TS転生クウラちゃんは平穏に生きたい   作:WhatSoon

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遅れてすみません
投稿再開します


#27 ブロリーと

惑星クウラNo.1。

元の名前は惑星クァンバ……だったか。

そこは生物が殆ど存在しない惑星。

少なくとも知的生命体は確認出来ていない。

 

ここは私が初めて侵略した惑星で……そして“失敗”した惑星だ。

 

今も覚えている。

ここには一人で、宇宙船ポッドでやって来た。

 

まだ交渉などに拙かった私は、力を隠して、原住宇宙人のクァンバ星人と交渉した。

してしまった。

 

結果は決裂。

元々、好戦的だったクァンバ星人は、私を処刑しようと攻撃を仕掛け──

 

加減を間違えた私に、惑星の表面を焼き尽くされ、絶滅した。

 

焼け焦げた大地の上に、苔のみが生えている。

これは私の反省、戒めの象徴だ。

 

優しく、温厚に、人を傷つけないように……そういった振る舞いが、時には人を傷付ける。

取り返しの付かない事を引き起こしてしまう。

 

後悔はある。

今ならあんな事はしない。

今ならもっと“上手く”できるのに。

 

反省もした。

 

罪悪感も感じている。

 

私の中で、この惑星は苦い思い出のある星である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、それはそれとして。

 

 

この惑星に知性生命体は居ないので、ブロリーとの手合わせにうってつけである。

 

 

「だりゃあっ!」

 

 

ブロリーの突き出した拳を受け止めて、受け流す。

これは武術ではない。

肉体強度と動体視力頼りの、反射行動だ。

 

地球で学習はしたのだが、できるとは言ってない。

仕方ないよね。

 

すかさず、私は蹴りを繰り出す。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

ブロリーに命中するが、何とか堪えられる。

勢いが足りなかったみたいだ。

 

 

「がぁあっ!」

 

 

獣のような叫び声と共に乱打で反撃される。

……回避しきれないな。

地面にエネルギーを打ち込み、爆破する。

 

威力は控えめだ。

だが、大地を砕く事は可能だ。

足場が揺らげば、ブロリーの姿勢も崩れる。

 

砂埃が巻き上がり、視界を遮る。

 

瞬間、私は地面を蹴り、高速移動を開始した。

 

 

「っ……!?」

 

 

地球で見た残像拳……とまでは行かないが、急加速と停止を繰り返す事で、フェイントを繰り出し続ける。

本家と違い砂埃の中であったり、視界不良でもなければ使えない欠陥技……いや、そもそも技って呼ぶほどじゃないテクニックだけど。

とにかく定期的に地面を砕き、砂埃を巻き上げつつブロリーの周りを高速移動する。

 

 

「っ、うぐ……だぁっ!」

 

 

この状況を嫌いブロリーは地面を蹴り、宙へ飛ぼうとする。

その瞬間を待っていた。

 

即座に私はブロリーにローキックを放った。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

姿勢を崩すが、受け身をとってブロリーは立ち上がった。

空中に飛ぼうとすれば、その隙を私に攻撃される……そう理解したブロリーは地面を踏み締めて周囲を警戒した。

 

砂埃が巻き上がる中、私は再び不可視の攻撃を繰り出そうとして──

 

 

「……がぁっ!」

 

 

その腕をブロリーに掴まれた。

 

 

「げっ」

 

 

ブロリーも武術など修めていない。

独自の戦闘技術を発展させてきた私と同様のタイプ。

気の探知も、僅かにしか出来ない。

だというのに、何故、私の攻撃を捉える事が出来たのか。

 

それはつまり、野生の勘(ワイルドセンス)だ。

 

私の攻撃を予測した訳ではなく、ただただ勘で対処したのだ。

んなアホな。

 

 

「がぁぁ……ッ!!」

 

 

私の腕を掴みながら、ブロリーが唸る。

 

ま、まずい。

そう判断して、蹴りを繰り出そうとするが──

 

 

「だりゃあッ!」

 

 

私の顔面に、エネルギーを纏ったパンチが命中した。

 

 

「へぶっ」

 

 

変な声を漏らしながら、私は吹っ飛び、岩盤に跳ね返り、地面を跳ねて、転がりながら体勢を何とか整える。

 

女の子の顔面を全力で殴るなんて酷い……幾ら手合わせとはいえ、ちょっとぐらい加減してくれたらいいのに。

顔がちょっと痛み、私は鼻を押さえながら宙へ浮く。

 

