私が最も重宝している部下、サウザー。
結構前に侵略した惑星で、才能があったから部下に引き入れた男だ。
青い肌に金髪、整った顔立ちのイケメン。
しかも、声が妙にいい。
イケボだ。
なーんかどっかで聞いた名前だし、どっかで見た容姿だなぁーって思ってたけど、最近ようやく思い出した。
クウラ機甲戦隊だ。
原作でクウラの配下として登場した部隊のリーダー、それがサウザーだ。
忘れてた。
何でそれを思い出したかと言うと……まぁ、フリーザの部下であるギニュー特戦隊と出会ったからである。
「あ、そういえばクウラ機甲戦隊ってのも居たなぁ」と思い出した訳だ。
ギニュー隊長は私が主人であるフリーザの姉である事を知っていたため、恭し〜く敬意を持って接してくれた。
そして、敬意のスペシャル・ファイティング・ポーズを披露してくれた。
アレ、ヤバいね。
ちょっと共感性羞恥がゴリゴリいかれて、内心逃げ出したくなったもん。
なんかサウザーは羨ましそうに見てたけど。
ダメだよ、変なのに影響されないで欲しい。
しっかし、サウザー以外のクウラ機甲戦隊の面々は見つからなかった。
気付いてないだけで出会っているかもしれないけど……。
まぁいいや。
別にクウラ機甲戦隊を作りたい訳じゃないし。
戦闘力のある精鋭の部下は必要じゃあない。
私が欲しい部下は事務仕事が得意な部下であったり、現地民との交渉が得意な部下だったり、私の生活を快適にしてくれる部下なのだ。
戦闘は私が出張れば一瞬で終わるし、それ以外の部分で頑張ってくれる部下が欲しいのだ。
その点、サウザーは私の補佐もしてくれるし、物腰も柔らかいし、理知的だし、文句はない。
ついでに戦闘力もそこそこ高い。
だから重宝してるのだ。
まぁ、そんなこんなで、月日が経ち──
「惑星ベジータを破壊するの?」
『ええ、そうです。姉さんも特等席で見ませんか?』
「うーん」
私は腕を組んで椅子に座っている。
その前には、フリーザの顔が映ったパネルが浮かんでいた。
ビデオ通話ってやつだ。
ついに、惑星ベジータ崩壊の日か。
まぁ、私は理由を知っているけど。
……一応、理由を聞いていないと不自然か。
「どうして滅ぼすの?」
『サイヤ人は野蛮で、碌に侵略した星の資源を守れませんからね。それに破壊神……』
「はかいしん?」
『いえ、何でもありません。姉さんは知らなくて良い話です』
「……うん?」
今なんか破壊神って単語が聞こえたぞ。
破壊神って何?
私、知らないけど。
ドラゴンボールにそんな二つ名が付いたキャラクター居たっけ?
『とにかく、決定事項です。それで姉さんは観に来ますか?綺麗な花火が見られますよ』
崩壊する惑星を花火扱いできるのも、フリーザぐらいだろうな。
なんて思いながら、私は顎に手を当てる。
正直、観に行かなくてもいい。
まぁ確かに私もサイヤ人は嫌いだが……だって野蛮だし、話聞かないし、暴力的だし。
でも、彼等の惑星ごと爆発する所が観たいかと言われると、まぁ、そんなに……って感じだ。
嫌いな人間、人種だとしても、傷付く所が見たい訳ではない。
ないのだが──
「うん、行くよ。少し離れた所で見物しようかな」
私がそう言うと、フリーザが笑った。
『では、特等席を用意しましょうか?』
「ううん、いいよ。私の宇宙船で観るから」
『それは残念です』
本当に残念そうな表情を浮かべた。
……何でそんなに私を自分の管轄に置きたがるんだろう、フリーザ。
今に始まった話じゃないけど。
うーん、シスコンになっちゃったのかな?
