TS転生クウラちゃんは平穏に生きたい   作:WhatSoon

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#5 惑星ベジータ、崩壊

私が最も重宝している部下、サウザー。

結構前に侵略した惑星で、才能があったから部下に引き入れた男だ。

青い肌に金髪、整った顔立ちのイケメン。

しかも、声が妙にいい。

イケボだ。

 

なーんかどっかで聞いた名前だし、どっかで見た容姿だなぁーって思ってたけど、最近ようやく思い出した。

 

クウラ機甲戦隊だ。

原作でクウラの配下として登場した部隊のリーダー、それがサウザーだ。

 

忘れてた。

何でそれを思い出したかと言うと……まぁ、フリーザの部下であるギニュー特戦隊と出会ったからである。

「あ、そういえばクウラ機甲戦隊ってのも居たなぁ」と思い出した訳だ。

 

ギニュー隊長は私が主人であるフリーザの姉である事を知っていたため、恭し〜く敬意を持って接してくれた。

 

そして、敬意のスペシャル・ファイティング・ポーズを披露してくれた。

 

アレ、ヤバいね。

ちょっと共感性羞恥がゴリゴリいかれて、内心逃げ出したくなったもん。

 

なんかサウザーは羨ましそうに見てたけど。

ダメだよ、変なのに影響されないで欲しい。

 

 

しっかし、サウザー以外のクウラ機甲戦隊の面々は見つからなかった。

気付いてないだけで出会っているかもしれないけど……。

 

まぁいいや。

別にクウラ機甲戦隊を作りたい訳じゃないし。

戦闘力のある精鋭の部下は必要じゃあない。

 

私が欲しい部下は事務仕事が得意な部下であったり、現地民との交渉が得意な部下だったり、私の生活を快適にしてくれる部下なのだ。

 

戦闘は私が出張れば一瞬で終わるし、それ以外の部分で頑張ってくれる部下が欲しいのだ。

 

その点、サウザーは私の補佐もしてくれるし、物腰も柔らかいし、理知的だし、文句はない。

ついでに戦闘力もそこそこ高い。

だから重宝してるのだ。

 

 

まぁ、そんなこんなで、月日が経ち──

 

 

「惑星ベジータを破壊するの?」

 

『ええ、そうです。姉さんも特等席で見ませんか?』

 

「うーん」

 

 

私は腕を組んで椅子に座っている。

その前には、フリーザの顔が映ったパネルが浮かんでいた。

ビデオ通話ってやつだ。

 

ついに、惑星ベジータ崩壊の日か。

(スーパー)サイヤ人を危険視するフリーザが、サイヤ人を皆殺しにするために星ごと破壊するのだ。

 

まぁ、私は理由を知っているけど。

……一応、理由を聞いていないと不自然か。

 

 

「どうして滅ぼすの?」

 

『サイヤ人は野蛮で、碌に侵略した星の資源を守れませんからね。それに破壊神……』

 

「はかいしん?」

 

『いえ、何でもありません。姉さんは知らなくて良い話です』

 

「……うん?」

 

 

今なんか破壊神って単語が聞こえたぞ。

破壊神って何?

私、知らないけど。

 

ドラゴンボールにそんな二つ名が付いたキャラクター居たっけ?

 

 

『とにかく、決定事項です。それで姉さんは観に来ますか?綺麗な花火が見られますよ』

 

 

崩壊する惑星を花火扱いできるのも、フリーザぐらいだろうな。

なんて思いながら、私は顎に手を当てる。

 

正直、観に行かなくてもいい。

まぁ確かに私もサイヤ人は嫌いだが……だって野蛮だし、話聞かないし、暴力的だし。

でも、彼等の惑星ごと爆発する所が観たいかと言われると、まぁ、そんなに……って感じだ。

 

嫌いな人間、人種だとしても、傷付く所が見たい訳ではない。

 

ないのだが──

 

 

「うん、行くよ。少し離れた所で見物しようかな」

 

 

私がそう言うと、フリーザが笑った。

 

 

『では、特等席を用意しましょうか?』

 

「ううん、いいよ。私の宇宙船で観るから」

 

『それは残念です』

 

 

本当に残念そうな表情を浮かべた。

……何でそんなに私を自分の管轄に置きたがるんだろう、フリーザ。

今に始まった話じゃないけど。

 

うーん、シスコンになっちゃったのかな?