鼻血は出てない。

鼻の骨も折れていない。

 

だが、痛いのは痛いんだぞ。

 

女の子を殴るなんて……まったく。

私はそんな子に育てた覚えはないぞ。

 

瞬間、惑星中にサイレンが響いた。

あれは……手合わせの時間、残り30分を報せるアラームだ。

アレがないとブロリーは無限に戦い続けるからね。

 

そろそろ終わりだよ、と約束しているのだが──

 

 

「ふーっ!ふぅ……ッ!」

 

 

うーん、ダメだこりゃ。

めちゃくちゃ唸ってるし、ちょっと暴走気味だ。

完全に暴走している訳ではないけど、一歩手前って感じ。

 

手合わせが楽し過ぎて、興奮しているのだろう。

 

見た目上はあまり変化はないが、あの状態はかなり強くなっている。

何でも大猿に変身するためのパワーを、人型を保ちながら解放している状態だからだ。

なんかパラガスがそう言ってた。

 

……うーん、ならば、仕方ないか。

あんまり変身したくないんだけどな。

 

 

「……ふんっ!」

 

 

私は即座に、第五形態へと変身する。

身体の内側から甲殻を突き出させて、髪を兜のように変化させる。

プロテクターを粉砕しながら、体格を大きく変化させて……最後にフェイスプロテクターを生成すれば完成だ。

 

 

「……さて、と」

 

 

第五形態にはあまりなりたくないんだけどな。

疲れるし。

 

私は砕けた岩盤を念力で浮かせて、エネルギーを纏わせる。

 

 

「行くぞ」

 

 

一呼吸とともに、岩盤を射出する。

ただの岩片であれば、ブロリーにダメージすら与えられないが、私のエネルギーを纏わせば別だ。

 

致命傷……とまでは行かないだろうが、ダメージが入るのは確実。

そんな事はブロリーにも理解できているだろう。

 

 

「っ!?……ぐっ、はぁあああッ!」

 

 

ブロリーは防御ではなく、迎撃を試みた。

岩に紛れて私が攻撃してくる事を恐れて、だろう。

 

ブロリーはエネルギーを手のひらに集中し、エネルギー砲をぶっ放した。

その間に挟まるように飛んでいた岩片を同時に消滅させるつもりのようだ。

 

瞬間、私もブロリーに向かって加速を始めた。

 

ブロリーは岩と同時に私が攻めてくるのを妨げるために、エネルギー砲を放った。

“だから”、私は同時に攻めるべくブロリーへと向かったのだ。

 

エネルギーの奔流に巻き込まれて岩片が塵も残らず消滅する。

そんなエネルギーの奔流を逆流するように私は突き抜けて──

 

 

「なっ!?」

 

「甘いッ!」

 

 

ブロリーの目の前に姿を現した。

驚愕し、隙を晒している中……私は拳を頭上から叩きつけた。

 

 

「うがっ!?」

 

 

ハンマーでぶん殴られたかのように、ブロリー はそのまま地面へと叩きつけられて、地表を砕いた。

瞬間、ブロリーの纏っていたエネルギーが霧散した。

 

気とかよく分かんないものは私にも読めないが、身体から漏れ出ているエネルギーぐらいなら私にも見える。

……というか、ブロリーほどエネルギーを放出していたら、別に特別な技能などなくとも、光って見えるんだけどね。

 

 

「ゔ、ゔぅ……っ」

 

 

声を漏らすブロリーの目の前に着地する。

 

そんな私に気付いてか、ブロリーは顔を上げた。

僅かに涙を滲ませて、悔しそうにしていた。

もう戦う気はなさそうだ。

 

 

「姉さん……っ、ずるい……!その姿にはならないって、言ったのに……!」

 

 

あれ、そうだっけ?

そうだったかも?

