時間は流れる。
ブロリーを拾ってから数年が経過した。
少年らしい姿だったブロリーだったが、急ににょきにょきと身長が伸びて、私を追い越し、青年へと成長していた。
まぁ表情はあの頃のままで、無垢というか……なんかちょっと幼い感じがするけど。
急に大きくなったのはサイヤ人の性質だ。
少年から大人になる時、急に身長が伸びるんだ……アイツら。
というか、私より身長が高いんだけど。
ついこの間まではこんっなに小さかったのに……。
今は筋肉質にもなったし、このまま行くと劇場版みたいなマッチョになるんじゃないかと戦々恐々である。
でも、性格は原作とは違って穏やかだ。
急にキレて暴れないし、惑星をいたずらに破壊したりもしないし、穏やかだ。
んんっ、これって私の影響なのかな?
それとも自惚れ?
兎にも角にも、ブロリーは優しい青年へと成長した。
パラガスもちょっと老けて、大人しくなった。
サウザーは長命種族だから、容姿は変わらず。
そんでもって私は──
「ふんっ」
気を昂らせると、身体の一部が金色になるようになっていた。
意味不明だ。
マジでこれ何?
穏やかな心を持っていたが怒りによって目覚めた私は、
よく分かんないが、身体の一部を金色にすると、ちょっぴり強くなる。
意図すれば好きな部位を金ピカに出来るので、髪色を金髪にしたりも出来る。
したからなんだって話ではあるが。
父親であるコルド大王にメール飛ばしたけど「知らん……何それ……怖……」って返事されたし。
マジで謎の現象である。
ちなみにいつもの、第四形態で金色になってる。
第五形態では試した事がない。
……そもそも、この三年間で第五形態になるようなタイミングがあんまり無かっただけなんだけどね。
話を戻す。
身体の一部を金色にすると、その部分の強度が上がる。
ただし、凄まじい勢いでエネルギーを消耗する。
金色にした部位の大きさによって消耗するエネルギー量が変わるので、使い所は見極めなければならない。
てか、今の私だと腕だけ金ピカモードでも1分でガス欠になる。
使い物にならないし、論外だ。
ま、そもそも第五形態になった方がエネルギー効率いいし、金色になる必要はあんまり無いんだよね。
使えるに越した事はないから、訓練してるけど。
名付けるとしたら
そもそも、変化出来るのも身体の一部だけだし、名付けるほど身につけた技能でもないけど。
現在はゴールデンクウラ(仮)にしておこうかな、そうしよう。
ちなみに、強くなってると言ったが、体感の話だ。
私の戦闘力は現在、スカウターやらで測定不能になってしまった。
ブロリーも測定不能だ。
いやぁね、途中までは機械で何とか測ろうとしてたんだけど、全然ダメになっちゃって。
技術部の人達も、もう諦めちゃってる。
恐らく、推定で言うなら……戦闘力、多分、2〜3億ぐらいなんじゃないかな?
それで、第五形態になれば20〜30億ぐらいだと思う。
我ながら、随分と強くなったものだ。
ふふん。
でも人造人間編で無双できるほどではない。
普通にセルにボコボコにされると思う。
真に恐るべきは原作のインフレである。
増長せずに、平穏に生きるために息を潜めたい所存。
そこの方針は変わらず。
そんな私に対してブロリーも成長しており、私の第四形態と同等程度の戦闘力を手に入れた。
しかし第四形態と同等。
なので、ブロリーが暴走しない限り、私も第五形態にならずに済んでいるという訳だ。
「……ふぅ」
精神を落ち着けると、金色に変化していた腕が元に戻った。
お腹減った、疲れた、眠い。
重力室の加重を切って、部屋の外に出る。
「お疲れ様です、クウラ様」
「ん」
サウザーからタオルを受け取り、顔を拭く。
サウザーの着ている戦闘ジャケット、その胸元には金色の星に彗星の尾をあしらった装飾がされている。
それはクウラ軍のNo.2である副総督であることを示す、階級章のようなものだ。
私がクウラ軍の規則やら、軍律を改定したのだ。
私が総督であり、サウザーが副総督。
他にも階級を細かに決めて、部下を割り振った。
もともとゆるふわ軍規だったから、直系の指揮系統以外だと、「⚪︎⚪︎部のちょっと偉い人」とかになっちゃって、他部署の人からどれぐらい偉いか、なんてのも分からなかったからね。
私が草案を取りまとめて、サウザーとパラガスが作った軍律だ。
あ、そうそう。
