TS転生クウラちゃんは平穏に生きたい   作:WhatSoon

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#10 超新星

ぴこぴこ、と電子音が部屋に響く。

リクライニング機能付き+クッション搭載+オーディオ装備の玉座の背もたれを、抱き抱えるようにうつ伏せになり……私はモニターを見ていた。

そこにはドット絵で表現された勇者がトコトコと歩いていた。

 

どこか可愛らしいデザインのモンスターと相対して、勇者は攻撃を繰り出す。

おっと会心の一撃だ。

 

 

「……ふー」

 

 

レベリングをサボってたから、ボス戦でアイテムを大量に使わされてしまったな。

何とか勝ったけど、このまま連戦となれば敗北は必至。

一旦戻るか、回復アイテムを消費して前に進むか。

 

悩んでいると……チャイムのような音が部屋に響いた。

 

 

「んー?入っていいよ」

 

 

私がそう口にすると、私の私室……通称、玉座の間のドアが開いた。

 

 

「サウザーです。失礼致しま……クウラ様、また夜通しゲームをしていましたね?」

 

「うわ」

 

 

宇宙空間に朝も夜もない。

一応、宇宙共通時刻とか色々あるし、宇宙船全体で「この時間は夜なので、休息を取るように」なんてルールがあるけどさ。

私の宇宙船でも勿論存在している。

というか私が昔に制定した。

じゃないと休みにくいし。

まぁ、全員が休憩すると宇宙船も回らないし夜勤の人も居るんだけど。

 

ま、そういうワケなのに。

 

 

「うわ、ではありません。感心致しませんね、睡眠はきちんとお取りください」

 

 

私は昨日の晩からぶっ通してゲームをしていたのだ。

 

 

「あー、気をつける。気をつけるから」

 

「と言いつつも、ゲームはやめないのですか」

 

「うっ……でも待って。きりが悪いから」

 

 

地球でこっそり購入してきていたゲーム機に、サウザーが顔を顰めている。

ここ最近……というか数年前から、サウザーが私を見る目がなんか厳しい。

私の方が遥かに歳上なのに、保護者みたいな振る舞いをしてくる。

 

盗み食いをするなーとか。

やれゲームは一日3時間までーとか。

毎朝ちゃんと起きてくださいーとか。

 

ムカつく。

 

 

「先日も寝坊していましたし、お控えになっては?」

 

 

でも正論なんだよね。

ムカつくけど、反論できない。

私は歴とした大人なので、正論には反論できないのだ。

できるとしても不貞腐れて不機嫌アピールするぐらいだ。

 

 

「はいはい、やめるやめる。明日から夜更かししないから」

 

「約束ですよ、クウラ様」

 

 

何とか言いくるめて、私は画面上に呪文が現れた事を確認し……ちゃんと画像で記録してから、ゲームの電源を落とす。

 

 

「はー……それで、何の用事?」

 

「3時間後に惑星クウラNo.83に到着致します。ご用意を」

 

「え?もう?……あ、そっか。徹夜でゲームしてたから時間感覚が……あー、分かった。着替えるから出てって」

 

「承知致しました」

 

 

えらいイケボのサウザーが部屋から出たのを確認して、私は玉座から降りる。

そのままちょいと歩いて壁に触れれば、クローゼットが展開した。

中には強化戦闘服やら、王様っぽいマントやらが並んでいて……その中から、宇宙蚕の糸で作ったドレス風のワンピースを手に取った。

黒くて光沢のあるやつ。

 

 

「……これにしよっと」

 

 

惑星クウラNo.83、昔の名前は惑星べキャツ。

原住民が穏やかな非戦闘民族だったため、ちょいと脅せば私の傘下に降った。

傘下、としているが物資の徴収は微々たるもので、こちらも科学技術を提供することで取引をしている感じだ。

他の惑星への侵略方式とは違う、平和的な侵略を行った星だ。

 

彼等は宇宙へ進出する方法もなく、自身の住む星が惑星クウラと呼ばれようと気にしてないのだ。

 

ま、そんな訳で惑星クウラNo.83の有力者……巨大国家の統一王と私は面識がある。

今回は侵略者のクウラとしてではなく、仲の良い取引相手のクウラとして相手しなければならない。

 