 

いやそんなこと言ってないよ。

ちょっと記憶を遡ってみるか。

 

 

『今日は第五形態にならないよ。お互いに手加減して、軽く手合わせするだけだからね』

 

 

……いや、そうだったわ。

言ってたわ。

 

 

「フン、暴走しそうになっていたお前が悪い」

 

 

普段なら謝罪の一つぐらいするけど、この姿だと妙に高圧的になってしまう。

なんて他人事のように考えながら、第五形態のまま返答する。

 

だって今、第四形態(いつもの)に戻ったら全裸だもん。

戻るに戻れない。

 

 

「それは、そうだけど……」

 

 

ムッとしながらも、納得するブロリーの腕を引っ張り立たせてる。

 

うーん、すっかり大きくなっちゃったな。

第五形態でどっこいどっこい、第四形態でなら明らかにブロリーの方がデカいぐらいだ。

 

 

「とにかく、手合わせは終わりだ。帰るぞ」

 

「……うん。でも、姉さん元に戻らないのか?」

 

「ああ、戻らない。それがどうかしたのか?」

 

 

私は腕を組みながら、ブロリーに目線を向ける。

 

 

「……だって、なんか怖いし。別人みたいだし。喋り方、変だし」

 

 

……まー、いや、怖いのは認めよう。

別人みたいだってのも分かる。

でも、喋り方は変じゃないでしょ。

 

確かに男っぽい口調になっちゃうし、無意識に高圧的になっちゃうんだけどさ。

変ではないと、お姉ちゃんは思うけど。

 

まぁ、ブロリーが嫌だというなら戻ってやりたいが……全裸になっちゃうし。

 

なんて考えつつ、ブロリーの方へを見る。

腰に巻いた緑色の毛皮が目に入る。

 

 

「なら、それを寄越せ」

 

「それ……?」

 

「腰の毛皮だ」

 

 

私が指を指すと、ブロリーは少し困ったような顔をした。

純粋な子供が自分の大切なものを「友人に貸して」と言われてしまったような顔だ。

 

そういえば、その毛皮はブロリーにとって大事なものだったな。

小惑星から脱出後もずっと身に付けているのだから、私でも分かる。

 

私は一つ、ため息を吐いた。

 

 

「いや、やはり必要ない。お前が望まないのならば、別に構わな──」

 

「わかった。これ、姉さんに貸す」

 

 

ブロリーは私の言葉を遮って、腰の毛皮を解いて手渡してきた。

 

 

「いいのか?」

 

 

自分から言っておいてなんだが、大切な物なんだろうに。

 

 

「姉さんならいい。でも、大事にして欲しい」

 

「……そうか」

 

 

ブロリーの言葉に、私は感動していた。

出会った頃、いつ悪魔のような伝説の(スーパー)サイヤ人になってしまうのかと恐れていた。

いつ私を裏切るのか、暴れるのか。

不安だった。

 

だが、今、ブロリーは間違いなく私を信頼してくれている。

 

あの日、あの時、殺さなくてよかった。

 

過去の自分の判断を褒めながら、私は毛皮を受け取り……首から巻きつける。

ブロリーが巨漢だという事もあり、腰巻きというが中々に大きい。

 

第五形態から第四形態(いつもの)に退化すれば、毛皮はまるで外套のように身体を覆う事ができる。

 

メキメキと音を立てて、私は元の姿へと戻っていく。

 

 

「……ふぅ」

 

 

少しすれば、全裸に緑色の毛皮を身に付けた痴女が爆誕した。

第五形態の頃は毛皮ぐらいあればイイか……と思ってたが、全然ダメだ。

下がスースーしてやばい。

 

恥ずかしい。

顔が熱い。

 

というか、内側が素肌に当たってチクチクする。

かといって、巻きつけた毛皮を取り払う事もできない。

 

ま、それはそれとして──

 

 

「ありがとう、ブロリー」

 

 

大切なものを預けてくれたブロリーに感謝の言葉を吐く。

 

 

「……ん」

 

 

対して、ブロリーは何だか少し照れ臭そうにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手合わせをしていた土地から遠く離れた地に、宇宙船が降りてきた。

手合わせするにあたって、万が一のことを考えて退避させておいたのだ。

 

 

「お疲れ様でした、クウラ様……何ですか?その格好は?」

 

 

宇宙船から降りてきたサウザーは私の格好を見て、ちょっと頬を引き攣らせていた。

 

ブロリーから借りた腰巻きの毛皮を身に纏っている。

私はこの姿だと小柄だから、腰巻きとはいえ、それなりに体を隠せてはいるが……それでも丈が微妙に足りておらず、太腿ぐらいから露出してしまっている。

 

たいへん、セクシーなクウラちゃんである。

 

しまった。

サウザーにはちょっと目に毒過ぎたかな。

 

いやは、美少女はつらいね。

なーんて考えていると、サウザーはため息を一つ吐いて、大きめのタオルを渡してきた。

 

 

「はぁ、取り敢えず……これで身体を隠してください、クウラ様」

 

「ん?あ、うん」

 

