TS転生クウラちゃんは平穏に生きたい   作:WhatSoon

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年末激務により投稿遅れて申し訳ない


#23 目指せ!天下一(尚、不参加)

雨がぽつぽつと降る中、亀仙人はブルマの肘がめり込んでた顔を整えて、視線をブルマに戻した。

何事もなかったような顔で、だ。

 

 

「ところでヤムチャはおらんのか?」

 

「…………」

 

 

ブルマが黙っていると、プーアルが片手をあげた。

 

 

「ヤムチャ様なら、一人で修行の旅に向かわれましたよ」

 

 

そして、ブルマはため息を吐いた。

 

 

「私も置いてね……まったく、酷い男よねー、クウラちゃんもそう思うでしょ?」

 

「あ、うん。ひどい」

 

 

急に振られてびっくりしつつ、私は頷く。

 

ヤムチャは亀仙流の武道家であり、ブルマの彼氏で、プーアルの主人だ。

私は出会った事がない。

前回、地球に来た時には既に、ブルマ邸から出て修行の旅に消えていたからだ。

 

しっかし、彼女を放って3年も旅に出るなんて、実際に碌でもない男だと思う。

うんうん、それは彼氏くんが悪いね。

私にとってブルマは友達だけど、私が彼氏だったらそんな事しないのにな〜。

 

なんて、私が戯けたことを考えている間も会話は進んでいる。

 

 

「ほっほっほ、ヤムチャもか。クリリンのやつも修行の旅に行ったわい。3年前の悟空に刺激されたんじゃろうな」

 

 

亀仙人はしみじみと言っているが、ブルマは半分ぐらい本気でキレている。

武道家と普通の女の子の間には、途轍もない壁があるみたいだ。

 

武道家って碌でもない奴らだな、まったく!

ブルマの横で私も一緒に怒ってるアピールしとこ。

 

なんて、ことをしていると──

 

 

「よっほー、久しぶり。そこんとこで、みんなと偶々会ってさー」

 

 

独特な挨拶をしてきたのは……スキンヘッドに帽子を被った小柄な青年だ。

そんな小柄な青年を見て、亀仙人は感嘆の息を吐いた。

 

 

「おー、クリリンか!見違えたぞ」

 

「ふふん、でしょう?すっごい修行しましたからね、ボクも」

 

 

自信ありって感じのクリリンと呼ばれた青年。

彼は孫悟空の親友であり、亀仙流の同期だ。

 

 

「お久しぶりです。武天老師様」

 

「おお、天津飯も来ていたのか。お主も随分と鍛えたようじゃな」

 

 

そして横から出て来たのは天津飯……亀仙人の異名である武天老師と呼び敬っている。

そんな彼もスキンヘッドなのだが、額に第三の目がある。

宇宙人もびっくりだ。

 

こいつ本当に地球人なのか?

 

 

「よっ、ブルマ!久しぶりだな!」

 

 

しかして、そこに居たのはヤムチャだ。

ブルマの彼氏で、彼女の言い分だと三年も放置して来た彼氏……対して、そんなブルマの反応は──

 

 

「久しぶり……じゃないわよ!連絡も寄越さないで!」

 

「はは、悪い悪い。それだけ修行に専念してたって事さ」

 

 

修行に専念していれば、彼女に連絡もなく放置して良いのか?

いや、良くないでしょ。

やっぱり武道家と普通の女の子には価値観の乖離が存在している。

 

こんなんだから、将来、ブルマを寝取られるんだぞ。

ヘラヘラ笑いやがって。

 

なんて冷ややかな目でヤムチャを見ていると、目が合った。

一瞬、ヤムチャが固まって……そして、顔を青くしながらブルマに目線を戻した。

 

 

「あ、あのさ?俺なんかしたか?そこのお嬢ちゃんから寒気がするんだが」

 

「さぁ?ま、自分の胸に聞いてみれば?」

 

「い、いや、俺この女性(ひと)と初対面なんだが……!?」

 

 

初対面だが、既に私はこのヤムチャとかいうやつの評価が低い。

私はブルマの友人で、ブルマは私の恩人である。

 

将来的に浮気までするし。

 

でも、こいつ女が絡まなきゃ良いヤツだからな……。

浮気性の男はみんな死んでしまえ、って思ってるけど、評価プラスマイナスでいえば……いや、ギリギリマイナスか。

 

とにかく、ちょっと、薄らと……嫌いじゃないが、軽蔑してる。

 

そんな私にたじたじとしているヤムチャの横から、クリリンが顔を出した。

 

 

「というか、ブルマさん。その人、その……誰ですか?」

 

「それは俺も気になっていた」

 

 

天津飯も同意した。

 

なんだ。

なんでそんなに私の事が気になるんだ?

なるべく目立たないようにしてたけど。

 

サングラスの下で何度か目を瞬く。

そして、ブルマの方へ目を向ける。

 

良い感じに紹介してくれ、という念を込めて。

ブルマも気付いたようで、頷いてくれた。

 

 

「彼女はクウラちゃん」

 

「よろしく」

 

「私の友達で、宇宙人よ」

 

「うん……うん?」

 

 

私が片手を上げると……って、ブルマ、今、私が宇宙人だって公言した?