であれば、いつもの戦闘ジャケットになんか身を包んでいれば警戒されちゃうし──といっても私の素肌は戦闘ジャケットなんか着なくても超⭐︎硬いんだけど──こうして平和的な服を着なければならないって訳だ。

 

何より、あんまり敵対したくないんだよね。

結構居心地いいし……終の住処にはしたくないけど、別荘ぐらいなら建てたいぐらい。

 

寝巻きを脱いで、下着を替えて。

ドレス風のワンピースを身につけて、イヤリングまでする。

化粧はしないけど、これでおしゃれ完了。

 

鏡を見れば……おおー。

 

どこからどう見ても、知的で美人なお姉さんだ。

我ながら結構イケてるんじゃないか?

 

 

「……よし。サウザー。着替え終わったから、入ってもいいよ」

 

 

自信満々に頷きながら呼びかけると、自動扉が開いてサウザーが部屋に入ってきた。

 

 

「これはこれは……普段から見目麗しいですが、身を整えればより美しい。流石はクウラ様です」

 

「お世辞はいいから」

 

 

サウザーってスッゴイ声がカッコいいし、容姿もイケメンだからベタ褒めされると変な感じになる。

彼は私を信仰している節があるし、何でも褒めてくるし、冗談半分で聞き流した方が良さそうなんだけどね。

 

手のひらを振りながら、私は玉座に座り足を組んだ。

そのままプラスチック製のボウルから胡桃っぽいナッツを取り出し……素手で殻を粉砕し、中身をポリポリと咀嚼する。

 

すると、サウザーが顔を顰めた。

 

 

「……はしたないですよ、クウラ様」

 

「あ、うん。でもコレの殻割るのに、態々道具とか用意するなんて馬鹿げてると思うけど」

 

「いえ、そちらではなく……」

 

「え?」

 

「……いえ、何でもありません」

 

 

サウザーにため息を吐かれた。

何だその「言っても無駄だから、言わない方がいいや」って感じの反応は。

私はドレスのスカートを膝で蹴り上げて、足を組み直しつつ眉を顰めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

惑星クウラNo.83、べキャツ星人との会談は特に何もなく終わった。

最近暑いですねー、夏だもんねー、そういえば台風来るらしいですよー、怖いですねー、を宇宙規模にした感じの取り留めのない会話だ。

 

べキャツ星人は料理がそこそこ得意──地球人ほどではないが──なので、ぼちぼち美味しい料理……ま、彼等ベジタリアンで肉とかないんだけど、野菜のポタージュとかを楽しみながら会話する。

塩気はないし甘味もないし、地球産の料理に比べれば飯マズではあるが……宇宙基準ならまぁ、まぁまぁ、かな?

生で水気のない野菜を丸齧りするよりはマシだ。

 

おかわりしていい?

ありがとう。

 

何度かおかわりしていると、サウザーに咳払いされた。

なので、無視してもう2回おかわりした。

 

私に指図しようなど、自惚れているのか。

私は現環境宇宙最強クウラ様だぞ。

誰にも私を止めることは出来ない。

 

 

「では、クウラ様。その宇宙船というのをご用意いただけると?」

 

「うん。でも、運ぶのにもお金も時間も掛かるし、それなりに高いけど。払える?」

 

「無論、ご用意させて頂きます」

 

「ならいいけど」

 

 

フリーザ軍から購入できる大型宇宙船。

それを中古でもイイからと、彼等は購入したがっているのだ。

 

 

「して、その船は何人ほど乗れるのですか?」

 

「んー、何人だったかな。サウザー、定員分かる?」

 

「種族に応じて、なので厳密には言えません。ですが、べキャツ星人なら100人前後は乗れると思われます」

 

「へぇ、だってさ」

 

 

ちらとべキャツ星人を見る。

薄い緑色の肌に、深い緑色の髪をした……男、女……べキャツ星人に性別はないけど、まぁベキャツ星人の代表さんだ。

この星で一番偉い奴だが、私にへーこらしてる。

 

しかし、会話中も何だか、余所余所しいというか気が気でないって様子だね。

私が怖いのもあるだろうけど、それだけじゃなさそうだ。

 

 

「でも、なんで?」

 

「……は、なんでとは?」

 

「そんなに宇宙船が欲しい理由はなに?貴方達は、この星の外に興味ないと思ってたから」

 

「それは……そう、ですね」

 

 

少し困ったような仕草で、べキャツ星人の代表は後ろ首を撫でて……部下を手招きした。

そうして、古臭い映像投射装置が用意されて、壁に投射された。

 

映ったのは……なにあれ?

