TS転生クウラちゃんは平穏に生きたい   作:WhatSoon

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#12 大魔王と宇宙の帝王

ビバ!地球!最高〜!

色々と面倒な仕事を終えた私はサウザーの許可を得て地球へ来ていた。

ちなみに一人だ。

これ以上、人数を増やすと面倒になるし。

変に宇宙人をいっぱい連れていくと絶対に原作との乖離を起こしてしまうし。

 

うんうん。

 

しかも、今回はちゃんと用意してます!

お金!

 

宇宙の共通通貨を予め地球上にも存在する貴金属にしてきたのだ。

これを質屋に突っ込むことで5日は贅沢できるお金となるだろう。

 

宇宙船ポッドを人気のない場所に隠して、街へ向かう事にする。

今日は何を食べようかな。

カレー?

ラーメンもいいね。

オムライスも食べたい。

 

とにかくお腹が空いてくる。

私は空を飛んで、街へ向かおうと湖を横切り──

 

 

「────っ!!!」

 

 

ん?

何だろう、声が聞こえてくる。

頭上からだ。

 

見上げると……空から三つの影が落ちてくる。

人影だ。

まぁ、下は湖だから落ちても死なないだろうけど──

 

 

「「「うわあああ────っ!!!」」」

 

 

なんだか聞き覚えのある声だ。

私はその場で止まり、念力を駆使して──

 

 

「げぶっ!?」

 

「へばっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

 

その三人を受け止めた。

 

一人は肌色の悪いチビ。

犬の顔した忍者。

軍服姿の美女。

 

ピラフ一味が目の前で宙ぶらりんになっている。

 

 

「何してんの?」

 

 

私が問いかけると、ピラフ大王が色白の顔を青くさせた。

 

 

「ん、げげーっ!?お前は!!」

 

「ん?お前?」

 

「い、いえ、貴方様は!!」

 

 

覚えてくれているようだ。

驚いた表情で固まる三人を前に、次の言葉を待つ。

でも、何やら続きが出てこない。

 

私が訝しんでいると、ピラフ大王が目を逸らした。

なんだこいつ。

 

 

「また悪さしてたの?」

 

「い、いえ?いや、悪さしようと思っていたのですが、切り捨てられたというか、蹴落とされたというか、利用されただけでして。へ、へっへ、へへ」

 

「ふぅん?」

 

 

ピラフ大王を利用するような巨悪?

そんなの居たっけ?

思い出せないんだけど。

 

顎に手を当てて考えていると、シュウとマイ、ピラフがひそひそと会話を始めた。

 

 

「ピラフ様、このひとならピッコロ大魔王を倒せるかも……」

 

「それは同感だが、もしピッコロ大魔王が勝ったらどうする?唆した我々も“くびちょんぱ”だぞ!」

 

「そ、そんなぁ!?」

 

 

あ、そうだ。

ピッコロ大魔王か。

私のよく知っている方のピッコロではなく、神の悪しき部分だけ圧縮したピッコロ大魔王だ。

 

まぁ私からすれば雑魚だ。

私の100万分の1以下の戦闘力だ。

指先一つでノックアウトして、睨むだけで爆殺できる。

 

ま、そんなことしないけど。

ピッコロ大魔王編は孫悟空の幼年期、その成長を促すシナリオでもある。

強敵に打ち勝ち、壁を越える……サイヤ人として、強くなるのに必要不可欠な戦いだ。

 

故に手出しはしない。

 

 

「何で私が、貴方たちのために誰かと戦わなきゃならないの?」

 

「ひっ!?聞こえてたんですか!?」

 

「そりゃ、あんな大きな声でべらべら喋ってるとね」

 

 

私がちょっと語気を強めて口にすると、ピラフ大王は顔面蒼白を通り越して、もう真っ白になっていた。

犬忍者のシュウと、軍服女のマイも、だ。

 

 

「ピ、ピラフ様!謝ってください!」

 

「な、なにをっ」

 

「ほら、ごめんなさいして!」

 

「うぐーっ、ごめんなさい!」

 

 

なんだこのコント。

 

 

「ぷっ」

 

 

世界征服を狙う悪党とは思えない滑稽さに、ちょっと愛着が湧いてしまう。

彼等より私の方が何倍も本物の極悪人だからね。

こんなの可愛いものだ。

 

 

「ま、怒ってないよ。冗談冗談。取り敢えず、地面があるところに降ろそっか」

 

「お、お願いします……」

 

 

水辺を滑空し、三人を地面に下ろす。

安堵の息を吐いている彼等を見つつ、私は顎に手を当てた。

 

しかし、ピッコロ大魔王か。

面倒な時に来ちゃったな。

私にとっては雑魚だけど、今の地球にとってはとんでもない強者だ。

当初の目的である原作通り世界が進んでいるのかーって話なら、それはそれで良いんだけど。

 

