手を引き、受付に来ると、受付嬢はルーデンスに気づいたようだった。
ベイルバトルに参加するのに必要な着装者名、《ベイルナイト》の
受付嬢はルーデンスが記入した《ベイルナイト》の愛称を見て苦笑いした。
「確かに参加を承認致しました。着装者はルーデンス様、《ベイルナイト》の
「はい」
ルーデンスは受付嬢から中近距離のみ武装は許可されていること、大会中は私的なベイルバトルの禁止を説明された。
武装を持っていないというと、ルーデンスは受付嬢から《ブースト・アックス》を一つレンタルした。
最低限、フェアに戦えるようにするためらしい。
「おい、ブリュンヒルドの弟!」
「……急に何よ、貴方」
茶髪にシルバーのメッシュを入れた、制服姿の浅黒い少年。
ルーデンスより体格は良く、背も高い彼はルーデンスの肩を掴む。
怒りを我慢していたレイが食ってかかるも、少年はレイを振り払ってルーデンスに顔を近づける。
「お前、あんなバトルで調子に乗ってるんじゃないぞ!この大会でその鼻っ面をへし折ってやる!」
「ブラックオックスのアステル・クレス?王者コウゼンに《ベイルナイト》の武装を投げた……」
眉間に皺を寄せながら、ルーデンスを挑発する。
しかし、過去にアステルがやらかした試合でのラフプレーを周囲が盛り返したことでアステルは顔を真っ赤にした。
「とにかく!試合で俺が潰すまで負けたら承知しないからな!」
「ステンバー・アイズにザトスで立ち向かったアーカイブは見たよ。……お前もな、アステル・クレス」
「余裕ぶるのも今のうちだ!」
アステルはルーデンスの額に人差し指を突きつけるが、ルーデンスが真っ直ぐ見据えた上で頷くと、調子が狂うと言ってアステルは踵を返し、風を切りながら去っていった。
「なんなの!?アイツ!」
「でも、ああいうストレートなヤツは嫌いじゃないよ」
ぷりぷり怒っているレイを宥めながらも、野次馬を怒鳴りつつも、手を出さないアステルにルーデンスは小さく笑った。
「アレ、因縁ふっかけてきたじゃない?」
「ベイルバトルで語れるなら、良いじゃないか」
「……本当、貴方も先生と同じタイプか」
ブルーの瞳を輝かせながら、なんてことないように語るルーデンスにレイはため息をついた。
次回予告
アステルはかつてチャンピオン・コウゼンにラフプレーを働いた!
そんな悪評さえも、ルーデンスはなんのその!
初めてのベイルバトル大会にワクワクが止まらない!
とうとう、初戦が始まる!
そして、ルーデンスを見定める第二位の男!
ベイルバトル、GO!