言うなとは言ってないが、言うか?

信じて貰えるのだろうか。

不審者扱いされたり、アホの子(あーぱー)扱いされないか、不安なんだが──

 

 

「へーっ、宇宙人ですか!初めて見ました」

 

 

いや、クリリンは納得したみたいだ。

流石はハチャメチャ男、孫悟空の親友だ。

常識外に対しての許容量が多いのだろう。

 

 

「俺も宇宙人と会うのは初めてだな……餃子(チャオズ)はどうだ?」

 

「え?ボクも初めてだよ、天さん」

 

 

天津飯と餃子(チャオズ)は少し驚いているようだが、疑っている素振りはない。

そんなんでいいのか?

宇宙人だぞ?

 

唯一首を傾げているのはヤムチャだけだった。

 

 

「う、宇宙人〜?ブルマ、それってホントか?」

 

「ホントもホント。宇宙から来たのよ、彼女」

 

 

……うーん、いやでも疑われるのは疑われるのでムカつくな。

ちょっと宇宙人アピールしといた方がいいかな。

 

と思ったが、アピールできるほど私って宇宙人仕草してないな。

そもそも感性は地球人のまんまだし。

 

物的証拠も、あるとすれば宇宙船ポッドぐらいか?

でもあれ、地球人が想像するUFOっぽくはないんだよね。

 

しかし、舐められたままで話を終わりたくない。

自分で言うのもなんだが、私は宇宙では結構、名の知れた権力者なんだぞ。

宇宙の女帝 (自分で言ってて恥ずかしい) 、クウラ様なんだぞ。

 

なんて考えていると、雨が止んできた。

みんなが傘を閉じていくので、私も合わせて傘を閉じると──

 

 

「おっす!」

 

 

声を掛けられた。

そこにはツンツンとした黒髪をした青年が立っていた。

 

その姿をみたブルマ、亀仙人、クリリンは固まった。

ショックを受けている様子だ。

 

まぁ、さもありなん。

 

 

「もうみんな集まってたんか。出遅れたのはオラだけだったか」

 

「ま、まさか──」

 

「ご、悟空か!?」

 

 

数年前まで、あんなに小さかった子供が急に大きくなって帰って来たのだから。

 

 

「え?何言ってんだ?あたりめぇだろ」

 

 

対して悟空は当然という顔をしている。

彼は自分の変化に無頓着すぎる。

たった数年で身長が2倍近く……アレだな、ブロリーみたいだ。

サイヤ人ってやっぱり、特定のタイミングで急に大きくなるよね。

うんうん。

 

 

「ご、悟空ーっ!このやろ!会いたかったぞ!」

 

「おう、クリリン!元気そうで良かったぞ」

 

 

クリリンが感極まってハグしている。

流石は悟空の親友だ、順応性が高い。

天津飯やらヤムチャ、他の人達はまだまだポカンと口を開けているのに。

 

 

「しっかし、天津飯も居るし、みんな集まって……って、アレ?」

 

 

悟空が私を見て目を瞬いた。

そして、ちょっと難しそうな顔をして目を細めた。

 

アレは何かを思い出そうとしてる顔だ。

私には分かる。

 

ちょっと助け舟を出すか。

名前と顔がバレても影響はないし、これぐらい良いだろう。

 

 

「久しぶり、悟空」

 

 

私が片手を上げると、周りのみんながちょっと驚いたような顔をした。

孫悟空と面識があると知らなかったのだろう。

まぁ、言ってないし。

 

対して悟空は何か、気付いたような顔をして手を叩いた。

 

 

「あー!あん時の姉ちゃんか!なーんで、ブルマと一緒に居んだ?」

 

「面識があってね。私も、悟空とブルマが面識あるなんて知らなかった」

 

「はぇー、そんな事もあるんだな。驚ぇたぞ」

 

 

快活に笑う悟空を前に、周りが何やら聞きたそうにしている。

そうして、最初に口を開いたのはクリリンだ。

 

 

「おい、悟空──」

 

『これから、本日行われる天下一武道会の予選を行います!まもなく予選を行いますので、競武館にて参加申請をお願い致します』

 

 

鳴り響く拡声器越しの声に、クリリンの言葉は中断された。

そして、意識を切り替えたように、声が聞こえた方を見ていた。

 

 

「っと、もうそんな時間か〜……武天老師様、いつもの道着って持ってきていますか?」

 

「いんや?お主たちはもう一人前の武道家じゃろう。いつまでも亀仙流の道着を着んでもよかろう」

 

「はははー、そうですか?」

 

「そうじゃ。ほら、頑張ってこい!」

 

 

亀仙人の言葉に、全員が頷いて予選会場の方へ移動し始めた。

悟空達を見送った後、ブルマが私の横に寄ってきた。

 

 

「ね、クウラちゃん。孫くんと知り合いだったの?」

 