宇宙空間にぽつんと浮かぶ岩のように見える。

 

 

「これは?」

 

「隕石でございます」

 

「隕石?ということは……」

 

「はい。3年後、この惑星に衝突します」

 

 

へー、そうなんだ。

……ん?

 

 

「大きさは?」

 

「この星の三分の一程です」

 

 

ヤバいじゃん。

そんなの落っこちたら、この星は終わりだ。

星の核も砕かれて、木っ端微塵。

生きとし生けるものが絶滅してしまう。

 

 

「ですから、別の惑星へ移民するためにも、宇宙船が必要でして……黙っていて申し訳ありません」

 

「うん、それは別にいいけど」

 

 

何で黙ってたんだろう。

相談してくれても……と思ったけど、なるほど私達は侵略者でもある。

弱みを見せるとまずいと判断したか。

実際、後先がない星相手に投資する必要は無くなるし、3年後に滅ぶと聞いて手を引けば、彼等は3年も待たず滅びる訳で。

 

 

「申し訳ないのですが、船をお譲り頂きたく。星の全ての民を逃そうなどと大層な願いはありません。ただ、若者を少しでも逃がせれば……と思いまして」

 

「ふーん、なるほどね」

 

 

うんうんと頷きながら、野菜のポタージュを飲む。

べキャツ星人は少し不安そうな顔をしてる……私が真面目に話を聞いていないと思っているのか。

 

いやちゃんと聞いてる聞いてる。

聞いてる上でこんな態度だ。

彼等にとって深刻な事態だとしても、私としては大した話ではないのだ。

 

別段、薄情という訳でもなく──

 

 

「そのさ、隕石なんだけど」

 

 

私は木製のスープカップを机に置いて、視線を代表へ戻す。

 

 

「は、はい」

 

「私がブッ壊してあげようか?」

 

「は、はぁ……?」

 

 

私の言葉にべキャツ星人は困惑した。

笑えない冗談を言われたと思ったのか……そして、私の様子を見て顔を強張らせた。

 

うん、冗談じゃないって分かったみたいだね。

 

 

「……そ、そんな事が可能なのでしょうか?」

 

「まぁ、うん。楽勝だよ」

 

「そんな、隕石はこの星の三分の一の大きさがあるのですよ……!?」

 

「うん、そうだけど?」

 

 

代表の言葉に私は首を傾げた。

そもそも、だ。

その気になれば、今すぐこの星を破壊する事だって出来るんだけど?

その三分の一なんだから、楽勝なんだけど?

 

舐められてるのか?

あ、そうか。

私、この星でまだ暴れた事なかったな。

 

やっぱり一回ぐらいは暴れておいた方が良いのかな……ってのは、冗談だけど多少は強さをアピールしておいた方が良いのかな。

 

ポタージュのお代わりを給仕にお願いする私を見て、べキャツ星人の代表は力が抜けて、椅子から腰を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後。

惑星クウラNo.83から離れた宇宙空間まで、私の宇宙船は移動していた。

メインブリッジで座っていると、部下から報告が上がってくる。

 

 

「ここから距離800、巨大隕石を発見致しました」

 

「うん、ご苦労」

 

 

ストローを使って果実水を飲みながら、空中に投射された映像を見る。

なるほど、草木一本生えてない隕石だ。

 

ぶっ壊しても感謝はされど、誰も悲しみはしないだろう。

 

ずずずずーっと果実水を飲み干し、グラスを椅子に付いてるドリンクホルダーに置く。

 

そんな私に、サウザーが耳打ちしてくる。

 

 

「いかがなされますか?このまま宇宙船で少し接近されても、よろしいかと」

 

「んー、いや、これ以上近付いて巻き込んじゃうと嫌だし、いいかな」

 

「ではどうなされますか」

 

「私一人で行くよ。サウザー、上部ハッチを開けてくれる?」

 

