TS転生クウラちゃんは平穏に生きたい   作:WhatSoon

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#3 侵略者クウラ

惑星ベジータのサイヤ人共が、フリーザ軍の傘下に降り数ヶ月が経った。

 

その頃、私は──

 

 

「くそ……戦闘民族(サイヤ人)め」

 

 

サイヤ人にキレていた。

 

叛逆された、とかそういう訳ではない。

サイヤ人は、私には直接何もしてこない。

多分、最初に釘を刺しておいたから。

 

あの面会は正解だったのだ。

フリーザはそういう所、偉いんだよなあ。

根回しとか、軍を管理する能力に長けてるんだよね。

 

話を戻すが、なぜ、私がサイヤ人にキレているかというと……。

 

 

「……また惑星ブッ壊しやがって」

 

 

最近はフワフワの毛皮クッションまで装備した玉座で、手元のタブレットを操作する。

 

私が移住先候補として選んでおいた穏やか〜な星々から、幾つかアイツらが破壊したのだ。

 

皆が豊かな星とはつまり、資源が豊富という事で……フリーザ軍の侵略対象になりやすい。

侵略、占領ぐらいなら良いのだが、サイヤ人は環境が変動するぐらい暴れるのだ。

原住民の8割を殺したりするし、文明を破壊する。

 

一度壊れた文明は、元に戻らない。

それこそ願いを叶える摩訶不思議なボールにでも願わない限り。

 

 

「…………はぁ」

 

 

情報端末を膝に置き、ため息を吐いた。

 

早くこんな仕事辞めて、隠居したい。

だが、コルド大王から軍を引き継いだフリーザが、私に仕事を振ってくるのだ。

 

勝手に辞めて、コソコソ隠居できなくもないが……。

 

 

「うーん……」

 

 

 

弟に迷惑かけたくないし。

親には育てて貰った恩もあるし。

養わなきゃならない部下がいるし。

 

殆どの奴らが善悪で分ければ悪人になるが、それでも情を感じている。

 

それに、私が占領している星々、惑星クウラの管轄がフリーザ軍になれば、確実に不幸になる人間が増える。

フリーザの統治は私に比べて冷酷だ。

 

いや、まぁ私も反抗する勢力を、片っ端から宇宙のゴミにしてるけど。

 

そう考えれば、私一人の行動で影響を受ける人も多く……迂闊に、仕事から逃げる事もできない。

やっぱり、孫悟空にフリーザが倒されて、トランクスにコルド大王を殺害されたら、こっそり逃げよう。

 

フリーザもコルド大王も居なくなれば、フリーザ軍も崩壊するだろう。

そうなればもう知ったこっちゃない。

なるべくしてなったのだから、私の所為じゃないよね。

私、悪くないも〜ん。

 

 

よし、そうしよう。

それまでに良い感じの星を探そう。

 

 

結局、いつも通りの結論に達した私は、惑星カタログを開き──

 

 

「クウラ様。目的地に到着致しました」

 

「うん?もうそんな時間?」

 

 

部下である……えっと、誰だっけ?

まぁ、コルド大王のお下がりじゃない、そこそこ信頼できる部下の言葉に頷く。

 

今着てるドレス風戦闘ジャケットにマントを装着し、玉座から降りる。

……マントね。

赤くてバサバサしてるやつ。

 

戦闘服は分かるけど、マントを着る意味は何なんだ?

コルド大王もよく着けてたけど、あれか?

威厳とかそういうのか?

 

まぁ、でも私の容姿は20歳弱の肌色が紫色でトカゲの尻尾が生えてる人間だ。

実際はもう100歳以上の、うん、良い歳をしてる宇宙人だけど。

容姿に威厳もクソもない。

 

人の容姿は第一印象で殆ど決定付けられるそうだ。

じゃあ、無理じゃん。

第一印象は背伸びしてる紫色のガキだ。

しょんぼり。

 

みんな実は、私が怖くて言えないだけで「似合ってない」って思ってない?

ジッと部下を見ると、怯えた顔で目を逸らされた。

 

なんだその顔。

爆殺するぞ。

 

……いや、こういう冗談はよくないな。

うん。

歳を取るにつれて、誰かを殺す事に躊躇いを持たなくなりつつある。

よくない傾向だ。

精神が肉体に引っ張られているのか……それとも、単純に私が惰性で「殺し」をやり過ぎて……慣れてしまったのか。

 

恐らくは後者だ。

言い訳をするつもりはないが、改善できる気もしない。

 

 

閑話休題(それはともかく)

 

 

さて、今日は侵略した惑星での打合せだ。

まだ惑星クウラになってない、惑星クウラ(仮)だが……私達の戦闘力を恐れて、星の国家連合が降伏したのだ。

 

相手側は死者が出なくて嬉しい。

私側も無駄に殺しをしなくて済んで嬉しい。

 

こうして脅しのタイミングで降伏してくれると、みんなハッピーだ。

 

今日は星の有力者達を集めて、彼等に今後の説明をするのだ。

納得しなかったら無理矢理、納得させる事になるけど。

 

まぁ、そんなに酷い条約を締結させたりしないし。

久々に血を見ずに占領できそうだ。

 

