棺の中のスノウ・ホワイト   作:ぜっけい

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食事~Eating~

 雲居探偵事務所から徒歩5分。着いたレストランはよくあるイタリアンのファミレスだった。

 異対はいわゆる秘密結社みたいなものだから、ドラマで秘密の会合に使われるような高級料理店を期待していた銀我は(露骨ではないが)がっかりした。

 

「──おぉ、やっときたか」

「お待たせしました、玄馬さん」

 

 奥の方のテーブル席に銀我たち3人が座る。両サイドの奥に玄馬と夏子、通路側に銀我と真白という配置だ。玄馬は既にコーヒーを頼んでおり不味そうに飲んでいた。

 

「クッ、クツ、クッ……きついモン見ただろ、銀我」

「そっすね。体調がもし悪かったら間違いなく吐いてましたよ。たった一晩であんなになってしまうなんて、ホント、異端はヤバいっすね」

「そうだな。異端はやべぇ。だからこそ、俺達は異端の力を“守る”ために使わなくちゃなんねぇんだ。ハラ、空いたろ。なんでも好きなもん頼めよ、奢ってやる」

 

 玄馬はそっぽを向きながらメニューを銀我に手渡す。夏子ももう一枚のメニューを真白に手渡す。

 

「え、いいっすよ。今そんなに食欲ねぇし」

「良いって言ってんだよ。食欲がねぇっつうんなら、ケーキとか甘いモンなら食えんだろ」

「……ホントになんでも良いんすか」

「ああ、何でも頼んでいいぞ」

「じゃあ……グリルチキンとマルゲリータとイカ墨パスタとついでにドリアも良いっすか?」

「テメェは遠慮ってモンを知らねぇのか!?」

 

 文句を言いながらも、玄馬はメニュー表に銀我が言った全ての料理を記入していく。

 

「食欲がないと言っていたのに……男の子は沢山食べるのねぇ」

「ええ、まあ。元運動部ですんで。でも、食欲が無いってのはマジっすね。普段ならこ2、3倍は食えますから」

「そうだなぁ。俺も若い頃はそんぐらい食べれたな。今は、残念なことにちっとしか食えねぇが」

 夏子さんの驚嘆に、男二人は当然とばかりに頷く。玄馬はメニュー表にドリアを追加で記入していた。

 

「じゃあ私はカルボナーラをお願いします」

「おうよ、真白はどうする?」

「……わたしは、別にいらないわ」

 

 真白は渡されたメニュー表を見ることもなく夏子に返そうとし、彼女を困らせていた。

 

「なんだ真白、おまえ腹減ってねぇのか?」

「そうじゃないわ。ただ、わたしに食事は必要ないだけよ。死者だもの、お腹が減ることも、空腹に倒れることもないのよ。味も、全然分からないのに食事をする意味なんてないわ」

 

 当たり前のように、真白は食事を拒絶する。その様子に玄馬はため息をつきながら無理やり開いたメニュー表を真白に押し付ける。

 

「まったく……だからといって何も喰わねぇのはダメだ」

「でも、前から言ってるけどわたしはほんとに……」

「今は、だ。もし、いつか蘇ったときに食事の仕方を忘れていたら困るのはおまえだぞ? 奢ってやるって言ってんだから、ガキは素直に従えってんだ」

「……じゃあ、コーンスープ。それだけでいいわ」

「おう。コーンスープな」

 

 サラサラと玄馬は注文票を記入し、ベルを鳴らして店員を呼ぶ。

 

「味が分かんねぇとしても、食う必要がねぇとしても、だ。それでもおまえは人間なんだ。食事って行為のありがたさと共有することを忘れんじゃねぇ」

「……はい。分かったわ」

「そうだ。それでいい。

 ──おう、ニイちゃんこいつを頼むよ。ドリア2つとカルボナーラ、スープだけ先に出して、残りは後から順に出してくれや」

「はい、かしこまりました~」

 

 玄馬の言葉は乱雑だが、叱っているわけでもなかった。ただ、諭し導くように真白に語りかけている。

 ……こうしてみると、玄馬は立派な大人であると銀我は気づく。私情にかけつけて銀我をシゴいて人物には似ても似つかない。

 

 銀我は真白を見る。掴んだせいで乱れた首元はいつの間にか戻していたようだ。

「……? なにかへん?」

「まあ、変ではあるなぁ」

「あ? テメぇ何言ってんだ真白のことをバカに──グボボボ」

「はいはい玄馬さんは黙ってくださいね~」

「っ、夏子やめっぐぼぼぼ」

 

 銀我と真白の会話に割って入ろうとした玄馬は夏子がお冷を強引に押し付け溺らせ……もとい喉を潤されることで大忙しになった。

 

「ずっと成長していないこととか、未来がないってこととか、五感が鈍いってこととか……やっぱり普通じゃないよ、真白はさ」

 

 銀我の言葉は責めるためのものではなかった。畏怖する言葉でもない。ただ、真白の形を確認するための感想だった。

 