パラガスは上席幹部という役職だ。
サウザーに続くNo.3という形で、結構地位が高い。
文官として、指示を出せる才能を評価した形だ。
ブロリーは総督直属員。
彼用に作った階級で、まぁそんなに偉くないけど、私以外に命令できない特別な役職だ。
という訳で、我が軍は近代化が図られている訳で──
「クウラ様。昨晩、当宇宙船内の冷蔵庫から菓子類が消失した、と食料管理係から報告が来ています」
「……そうなの?それは許せないね」
「クウラ様ですね?」
ニッコリと態とらしい笑みを浮かべるサウザーを見て、一歩腰を引いた。
「…………え?いや、違うけど」
そして、サウザーは後ずさる私を見て確信したようで、ため息を吐いた。
「はぁ……クウラ様、自身で定めた規則ぐらい守ってください。でなければ部下に示しが付きません」
軍の所有者は私なのに、好き勝手出来ないのは何故なんだ。
理解に苦しむよ。
あ、そうだ。
軍律の中で「食料係に無断で食料を拝借した場合、減給三ヶ月」としているが、そこに「但し、総督は除く。総督は好き勝手に食糧庫から拝借していいものとする」って記載を追加してやろうかな。
「…………」
いや、する。
取り敢えず、稟議書を作ろう。
サウザーは承認してくれないから、他の幹部に根回しして何とか通してやる。
パラガス辺りは脅せば行ける。
「クウラ様、また下らぬ事を考えていますね?」
図星ではない。
だって下らなくないし、真剣な話なんだもの。
そう思いつつ、サウザーに目線を向ける。
最近、サウザー調子乗りすぎなんだよな。
ここでガツンと言って、私が上司だってのを思い知らせてやる。
「ごめんなさい。もうしません」
しかし、私の口から出た言葉は、思いと裏腹なものだった。
サウザーを前に口が覚えたのだ。
心は屈服していないのに……この口が悪いったら、悪い。
「これで7回目ですよ。そろそろ、謝罪を受け入れるのも厳しくなってきました」
そんな馬鹿な。
「7回もしてない」
してないとは言わない。
したは、した。
自らの罪を認めるのも“強さ”だ。
でも、そんなにやってない筈だ。
冤罪だ。
「記録に残ってますよ」
「……クウラ軍の記録を好き勝手に改竄できる、敏腕のスパイが居るに違いない」
「私の脳内でも記憶しております」
「えっ、人の記憶を改竄する超能力者も……?」
「いい加減にしてください」
「……ごめん」
そんな事を言いつつ、次やったら反省文行きが決まってしまった。
これは敗北か?
否、勝利である。
ゴネにゴネたお陰で、今回は処分なしとなったのだ。
なので勝利である。
私のゴネパワーが、勝った……っ!
勝利のVサインだもんね、内心でVサインしとく。
「クウラ様。それと……惑星クウラNo.2が近付いております。あと1時間ほどで到着致しますので、準備を」
「あ、うん」
現在、私達は新型の巨大宇宙船『グレート・クウラ号』に搭乗している。
……名前がめちゃくちゃダサくて羞恥心をくすぐるが、技術部門の奴らがゴリ押ししてきて、こんなクソみたいな名前になってしまった。
サウザーも「良い名だ」とか、頷いてしまったし。
こいつらネーミングセンスがへっぽこ過ぎる。
宇宙人、自分の所有物に自分の名前つけがちだから、変じゃないんだろうけど。
いや変だわ。
惑星クウラも惑星フリーザも、惑星ベジータとかも変でしょ。
危ない危ない、感化されるとこだった。
私はタオルで顔を擦りながら、羞恥心を紛らわした。
惑星クウラNo.2。
私達クウラ軍が本拠地としている惑星である。
元々の惑星名はブルガリだったか、何だったか……。
大地は荒野で草一本生えておらず、海も川もない。
しかし、地下には水脈があり、大量のエネルギー燃料も存在している。
元々は野蛮な戦闘民族が住んでいたが……まぁ色々あって絶滅し、私達が星の支配者となっている。
つまり、この惑星に居る宇宙人は全てクウラ軍の関係者である。
他の自然豊かな惑星から接収した食料やら、資源を一括で管理し、巨大な宇宙船を利用して輸送する。
私が支配している惑星間だけでも需要と供給のズレが大きく存在し、やれ資材が欲しいだの、やれエネルギー資源が欲しいだの、水が欲しいだの、自然が欲しいだの、レアメタルが欲しいだの……色々とある。
それらの星に対して、他の星で手に入れたものを割高で売り付ける。