そう思いながら、私は大型宇宙船のハッチから飛び降りた。

 

何人かの部下が遅れて、私に追従する。

戦闘要員ではない、頭脳に優れた私の部下だ。

コルド大王配下ではなく、私が侵略した星々から現地採用した奴らだ。

 

他の兵士達は待機。

降伏した相手に武器を突きつけるのは良くないからね。

たとえ、他の全員集めるよりも、私一人の方が強力な武器だとしても。

 

 

そう、私は侵略相手にも配慮できるのだ。

えらい。

 

 

なんて、自画自賛しながら私は目的地のデケェ施設に到着した。

 

……しかし、そこには誰もいなかった。

私は舐められないように重役出社したのに。

 

あれ?座標を間違えたかな──

 

 

 

と考えた瞬間。

 

 

 

 

 

閃光が視界を支配した。

 

 

 

 

 

うわ、眩しい。

しかもこれ、ちょっと熱いな。

 

 

 

目を再び開ければ、壁が、天井が、全部が木っ端微塵に吹き飛んでいた。

 

 

……あー、爆弾か。

この星の奴ら、こういうの得意だったな。

忘れてた。

 

 

宙へ浮かびながら、崩壊した建造物を見下ろす。

 

 

……これって、私の事を騙し討ちしたって事で良いのかな?

 

 

「……あーあ、酷い事するなぁ」

 

 

うわ、マントも燃えてる。

最新型の戦闘服もヒビ割れてるし、結構な破壊力だったんだなぁ。

 

ま、この程度じゃ私は死なないけど。

 

と、周りを見渡す。

 

この場には私、一人だ。

そう、一人……一人になってしまった。

 

 

「……あ」

 

 

連れてきた部下は、この強力過ぎる爆弾で消し炭となっていた。

 

 

「……あー」

 

 

粗暴ではなく、理知的で。

比較的、私とも価値観の認識が近く……優秀な部下だった。

 

戦闘力こそが全て、と思い込んでいる奴が多い中……それでも、私が重宝していた部下達が。

 

 

「…………」

 

 

全滅?

全員、死んだのか?

 

 

そう、理解した瞬間──

 

 

ブチッ!

 

 

と、私の中の何かが、キレた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「目標はどうだ!」

 

 

我々、惑星クランチの国家連合の技術を結集して作られた超エネルギー爆弾。

その威力により、侵略者どもは木っ端微塵になると思われていた。

 

だが──

 

 

「複数の生体反応消失!……し、しかし一名、依然、健在!」

 

「偶々、物か人の陰に隠れて威力が減衰したのか……?」

 

「いや、防爆壁の連盟議事堂すら、一撃で木っ端微塵にできる爆弾だぞ?どうやって──

 

 

惑星クランチには4種の人種が住んでいた。

国家間は表向きに国際共和の道を歩んでいたが、実際、裏ではひっそりと妨害しあっていた。

 

だが、その事情が一変したのは半年前の話だ。

惑星外から侵略者が現れた。

名はクウラ……数多の星を侵略してきたという。

 

実際、凄まじいパワーを持っており、力を示すデモンストレーションの一環で、山を一撃で木っ端微塵にした際には驚いたものだ。

 

宇宙からやって来た、共通の脅威。

我々、国家連合は初めて真の意味で協力し合い、最強の爆弾を用意した。

それが先程、爆発した『超エネルギー爆弾』。

我々が肉体に秘めているエネルギー、それを何千人分と集めて圧縮したものだ。

 

それを降伏後の調停式と嘘を吐き、不意打ちに使う事にしたのだ。

 

 

「……しかし、奴は手負の筈だ!回復する暇を与えず叩くべきだ」

 

 

隣国の代表、バナナムの発言に目を見開く。

 

 

「い、いや、しかし──」

 

「それもそうだ!俺は行くぞ!」

 

 

我の発言を無視して、他の奴らが外に飛び出した。

……確かに、超エネルギー爆弾が直撃した今、最後に袋叩きしにいくのは間違いない選択だ。

 

我も周りの奴らに合わせて、エネルギーを纏い宙へ飛んだ。

 

 

 

そして、宙へ浮き物静かにしている侵略者の女……クウラを囲む。

 

直後、血気盛んなパナップが歯を剥き出しにした。

 

 

「これで終わりだ!侵略者め、覚悟の──

 

「一つ、教えてあげる」

 

「ん?……はは……何を教えてくれるって言うんだ?」

 

 

クウラが宙で、腕を交差させた。

 

 

「私は他の『家族』に比べて温厚で、無意識のうちに力をセーブしてしまう事がある」

 

「貴様が温厚だと……?ふざけたコトを」

 

 

我と仲間達は、この女が何を言いたがっているのかと顔を見合わせた。

『温厚』……?

何を言っているんだ、急に現れ、力で星を支配しに来た癖に!