困っちゃうなぁ。
しかし、惑星ベジータの消滅。
もうそんな時代に来てしまったのか……と感慨深くなる。
原作で重要なイベントだからね。
観光気分で観に行きたい気持ちがないと言えば嘘になる。
でも、本当に観に行かなきゃならない理由が、私にはある。
それは、惑星ベジータから脱出するであろう宇宙船ポッドを見送る事だ。
この私、クウラが存在している時点で原作とのズレは免れない。
何かしらの理由で、惑星ベジータから脱出する宇宙船ポッドがなければ……将来的にこの宇宙が消滅する可能性が出てきてしまう。
そう、私は安心したいのだ。
惑星ベジータから脱出するサイヤ人の赤子、カカロット……孫悟空を見送り、この世界に主人公が存在する事を確認したいのだ。
私はフリーザとの通話を切断し、玉座のリクライニングを倒した。
……うーん、そろそろ危機感を持つべきなんだろうなぁ。
私は手元に置いていた、付箋塗れの惑星カタログを引き寄せた。
◇◆◇
巨大なモニターに、滅びゆく惑星ベジータが映っている。
何人かの部下も集めて、同時視聴会だ。
星が、壊れる瞬間。
人が住んでいた
その光にはきっと、幾人ものサイヤ人の生命も含まれている。
たとえ、星の崩壊から生まれる熱から生き残ったとしても、サイヤ人は宇宙空間では生きられない。
これでサイヤ人は……一部を除いて、全滅、という事になる。
大量虐殺の現場なのだが、見た目はちょっと綺麗だ。
凄い壮大な景色。
「流石、フリーザ様だ」
滅びゆく星を見て、フリーザを讃える声が聞こえた。
サウザーの独り言だ。
周りの部下達も同意するような言葉を投げている。
ちょっと私に遠慮するような感じで。
でも、私とフリーザは仲悪くないからね。
気にせず褒めてて良いよ。
あー、でもでも、私だって惑星ぐらい一撃で破壊できるんだけどね?
惑星破壊するような場面がないから、知らなくてもしょーがないけどさ。
……今ここで「私にも可能だが?」なんて言ったらさ、対抗意識持ってるみたいでダサいから言わないけどさぁ。
なんて、映像を見ながら……内心でちょっと悪態を吐く。
惑星破壊鑑賞会をしながら、目を手元の端末に移す。
そして、小まめにレーダー内の物体を観測する。
探し物をしているのだ。
「……………あ」
そして、惑星から離れつつある物体を見つけた。
同時に、サウザーも気付いたようだ。
「……待て。なんだ、あのカプセルは?モニター、確認!」
技術担当の部下が端末を操作すると、巨大なモニターにサイヤ人の宇宙船ポッドが映った。
そして内部の映像も。
サイヤ人の赤ん坊が、モニターに映った。
「サイヤ人の赤子だと……?如何しますか、クウラ様」
サウザーが私を一瞥した。
周りの部下達も。
あの子供がカカロット……孫悟空。
やがて
そう、あの赤ん坊を見逃せば……私達一族は壊滅する。
フリーザ軍も崩壊するだろう。
ここであの宇宙船ポッドを撃ち落とせば、未来は変わる。
……だとしても。
「放っておいて。まだ赤ん坊だし」
「ハッ、承知しました。クウラ様」
私は私の保身を優先しよう。
たとえ、父や弟が死んだとしても……それでも、この宇宙の為だ。
主人公不在の世界が、どのような末路を辿るのか……考えるだけで身震いする。
だから、見過ごした。
やがて、私達一族を滅ぼす事となるサイヤ人を。
「……うーん、どっち付かずが一番良くないと思うけど」
「何か仰いましたか、クウラ様」
「ううん、独り言」
手元に置いてあった果実ジュースを口に含みつつ、惑星ベジータから離れていく宇宙船ポッドから目を逸らした。
◇◆◇
モヤモヤとした雑念を発散すべく、私はトレーニングに励んでいた。
フリーザ編終了後のインフレに追い付けるとは思っていないが、それでも対抗し得る戦闘力が欲しかったのだ。
勝つ事は出来なくても、自衛して、逃げられるぐらいの力が欲しかったのだ。
幸い、この肉体は才能に満ち溢れていた。
修行すれば修行するほど、劇的に力を増していく。
最近は、自分の宇宙船内部に重力室を配置した。
重力トレーニングは、原作でも重宝されていたトレーニング方法だ。
ナメック星に向かうまでの孫悟空を強化させたり、ベジータの日々の鍛錬に使われたり。
つまり、この世界での効率的な訓練といえば『重力負荷トレーニング!』なのだ。
実績のある訓練なので、私も興味があった。
