TS転生クウラちゃんは平穏に生きたい   作:WhatSoon

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#18 レベルキャップ

惑星クウラNo.2には複数のメディカルマシーンが存在する。

メディカルマシーンとは再生液やら薬剤で満たしたポッドであり、体の欠損すらトカゲの尻尾のように直す事が出来る。

まぁ、死んでさえいなければ蘇るといっても過言ではない。

 

そんなメディカルマシーン送りとなっていたブロリーが、丸一日の治療によって完治したという知らせを私は聞いた。

 

壊れたマグカップをパズルのように組み立てて……やっぱり無理かと絶望していた私は、更なる絶望感を抱きながらブロリーの元へ向かった。

 

いや、だってさ。

あんな事した私をブロリーが恨まないだろうか?

赤ちゃんの頃に隣で大泣きされただけでカカロットを大人になるまで憎んでいた男だぞ、ブロリーは。

 

めちゃくちゃ憎まれてる可能性がある。

 

まだまだ私の方が強いし、別にブロリーの事が嫌いな訳ではないが……それでも人に憎悪を向けられるというのは中々に嫌な気持ちになるというものだ。

徹底抗戦されて戦士を皆殺しにしたような惑星に行くと、居心地悪いしね。

 

そんな訳でブロリーの居る医務室に到着した。

途中でサウザーと合流したから一人ではないが……恐る恐る、扉を開けて中を覗き込む。

ブロリーがベッドの上で、上半身だけ起こし……水気がなくてパサパサする配給食料をがつがつと食べていた。

そんなブロリーの隣でパラガスは複雑そうな顔をしている。

 

……機嫌は悪そうじゃないな。

私は扉を開けて中へ入る。

 

 

「……どうもー」

 

 

声を掛けるとブロリーとパラガスの視線がこちらへ向いた。

ブロリーは何か口にしようとしていたが、配給食料が口に入っていて喋ることができない。

 

そんなブロリーを横目に、パラガスが頭を下げた。

 

 

「わざわざこのような所まで、申し訳ありません。クウラ様」

 

「あ、うん」

 

 

なんか先日までと態度が違うな。

お世辞のような感じが抜けて、怯えが感じられる。

ははーん、私とブロリーの戦闘を見てビビったのか。

 

ま、パラガスはいいや。

どうでもいい。

 

本題はブロリーという訳だ。

 

 

「ブロリー、もう大丈夫?」

 

 

怪我を心配するような素振りで声を掛ける。

いや、まぁ、サイヤ人の生命力とメディカルマシーンがあるし、もう完治しているに違いないけど。

 

 

「お、おれは、大丈夫……です」

 

 

どこか遠慮してそうな返答に、私は目を瞬いた。

敵視……は、感じられない。

 

しかし、ブロリーは案外、腹芸が出来るタイプだと私は知っている。

敵を前に無力なサイヤ人のフリを出来るやつだ。

 

 

「ごめんね、あんなに強く殴っちゃって」

 

「い、いや……クウラ様、つよくてビックリした、だけ」

 

「そう?」

 

「うん……おれが本気だして、負けたの、初めてだから」

 

「……まぁ、上には上がいるからね」

 

 

しみじみと思う。

この世界、自分が強者だろうと、それよりも強者が居るものだ。

今は私が強者だが、このままでは弱者へ分類が変わる。

それだけ、戦闘力のインフレは凄まじい。

 

 

「クウラさまより、強いやつもいる?」

 

「ブロリー!」

 

 

ブロリーの言葉にパラガスが咎めた。

失礼な発言に、私が癇癪を起こすかもしれないと、怯えたのだろう。

 

まぁ、私はこんな事で驚かないけど。

 

 

「今は見たことないけど、いるよ。宇宙は広いからね」

 

 

私の言葉にサウザーとパラガスは訝しげな顔をしていた。

何言ってんだコイツって顔だ。

 

対して、ブロリーは押し黙ってしまった。

自分も想像できない強者の存在、それを飲み込めていないのだろう。

 

 

「クウラさま、それって、怖くない……?」

 

「え?怖いけど」

 

 

めちゃくちゃ怖い。

人造人間やらセル、魔人ブウ、(スーパー)サイヤ人。

怖いに決まってるでしょ。

 

そんな私の言葉にサウザーとパラガスは何言ってんだって顔してる。

え、また?

私そんな変な事言ってるかな?

