TS転生クウラちゃんは平穏に生きたい   作:WhatSoon

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#9 どでかい戦闘力!ブッチギリのポンコツ女

「だりゃあっ!」

 

 

孫悟空が地面を蹴り、私に飛び蹴りを繰り出した。

 

見え見えの攻撃。

避けるのは容易い。

でも、下手に避けたら、ピラフ大王達にぶつかるかも……しれない。

 

よし、それなら──

 

 

「いっ!?」

 

 

私は孫悟空の足を掴んだ。

そのまま宙ぶらりんにしながら、背後のピラフ大王達に視線を向けた。

 

 

「今から少し離れる。けど、もし逃げたら……地球の果てまで追いかけて殺すからね」

 

「は、はいっ!逃げません!」

 

「うん、いい心掛け。忘れないでね?」

 

 

そう釘を刺して──逃げられても殺すつもりはないけど──私は孫悟空の足を掴んだまま地面を跳躍した。

 

戦う場所を変えよう。

 

 

「う、うぎゃぁーっ!?」

 

 

なんか手元で叫んでるけど無視無視。

そのまま、数回地面を跳躍し、少し離れた岩場に着地した。

 

 

「よし、到着」

 

「へぶっ!?」

 

 

そして、足を持ったままにしていた孫悟空を軽く地面に投げ捨てた。

地面に転がって……うん、ちゃんと受け身は取れているようだ。

 

 

「いちち……へへ、おめぇやっぱすげぇな……」

 

「そうでもないよ、私なんかより強い奴は世界にいっぱいいると思うし」

 

「じっちゃんみたいな事を言うんだなぁ……」

 

 

だってね。

この世界、上には上がいて、その上にも上がいる世界だから。

オレが宇宙最強だ!この世でオレに敵う者などいない!と自惚れたら、即座にぶっ飛ばされて太陽にぶち込まれるのがオチだ。

 

あんまり自惚れない方がいい。

謙虚にいこう。

 

私は地面を踏み締めて、悟空へと視線を戻した。

 

 

「それじゃ、どこからでもかかってきていいよ」

 

「……へへっ。そいじゃ、いくぞ!」

 

 

瞬間、孫悟空が消えた。

 

右に高速移動……と見せかけて左。

いや、上か。

 

頭上に手をゆっくりと持ち上げれば──

 

 

「ぎゃっ」

 

 

孫悟空の鳩尾に拳が突き刺さった。

勿論、手加減をしている。

 

人間がハムスターを撫でるように、ぬいぐるみの感触を確かめるように。

そんな感覚で“触れた”。

 

だけど、悟空には相当なダメージが入ったみたいで目を白黒させている。

いくら私が動かなくても、突っ込んだ所にカウンターされたら、まぁダメージにはなるか。

 

 

「い、いちち……」

 

 

悟空はくるくると宙を回って、着地した。

よほど痛かったのか、腹を手で押さえてる。

 

 

「よーし、そんなら──

 

 

悟空が両手の手首を合わせた。

……アレをやる気か。

 

 

「か──

 

 

腰を捻り、手を奥へ。

 

 

「め──

 

 

身体に力が籠る。

 

 

「は──

 

 

そして。

 

 

「め──

 

 

両手を突き出した。

 

 

()ーっ!!」

 

 

エネルギーがその両手のひらから放たれた。

 

 

「おー」

 

 

これが本場の「かめはめ波」か。

ちょっとテンション上がっちゃうな。

私の普段飛ばしてるエネルギー波よりも繊細で、無駄のない、高純度なエネルギーだ。

 

エネルギー消耗量も少なく、込めた気力に対して威力も高い。

 

色々な奴らが真似するだけある。

洗練された気功波の一種……いい技だ。

 

私がこういう気功波を撃つと、エネルギーが勝手に拡散してぼやけたビームになっちゃうんだよね。

それを無理矢理エネルギー量で威力を底上げしてるだけで、込めたエネルギーに対して割に合わない威力になってる。

 

つまり?