「知り合いって程じゃない。何年か前にちょっと一回だけ、会っただけ」

 

「ふーん。孫くん、けっこー見た目変わってたけど……分かるものなのね。信じられないわ〜、良い感じの男の人になっちゃってたから」

 

 

ブルマの言葉にウーロンが「けっ」と悪態を吐いた。

 

 

「まぁ、私、人の顔を覚えるの得意だから」

 

 

これは本当だ。

普段からカエルまんま、犬みたいなやつ、爬虫類顔の宇宙人どもを相手に、ちゃーんと個別で顔を覚えているからね。

人間の顔ぐらい覚えるのは楽勝だ。

 

……それはそれとして、そもそも悟空の顔なんて前世で腐るほど見たことあるから覚えてただけなんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こっそり、武天老師様には内緒で作っておいた亀仙流の道着を着ながら、悟空へ視線を向ける。

 

 

「なぁ、悟空」

 

「ん?どうした、クリリン」

 

 

そして、俺は先程から感じていた疑問を口にする。

 

 

「クウラさんって……強いよな?」

 

「……へへ、クリリンも気付いたか」

 

 

悟空の言葉に、天津飯が近寄ってくる。

 

 

「孫、やはりか」

 

「やっぱ天津飯は分かるか?」

 

「当然だ。奴からは凄まじい気を感じていた」

 

 

女性相手に(やつ)とか言うなよ……と思いつつも、俺も頷く。

 

確かに外見的な要素でも、立ち姿でも、全く強そうには見えない。

だけど、感じるんだ。

熟練の武道家と対面した時に感じる威圧感──いや、ちょっと違うな。

 

制御不能の猛獣を目の当たりにしたかのような、緊張感だ。

 

凡そ、人間から感じたことのない気。

数年前、ピッコロ大魔王の配下と相対した時に感じた……その何倍もの迫力、脅威。

それをあの人から感じていたんだ。

 

 

「おいおい、何の話だ?」

 

「おう、ヤムチャ。クウラの姉ちゃんがすげー強そうだって話だ」

 

「あー、確かに。ちょっと怖かったからな……ちょっとだけだぞ?」

 

 

俺は呆れて苦笑した。

ヤムチャさんの感じている恐怖と、俺達が感じている威圧感はきっと別物だ。

なんというか、こう、女の敵というか……あの人、ブルマさんと仲良さそうだったからなぁ。

女って怖ぇーや。

 

しかし、先程の悟空の発言に俺は首を傾げた。

 

 

「でもさ悟空、お前なんでクウラさんのことを“姉ちゃん”って呼ぶんだ?」

 

「ん?オラなんかおかしなこと言ったか?」

 

「いやいや、おかしいだろ?あの人、たぶん俺達と同じぐらい……というか歳下だろ?そんな人に“姉ちゃん”だなんて──

 

「いやぁ、そうじゃねぇかもよ?オラが初めて出会ったのは5年以上前だけどよ、そん時からあの見た目だったぜ?」

 

「……そ、そうなのか?」

 

 

俺は悟空の言葉を疑いつつも、こういう時に嘘を吐くようなヤツでもないと頷いた。

しかして、訝しむ俺を他所に、天津飯が納得したように頷いた。

 

 

「なるほど。彼女は宇宙人だったな。人間とは歳の取り方が違うのかもしれん」

 

 

天津飯の言葉に、ヤムチャが頷いた。

 

 

「はー、じゃあ嬢ちゃんって歳じゃないのか?思ったより歳を食って……っと、なんか寒気がしてきたな」

 

 

本人が居ないからって余計なことは言わないほうがいい。

俺はそう思いつつ、悟空に視線を戻した。

 

 

「それで、前に出会った時はどうしたんだ?何かあったんだろ?」

 

「おう。手合わせしてもらったぞ。つっても、全然勝てねーもんだから稽古って感じだな。ありゃ凄かった」

 

「へー、あの頃の悟空でもか。でも今ならどうだ?少しは良い所まで行けるんじゃないか?」

 

 

俺の言葉に悟空は苦笑した。

 

 

「……そう思いてぇけどよ。ありゃ今のオラでも無理だ」

 

「諦めるにしては、随分と楽しそうだな。悟空は」

 

「そりゃ楽しいに決まってんだろ?目標は強ければ強え方がいいしよ。な、天津飯もそう思うだろ?」

 

 

悟空の言葉に天津飯も頷く。

 

 

「フッ……それに関しては、俺も同感だ」

 

 

あー、こいつらってそういうタイプの人間だったな、なんて思いつつも、自分を恥じた。

相手が強ければ挑まない、相手が強ければ諦める……なーんて、武道家失格だ。

 

頬を叩く。

 

 

「……よし」

 

 

雑念を払って、初心に戻る。

そんな俺の様子を見て、悟空は片眉を上げた。

 

 

「どうしたクリリン。頬に蚊でも止まってたんか?」

 

「ハハハ。ちげーよ、バカ」

 

 

なんて言いつつも、俺は笑っていた。

この大会で修行の成果を見せてやる、と意気込みながら。

 

 

 

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