TS転生クウラちゃんは平穏に生きたい   作:WhatSoon

16 / 32
風邪ひいて遅れてました


#16 パラガスとブロリー

「ここが私の宇宙船。ようこそ、二人とも」

 

 

私が案内した先はメインブリッジ。

何人かの戦闘員が部屋を警備している部屋で、巨大なモニターが全面を覆い尽くし、宇宙を投影している。

 

 

「ぉ、おぉ……?」

 

 

ブロリーはその光景を物珍しそうに見ている。

 

 

「…………」

 

 

対して父親のパラガスは少し緊張した様子だ。

 

無理もない。

10年以上、あんな何もない惑星に居たのだから。

ブロリーに至っては、物心付いた頃からあの小惑星に居たからね。

宇宙ってものが珍しいんだろうな。

 

そんな事を考えつつ、視線をパラガスへ向ける。

 

 

「じゃあ、まずはパラガス。そもそも、なぜあんな星に?」

 

「はい、実は──

 

 

椅子に座りながら問いかけると、パラガスが過去を語り出した。

 

惑星ベジータで生まれたブロリーは、生まれながらに凄まじい戦闘力を持っていたこと。

そして、そのブロリーの戦闘力が息子であるベジータ王子を上回るかも知れないと考え……ベジータ王がブロリーを処分すべく企んだのだと。

 

そして、ベジータ王によって過酷な僻地である小惑星バンパにブロリーは追放された。

そのブロリーを追って、パラガスの宇宙船は不時着し……今の今まで遭難していた。

 

なんて昔話。

 

 

「ふーん、そうなんだ。それは辛かったね」

 

 

……なんか私の知ってる彼等の過去と微妙に違う気がするけど、まぁいいや。

 

目的は変わらない。

 

ブロリーを殺さず、尚且つ孫悟空へ被害を及ぼさないようにする妙案。

それが彼等をクウラ軍に引き入れて、孫悟空に会わせないよう管理することだ。

 

孫悟空の冒険には関わらせない。

尚且つ、殺しもナシ。

 

ふふふ、やっぱり私って頭いいな。

天才軍師、智将クウラ様って名乗っちゃおうかな。

 

 

「はっ、何もない惑星でっ、助けも来ず……それもこれも、ベジータ王の……っ!」

 

 

パラガスが恨み節を口にしてる。

恨んで当然だ。

というか、ベジータ王はカスだし恨まれても仕方ない。

 

 

「でも、ベジータ王は死んだよ」

 

「……何ですと!?」

 

「弟のフリーザが処分したからね」

 

 

私は机の上から銀紙に入った小さなチョコレートを手に取り、一つ口にする。

地球産の甘くて美味しいやつだ。

 

 

「なんとっ、フリーザ様が?」

 

「クーデターでも起こそうとしてたって。まぁ元々、従順な奴じゃなかったし……欲深い奴だったからね」

 

「それはそうですが……そうですか、あのベジータ王が……」

 

 

パラガスが染み染みと頷いて、少し悩ましそうにしている。

それもそうか。

無人惑星での辛い日々を生きてこれたのは、きっとベジータ王に対する復讐心という生き甲斐もあったからだろう。

それが実は、昔々に死んでたよーなんて言われたら、虚無感も感じるだろう。

 

なんて観察しつつ、私はもう一つチョコレートを手に取り──

 

 

「ん?」

 

 

ブロリーが私を見ている事に気付いた。

正確には私が持ってる、銀紙を外したチョコレートを見ているようだ。

 

 

「……食べる?」

 

 

私が差し出すと、ブロリーはパラガスの方を見た。

パラガスは私を一瞥して、頷いた。

 

 

「クウラ様、ありがとうございます……ブロリー、いただけ」

 

 

命令のような口調だったが、ブロリーは頷いて私からチョコレートを手に取り、そのまま口に含んだ。

 

 

「ん……んっ……んぐっ!?」

 

 

確かめるように口の中で転がし……そして、目を輝かせた。

 

その間、ずっと唸り声をあげていた。

なんか見てて面白いな。

ペットに餌やりしてる気分だ。

 