地球観光がなぁ。

邪魔されると嫌なんだけど。

 

ま、ピッコロ大魔王騒動は世間からすれば一日で終わる話だ。

国王に成り代わって恐怖政治を行うと宣言して、そのまま孫悟空に倒される筈だ。

 

ほんのちょっぴり我慢すれば良いか。

 

 

「じゃ、私は用事があるから。街に行くね」

 

 

そう口にして三人から離れ、エネルギーを放出して飛行を──

 

 

「ちょ!ちょっと待て!待ってくれーっ!」

 

 

ピラフ大王に呼び止められた。

思わず、顔を顰めながら私は地上に戻る。

 

 

「なに?」

 

「あ、いやぁ……出来れば、私達も街へ連れて行って欲しいなぁって」

 

「は?」

 

「あ、いやっ、そのですね?私達なんの乗り物もなくて……へ、へっへへ」

 

 

そういえばそうだな。

ちょっと話を詳しく聞いてみれば、彼等はピッコロ大魔王に飛行船を乗っ取られて蹴り落とされたらしい。

無一文のすかんぴん、そんな彼等をこんな何もない所に放っておくのは確かに可哀想だ。

 

ま、こいつら生命力の割にしぶといから、放っておいても死にはしないだろうけど。

 

 

「まぁ、いいけど。街まで連れて行けば良いの?」

 

「は、ははーっ、そうです!お願いいたします!」

 

「お願いします!」

 

「お願い致します〜!」

 

 

三者三様の誠心誠意こもった土下座に、私は苦笑しつつ念力で持ち上げた。

 

 

「じゃ、飛ばすから……舌噛まないようにね」

 

「え?それは、どういう──

 

 

瞬間、私はエネルギーを放出して加速した。

全力を出すと地表が抉れちゃうし、加減しての加速だけど……音速一歩手前ぐらいは速度が出ているはずだ。

 

 

「へづっ!?」

 

「げゔっ!?」

 

「あ痛っ!?」

 

 

舌を噛んだのか変な声をあげる三人を無視して、そのまま都まで私は加速した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都までついて、彼等をその辺に下ろしたが……めちゃくちゃグロッキーになっていた。

死体みたいになって転がって、呻き声をあげている。

 

 

「う、うぐー」

 

「し、死ぐ……ぅ」

 

「お、おえ゛ぇ……」

 

 

なんとも失礼な奴らだ。

連れて来てあげたんだから、感謝の一つぐらい口にしても良いだろうに。

 

地べたに転がしたまま、私は無視して踵を返す。

こんな奴らは放っておいて、私には目的があるのだ。

 

 

ささっと質屋で貴金属を換金し終えて、金を作った私は目に付いたレストランに入った。

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

 

いい感じの洋食屋だ。

渡されたメニューを開いて、料理名を眺める。

ハンバーグ、ステーキ、ビーフシチュー、オムライス、エビフライ……。

 

 

「んふ……」

 

 

思わず笑みが溢れる。

どれを食べようか悩んじゃうな。

 

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

 

おっと、店員さんが来た。

 

 

「このページに写ってる料理全部」

 

「え?」

 

「このページに写ってる料理全部」

 

「あの……?」

 

「このページに写ってる料理全部」

 

「……あ、はい。かしこまりました」

 

 

待っていると、凄まじい量の料理が机に並ぶ。

ぎっしり、みっちり、なんでもござれ。

思わず頬が緩んでいると、向かいの席から顔が見えた。

 

ここテーブル席だけど、おひとり様のはず。

視線を向けると、色白、犬、女の顔が見えた。

 

 

「……何してるの?」

 

 

顔を出したのはピラフ大王含む三人だった。

 

 

「へ、えへへ、すみません。私達いま、お金がなくって……」

 

「……お腹減ってるの?」

 

「あ、はい。そうです。よろしければ、ご馳走していただけないかと……」

 

 

こいつら図々しいな。

そんな義理ないでしょ。

 

とは思いつつも、まぁ困ってるのは本当なんだろうなぁとは思うし。

可哀想だなぁとは思う……ピッコロ大魔王に協力してたから自業自得だろうけど。

 

まぁ、宇宙の帝王クウラ様は、ピッコロ大魔王に比べて慈悲深いのだ。

 

 

「まぁ、いいけど。好きなの食べていい。あ、でもオムライスは食べないで」

 

「わぁーっ、ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます〜っ!」

 

 

全くやかましい奴らだ。

でも、嫌いじゃない。

それに一人で食べるより、誰かと食べた方が美味しく感じるだろうし。

 

……食い足りなくなったら、追加で注文すればいいし。

宇宙の星々から上納金を巻き上げている私からすれば、端金だからね。

 