「はっ。聞いたな!クウラ様の出陣だ!ハッチを開けろ!」

 

 

私は席を立ち、上部のハッチが開いたのを確認して……浮き上がる。

 

 

「じゃ、また後で」

 

 

エネルギーを推進力にしてハッチを抜け、大気を遮断するエネルギーフィールドを抜ければ……そこは無重力の宇宙空間だ。

 

真っ暗な世界に煌めく星々が輝いている。

生身の人間ならすぐに死んでしまうような、恐ろしい空間。

だが、まぁ私は大丈夫だ。

 

コルド一族は宇宙空間に耐性がある。

熱や寒さ、真空に耐性があり、無呼吸での活動も可能である。

 

つまり、私に宇宙服は必要ないのだ。

着の身着のまま、いっそ全裸でも問題ない。

いやまぁ、私は裸族じゃないし、痴女でもないし、服は着るけどさ。

 

 

 

 

音もない静寂の中、私は宇宙船の外壁を蹴って、虚空へと飛び上がる。

飛び上がる、といっても……宇宙空間において上下左右、そんなものは意味がないのだけれど。

 

そうして、そんな宇宙空間を漂いながら……私は全身に力を込めた。

 

 

「……ふんっ!」

 

 

身体が引き延ばされ、皮膚が硬化し、強化戦闘服の内側から真っ白な甲殻が突き破る。

頭部にツノが生えて、頭を覆い、髪はマスクへと変容する。

 

奥歯を噛み締めれば、口元も覆われて……第五形態への変身が完了した。

 

 

「さて、行こうか」

 

 

誰に言う訳でもなく言葉を口にして、全身から立ち昇るエネルギーを推力へ変えた。

莫大なエネルギーを放出し、私は宇宙空間を彗星のように突き進む。

 

速度はさらに上昇し、亜光速にまで到達する。

大気がある惑星の下だと、ここまで速度は出ない。

空気の抵抗って思ったより強いんだよね。

速度が上がれば上がるほど、より強く実感する。

 

真空である宇宙空間なら、まぁそんな心配はない。

どれだけ速度を出しても、大気の壁が私を拒むことなどない。

身体が耐えられるなら、どれだけ加速しても問題はないのだ。

 

既に私の宇宙船は見えなくなっている。

 

そうすれば完全に宇宙空間で孤独になる訳で。

星々が浮かぶぐらいで何にもない空間を突き進んでいれば、思考にも耽ってしまう。

 

現在の私、つまり第五形態の私。

戦闘力が飛躍的に上昇する代わりに、思考が物騒になる姿であり、あまり好きではない。

だが、やはり普段の第四形態に比べれば、エネルギー放出量に天と地の差がある。

 

亜光速での巡航など、第四形態では行えない。

理由は幾つか。

 

まず、エネルギーの放出量。

一時的な亜光速への到達自体は第四形態でも可能だが、継続的な加速はエネルギー放出量的に第五形態でなければ足りない。

 

次に、身体的な強度だ。

亜光速での巡航は肉体へ負荷を掛ける。

幾ら空気抵抗がなくともGは身体に掛かる。

継続的に掛かる負荷に耐え続けるには第五形態でなければ……まぁ第四形態でも大丈夫だけど、第五形態の方が楽だ。

 

そういう理由で、まぁ、面倒だけど第五形態になっているという訳だ。

どうせ誰かと会う訳じゃないし、私の中身がどれだけ残虐だろうと問題ない。

 

昔はちょっとビビってたけど、慣れれば大した事ないって気付いたし。

嫌だけど、まぁなった方が楽な時は楽だし。

 

別に、価値観が宇宙に染まろうと問題ないし。

だって、私、コルド一族の長女だし。

それに相応しい精神への変容なんて、当然のことだろう。

気に入らない奴がいるなら、ブッ飛ばせば良いだけ──

 

……うん?