水鉄砲は穴が小さい方が良いってこと。

 

なんて考察しつつも、私は「かめはめ波」に手を伸ばして──

 

 

「よっ、と」

 

 

弾き飛ばした。

 

 

「いっ!?」

 

 

弾き飛ばされた「かめはめ波」は岩の柱に直撃し、粉々に粉砕した。

自分のとっておきが難なく弾き返されたのを見て、悟空はショックを受けている様子だ。

まぁ、しょうがないよね。

 

 

「じゃあ、次は私の番だね」

 

 

エネルギーを放出して、惑星すら破壊するスーパーノヴァを──

 

なーんて事はしない。

 

さっき「かめはめ波」で粉砕された岩の柱。

その残骸を念力で持ち上げる。

 

 

「これ、当たると痛いからね。頑張って避けてね」

 

「へ?」

 

 

瞬間、拳ほどの大きさの石が悟空へと飛んでいく。

速度は、私が出せる全力の1%未満。

だけど、彼に取っては相当速いだろう。

 

 

「わっ!?ちょっ!?」

 

 

ギリギリの所で避ける悟空を見て、もう少しだけエネルギーを込める。

 

 

「少しずつ、速度を上げていくからね」

 

「ええっ!?」

 

 

散らばった地面の岩を拾い上げて、さらに射出する。

これで鍛錬になるだろうし、直撃しても死にはしないだろう。

 

 

「ひゃ〜っ!?」

 

 

石の嵐を避けながら、悟空が素っ頓狂な悲鳴をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

いくらかの時間が経過した。

 

 

 

 

 

 

 

少しずつ速度を上げ、当たるか当たらないかのギリギリまで加速させていく。

最初の3倍近くの速度まで上がっている。

 

 

「よっ!ほっ!」

 

 

うん、まだまだいけそうだな。

さらに速度を上げれば──

 

 

「ぎゃあっ!?」

 

 

バカンッ!と大きな音がして後頭部に拳大の石がぶつかり、砕けた。

 

 

「いちち……いってぇ〜!」

 

「あ、ごめんね」

 

 

地面を転がり、後頭部を摩る悟空を見て、私は空中に岩を固定した。

 

速度調整ミスだな。

まぁ、これぐらいの速度じゃ怪我もしないし、少しぐらいのミスは良いだろう……いいよね?

 

ボロボロになっている悟空から、私は視線を逸らす。

 

石が命中したのは1回や2回ってワケじゃないけど……うん、訓練に痛みは付きものだしね?

私が悪いワケじゃないよね?

 

私が現実逃避していると、悟空が立ち上がった。

 

 

「よぅし!またさっきの続き頼む!」

 

「いいよ、じゃあ5秒後にスタートするね」

 

 

もう手合わせってより、都合のいい鍛錬マシーン扱いだな、私。

 

まぁ悟空も分かっているのだろう。

本気じゃなくても手合わせとして戦うと、勝負にもならない事に。

 

まぁねぇ?

このインフレが激しいドラゴンボール世界で、片方はピッコロ大魔王編より前の少年悟空……もう片方はフリーザ編のラスボスより強い姉だからね。

その実力の差は、100倍や1000倍どころじゃない。

ちょっとやそっとでは絶対に埋められない溝がある。

 

将来的には私を越えるであろう悟空も、今は無邪気な挑戦者なのだ。

 

また石を念力で操作し、悟空へと飛ばす。

四方八方から、それなりの速度でだ。

 

 

「ほっ!」

 

 

顔面の横を石が掠る。

 

 

「はっ!」

 

 

身を捩り、石を避ける。

うんうん、当初よりも反応が良くなってる。

 

これ、ちゃんと良い訓練になってるみたいだ。

よかったよかった。

 

……ん?

遠くで、ピラフ一味達が手を振ってる。

 

あ、もう1時間経ったか。

空中に飛んでいた石を止めて、私は悟空へ向き直った。

 

 

「もう1時間経ったみたい。そろそろ、戻らないと」

 

「え〜っ!?オラ、まだ修業したりねぇぞ!」

 

「悟空くんの仲間も待ってるんだよね?だったら、予定は済まさないと」

 

「ん?……あ!いっけね、そうだった!」

 

 

忘れてたのか。

訓練に必死で、色々と疎かになってしまっていたのだろうな。

 

 

「筋斗雲よーっ!」

 

 

そう悟空が呼ぶと、黄色の雲がまるで意思を持っているかのように悟空の元まで来た。

 

 

「オラは筋斗雲で戻っけど──

 

「あ、大丈夫。私、飛べるから」

 

 

私は地を蹴り、エネルギーを放出して宙へ浮いた。

 

 

「うへぇ〜っ、空も飛べんのか!?」

 

「まぁね……いつか君も飛べるようになるよ」

 

 

あれ?