私は心が広いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして食事をしている中、レストラン内のテレビからアラートが鳴った。

どうにも緊急放送という奴らしい。

 

 

『というわけで、わたくしは国王の座を奪われ……この世界の王はピッコロ大魔王となってしまいました……まことに無念です……』

 

「あーっ!?」

 

 

ピラフ大王たちがテレビを食い入るように見ている。

店員達も、客達もだ。

私は無視してオムライスを食べてるけど。

 

 

『だ、だれか!この無法者をやっつけてくれ!この世界をすくってくれ!』

 

『余計な事を口にするな。まだ死にたくないだろう?』

 

 

私もテレビを一瞥する。

あれがピッコロ大魔王か。

 

戦闘型ナメック星人の平均から遥かに劣る雑魚だ。

私から気にする必要もない。

 

 

「すみません、追加の注文を」

 

 

店員を手で呼び寄せようとするも──

 

 

「あ、あんた今、テレビ気にならないのかい?」

 

「……うん?」

 

「今それどころじゃないんだけど……」

 

 

それどころでしょ。

私よりピッコロ大魔王なんかを優先するのか?

眉間に一瞬皺が寄るが、すぐに落ち着く。

 

まぁ仕方ない。

無作為に暴力と死を振り撒くピッコロ大魔王に対して、私は理知的で必要な時にしか暴力を振るわない。

彼等も私が凶暴な宇宙の地上げ屋だと知らないだろう、仕方ない仕方ない。

 

席から離れていく店員を見送り、私はテレビを睨んだ。

 

 

『わたしの嫌いな言葉は『正義』、『平和』、そして『平穏』だ。そんなものを振り翳す愚か者は、我が魔族が悉く退治してやろう!』

 

「あ?」

 

 

思わず声が漏れた。

 

私より弱い地球とかいうど田舎の雑魚が、私の平穏を乱そうとしているのか。

追加でランチプレート注文しようとしてたのに、邪魔をするのか。

舐めやがって。

 

私に喧嘩を売っているのか、ふざけているのか?

今すぐにキングキャッスル行って、ぶっ殺してやっても良いんだぞ?

 

 

「ど、どうどうどう、落ち着いて下さいまし!」

 

「わ〜っ!落ち着け!もちつけ!」

 

 

ピラフ一味からの宥める声に気付き、私は自分の身体からエネルギーが漏れている事に気づいた。

怒りはエネルギーを通して威圧感となり、物理的な重圧になっていた。

 

 

「……あ、やば」

 

 

周りの店員達も顔を青ざめている。

でも、その威圧感の出どころが私だとは気付いていないみたいだ。

テレビのピッコロ大魔王を見て、無意識のうちに不安になっている……と、いい感じに誤解してくれている。

 

私は一つ深呼吸して、頷いた。

 

 

「よし。大丈夫、怒ってない」

 

 

そんな私の言葉にピラフ大王達がひそひそと小声で話している。

 

 

「ピラフ様、絶対この人、ピッコロ大魔王より強いですって……!」

 

「何とか煽ててピッコロ大魔王を倒して貰いましょう……!」

 

「まてっ、待て待て、だからそれはリスクが大きいと言っておるだろうが……!」

 

 

まぁ聞こえてるけど。

私、結構耳が良いんだよね。

 

 

「まぁ、大丈夫だよ。私じゃなくても、誰かが倒してくれるから」

 

「……聞こえてたんですか?」

 

「全部ね」

 

 

ひえーって顔を青ざめさせるぐらいなら、私の前でこそこそ話さなきゃ良いのに。

そう思いつつ、私は孫悟空がピッコロ大魔王を討伐しに現れるのを待っていた。

 

ビーフシチューを口に含みながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テレビ中継で望遠カメラの映像が映っている。

 

 

『あ、圧倒的です!突如現れた道着姿の少年が、ピッコロ大魔王を倒してしまいました!悪は滅びたのです!』

 

 

途端に盛り上がる店内の客と店員。

 

 

「あいつ、あんなに強かったのか……」

 

 

なんて、息を呑んでるピラフ大王達。

 

対して私は──

 

 

「……あれ?もっと苦戦する筈じゃなかったっけ?」

 

 

困惑していた。

ピッコロ大魔王と孫悟空の戦いは、それなりに激戦だった筈だ。

実力差も僅差で、なんとか悟空が勝利する……という話だったよね?

悟空もボロボロの死にかけになっている筈なのに。

 

圧勝?

おかしくない?

 

原作から乖離しているのか?

 

 

「……ま、いいや」

 

 

多分私の記憶違いだ。

別に私が何か影響したわけでもあるまいし。

話の道筋に影響はないだろう。

誤差でしょ、誤差。

 

プリンアラモードを口に含めながら、私はそう楽観視していた。

 

 

 

 

 

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