そうすれば単純にショバ代として接収するよりも、相手側に負の感情を抱かせ難いし、私も儲かる。
みんな儲かる、みんなハッピーだ。
まぁ、そんな訳で。
惑星クウラNo.2は我々の本拠地でありながら、物流センターでもあるのだ。
惑星クウラNo.2のセントラルエリアに着星した巨大宇宙船グレート・クウラから荷物が下ろされる。
今回の取引相手は、惑星クウラNo.107だった。
機械の製作に欠かせないレアメタルが多く存在する星だが、大地が金属に塗れているため、現地の宇宙人は常に食糧難にあえいでいる。
そこに大量の小麦粉──正確には小麦のようなものだが──を持ち込み、大量のレアメタルと交換したのだ。
大規模農園で採れた穀物の粉が、同等の質量を持つレアメタルになる。
なんともボロ儲けだ。
積荷が下ろされていく様子を、窓から眺める。
私は既に宇宙船から降りており、惑星に建造された巨大なステーションの中へ移動していた。
いつもの玉座……というか執務椅子に座って、窓の外をぼーっと眺めていると──
コンコン
と、部屋にノック音が響いた。
「どうぞ」
入っていいと伝えると、ドアが開いて一人の男が入ってきた。
初老のサイヤ人、ブロリーの父であるパラガスだ。
「ようこそ戻られました、クウラ様。お時間を取って頂き申し訳ない」
「いや、いいよ。暇だし。それで、見せたいものって?」
私が身に付けているスカウターに、事前にパラガスから連絡が来ていたのだ。
惑星クウラNo.2に帰還した際、お見せしたいものがあると。
「はい。こちらでございます」
パラガスが手に持ち、見せてきたのは──
「なにこれ」
金色のアクセサリーだ。
腕につけるタイプのリングと、首につけるネックレス状のやつ。
結構オシャレだけど、なんか国産の古いRPGとかに出てきそうなファンタジーっぽさもある。
こんなもの……というのは悪いが、これを見せる為に私を呼び出したのか?
あのパラガスが?
疑問に感じている私を見て、パラガスはフフと笑みを浮かべた。
「それは戦闘力を抑制する制御装置でございます」
「……制御装置?」
「左様でございます。こちらを身に付けると戦闘力が抑えられ、ブロリーの暴走を事前に抑える事ができます」
「ふーん、なるほどね」
見た目は普通に金色のアクセサリーだけど……あ、そういえば原作でもブロリー、こういう制御装置を身に付けてたような……いやでも全然デザイン違うな。
うーん。
ブロリーは急に暴走する!なんて事はなくなったが……未だに手合わせ中なんかは、見境もなく暴れる事がある。
その暴走を咎めたいパラガスの気持ちは分かる。
「パラガスってさ、ブロリーのこと怖いの?」
「……いえ、そのようなことは」
「あるでしょ」
「…………ええ、まぁ」
私の言葉にパラガスは観念したように頷いた。
「何でそんなに怖いの?」
「……私はブロリーから恨まれているので」
「……なんでそう思うの?」
「幼い頃から過酷な訓練をさせていましたから」
小惑星バンパで遭難していた頃の話だろう。
そういえば、ブロリーはそういう事を言ってたな。
「でもそれってブロリーが過酷な環境でも生きていけるように、だよね?」
「……いえ、違います。私はベジータ王への復讐がしたかった。ブロリーを復讐の道具として磨いていただけに過ぎません。その事を、今のブロリーなら察しているでしょう」
「……ふーん」
私は手元の制御装置を弄る。
戦闘力の抑制、エネルギーの放出制限、暴走の鎮火。
こんな物を付けていると、碌な訓練にならなさそうだ。
「……クウラ様、話を聞いていますか?」
パラガスが訝しむような目で私を見ている。
失礼な。
「あ、うん。聞いてるよ。つまりブロリーに殺されたくないから、制御できるように対策が欲しいって事でしょ」
「……まぁ、その通りですが」
「でもさ、それって杞憂だと思うけど」
「杞憂、ですか?」
私は制御装置を机に置いた。
「ブロリーはパラガスのこと、ちゃんと父親だと思ってるよ。傷付けようだなんて考えてない……それこそ、パラガスがブロリーを裏切らない限りね」
そう。
滅びゆく惑星に置き去りにして、一人用のポッドで脱出したりしない限りは大丈夫だと思う。
いや、今のブロリーならそんな事しても悲しむだけで、怒らなさそうだな。
「……そう思われますか」
私の言葉にパラガスは少し複雑そうな顔をしていた。
