TS転生クウラちゃんは平穏に生きたい   作:WhatSoon

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#6 惑星フリーザにて

ここは宇宙のとある惑星。

惑星フリーザNo.79。

 

 

「何だと、ナッパ。フリーザ様の姉だと?」

 

「あぁ、そうだぜ、ベジータ。フリーザ様には姉がいらっしゃる」

 

 

オレは眉を顰めながら、スキンヘッドのサイヤ人……ナッパの言葉に耳を傾ける。

数年前の惑星ベジータ崩壊後、王子であるオレと共に行動しているサイヤ人だ。

 

そんなナッパを横目に、オレは窓の外に映る大型宇宙船を指差した。

 

 

「あの宇宙船がそうだというのか」

 

「俺も何が目的かは知らねぇがよ。フリーザ様と会談するそうだ」

 

「……フン。フリーザ様も弟、という訳か」

 

 

あの恐ろしいパワーを持った非情なフリーザ様……チッ、フリーザですら、姉という家族には情があるという事だ。

でなければ、態々、自身の拠点に呼びはしないだろう。

 

 

「……ベジータはクウラ様に会った事がないのか?」

 

「クウラ……フリーザ様の姉の名前か。会った事などない。それがどうした?」

 

 

オレが腕を組みながらナッパを睨むと、奴は少し驚いたような顔をして引き笑いをした。

 

 

「へへ、そうか。なら仕方ねぇな」

 

「なんだ。何が言いたい?ハッキリ言え、ナッパ」

 

「おう、そう焦るなよベジータ。クウラ様はな……」

 

 

ナッパが指を立てた。

 

 

「フリーザ様よりも強いんじゃないか……って噂だ」

 

「なに?それは……ありえんな。バカも休み休み言え」

 

 

認めたくないが、フリーザの戦闘力はこのオレを大きく上回っている。

戦闘民族サイヤ人の王子である、このオレを。

 

そんな奴が、そう沢山居てたまるか。

そう思い口にしたのだが──

 

 

「いっぺん見てみろ、ベジータ。スカウターがなくても分かるぜ……あのヤバさは」

 

「……良いだろう。貴様がそこまで言うのなら、見てやろう」

 

 

そこまで言うナッパの自信に苛立ちつつ、オレは興味を感じて居た。

 

オレはこの惑星に着陸する宇宙船、そしてその中に居るであろうフリーザの姉、クウラを一眼見るべく移動を始めた。

 

巨大な軍事施設の廊下を早足で歩いていれば──

 

 

「よう、ベジータ。何をそんなに急いでいるんだ?」

 

「……チッ、キュイか」

 

 

紫色の肌をした宇宙人、キュイがそこに立って居た。

オレのことをライバル視している、自惚れた鬱陶しい奴だ。

 

 

「消えろ、キュイ。オレ達は今、急いでいる」

 

「あぁ?何だってんだ?フリーザ軍は今、厳戒態勢だ。目的も分からんサイヤ人“なんか”を素通りさせる訳にはいかんな」

 

「厳戒態勢だと?ふざけた事を。オレはそんな事、聞いちゃいない」

 

「オレはフリーザ軍、次期幹部候補だ。だから、教えられているのさ」

 

「チッ、鬱陶しい奴だ」

 

 

次期幹部の座だと?

フリーザからの評価など、どうでもいい。

だが、こうして自惚れて自慢げにしているのは腹が立つ。

機会があればブッ殺してやりたいぐらいだ。

 

だが、ここでコイツを殺せばフリーザ軍へ反旗を翻した事になる。

そうなれば、確実にオレは死ぬだろう。

ムカッ腹が立つが、ここは我慢するしかない。

 

 

「それでベジータ、何の用だ」

 

「フン、オレはフリーザ様の姉を観に行くだけだ」

 

「っ、ク、クウラ様を……か?」

 

 

オレは片眉を上げる。

 

キュイの戦闘力はオレには及ばんが、ナッパよりは上だ。

そして、フリーザの野郎に忠実な部下であるコイツが、フリーザの仲間であるクウラに怯える理由はないように見える。

 

 

「あぁ、そうだ。どんな顔か見てみたくてな」

 

「あ、あぁ……そうかよ。いいぜ。行けよ、ベジータ」

 

 

随分と物分かりがいい……。

ナッパを引き連れて、キュイの横を素通りし──

 

 

「だ、だがよ。ベジータ……万が一にも、クウラ様に粗相を働くんじゃねぇぞ。いや……一目見れば、そんな事も思わなくなるだろうが」

 

 

そんな言葉を後ろから掛けられた。

思わず、舌打ちをする。

 

なんだコイツらの怯えようは?