 

ブロリーは……視線を震わせている。

自分より圧倒的な強者である私が、怖いだのなんだのいう相手が居る……そう考えれば、何か思っても仕方あるまい。

 

 

「ま、なるようになるよ。戦うだけじゃないし」

 

「戦うだけじゃない……?」

 

「そう。争いを避ける手段に一番良いのは争いたいって思わせないぐらい強いのがイイ……でも、それだけじゃない」

 

「…………?」

 

 

ブロリーは首を傾げた。

 

 

「相手に敵だと思われないように振る舞うこと。例えばさ……私は今、ブロリーより強いけど……ブロリーを殺そうとは思ってない」

 

「……うん」

 

「ほら、ブロリーは強さ以外で私と争わないようにしてる。それを他の人にもするだけ」

 

 

所謂、処世術ってやつだ。

宇宙全土では強い奴が全てで、強い奴に弱い奴が搾取されるのは仕方ないって考え方が多いけどね。

それでも相手に有益だと思わせて、争わないように立ち回る事だって出来る。

 

 

「……クウラ様って、すっごく賢い?」

 

 

まぁね。

宇宙全土見渡しても私ほどの賢者はいないよ。

でも、認めるとちょっと自惚れてるっぽく見えるしここは謙遜をしよう。

 

 

「ふふ、そうでもないよ」

 

 

私が首を振ると、サウザーが頷いた。

……ん?

それってどういう意味だ?

 

あ、ブロリーの言葉に同意したのか。

なるほどね。

 

しかし、ブロリー……私に敵意はなさそうだ。

寧ろ、どこか懐かれてるような気がする。

 

これ、あれか。

サイヤ人って凶暴な獣みたいな性質だから、私がボコった所為で格上に認定して、群れの長として認めたって事かな。

 

なるほど。

ならば乗るしかない、この流れに。

 

 

「クウラさまは──

 

「『さま』付けじゃなくてもいいよ。もっと気軽に呼んで欲しいな」

 

 

私がそう口にすると、ブロリーはギョッとした顔でパラガスを見た。

パラガスは額に手を当てながら、呆れたように頷いた。

なんだその態度は。

 

一方でサウザーは複雑そうな顔をしている。

どことなく、ブロリーのことが気に入らないって顔だ。

お、嫉妬か?

サウザーにも可愛いとこあるんだな。

顔も声も可愛いとは程遠い、イケメンでイケボだけど。

 

 

「あ、うん、えっと……」

 

 

しかし、ブロリーは困っている。

仕方ないか、いきなり目上の人間に敬称をやめろと言われたら、語彙の少ないブロリーには苦しかろう。

 

それでもブロリーは少し悩んで、顔を上げて私を見た。

 

 

「じゃ、じゃあ……クウラ“おばさん”って呼んでいい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やばい、意識が一瞬飛んでた。

 

おばさん?

おば、おばさん?

おばさんって、え?

 

いや、確かにね、私の年齢は100を越えてるけどね?

でも、おばさんって訳じゃなくない?

 

でも確かに、おばさん……。

 

いや、おばさんって言われた事ないし!

長命種であるサウザーにも、「クウラ様はいつまでも子供っぽ……若々しいですね」とか言われてるし!

 

見た目だけなら、人間年齢で20歳弱ぐらいの見た目だし!

ピチピチのギャルだし!

 

そんな私がおばさん?

おばさん、か。

 

おばさん、おばさん、おばさん……。

 

 

「…………む?」

 

 

ぐるぐると回る思考から復帰すると、サウザーとパラガスが凄まじい怯え顔をしていた。

なんか、とんでもなく怖いもの見たって顔だ。

 

なに?

この部屋にさっきまでヒルデガーンでも居た?

 

視線をブロリーに戻すと、不思議そうな顔をしていた……が、何やらパラガスがブロリーに耳打ちしていた。

こそこそと何かを耳にしたブロリーは、私の方へ視線を戻した。

 

 

「えと、クウラ“ねえさん”って呼んでも、いい?」

 

 

あ、やっぱりさっきのは私の幻聴だったんだ。

そりゃそうだ。

“おばさん”なんて言われる謂れはないし。

うん、うんうん、うん。

 

 

「うん、いいよ。それで」

 

 

私が頷くと、サウザーとパラガスが安堵の息を吐いた。

……仲良いな、君たち。

いつの間にそんな仲良くなったんだ?

あれか、ブロリーと私の喧嘩を見て仲良くなったのか。

 

ま、仲良きことは良いことだ。

同じ軍で仕事するなら、尚更ね。

 

 

「それじゃ、ブロリー。私ちょっと用事があるから」

 

「う、うん……」

 

 

歯切れの悪い頷きに、私は視線を戻した。

 

 

「どうかした?」

 

「えっと……ま、またクウラねえさんと戦いたい、だめ?」

 

「……え?なんで?」

 

 

手合わせに見せかけて、私のことを殺そうという魂胆か?

 

 

「おれ、もっと強くなりたい」

 

「……どうして?」

 

 

さっきの私の言葉に納得したんじゃなかったのか?