 

「ブロリー、礼を言うんだ」

 

 

パラガスの指示に、ブロリーは頭を小さく下げた。

 

 

「あ……っ、ありがとう、ございます……?」

 

「うん。どういたしまして」

 

 

うーん、こうして見ていると、惑星シャモを破壊するような、殺戮と暴虐の限りを尽くす悪魔のブロリーに成長するとは思えないな。

だって、ただただ純粋なサイヤ人の子供って感じだし。

 

……そういえば、ブロリーの首輪について聞かなきゃならないんだった。

 

 

「ところでパラガス。ブロリーの首ついている……その装置は?」

 

「あぁ、これですか。これは──

 

 

パラガスがポシェットからリモコンを取り出した。

宇宙船ポッドを操作するリモコンによく似た装置だ。

 

それを見た瞬間、ブロリーは怯えるような仕草で後退りした。

……なんだ?

 

 

「ブロリーは時折、我を失うことがあって……この装置で電流を流すことで抑制しています」

 

「……なるほど」

 

 

ちら、とブロリーを見る。

怯えた様子でリモコンを見ていた。

 

……電流を流して“しつけ”をするなんて。

ちょっと……うーん……まぁ、合理的ではあるけど──

 

 

「ブロリー、ちょっとおいで」

 

「……う、うぅ」

 

 

ブロリーは怯えながらも、私の側に近寄ってきた。

さっきチョコをあげたからか、少しは警戒心も薄れたようだ。

 

ブロリーの目を見る。

 

 

「…………な、なん、ですか?」

 

 

私はそんなブロリーの首輪に触れて──

 

 

「えい」

 

 

ブチッと、引き裂いた。

機械の部品が粉砕されて、パラガスの前に転がる。

 

 

「な、なにをしているのですか!?クウラ様!?」

 

 

驚愕するパラガスと、呆然としているブロリー。

そして、ため息を吐いているサウザー。

……なんでため息を吐くんだ。

 

私はパラガスに視線を戻す。

 

 

「だって、必要ないでしょ?ブロリーが暴走しても、そこのサウザーの方が強いし。そのサウザーより、私の方が強いし」

 

「な、っ、クウラ様が、ですか……!?」

 

 

パラガスは驚愕して、サウザーに視線を向けた。

……あれか、私が強そうに見えないから……私をフリーザの七光りだとでも思ってたのか?

権力だけで軍のトップに立っていると?

なんかちょっと気分悪いな、それは。

 

そんな私を見て、サウザーは片眉を上げつつも、パラガスを一瞥した。

 

 

「事実です。クウラ様は私よりも遥かに強く……このクウラ軍において、いえ、宇宙で最も強い御方でございます」

 

 

……いや、宇宙で最も強いは言い過ぎだけど?

 

 

「な、なんと……そこまでとは……」

 

 

驚愕して震えるパラガスを横目に、ブロリーに視線を戻す。

さっきの話を聞いても、私に対して恐怖していないように見える……ただただ、何故、首輪を外したのか分からず、驚いているように見えた。

 

 

「分かった?ブロリーが暴走しても、サウザーか私がいれば、それだけで大丈夫。電流なんか流さなくても、私が“しつけ”をしてあげる」

 

「そ、そう仰られるのであれば……」

 

 

パラガスは納得していないようだが、それでも頷いた。

さっきの話を聞いて、私に逆らえる訳がないといえば、そうなのだが。

 

 

「それで、パラガス。フリーザ軍に帰る気はある?それとも、私の軍に来る?」

 

 

というか、目の前でブロリーの制御装置ブッ壊された所為で断れないだろうけど。

 

 

「それは無論、クウラ様の軍に……迎えて頂けるのであれば、是非に……!」

 

 

頭を下げるパラガスを見て、やっぱり話し合いをスマートに終わらせるには、力を見せつけるのが一番だなぁと私は思った。

 

でも、これだけだと無理矢理従わせるだけだし、良くないか……恐怖で縛る従属関係も悪くはないが、恐怖心だけでは反抗心も生まれる。

 