この頃はまだ、鶴仙流の舞空術を知らないんだっけ?

 

筋斗雲に並走しながら、腕を組む。

一定以上の戦闘力を持つ奴らは、基本的に空飛べるからねぇ……。

宇宙では基本レベルよ、舞空術ぐらい。

フリーザ軍の下っ端レベルでも飛べるし。

 

そのまま飛行して、ピラフ一味の元へ着地した。

……彼等は私にヘコヘコしているが、悟空がボロボロな事に気付いて少しニヤニヤしてた。

良い性格してるよ、ホント。

 

 

「あの、機械は元に戻させて頂きました……」

 

「うん、ちょっと確認するね」

 

 

私は胸ポケットのリモコンを取り出し、宇宙船ポッドを開く。

自己診断を起動して、内部に不具合がないかもチェック……うん、大丈夫そうだ。

 

独りでに起動音を鳴らしている宇宙船ポッドに、ピラフ一味は少し引いて怯えていた。

ここまでは解析出来ていなかったんだろうな。

これ、飛行船って言ってたし、浅い所しか調べられてないか。

 

 

「うん、ちゃんと戻ってるね。ご苦労様」

 

 

私が頷くと、三人はホッと息を漏らした。

……まぁ、コイツらが勝手に私の宇宙船ポッドをメチャクチャ弄ったんだから、元に戻しても労う必要はないけど。

 

 

「うし、じゃあオラの番だな」

 

 

そう考えていると、悟空がピラフ達に目を向けた。

 

 

「大人しくオラにドラゴンボールをわたしてくれねぇか?」

 

 

しかして、三人は互いに顔を合わせた。

 

 

「……ど、どうしますか?ピラフ様」

 

「どうもこうもないわい!ピラフマシンは全部破壊されちゃったし……」

 

「そんなぁ……」

 

 

哀愁を感じる。

いや、でも世界征服を目的にしてる奴らだしなぁ……同情なんてしなくていい。

 

 

「く、くそぉ〜っ。我々の大いなる野望が……!」

 

 

そうしてまぁ、武器もメカも力もないピラフ一味は泣く泣く、ドラゴンボールを孫悟空へ渡すこととなった。

 

悟空にボコボコにされなかっただけ、よしとしてほしい。

 

 

「あんがとな!じゃあ、オラ、占いババん所へ帰ぇっから!」

 

「うん、元気でね」

 

 

意気消沈しているピラフ一味をよそに、私は筋斗雲に乗った悟空へと手を振った。

 

 

「それと……次に会ったら、本気、出させてやっからな!修業してっから、また会おうな!」

 

「え?あぁ、うん。またね?」

 

 

いや、別に本気だして悟空と戦わなきゃならないような事になりたくないよ。

嫌だよ。

「かめはめ波」でぶっ飛ばされて、太陽にブチ込まれたくない。

 

 

「またな〜っ!」

 

 

筋斗雲に乗った悟空が離れていく。

割と速度出るな、筋斗雲。

 

燃料も要らないし、ちょっと欲しいな。

あーでも、清らかな心を持ってないと乗れないんだったっけ?

じゃあ無理か……諦めよう。

 

ため息を吐いて、まだ落ち込んでるピラフ一味に目を向ける。

 

 

「じゃ、私も帰るからね」

 

「う、うむ」

 

 

私は宇宙船ポッドに足を入れて……うん。

振り返ると、煙を吹いてるピラフマシンが並んでいる。

ドラゴンボールを奪われて、意気消沈してるピラフ一味もだ。

 

ここは黙って、彼等を無視して帰るのが正解なんだろうけど……はぁ。

 

私は宇宙船ポッドの中から、予備のスカウターを取り出して、ピラフの頭に乗せた。

 

 

「な、なんだっ!?」

 

「それ、旧式だけどあげる。ちゃんと元に戻してくれたから、お駄賃ね」

 

 

そのまま宇宙船ポッドのドアを閉めて、スイッチを押した。

 

外で何やらピラフ大王が困惑してるけど、無視して直上する。

このまま大気圏を離脱して、宇宙空間へと突入する。

 

 

あの旧式のスカウター、時間さえあればピラフ一味でも解析できるだろう。

彼、結構天才だし。

作り方も分かったら、結構な財産になるんじゃないかな?