かと言って、重力室を作れる技術力なんてなかったけど……最近、占領した星の中に、科学技術が発展した星があったのだ。
で、作らせたってワケ。
しっかし、宇宙規模でも上位の技術を地球で再現できるブルマも、ブリーフ博士も凄いんだなぁと実感した。
Z戦士どもも異常だが、フリーザより強い人造人間とか、質量を無視したホイポイカプセルとか、科学者どもも異常でしょ。
ドラゴンボール世界の地球人は、異常者の集まりだ。
そんな重力室内で、私は室内を周回していた。
ランニングする感じで、室内をぐるぐると回っている。
現在の重力は300倍だ。
これ以上は無理。
私が、という訳ではなく、機械が故障する。
私の体重が『この姿』だと60キロぐらいだから……えっと、18tになってる。
めちゃくちゃ重いし、普段より動きは鈍る。
だが、この状況で戦えない訳じゃないし、日常生活したり、トレーニングだって出来る。
私はここで訓練をする事で、身体に負荷を掛けているのだ。
……まぁ、もうちょっと重力の倍率を上げたいけど。
拳を握って突き出したり、尻尾を振るったり。
ダンベルで負荷掛けてみたり、逆立ちしてみたり。
走ったり、飛んだり。
簡単な動作でも訓練になるのが、重力室の良いところだ。
これでパワー・スピード・タフネスは鍛えられるだろう。
しかし、テクニックは無理だ。
私に武術の心得はない。
人を効率的に破壊する技術はあるが、戦い方が上手いとは言えない。
故に、同程度の戦闘力を持つ武術家と相対すれば敗北するだろう。
ため息を吐いて、床に転がる。
小難しい事をしなくても、敵を軽く殺せてしまうのでギリギリの戦いを経験した事がない。
だから、戦いに工夫ができない。
真っ直ぐ行ってズドン!で終わりだ。
これでどうやって技術を磨けと言うのか。
欠伸を一つして、重力室のスイッチを落とした。
かかっていた負荷が消えて、身体が軽くなる。
そのまま、重力室を出て──
「クウラ様、これを」
「うん、ありがと」
いつも通り、重力室の前で待機していたサウザーからタオルを受け取る。
少し前は重力室内にまで付いてきていたのだが、私が慣れて重力を10、20、100倍……と引き上げていくにつれて入って来なくなった。
300倍にすると、多分、サウザーは立つ事も出来なくなるんじゃないかな?
かと言って、彼に配慮して重力負荷を下げたら、私のトレーニング効率落ちるし。
今では、重力室前で待機するようになった。
そんなサウザーから離れて、シャワールームに入る。
汗ばんだ身体を水で流しながら、頭を冷やす。
今すぐ全部投げ出して、逃げ出したい気分だ。
本当に、何もかも。
「……はぁ」
私は頭を掻いて、シャワーのバルブを閉めた。
こういう時は、何か美味しいものを食べるに限る。
ちょっと最寄りの惑星クウラNo.27に寄ってこうかな。
あそこ、料理が美味しいんだよね。
他の惑星とかと違って、ちゃんとした調理法が確立してるし。
特に辛い料理が美味しくて……行く度に、沢山食べさせてもらっているのだ。
うん、考えていたらお腹減ってきた。
絶対寄ってこう。
◇◆◇
「は、はは……」
私は目の前で、真っ赤な料理を食べる……この星の支配者であるクウラを見ていた。
彼女は十年程前、この惑星に突如現れた侵略者だ。
あり得ない程のパワーで、この惑星の実力者を抹殺し、支配した。
以降、年に数度、惑星で得られた資源を上納しているのだが……偶に、こうしてやって来て、料理を食べる。
猛毒入りの、毒殺料理を、だ。
初めは、侵略者であるクウラを毒殺するために、料理に猛毒である赤中草を混ぜたのが始まりだった。
しかし、彼女には効かなかった。
毒の量が足りなかったか、と料理が真っ赤になるまで赤中草を投下した。
しかし、彼女には効かなかった。
それどころか、その独特な辛みを「美味しい」とか言い出す始末。
今でも、毒が蓄積して死んで欲しいという願いを込めて、赤中草を大量に投下した料理を提供している。
しているのだが──
「んぐ、もぐ……うん、美味しい」
この女は、バケモノだ。
「ん……ペパロニも食べたら?」
「あ、いえ……申し訳ないですが、私は辛いものが苦手でして」
勧められて食う訳がないだろう。
普通、それは一口で何百人をも毒殺し得る猛毒なんだぞ?
もう、私はクウラに対する殺意は抱いていなかった。
あるのは達観と呆れだ。
目の前で美味しそうに猛毒を摂取するクウラを見て、私は乾いた笑みを浮かべていた。