 

 

「おれ、頭よくないから……強くなって、ねえさんの役に立ちたい」

 

 

ブロリーが真摯な目を私に向けてきた。

……ちょっと揺らぎそうになった。

良い子じゃないか、ブロリー。

うんうん、良い子だ。

 

これからも警戒はすべきだろうけど、性根は嫌いになる必要もないだろう。

 

 

「そっか、なら手合わせしてもいいよ」

 

 

何より、ブロリーの力を好き勝手に使えるなら、人造人間やらインフレに怯える必要も減少する。

 

ま、これじゃパラガスみたいな思考だけどね。

ブロリーが戦力になるなら万々歳だ。

 

 

「うん、じゃあブロリー、またね」

 

 

私はブロリーに手を振って、医務室を出た。

無論、サウザーも連れて、だ。

 

 

 

 

 

 

ステーションの廊下を歩いていると、サウザーがすぐ横まで駆け寄ってきた。

 

 

「……よろしいのですか?」

 

「なにが?」

 

「あのサイヤ人のガキは危険です……今のうちに処分した方が良いかと」

 

 

サウザーの言葉に私は足を止めて、目線を向けた。

 

怒ってはない。

サウザーの言い分は正しい。

 

制御できるか分からない爆弾を、自分の側に置くのは自殺志願者ぐらいだ。

 

まぁでも──

 

 

「そう焦らなくていいよ。それとも、ブロリーが私より強くなるかもって思ってる?」

 

「そ、それは、そうは思いませんが……」

 

 

いや、思ってる顔だよね。

それ。

 

ま、実際……ここ数年、自分が強くなってるって実感はなかったし。

トレーニングもサボり気味だったし。

 

だって強くなってる気がしなかったらさ、モチベーションも上がらないじゃん?

身体を痛めつけるより、ゲームしてた方が楽しいし。

 

でも、今は違う。

 

 

「大丈夫だよ、サウザー。私も、もっと強くなるから」

 

 

ブロリーと戦ってから、何かが変わった。

身体の中のタガが外れた、というか……頭上に見えていた天井が無くなった、というか。

 

まだまだ強くなれる。

そんな気がした。

 

ま、私もフリーザの姉だからね。

思っていたよりも、戦闘民族寄りだったという訳だ。

 

強者との戦いによって、とびっきり強くなれる。

それがこの世界での常識だ。

 

アレだね。

強者との戦いでレベル上限を引き上げて、鍛錬で経験値を積んで強くなるのが最高効率って感じ。

 

 

「クウラ様が……?」

 

「うん。だから、ちょっと今からトレーニングしようかなって」

 

「……左様ですか」

 

 

 

サウザーが少し複雑そうな顔で頷いた。

何やらショックを受けている様子だ……なんで?

人の機微には聡いつもりだったんだけどな……分かんないや。

 

少し落ち込んだ様子のサウザーを連れて、そのまま廊下を歩く。

宇宙の星々が窓の外から見える。

 

この星、大気があるけど恒星が近くにないから、ずっと夜みたいな感じなんだよね。

でも、私はこの光景は好きだな。

 

なんて考えて……私はサウザーに目線を向ける。

 

 

「サウザー」

 

「はい」

 

「私ってさ──

 

 

私の言葉に、サウザーが姿勢を改めた。

真剣な表情から、私が何を言おうとしているか察したのだろう。

 

 

そう、正解だ。

 

 

私は今から、真剣な話をするのだから。

意を決したサウザーに対して、私はゆっくりと口を開いた。

 

 

「私って、まだ若いよね?」

 

「…………は?」

 

 

サウザーが目を瞬いて、片眉を上げた。

 

 

「いやさ、さっきブロリーにちょっと歳上扱いされたよね?でも、見た目的にはそんなに歳上に見えないと思う。華美なドレス着てても似合ってないとか言われたことないし。地球では若者からナンパされた事だってあるぐらいだし。だからブロリーは歳上って意味の“おばさん”じゃなくて“小母さん”って言ったと思うの。これってパラガスの教育が悪いと思うんだけど、いやまぁ責めるつもりはないよ?本心から出た言葉に一々怒ってたら、人はついて来ないし。上に立つものの責務として、ブロリーの言葉は受け流したよ。偉いよね、私。でもさ、歳上扱いって酷いよね。語彙力がないからああ言っちゃっただけで、ブロリーも本当はそう思ってないよね。というかサウザーもそう思ってないよね?私って若いよね?」

 

「あ、はい」

 

 

サウザーが少し萎びた顔で頷いた。

 

 

「え?何それ、めんどくさい上司を前にした部下みたいな顔をして」

 

「………………」

 

 

サウザーが顔を顰めて、何か言いたそうな顔をしている。

そして、目線を逸らして、目頭を揉んだ。

 

 

「サウザー」

 

「……クウラ様は若く、美しいですよ」

 

 

サウザーの言葉に私は目を細める。

 

 

「それ本当に本心から言ってる?」

 

「本心です」

 

「本当に私のこと、魅力的な女性だと思ってる?」

 

「はい。たいへん魅力的ですよ」

 

「ふーん、そう?」

 

 

サウザーはめんどくさそうに返答しているが、嘘ではないっぽいし。

 

しっかし、サウザーから見て私、魅力的な女性に見えちゃうか。

いやぁ、照れるなぁ。

ま、私相手なら仕方ないな。

むふふ。

 

良い感じに自尊心も満たされた私は、そのまま足取りを軽く踵を返した。

後ろからため息が聞こえた気がしたが、きっと気の所為だろう。

 

 

 




サウザーから見たクウラちゃんは、ポンコツ美少女上司です。
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