 

自分の知らないモノに怯えて、過剰に持ち上げる仕草ほどムカつくものはない。

 

 

「行くぞ、ナッパ。早くしろ」

 

「あ、あぁ……分かったぜ、ベジータ」

 

 

キュイの方へ振り返っていたナッパを急かし、オレ達はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、拠点の高層階。

宇宙船が着陸し……そこから人が降りてくるのを見た。

 

女……は、居ないな。

恐らく、クウラの部下達か。

 

しかし……フリーザ軍に比べて、クウラの部下は大した事ないな。

技術者ばかりで、戦闘員もそれほど強くはなさそうだ。

 

例外として、あの青い肌で金髪の奴。

アイツだけは例外だ。

 

恐らく、ギニュー特戦隊……その隊長と同程度の戦闘力はあるだろう。

オレより遥かに強いのは違いない。

 

……少しは認めるか。

アレほどの人材を部下にしているのだから、クウラも相当の──

 

 

ゾクリ、と背筋に冷たいモノが走った。

 

 

クウラの部下達が膝をついた。

しかし、フリーザ相手ではなく、自身が乗ってきた宇宙船に、だ。

 

そんな無礼、普通ならばフリーザは許さない。

この場で皆殺しにされても、おかしくはない筈だ。

 

だが、フリーザは何も言わず待ち構えて居た。

黙って、宇宙船へ目を向けて居た。

 

そして、宇宙船から……一人の宇宙人が降りた。

肌が紫色の、尻尾の生えた女。

 

 

「なっ……!?」

 

 

フリーザよりも体格は上だ。

だが、それでも小柄。

ナッパよりも小さいだろう。

 

そんな体格、そして女だと言うのに……。

 

 

「な、言ったろ。ベジータ」

 

「……チッ」

 

 

オレは思わず舌打ちをした。

 

バカげた威圧感を感じたからだ。

スカウターでは測っていない。

あんなもの測れる気がしない。

 

なんだ、アレは?

なんだ、あの女は?

 

バケモノの姉は、もっとバケモノという事か。

 

 

「……ナッパ、行くぞ」

 

「おっ、良いのか。ベジータ」

 

「構うな。一目で十分だ」

 

 

苛立ちながら、オレはその場を後にした。

恐怖を感じた訳ではない。

だが、もし、万が一……オレの視線に気付いた時……いいや、恐怖ではない。

 

サイヤ人の王子であるオレが恐怖を感じる事など──

 

 

「そんな事、あって良い筈がない……!」

 

 

悪態を吐いた。

自分の誇りを守るために、感情を上塗りしたかった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

惑星フリーザNo.79。

大型会議室。

 

こちら側には私の側近であるザーボンさんとドドリアさん。

あちら側には姉であるクウラ、そしてその側近であるサウザーさん。

 

私と姉は椅子に座っているが、その側近達は立ったままだ。

礼節、そして立場を示すためだ。

 

 

「フリーザ。これ、お土産」

 

「え、えぇ、どうも……」

 

 

姉が小さなコンテナを差し出した。

目で合図をすれば、私の側近であるザーボンさんが恭しく受け取った。

 

 

「クウラ様、こちらには何が入っているのですか?」

 

「惑星クウラの……えっと、どこだったか忘れたけど、そこで取れたカニみたいなやつ。美味しかったから」

 

「そ、そうですか」

 

「多分まだ生きてるよ」

 

「っ……!?」

 

 

思わず頭を抱えそうになった。

 

この姉、戦闘力は飛び抜けているが、几帳面さのカケラもない。

適当な行動方針で生きている。

 

 

「クウラ様、惑星クウラNo.31、ダルメシアンの物ですよ。それとカニではなく、ロブスターです」

 

 

見かねた彼女の側近が口を挟んだ。

それに姉が頷いた。

 

 

「へぇ、だってさ。フリーザ」

 

「……えぇ、そうですか」

 

 