 

何だか照れる様子もない。

いや、照れて欲しい訳じゃないけど、それはそれとしてムカつくが。

 

私は首からブロリーの毛皮を、腰にはサウザーから渡されたタオルを巻き付けた。

なんか、プールサイドで準備している子供みたいな姿になっちゃった。

 

ちょっと不服になりつつも、私は宇宙船に乗り込む。

そうして、シャワールームへと向かい……火照った身体を冷やしつつ、いつもの服装へと戻った。

 

その頃には宇宙船も惑星クウラNo.1を飛び立って、宇宙空間へと移動していた。

船内には人工重力が発生しているから、宇宙空間に行ったとて特に変わる事はないのだけれど。

 

サウザーから渡されていたタオルを洗濯機にぶちこみつつ、ブロリーの毛皮を手に持つ。

 

 

「…………」

 

 

洗濯機には入れない方がいいか。

お気に入りのタオルを勝手に洗濯されると、泣く子供もいるもんね。

ブロリーは子供じゃないけど、情緒は子供寄りだし。

 

というか、この毛皮、なんで大事にしてるんだろ。

私の知っているブロリーの情報には、こんな毛皮の情報なんてないし。

 

 

…………すんすん。

 

 

ちょっと嗅いでみる。

 

すっごい獣の臭いがする。

これは元の動物の臭いか、ブロリーの臭いなのか、分からないけど……臭いのは確かだ。

 

やっぱり洗濯機にぶち込もうかな。

なんて思いながら廊下を歩いていると、私と同じく別室でシャワーを浴びていたブロリーを発見した。

 

ちなみに、私がシャワーを浴びていたのは私用の個室で、ブロリーは他の兵士も使う同時に何人も横並びで水浴びできる大衆向けのシャワールームだ。

 

 

「ブロリー、これありがとう」

 

「ん……」

 

 

私が毛皮を返すと、ブロリーはいそいそと毛皮を腰に巻いた。

身に付けていないと違和感があるのだろう。

 

 

「ブロリーはそれ、よほど大切なんだね」

 

 

私がそう言うと、ブロリーは少し悩むような表情を浮かべてから口を開いた。

 

 

「……これは、バアの耳だ」

 

「バア?」

 

 

バアってなんだ?

そういう種族の動物か?

 

 

「バアは凄く大きな(けだもの)だ……バーって鳴くから、俺はバアって呼んでる」

 

「……へぇ、バンパの原住生物なんだ」

 

 

私の言葉にブロリーが頷いた。

 

 

「最初は父さんに言われて、バアの攻撃を避けるトレーニングをしてたんだ。バアは恐ろしいが……ずっとトレーニングをしてたら、仲良くなった」

 

 

なるほど、その毛皮はブロリーの友達の……って、ブロリー、友達の毛皮を剥いで身に纏ってるの?

ちょっとドン引きしてると、ブロリーは言葉を続ける。

 

 

「でも、父さんは怒った。仲良くなるとトレーニングにならないからって、バアを撃ったんだ。そしたら、耳が取れて……もう二度と、俺に会ってくれなくなった」

 

 

先程までの自分を引っ叩きたくなるような情報が出てきた。

 

 

「だから俺は……バアの耳といっしょにいる事にした。忘れたくなかった、から」

 

 

てか、パラガス。

そんな事してたのか。

 

……いや分かる。

分かるんだけどね。

 

自分の息子をトレーニングさせようと、原住生物と戦わせてたのに妙に馴れ合っちゃったから、一発攻撃してトレーニングに戻そうとする感じ。

私には分かるけど……ブロリーは納得しているのだろうか?

 

これが原因で宇宙船ポッドに入ったパラガスを押し潰して、殺しちゃったりしないだろうか。

 

 

「ブロリーはそのこと怒ってる?」

 

「……怒ってない。あの星での生活は、父さんも大変だった。だから、仕方ない」

 

 

ちょっと感動した。

ブロリーは私が思っている以上に純粋で、思いやりのある優しい子だった。

うう、流石は私の弟だ。

 

感極まって、私はブロリーを抱きしめた。

 

 

「ね、姉さん……?」

 

「ブロリーは良い子だね……」

 

「…………」

 

 

私の言葉にブロリーは戸惑いつつも、抱擁を受け入れてくれた。

 

 

 

ちなみに、毛皮の臭いはブロリーの体臭だったらしい。

私の鼻が今、そう結論付けていた。

 

 

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