だから、お駄賃としては適正だろう。

 

 

「さて、後は帰るだけ」

 

 

座標データには、私の宇宙船……母船の座標が打ち込まれた。

 

 

 

宇宙船ポッドが加速する。

 

 

 

窓の外に見える星々が、まるで光の線のように見える。

そんな幻想的な景色の中、私はコールドスリープを起動した。

 

地球、色々あったけど楽しかったな。

また来たい……けど、あれ?

 

 

「…………ん?」

 

 

……私、原作に関与、しすぎ?

いやいや、大丈夫大丈夫。

ちょっとブルマと話しただけだし、悟空にちょっと稽古付けてあげただけ。

原作キャラを殺した訳じゃないし、敵対した訳でもない。

大丈夫大丈夫。

 

……うん。

大丈夫、かなぁ?

 

 

「……やっちった?」

 

 

自分のやらかしに今更気付いて、ポッドの中で頭を抱える。

世界はドミノ倒しのように小さな歪みで大きく崩れると、そう聞いた事がある。

私の些細な影響が、地球を滅ぼす可能性もある。

 

……地球に行くのはやめよう。

反省だ。

 

 

「…………うう」

 

 

こんな事ならレトルトカレーを買い占めて帰れば良かった。

地球じゃないとアレは食べられない。

 

地球に久々に来て思ったのだ。

私は地球の文明が、自分で思っていたよりも好きだったのだ。

だけど、私が地球に行く事で地球に迷惑を掛ける。

 

 

「…………」

 

 

やっぱり、どうにか地球と文明レベルが近い星を見つけて隠居しなければならない。

もしくは、ある程度文明が進んだ星を植民地にして、自分好みの文化で染めるとか。

 

でもそれでは、地球の文明、その劣化コピーしか出来上がらない。

本物を思い出した私が、満足できるだろうか。

いや無理だな。

 

色々と考えながらも、意識が朦朧としていく。

 

うん。

 

 

「でも、楽しかったなぁ……地球……」

 

 

そのまま私は、眠りについた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

占いババの館。

その外の闘技場で待つこと3時間近く……ようやく、空に黄色い雲が見えた。

 

 

「おーい!」

 

 

孫くんの声を聞いて、隣にいた坊主頭……クリリンが反応する。

 

 

「悟空だ!帰ってきたぞ!」

 

 

しっかし、時間は結構経っている。

外で待っていたから、私もちょっと疲れちゃったぐらい。

 

頭上、筋斗雲から孫くんが落下してくる。

普通の人間なら大怪我を負う高さだけど……難なく着地してみせた。

 

 

「孫くん、遅かったじゃない!でも見つかったのね?ドラゴンボール!」

 

「おう、ブルマ!ほらっ」

 

 

確かに、孫くんの手には星が1つのドラゴンボール……一星球(イーシンチュウ)があった。

私が頷くと、クリリンが目を瞬いた。

 

 

「あれ!?お前、なんでそんなボロボロなんだ?」

 

「へへ、ちょっとな。オラより強え奴に会ってさ、稽古つけて貰ったんだ!」

 

「「「えっ!?」」」

 

 

その場にいた私、クリリン、亀仙人が驚いた。

この占いババの闘技場で、圧倒的な強さを見せつけた孫くんよりも強い……?

 

亀仙人のおじいちゃんが汗を垂らした。

 

 

「し、信じられん……ホントか?悟空」

 

「おう!オラ、全然、手も足も出なかった……あっちは本気も出してねぇっちゅうのに、かめはめ波も素手で弾かれちまった!」

 

「せ、世間は広いのう……」

 

 

遠い目をする亀仙人……との間に、クリリンが割って入った。

 

 

「でも、悟空。よく無事だったな……そんな強い奴がドラゴンボールを持ってたんだろ?」

 

「いや、そいつがドラゴンボールを持ってた訳じゃねぇけど……ま、色々あったんだ」

 

「色々って、色々過ぎないか?」

 

 

明るく笑う孫くんに、私達は苦笑した。

 

孫くんが手も足も出ないような強者が、その辺にいるという事実。

それにちょっとばかし、引いてしまっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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