だってさ、ではない。

全く、この姉と話していると頭が痛くなりそうだ。

 

 

「あ、ザーボンとドドリアの分の手土産もあ──

 

「そんな事より、ここに呼んだ意味を覚えていますか。姉さん」

 

 

これ以上、話が変な方向に脱線する前に無理矢理戻す。

 

 

「覚えてるよ。偶には家族で懇親会を──

 

「違います。真面目な話をしに来たんでしょう?」

 

「懇親会も真面目な話だと思うけど」

 

「パパはそんな事、望んでませんよ」

 

「そうかなぁ……案外、家族が恋しくなってるかもよ?」

 

 

ピクピク、と眉間がヒクつく。

まったく、イライラさせるのが上手い姉だ。

 

机を叩き割りそうになるのを我慢しながら、努めて笑顔で口を開く。

 

 

「姉さん、話を戻しましょう。フリーザ軍の規模も大きくなりましたね?」

 

「そうだね」

 

「対して姉さんは軍という程の規模ではありませんね」

 

「まぁ、大所帯にするつもりもないし」

 

 

姉が手元のグラスに入っている水を飲んだ。

その自然体の様子に、また腹が立ちそうになる。

 

 

「規模が小さければ不便な事もあるでしょう」

 

「そうかな?」

 

「フリーザ軍から戦闘服を購入したり、物資の購入をしたり……」

 

「あ、確かに。結構、フリーザには助けてもらってるね」

 

 

……自覚はあるのか。

まぁ、結構な価格で売っていることで、フリーザ軍も潤っているから問題はないが。

 

重要なのは恩を感じさせる事だ。

姉は恩を感じている……それが重要なのだ。

 

 

「どうでしょう?フリーザ軍の傘下になりませんか?」

 

「傘下に?」

 

 

姉が水を飲む手を止めた。

 

 

「えぇ。物資を購入ではなく、配給しても構いません。情報の共有だって密になりますよ」

 

「……それをして、何の得があるの?」

 

「今、言ったでしょう。物資や情報、装備だって提供できると──

 

「ううん。私が、じゃなくて……フリーザに何の得があるの?」

 

 

思わず、舌打ちしそうになる。

 

この姉、人をイラつかせるぐらい腑抜けた態度を取っているが、別に頭が悪い訳ではない。

自身の損得に関しては鋭く、騙すのも一苦労……チッ、厄介な姉だ。

 

 

「ええ、そうですね。少しは私の指示で働いて貰おうかと──

 

「え、いやだけど」

 

 

短い否定の言葉に、声を荒らげそうになる。

だが、何とか喉に押し込んだ。

 

文句の一つや二つ、脅したって良い。

だが、それも口にできない。

 

この姉……クウラは私の姉に相応しい戦闘力を持っている。

この姿ですら……私のフルパワーと同程度の力を発揮できる。

 

しかも、しかもだ。

彼女の配下に潜り込ませた部下からの話では、更に『もう1回』私よりも多く変身できるという。

 

バカげた話だ。

だが、嘘とは言い切れない。

それどころか、姉ならばそれぐらいするだろうという確信があった。

 

そして、今現在の姿で互角ならば、もしも姉がその真の姿となったら。

間違いなく、このフリーザよりも強いだろう。

 

幸い、この姉は私を家族として見ている。

多少、無理を言っても怒りはしない。

だが、この姉は読めない。

怒りのラインを踏み越えた時、自身がどうなるのか……考えても無駄だろう。

 

 

「まぁ、いいでしょう。では、これまで通りで」

 

「うん。そっちの方がいいよ」

 

 

腹立たしいが、無理を言い過ぎてはどうなるか分からない。

 

無理はしなくていい。

姉が敵対しないのであれば問題ない。

 

宇宙の帝王はこのフリーザだ。

軍の規模も、統率も、影響力も……この私が優っている。

 

ならば、それでいい。

姉が如何に強かったとしても、私の方が上だ。

 

腹立たしいが、今はそれでいい。

いずれ、いずれは私の配下にしてやる。

その時を楽しみに待っておくとしよう。

 

 

「ザーボン、美容パックに興味ない?」

 

「は、はぁ……?」

 

 

……人の側近に鬱陶しく絡んでいる姉の姿を見て、私はため息を吐いた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「く、くそっ、ベジータの奴め」