 

 

「だが、もう一つ『次』の姿に変身すると、その甘さはなくなり……加減も利かなくなる」

 

「へ、変身、だと……?」

 

 

瞬間、莫大な圧迫感が体を包んだ。

堪えなければ地面に叩き落とされそうな程の、エネルギーの嵐。

 

 

「歯向かって来た者に、加減は必要ない」

 

 

空気が震える中、遂にクウラの姿が変わり始めた。

 

 

「かぁあっ……!」

 

 

身体が筋肉質なものに変わる。

骨格ごと身体が一回り、いや、二回り大きくなる。

 

 

「な、なんだ、この変化は……何が起きている!?」

 

 

巨体となった身体に耐え切れず戦闘服ジャケットが砕けて、その内部から白い甲殻が姿を現した。

 

生えていた髪が勝手に束になり、彼女の顔を覆った。

そして、髪は白いマスクのようなものへ変わる。

 

歪むような音がして……クウラは『変わった』。

 

 

「ふぅ……待たせたな」

 

 

体長は我々よりも大きく。

 

強靭な肉体に、プロテクター状の白い甲殻を身に纏っている。

そして、頭部はフルフェイスのマスクに覆われ、四本の角が生えている。

骨格すら原型を留めていない。

 

辛うじて、元と同様なのは剥き出しとなった口元ぐらいか。

 

恐ろしい形相となった怪物が、我々の顔を一瞥した。

 

 

「今から行うのは理不尽な怒りの発露だ」

 

「は……?」

 

「正当性が貴様らにあるのは理解している。だが、それでも私の怒りが収まらん」

 

 

変身する前の、不気味な穏やかさのある口調は失われていた。

声色も一段と……いや、かなり低くなっている。

 

我々は誰一人として、手を出す事すら出来ずにいた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

コルド大王は、一族の中から突出した突然変異者だった。

その娘である私も、息子でもあるフリーザも。

 

変身能力を持つ我々は、普段の力を制限した形態から、段階を分けて全力を発揮する姿へと形態を変える。

 

子供のように小さな第一形態。

巨体とツノを持つ第二形態。

後頭部が伸び化け物のような姿となる第三形態。

複雑さを捨て、人間に近くなる第四形態。

 

フリーザはその第四形態を真の姿としている。

そして、普段は力に制限を掛ける為に第一形態でいる事が多い。

 

対して私は、常に第四形態でいる。

母体の特徴を多く引き継いだ私は、フリーザよりも第四形態が人間に近い姿となっている。

故に、自身の前世の記憶との兼ね合いや、利便性を考慮して、普段から第四形態を維持している。

 

 

ならば、私は常に真の力を発揮しているのか。

 

 

答えは否。

私はフリーザよりも1回、多く変身できる。

 

 

「…………あ、わ」

 

 

驚愕や怯え、恐怖の籠った視線が私に集う。

それはそうか。

先程の、言うなれば『弱そう』でもある第四形態とは異なり、この姿は異形に近い。

 

盛り上がった甲殻はプロテクターとなり、手足や胸部を覆っている。

頭部にも感情を表に出さないマスクを覆っている。

 

そして、何よりもその体躯。

女性らしかった肉体は、性別を感じさせない筋肉質な姿へと変わっている。

 

身長も、約2倍。

巨体と言っても差し支えはない。

 

 

正直に言えば、この姿にならずとも彼等を殺す事は容易い。

 

この姿になれば……計測はしていないが、戦闘力は10倍以上となる。

そんなものは過剰戦力だ。

蟻に爆弾を投げる、愚かな行為でしかない。

 

この姿の真価は別にある。

力だけではない、理由。

それはこの姿になる理由であり、私がこの姿になりたがらない理由でもある。

 

単純に言おう。

思考が戦闘者に相応しいものになる。

 

自我はそのまま、思考が好戦的になってしまう。

人を殺す事になんの躊躇いも生まれなくなり、加減の必要性も分からなくなる。

 

そして、何より情を失う。

 

事実、変身前は感じていた『部下を殺された怒り』よりも今、『自分に歯向かう愚か者達への怒り』が勝っている。

 

それは私ではない。

そう否定したい。

 

暴力的な姿こそが本性なのだと、私は認めたくないのだ。

だからこそ、私は普段から第四形態のままで……この姿にはなりたくない。

 

だが、今は……今だけは、情を捨て、怒りのままに力を振るいたかったのだ。

そう思えてしまう程、私は怒りに満ちていた。

 

 

力を、エネルギーを肉体に込める。

 

大地が揺れ、地表が砕ける。

大気が震えて、空間が歪む。

 

本来、エネルギーを、戦闘力を、気を感じ取れない者達ですら……この私の力をプレッシャーとして感じ取っているだろう。

 

 

「な、なんだ……なんだぁ!?」

 

 

私を囲んだ、この惑星の戦士達の表情が歪んだ。

彼等の誇り、そして己の身を守る力……それらが無意味である事を悟ったのだろう。

 

 

バカな奴らだ。

歯向かわなければ、死なずに済んだものを。

 

だが、これは貴様らが始めた戦いだ。

貴様らが売った喧嘩だ。

 

だから──

 

 

「さぁ、始めようか」

 

 

歯を、噛み締める。

瞬間、私の露出していた口元が、プロテクターに覆われた。

 

 

 

 




逆ギレともいう
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