なんかちょっと思考が変になってる気がする。

第五形態に変身した所為だな。

 

あー、やっぱ拙いか。

さっさと仕事を終わらせて、第四形態(いつもの)に戻るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

っと、隕石発見。

 

 

「これか……想像以上の大きさだな」

 

 

視界に映ったのは巨大な隕石……というより、隕石予備軍の星か。

 

写真で見たよりも大きい。

宇宙空間って対比できる物が存在しないからなぁ……絵で見ても大きさが実感できない。

遠近感もあったもんじゃないし。

 

 

「……ふむ」

 

 

どこが三分の一なんだ。

嘘を吐くな、嘘を。

 

これじゃあ普通に破壊しても、残骸が惑星べキャツの大気圏を貫通してしまう。

惑星は破壊されないかもしれないが、自然環境に多大な被害が出て、結局は住めなくなるかもしれない。

であれば、本末転倒だ。

 

 

「……面倒だな」

 

 

ぽつぽつと独り言を口にするのは、この宇宙空間が無音だからだ。

何も聞こえないし、誰も喋らないし、独り言でも言っておかないと頭が変になる。

 

私は身体を捻って、少し準備運動する。

最初はエネルギーを弾丸にして、惑星の核を破壊し、爆破しようと思ってたけど……それじゃダメだ。

惑星の外殻が砕けて、破壊の衝撃をそのまま拡散させる。

 

であれば、やるべきことは一つしかない。

 

塵一つ残さず──は言い過ぎかもしれないけど、それぐらいの気でこの星を消さなければならない。

 

 

「……少し本気でやるか」

 

 

私は右手を突き上げて、手のひらを上へ向ける。

天地無用の宇宙だから、私にとっての上だけど。

 

そして、即座にエネルギーを全身から放出させる。

解き放たれた莫大なエネルギーは手のひらの上で核を作り、太陽のようなエネルギー球体を生み出す。

 

それが少しずつ大きくなっていく。

 

……ま、エネルギーの操作が下手だから圧縮できずに、こうも大きくなってるんだけどね。

本当なら力は圧縮した方が使い勝手も良いし、瞬間的な火力も増すし。

 

 

「……こんなところか?」

 

 

物の数秒で惑星をも破壊できるエネルギー球が作り出された。

名前を付けるとしたら『超新星(スーパーノヴァ)』かな。

ま、惑星を砕くほどのエネルギーを球体に留めているだけで、技って呼べるようなものでもないが。

 

 

そんなスーパーノヴァを、私はゆっくりと迫り来る星に向けて投げ込んだ。

強烈なエネルギーが惑星に衝突すれば、星の表面を焼き、まるで捲り上がるように星が砕け始めた。

砕けた破片は熱によって溶解して、蒸発していく。

閃光が撒き散らされて、星が消滅していく。

 

砕けて、溶けて、蒸発して。

宇宙の(ゴミ)にすらなれず、消滅する。

 

 

─────ッ!

 

 

まるで悲鳴のような音が響いた。

星の核が崩壊する音だ。

 

そうして、少しすれば……目の前から、一つの星が消えていた。

跡形もなく、元からそんなもの存在していなかったかのように。

 

 

「…………」

 

 

達成感などない。

こんなこと出来て当然だという感覚しかない。

 

あるとすれば、ほんの少し気怠げな疲労感だけだ。

こんなつまらない事を何故引き受けたのか、見ず知らずの宇宙人など見捨てておけばいいものを……なんて脳裏に過ぎって、首を捻った。

 

まーたちょっとばかし思考が物騒に、薄情になってる。

さっさと宇宙船に戻って、第四形態に戻ろう。

 

……あれ?

どっちから来たっけ?

 

 

「…………?」

 

 

何も聞こえない。

星々が輝く真っ暗な背景。

上下左右前後、方向も距離も上下すらも分からない。

 

私は、宇宙規模の迷子になってしまったのだ。

 

 

「…………」

 

 

私はただ立ち尽くすことしか出来なかった。

母親から逸れた子供が、迷子になったと気付いた瞬間に……もう、どこにも行けなくなるかのように。

 

ただ、暗闇の中で立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、サウザーが迎えに来た。

宇宙船内では私の部下達が「星を破壊するとは、流石はクウラ様だ……!」なんて盛り上がっていたが、私はこそこそと自室に帰った。

 

 

「……ぐすっ」

 

 

私は毛布にくるまり、サウザーから貰った温かいスープを飲みながら鼻水を啜った。

 

そして、誓ったのだ。

もう二度と、スカウターも付けず宇宙空間には出ない……と。

 

 

 

 

 

 

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