困っちゃうなぁ。

 

 

しかし、惑星ベジータの消滅。

もうそんな時代に来てしまったのか……と感慨深くなる。

 

原作で重要なイベントだからね。

観光気分で観に行きたい気持ちがないと言えば嘘になる。

でも、本当に観に行かなきゃならない理由が、私にはある。

 

それは、惑星ベジータから脱出するであろう宇宙船ポッドを見送る事だ。

この私、クウラが存在している時点で原作とのズレは免れない。

何かしらの理由で、惑星ベジータから脱出する宇宙船ポッドがなければ……将来的にこの宇宙が消滅する可能性が出てきてしまう。

 

そう、私は安心したいのだ。

惑星ベジータから脱出するサイヤ人の赤子、カカロット……孫悟空を見送り、この世界に主人公が存在する事を確認したいのだ。

 

私はフリーザとの通話を切断し、玉座のリクライニングを倒した。

 

……うーん、そろそろ危機感を持つべきなんだろうなぁ。

私は手元に置いていた、付箋塗れの惑星カタログを引き寄せた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

巨大なモニターに、滅びゆく惑星ベジータが映っている。

何人かの部下も集めて、同時視聴会だ。

 

星が、壊れる瞬間。

 

人が住んでいた惑星(ほし)が砕けて、光を放つ。

その光にはきっと、幾人ものサイヤ人の生命も含まれている。

 

たとえ、星の崩壊から生まれる熱から生き残ったとしても、サイヤ人は宇宙空間では生きられない。

これでサイヤ人は……一部を除いて、全滅、という事になる。

 

大量虐殺の現場なのだが、見た目はちょっと綺麗だ。

凄い壮大な景色。

 

 

「流石、フリーザ様だ」

 

 

滅びゆく星を見て、フリーザを讃える声が聞こえた。

サウザーの独り言だ。

 

周りの部下達も同意するような言葉を投げている。

ちょっと私に遠慮するような感じで。

 

でも、私とフリーザは仲悪くないからね。

気にせず褒めてて良いよ。

 

 

あー、でもでも、私だって惑星ぐらい一撃で破壊できるんだけどね?

惑星破壊するような場面がないから、知らなくてもしょーがないけどさ。

……今ここで「私にも可能だが?」なんて言ったらさ、対抗意識持ってるみたいでダサいから言わないけどさぁ。

 

 

なんて、映像を見ながら……内心でちょっと悪態を吐く。

 

惑星破壊鑑賞会をしながら、目を手元の端末に移す。

そして、小まめにレーダー内の物体を観測する。

探し物をしているのだ。

 

 

「……………あ」

 

 

そして、惑星から離れつつある物体を見つけた。

同時に、サウザーも気付いたようだ。

 

 

「……待て。なんだ、あのカプセルは?モニター、確認!」

 

 

技術担当の部下が端末を操作すると、巨大なモニターにサイヤ人の宇宙船ポッドが映った。

そして内部の映像も。

 

サイヤ人の赤ん坊が、モニターに映った。

 

 

「サイヤ人の赤子だと……?如何しますか、クウラ様」

 

 

サウザーが私を一瞥した。

周りの部下達も。

 

あの子供がカカロット……孫悟空。

やがて(スーパー)サイヤ人に目覚めて、フリーザを討ち滅ぼす者。

 

そう、あの赤ん坊を見逃せば……私達一族は壊滅する。

フリーザ軍も崩壊するだろう。

 

ここであの宇宙船ポッドを撃ち落とせば、未来は変わる。

 

……だとしても。

 

 

「放っておいて。まだ赤ん坊だし」

 

「ハッ、承知しました。クウラ様」

 

 

私は私の保身を優先しよう。

たとえ、父や弟が死んだとしても……それでも、この宇宙の為だ。

主人公不在の世界が、どのような末路を辿るのか……考えるだけで身震いする。

 

だから、見過ごした。

やがて、私達一族を滅ぼす事となるサイヤ人を。

 

 

「……うーん、どっち付かずが一番良くないと思うけど」

 

「何か仰いましたか、クウラ様」

 

「ううん、独り言」

 

 

手元に置いてあった果実ジュースを口に含みつつ、惑星ベジータから離れていく宇宙船ポッドから目を逸らした。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

モヤモヤとした雑念を発散すべく、私はトレーニングに励んでいた。

フリーザ編終了後のインフレに追い付けるとは思っていないが、それでも対抗し得る戦闘力が欲しかったのだ。

 

勝つ事は出来なくても、自衛して、逃げられるぐらいの力が欲しかったのだ。

 

幸い、この肉体は才能に満ち溢れていた。

修行すれば修行するほど、劇的に力を増していく。

 

 

最近は、自分の宇宙船内部に重力室を配置した。

 

重力トレーニングは、原作でも重宝されていたトレーニング方法だ。

ナメック星に向かうまでの孫悟空を強化させたり、ベジータの日々の鍛錬に使われたり。

 

つまり、この世界での効率的な訓練といえば『重力負荷トレーニング!』なのだ。

 

実績のある訓練なので、私も興味があった。

かと言って、重力室を作れる技術力なんてなかったけど……最近、占領した星の中に、科学技術が発展した星があったのだ。

 

 