 

「ついでに……フリーザ軍には今も、ベジータ王の息子が所属してるって、知ってる?」

 

「ベジータ王の息子……ベジータ王子が、ですか!?」

 

「うん。でも、惑星侵略の下働き……他の兵士と待遇は変わらない。笑っちゃうよね、惑星ベジータの王子だっていうのに、ただの下働きなんだよ?」

 

「そ、そうなのですか……?」

 

 

私が何を言いたいのか、パラガスが悩んで見える。

そんなパラガスに私は一歩近づいた。

 

 

「私の軍なら……働き次第で、パラガスもブロリーもそれなりの地位に就かせてあげられる。ベジータなんかよりも高待遇で、地位も高く……ね?」

 

「あ……あっ、ありがとうございます!」

 

「いつかベジータに対して復讐する機会もあげる。今はまだフリーザ軍に所属しているから、手を出せばフリーザと戦う羽目になるからね……それまでは私の下で働いてくれるよね?」

 

 

ま、実際は復讐の機会なんて用意しないけど。

嘘でも、モチベーションは大事だからね。

 

 

「しょ、承知しました!このパラガス、そしてブロリー……っ、クウラ様の下で働かせて頂きます!」

 

「うん、期待してるよ」

 

 

ベジータ王に対する復讐心を餌に、パラガスに出世欲を持たせる。

こうすれば、少なくともベジータに対する直接的な復讐よりも、ウチでの仕事に専念してくれるだろう。

 

私は話が上手く進んだ事に満足感を抱きながら、チョコレートを一つ……二つ手に取り、一つをブロリーに投げた。

ブロリーはチョコレートを手で受け止めて、私とチョコレートを交互に見た。

 

 

「あ、これ……?」

 

「いいよ、食べても」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「もっと気楽でいいよ。『ありがとう』でいい」

 

「ありが、とう?」

 

「そう」

 

 

何も知らなさそうな無垢なサイヤ人、ブロリー。

彼が悪魔にならないよう、伝説の(スーパー)サイヤ人にならないよう、私が教育していかなければならない。

 

取り敢えずは……最低限の礼儀やら、常識を学ばせて……あとはちゃんと、私が飼い主だって教えてあげないとね。

ブロリーが口にチョコレートを運んだのを見て、私もチョコレートを口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

惑星クウラNo.2にパラガスとブロリーを連れ帰ってから、一週間が経過した。

そこで最新の戦闘ジャケットを給付して、彼等のための部屋まで用意していた。

 

ブロリーは軍の文官から文字の読み書きや、礼儀について学ぶ事となった。

嫌そうな顔をしていたが、勉学をすればオヤツが貰えると習慣づける事で、何とか座学に打ち込んでいる。

 

パラガスは、そんなブロリーを連れて私の元まで来ていた。

 

 

「お呼びでしょうか、クウラ様」

 

「うん。パラガスも……仕事には慣れた?」

 

「はい、お陰様で」

 

 

パラガスは元々、惑星ベジータでは文官だったらしく……色々と勉強しなおせば、文官として役立つ事が発覚した。

裏方の仕事に励んでもらっている。

……ま、戦闘力も、うちの軍の戦闘兵の平均値ぐらいしかないし、わざわざ星の侵略に向かわせるのは勿体ないからね。

 

 

「ブロリーは……ん?あれ?戦闘服、新しくしたのにその毛皮、まだ付けてるの?」

 

 

ブロリーの腰には緑色の毛皮が巻かれている。

小惑星バンパでも身につけていた、見窄らしい毛皮だ。

 

 

「あ……う、っ」

 

 

私に指摘されたブロリーは視線を左右に揺らして、私から目を逸らそうとしている。

パラガスに何か指摘されないか、怯えているように見える。

 

……なんか訳ありっぽいな。

 

 

「大事なものなんだね。うん、良いんじゃないかな、似合ってるよ」

 

 

パラガスが何か言う前に、私は「気にしてないよ」と口にする。

そうすれば、ブロリーは安堵の息を吐いた。

 

しかし、何の毛皮だろうか。

ブロリーにそんな設定あったっけ?

