魔法少女の敵なんだけどもしかして安価で能力募集したのは失敗だった? 作:あんまん
『博士、俺の能力ですが、これが良いです』
安価先の能力が記されたタブレットを博士に見せる。するとふむとひとつ返事の後。
「成程。うーん、えぇ?もっと良い能力あるのに……本人の意思だから仕方無いか」
滅茶苦茶納得がいかなさそうな顔をしながらラボの方へと向かっていく。そこを慌てて止める。
『あ、博士。それなんですが、少し相談がありまして』
「ん?どうかしたか?」
『何個か能力を試したいんです。どれが有効なのか、どれが自分にあってるのか分からないので』
俺がそう言うと、博士はまた頷いてラボに向かう足を止めこちらを向く。
「確かにそうだな、お前の言う通りだ。慎重に考えなくてはならない。なんせ、お前は私の生涯で最後の作品になるのだからすぐに死なれては困る」
にしても優秀だな。そこに気付くとは、やはり他の怪人とは違うと俺を褒めちぎる声に対して。感情の無い声で、有難うございますと返す。だってどうでも良いし、知らねえもんそんなの。
そうこうしている内にラボに辿り着き、俺の身体に能力を植え付けられる準備が始まった。
「にしても、どうする気だ?能力は一人一個しか使えないんだぞ?選ぶ事など出来ないだろう」
そういえば掲示板でそんな事言ってたっけな。
『ええ、一人一個。その身体に対して能力は一つって事ですよね?』
「ああ、二つ入れると溢れるのは既に結果が出ているからな」
『分かりました』
この能力では恐らくと言うか、絶対魔法少女達を倒す事は出来ないだろう。それほどクソ能力だからな。クソッタレ。再安価したいけど、それは難しいだろうな。
「……それより、随分長い時間タブレットを触っていた様子だが何をしていたんだ?」
『珍しくてつい色々と触ってしまいました。機嫌を損なった様なら謝罪します』
「そうか。それなら良いんだ。言っておくが、人間と。特に魔法少女と仲良くしようなんて考えるんじゃないぞ。関わろうとするなよ」
『了解しました』
やっぱりな、バレたらただ事じゃ済まなそうだ。
『博士……お願いしたい事が何個かあります。宜しいでしょうか?』
『こちら怪人A、現場に到着しました』
とあるゴミ処理場の一角で、俺は博士と戦闘前の連絡を取っていた。
「分かった。やれる事はやった、後はやるしか無いか」
『はい、何とか頑張ってみます』
「それでどうだ?
『完全に慣れたとは言えませんが、ある程度は動くと言った所ですかね』
今の俺は、既に能力を発動していて。蚊と同じ大きさになっているのだが、ここで大事な点が一つある。
それは俺は空を飛べないと言う事。
このままでは魔法少女が来ても、気づかずに踏まれて死ぬ。言わば道端の蟻ンコスタイルで俺は死ぬ事になる。それはあまりにもクソ過ぎる。そこで俺は無い知恵を絞った結果、空を飛べば良い事を思い付いた。空を飛べば踏まれる事は無い。それどころか、死角からの不意打ちだって可能になる。天才か?俺は天才か?と調子に乗ったのも束の間。産まれたのが次の問題だ。
どうやって空飛ぶの?これである。
皆さんご存知の通り、人は空を飛べない。金子みすゞの詩にもある通り、わたしが両手を広げても空はちっとも飛べないのだ。それは大きさだけが蚊な俺にも言える事だった。
そこで俺は思った。どうして飛べないのか、重力があるから。重力があって空が飛べないのなら、無くして仕舞えば良いじゃない。と言う事で、出来たのが反重力システムと言う訳だ。
「良いか、今回は能力のテスト。それから欲を言えば魔法少女の能力が分かればラッキー程度じゃからな?」
決して無理をするんじゃないぞと博士が言ったところで、知らない声が俺の耳に入った。
《現場に着いたポカ!戦闘準備を!!》
何処からか声が聞こえた。会話から察するに、魔法少女達か。って言うかそれ以外ねえよな。
『臭いですね。此処一帯を燃やしてしまいましょうか』
「駄目だよセーラさん。自分勝手な行動は、厳罰対象だよ。そうだよねポカリン」
反重力システムを起動させ、半径五メートル以内の重力を止め体を声の元へと進ませる。
『やべ、そうだったっけ?完全に忘れてたわ』
「ナギさん……」
《その通りポカ!勝手な事は控えた方が良いポカ。じゃないと、最悪の場合、魔法少女の力を失う事になるポカ》
『……はいはい、控えますよアカリちゃん。それにしても怪人の姿が見えませんね』
「確かにそうだね」
視認出来るぐらいまで、近づいてぐるりと回ってみる。どうやらまだ気付かれていない様だ。にしてもTHE魔法少女って感じだな。各色ごとの煌びやかなドレスに端正な顔立ちの三人の美少女達。
……よし、今回はあくまでもテストだ。揶揄う程度にしておくか。
俺は先ほど別の少女に飽きられていた、可哀想な少女の耳元へ近づくと。
【ブ〜ン】
手を思いっきりバタつかせて耳の近くを彷徨い、蚊の羽音さながらの音を出した。
『あ?』
最初は分からなかった様だが、何度もやれば否が応でも気付く。次第に反応を始めた。
『辞めろって、クソ!ムカつく!!衝撃波を撃ってやろうか!』
「どうしたのナギさん」
『どうしたもこうしたも蝿だか蚊だか分かんねえけど……マジでうぜえ』
「ぽ、ポカリン。怪人さんの反応は?このままじゃ、ナギさんが衝撃波撃っちゃう!」
《この近くにいるのは確かポカ。だけど変ポカー。移動を繰り返していて、居場所が分かりづらいポカ》
『この蚊が怪人って事で良いだろ!?間違えたら謝るからよ!"衝"撃"波"ッ!!』
少女が拳を空に向けて振り翳す。すると空気の壁が揺れ始めた。その揺れは放った拳の数メートル先まで止まる事は無かった。
マジかよ、これ喰らったらやばいな。俺はすぐさま撤退しようとした。のだが、どうやら俺は焦っていて無意識に手を振っていたらしい。その音が他の少女の耳にも入った結果。
『裁きの神剣』
「モカ・クリームロール!」
全員の魔法を発動させる事になり、避ける事が出来ず。
305:怪人
グエー死んだンゴ
306:一般市民
生きてるじゃん