で、作らせたってワケ。

しっかし、宇宙規模でも上位の技術を地球で再現できるブルマも、ブリーフ博士も凄いんだなぁと実感した。

Z戦士どもも異常だが、フリーザより強い人造人間とか、質量を無視したホイポイカプセルとか、科学者どもも異常でしょ。

ドラゴンボール世界の地球人は、異常者の集まりだ。

 

 

閑話休題(それはそれとして)

 

 

そんな重力室内で、私は室内を周回していた。

ランニングする感じで、室内をぐるぐると回っている。

 

現在の重力は300倍だ。

これ以上は無理。

私が、という訳ではなく、機械が故障する。

 

私の体重が『この姿』だと60キロぐらいだから……えっと、18tになってる。

めちゃくちゃ重いし、普段より動きは鈍る。

だが、この状況で戦えない訳じゃないし、日常生活したり、トレーニングだって出来る。

 

私はここで訓練をする事で、身体に負荷を掛けているのだ。

……まぁ、もうちょっと重力の倍率を上げたいけど。

 

拳を握って突き出したり、尻尾を振るったり。

ダンベルで負荷掛けてみたり、逆立ちしてみたり。

走ったり、飛んだり。

簡単な動作でも訓練になるのが、重力室の良いところだ。

 

 

これでパワー・スピード・タフネスは鍛えられるだろう。

 

 

しかし、テクニックは無理だ。

私に武術の心得はない。

人を効率的に破壊する技術はあるが、戦い方が上手いとは言えない。

故に、同程度の戦闘力を持つ武術家と相対すれば敗北するだろう。

 

 

ため息を吐いて、床に転がる。

 

 

小難しい事をしなくても、敵を軽く殺せてしまうのでギリギリの戦いを経験した事がない。

だから、戦いに工夫ができない。

 

真っ直ぐ行ってズドン!で終わりだ。

これでどうやって技術を磨けと言うのか。

 

 

欠伸を一つして、重力室のスイッチを落とした。

かかっていた負荷が消えて、身体が軽くなる。

 

そのまま、重力室を出て──

 

 

「クウラ様、これを」

 

「うん、ありがと」

 

 

いつも通り、重力室の前で待機していたサウザーからタオルを受け取る。

 

少し前は重力室内にまで付いてきていたのだが、私が慣れて重力を10、20、100倍……と引き上げていくにつれて入って来なくなった。

300倍にすると、多分、サウザーは立つ事も出来なくなるんじゃないかな?

 

かと言って、彼に配慮して重力負荷を下げたら、私のトレーニング効率落ちるし。

 

今では、重力室前で待機するようになった。

 

 

そんなサウザーから離れて、シャワールームに入る。

汗ばんだ身体を水で流しながら、頭を冷やす。

 

 

今すぐ全部投げ出して、逃げ出したい気分だ。

本当に、何もかも。

 

 

「……はぁ」

 

 

私は頭を掻いて、シャワーのバルブを閉めた。

 

こういう時は、何か美味しいものを食べるに限る。

ちょっと最寄りの惑星クウラNo.27に寄ってこうかな。

 

あそこ、料理が美味しいんだよね。

他の惑星とかと違って、ちゃんとした調理法が確立してるし。

特に辛い料理が美味しくて……行く度に、沢山食べさせてもらっているのだ。

 

うん、考えていたらお腹減ってきた。

絶対寄ってこう。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「は、はは……」

 

 

私は目の前で、真っ赤な料理を食べる……この星の支配者であるクウラを見ていた。

 

彼女は十年程前、この惑星に突如現れた侵略者だ。

あり得ない程のパワーで、この惑星の実力者を抹殺し、支配した。

 

以降、年に数度、惑星で得られた資源を上納しているのだが……偶に、こうしてやって来て、料理を食べる。

 

 

 

猛毒入りの、毒殺料理を、だ。

 

 

初めは、侵略者であるクウラを毒殺するために、料理に猛毒である赤中草を混ぜたのが始まりだった。

しかし、彼女には効かなかった。

 

毒の量が足りなかったか、と料理が真っ赤になるまで赤中草を投下した。

しかし、彼女には効かなかった。

 

それどころか、その独特な辛みを「美味しい」とか言い出す始末。

 

 

今でも、毒が蓄積して死んで欲しいという願いを込めて、赤中草を大量に投下した料理を提供している。

 

しているのだが──

 

 

「んぐ、もぐ……うん、美味しい」

 

 

この女は、バケモノだ。

 

 

「ん……ペパロニも食べたら?」

 

「あ、いえ……申し訳ないですが、私は辛いものが苦手でして」

 

 

勧められて食う訳がないだろう。

普通、それは一口で何百人をも毒殺し得る猛毒なんだぞ?

 

もう、私はクウラに対する殺意は抱いていなかった。

あるのは達観と呆れだ。

 

目の前で美味しそうに猛毒を摂取するクウラを見て、私は乾いた笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

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