 

 

オレは涙を流しながら、廊下に座り込んでいた。

 

急にトレーニング・ルームに現れたベジータは、妙に苛立っていた。

そんなベジータ、そしてナッパにオレは訓練と称してボコボコにされてしまった。

 

あんなの訓練じゃない。

ただのイジメだ。

 

涙を擦りながら、鼻水を啜る。

泣くな、泣くな。

自分でそう言い聞かせても涙は止まらない。

 

悔しさと、体の痛みと、情けなさ。

それらが入り混じる。

 

こんな事だから『弱虫ラディッツ』なんてバカにされるんだ。

 

 

そんな中、足音が聞こえた。

 

 

オレは思わず、柱の陰に隠れた。

こんな情けない姿、ベジータ達に見られたらバカにされてしまうからだ。

 

だから、このまま、やって来た誰かが通り過ぎるまで待っていようと──

 

 

「あれ?」

 

 

誰かが、柱の裏に居たオレに気付いた。

 

 

「なっ」

 

 

それは肌が紫色の女だった。

この惑星フリーザNo.79で見ない顔だ。

 

普段は出先にいる奴なのか。

少なくとも、フリーザ様の部下か。

 

 

「……大丈夫?」

 

 

膝を下ろして、女がオレと目線を合わせた。

 

 

「……だ、大丈夫だし。あっち行け」

 

 

そう強がると、殺気が飛んできた。

ビクッと背筋を伸ばす。

 

飛ばして来たのは、女の後ろに居た……肌の青い奴だ。

い、いつから居たんだ?

最初からか……?

 

 

「こら、サウザー。子供に殺気を飛ばさないの」

 

「ですが……はい、すみません。クウラ様」

 

 

こんな強そうな奴を叱れるなんて……もしかして、すごい立場の人なのか?

 

だが、クウラ……クウラ?

名前を聞いた事がない。

 

 

「……クウラ様。この子供(ガキ)、サイヤ人ですよ」

 

「ん?そうだね。でも、フリーザの部下なのは違いないでしょ?差別は良くないよ」

 

 

フ、フリーザ様を呼び捨てに!?

 

 

「フ、フリーザ様には様付けしないと、酷い目にあうぞ!」

 

 

思わず、そう忠告する。

すると、またサウザーと呼ばれた男が眉を顰めたが──

 

 

「うん?いいの、いいの。私、フリーザのお姉さんだから」

 

「あ、姉……?」

 

 

あの、フリーザ様の姉!?

思わず視界が回りそうになる。

 

自分より遥か上の立場、強さを持つフリーザ様の……姉!?

 

即座にオレは膝をついた。

 

 

「す、すみません。今まで、無礼を……」

 

「え?いいよ。だって、君、私の部下じゃないし」

 

「しかし……フリーザ様の姉だと……」

 

「いいんだよ、私が気にしてないから」

 

 

何故か笑みを浮かべているフリーザ様の姉……クウラ、クウラ様に困惑する。

そんな立場の高い人が何故、こんな場所にいるのか理解できない。

 

 

「……クウラ様。少しよろしいですか」

 

「え?なに、サウザー」

 

「そろそろ、出立の時間となります」

 

「えぇ……?まだ全然、散策出来てないよ?」

 

「……しかしですね。明日までに惑星をもう一つ、支配する予定でしたかと」

 

「あ……あー、そうだっけ?」

 

「そうです」

 

 

彼らの発言を聞きながら、どうするべきか迷っていると……目の前の、クウラ様が立ち上がった。

 

 

「それじゃ、私は仕事だから」

 

「え、えぇ、はい。ご武運を……?」

 

「うん、ありがと。ラディッツくんも頑張ってね」

 

「は、はい!」

 

 

そう返事すれば、満足そうに手を振ってクウラ様は離れて行った。

 

優しそうな人だったな。

それに凄く強そうだった。

 

あんな人も居るんだな……なんて、思って──

 

 

「……ん?」

 

 

違和感に気付いた。

クウラ様は『ラディッツくんも頑張ってね』なんて言っていた。

 

腕を組んで、思考を巡らせる。

 

 

「オレ、あの人に自分の名前を言ったか……?」

 

 

遠く、クウラ様の背中を見ながら……オレは疑問に首を傾げた。

 

 

 

 

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