分かんないけど、まぁいいか。

 

 

「それでその、クウラ様?私達に何のご用で?」

 

 

無言で頷く私に、パラガスが声をかけてきた。

少し不安そうな顔をしているパラガスに、視線を戻す。

 

 

「ブロリーの力を測ろうと思ってね。ちょっと戦って貰おうかなって」

 

「はぁ……戦う、ですか?それは、どなたと?」

 

「私と」

 

「……は?クウラ様と、ですか?」

 

「うん」

 

「…………」

 

 

パラガスがちらちらと、私の側に立っているサウザーを見ている。

これって大丈夫なのか?って顔だ。

なんだこいつ失礼だな。

 

サウザーはサウザーで「やれやれ」って顔だ。

こいつも失礼だな。

 

ブロリーはよく分かってなさそうな顔をしている。

 

 

「心配だろうし見学すればいいよ」

 

「え、あ、はい……そうさせて頂きますが……」

 

 

ブロリーがボコボコにされないか心配だろうし……って思って口にしたのに、パラガスは私の身を案じているようだ。

……あれ?

私が強いって話、何回かしてるよね?

舐めてんのか?

 

ちらっとサウザーに視線を向ける。

私から何か言うと高圧的になっちゃうし、サウザー側から何か言ってやれ……ってアイコンタクトだ。

 

そんな私の視線に気付いたサウザーは、私に耳打ちしてきた。

 

 

「致し方ありませんよ、クウラ様。ここ数日、パラガスの前での自分の行動を思い出して下さい」

 

 

は?

何言ってんだ?

パラガスの前で……?

 

……えっと。

 

五日前、地球産のジャムの瓶が開かなくて──というか私のパワーで無理矢理開けたら爆発しそうだったから、代わりに開けて貰った。

 

三日前、寝坊しちゃってパジャマ姿のまま報告を聞いた。

 

昨日は会ってないけど、私がB塔の共同洗濯機にお金が入ったままのワンピースをぶちこんで故障させてしまった。

会ってはないけど、パラガスも回覧板で知ってるだろう。

 

それぐらいだ。

……いや、確かに、まぁちょっと、うん。

頼りない感じは、あるかもしれないけどさ。

 

 

「でも私って、結構カリスマっていうか、威厳あると思うんだけど」

 

「…………」

 

 

サウザーが黙って複雑そうな顔をしていた。

……おい、そこは素直に頷くところだろうが。

何悩んでるんだ、まったく。

 

私はサウザーを睨んでいた目を逸らして、パラガスとブロリーに向けた。

 

 

「まぁ、それはともく。惑星クウラNo.2の、宇宙ステーションから離れた場所に未開発の空き地があるから、そこで戦ってみようかなって」

 

「か、かしこまりました。それであの、ブロリーとクウラ様が戦っている間、私は何をすれば?」

 

「そこ、監視塔あるからさ。そこから私とブロリーの手合わせでも見てればいいよ」

 

「は、はぁ……それはその、承知しました……」

 

 

何やら恐れるような挙動不審のパラガスから目線を逸らし、ブロリーを見る。

 

 

「…………?」

 

 

不思議そうな顔でこちらに視線を向けている。

 

私がこれからしようとしているのは格付けだ。

この数日間、ブロリーと接して思ったのだ。

 

この子、野生児だ。

パラガスに最低限の教育はされていたとはいえ、同年代の子供も居らず、父親としか交流していない。

情緒の発達も未熟で、獣のような性質で生きてる。

 

なので、ブロリーを扱うには懐かれるか、力で屈服させるしかない。

 

前者は……正直、まぁ、ちょっと自信がない。

懐かれる理由もないしな……という訳で、後者をすべきと判断したのだ。

 

ずばり、ブロリーからして私の方が上だと認めさせるのだ。

その為の模擬戦である。

 

まぁ、ちょちょいと捻って格付けすれば良いだろう。

ふふん、完璧な作戦だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。