あんまり信用していないみたいだが、私が上司だから無下に出来ないのだろう。
そんなパラガスを前に、私は手元の制御装置を握る。
「そんな事よりさ、これって身に付けてるだけで戦闘力を抑えられるんだよね?」
「はい、そうですが……」
「ふーん、どれどれ」
私は手首に制御装置を装着する。
金色のバングルで、ちょっとしたお洒落にしか見えない。
だが、確かに脱力感というか……力を込めづらくなっている感じがする。
「どう?戦闘力は低下してる?」
「こちらで確認致しましょう」
パラガスが自前のスカウターで私に目を向けると──
「ふむ。戦闘力4000万です。かなり弱体化していると考えて良いでしょう」
今の私の戦闘力は1億以上。
そう考えると、かなり抑え込んでいるのが分かる。
「……どれどれ」
私は腕にエネルギーを込めてみる。
すると、装着している制御装置から軋むような音がした。
「クウラ様、何を……?」
「あ、うん。試したい事も試せたし、もういいよ」
私は制御装置を手首から外した。
制御装置なんて大層な名前を付けられているが……ちょっぴり力を込めれば、この装置を壊せる事に気付いてしまった。
私は別に地球人たち程に戦闘力やら気のコントロールが出来る訳ではないが、それでも力を込める込めないでコントロール出来ない訳じゃない。
その精度の差は比べものにならないけど……例えば、最大戦闘力を1億とした場合。
地球人は5〜1億の範囲で操作できる。
私は5000万〜1億の範囲でしか操作できない。
といった感じだ。
この制御装置は、その程度の引き上げで破壊できてしまう。
恐らくブロリーでも破壊できる。
暴走止められないし、ダメじゃんね。
あまり役に立たない装置のようだ。
……いや、さっきスカウターからの測定値が下がってたな。
ということは、身に付けているだけで気の探知やらスカウターやらに引っ掛かり難くなる……?
「……いいね」
自身の強さを偽装すると良い事尽くしだ。
単純に絡まれ難くなる。
別に自分より弱い奴に絡まれてもブッ殺せばいいし、自分より強い奴ならそもそも因縁付けられた時点で偽装しなくても関係ないし。
自身を強者と悟られない様に立ち回ることで戦闘を避ける……それこそ、私の望む平穏そのものである。
「……いかがなされましたかな?クウラ様」
「いいね、これ。私用に幾つか用意できる?」
指に引っ掛けて制御装置をくるくると回す。
「えっ、クウラ様が使用されるのですか……?」
「戦闘力が高過ぎると、交渉の場で要らない誤解を与えかねないからね。まるで私を猛獣かと思って、無駄に警戒する奴らも居るし」
警戒されるのは悪い事ではない。
交渉の場で舐められなくなるのは良いことだ。
でも、警戒され過ぎて不信感を抱かれたり、敵愾心を抱かれるのは利益を損なうことに繋がる。
「はぁ……それはそう、ですか?」
そう思って口にした言葉だったが、パラガスはあまり納得していないようだった。
……私のこと、猛獣だと思ってるのか?
そんな気まぐれで暴れて好き勝手する宇宙人じゃないんですけど?
規律正しく生きてる軍の長なんだけど。
ブン殴ってやろうか、コイツ。
「まぁ、私用に作っておいて」
「承知致しました」
今度、地球に行くときに身に付けておこう。
地球人も気の操作が上手いやつ増えてきて、戦闘力億越えの私が気まぐれに来訪すると悪影響でるし。
気を探られたときに、え?こいつバケモンじゃん?みたいな扱いされたくないし。
うん、うん。
あ、でも──
「これ、デザインもうちょっと可愛くできる?」
「……え?ぇえ、っ!?か、可愛く……?」
「ごてごてしてて、普段使いし辛いし。もうちょっと身に付けてて違和感ないアクセサリーみたいにして欲しいんだけど」
「は、はぁ……承知致しましたが……」
「あと制御装置って名前も仰々しいから変えて」
「……構いませんが」
私の言葉を聞いて、パラガスの眉間がぴくぴくと痙攣してる。
……というかパラガス、改めてよく見たら、髪が白髪混じりになってるな。
老けたな。
ストレスでも溜まってるのだろうか。
今度、適当に理由つけて休暇でも用意してやろう。
その時はブロリーと一緒に行ける様に調整してあげようかな。
部下の内情にも気をかける。
なんて出来た上司なんだ、私は。
そんな事を考えながら、私は何度か頷いた。