「そうね。わたしは、死者だから。ただ、そこにあって……そして、生きる人の思いを受け取るだけの存在(モノ)よ。亡霊と言っても良いかもしれないわね」

「でも、真白はそこにいる。異端者から俺を助けてくれた。だから……俺は、いつか真白を守りたい。それくらい強くなりたい」

「わたしは死なないのよ? 守るもなにも、意味はないわ」

「だとしても、俺はおまえが傷つくのは見たくねぇよ。

 ……それだけじゃねぇ、人をあんな風に殺す異端者は認めねぇ。あんな死で、幸せが無くなっていいはずがねぇ」

 

 だから、強くなる。

 いつか、誰もを守れる強さを。

 あんな地獄で幸せな時間を奪われて良いはずがない。

 そして、真白もその一つだ。真白が不死だとしても、頭を砕かれるような無惨な死を味わって良いはずがない。

 

「……ばかなひと」

 

 呆れたように、真白はそう呟く。

 

「死なない、成長しない、焚書官としてしか存在(いき)られない屍を守ることに意味なんてないわ」

「だとしてもだ。俺は真白を含めたみんなを守りたい、それが今日の地獄を見て分かったことだ」

 

 そうだ。片手で持てるほど軽く、小さな体躯で真白はあんな怪物たちと戦っているのだ。

 人の腕を奪い墜落死させる怪鳥や、あるいはたった一晩で一家を腐敗しきらせる怪物。

 この一週間、銀我は真白に何もしてやれなかった。ただ青い顔をして事務所で眠る姿しか見ていない。

 それを今日で終わらせる。たとえ異端が目覚めなかったとしても、異対の焚書官の一員として真白を支え続けることを、決意した。

 

「…………なら、死なないよう努力なさい。死者(わたし)を庇って死ぬなんて、笑い話にもならないから」

「むっ……!?」

 

 そう言って、真白はテーブルに身を乗り出して銀我の唇を指先で抑える。

 小悪魔めいたその仕草は、銀我の心をどきりとさせる。

 銀我が頬を赤くする姿が面白いのか、真白はクスクスと小さく……ほんの僅かに微笑む。

 

「うふふ、いい男の子を見つけたわね。真白ちゃん」

「ごぱっ……もうやめろ夏子ォ。これ以上は死ぬっ!」

「あら、ごめんなさいね。うふふふ」

「……俺はたまにおまえが怖くなるよ、夏子ォ」

 

 ぜぇぜぇと息を荒げながら玄馬は紙ナプキンで口周りを拭き始める。夏子さんもバッグからハンドタオルを取り出し濡れたテーブルを拭き始める。

 

「──しつれいしまーす。ドリア2つとコーンスープ、カルボナーラでーす」

「あざっす。こっちにドリアとスープとパスタはあっちにお願いします」

 

 テーブルに注文したメニューが並ぶ。銀我の分はまだまだ届く。

 自然と、みんなで手を合わせていただきます、と食事を始めだした。

 

 

 

 ……しばらくの間、テーブルには食事の音だけが続いた。

 ドリアの卵を崩す音、パスタをフォークで絡める音、スープをさじで掬う音。パスタをフォークで根こそぎかっ食らう音。

 ……ついでにピザを切り分ける音。

 

「あ、真白も食うか? 夏子さんと玄馬さんも」

「誰が奢ってると思ってんだ……一つよこせ」

「あら、じゃあお言葉に甘えて一つ頂きますね」

「……その半分なら」

「りょーかい、じゃあそうするか」

 

 カッカッカ、と切り分けられたピザが各々が手に取り食べだす。びろーんとチーズの伸びるピザを小さな口でせっせと食べる真白の姿はうさぎのような小動物らしい可愛さがあった。

 

「こちら、グリルチキンとなります」

「もぐもぐ……ごくん。あざっす。ピザもう食い終わったんで皿下げてください」

「はーい、かしこまりました~」

「……男の子は食べるのが早いのねぇ」

 

 分けてもなお半分残っていたマルゲリータは瞬きをする間に銀我の腹に消えていた。

 困惑する夏子とは対象的に、玄馬はだろうなと銀我の食事姿に納得しているようだった。

 あの柔道の腕前から察するに、昔は運動部として大量のカロリーを摂取して肉体を作っていたのだろうか。

 

 グリルチキンをナイフで切り分けようとした、その時だった。

 

 ──プルルル、プルルル

「ん? 電話……陽一からか」

「誰ですか?」

「小学校からのダチっすね。ちょっと席外しても良いっすか」

「構わねぇよ、行って来い」

 

 銀我は席を立ち、ファミレスの出入り口近くのなるべく騒音のない場所で通話に出た。

 

『──おうっ、なかなか出ねぇから心配したぜ銀我! 元気にやってるかぁ?』

「ああ、まあな。今ちょっと……えーと、あれだ、バ先でさぁ。少し待たせちまったな」

『バ先? へー、おまえバイトなんか始めたのかよ。まぁ早く自立したがっていたお前らしいか』

 

 中学のときと全く変わらない、軽薄でありながら豪快な声。親友の米山(よねやま)陽一(よういち)は一ヶ月ぶりにも関わらず笑いながら銀我に話しかける。

 友人との久々の会話に銀我は嬉しくなるが、その言葉の中にウソが混じっていることは銀我の心に一筋の暗い影を引く。

 

『それよか明日暇かぁ? 明日の練習試合が突然なくなっちまってさぁ、急に暇になっちまったんだよ。んで、しばらくお前と会ってねぇし、せっかくだから一緒に遊びてぇんだけどいいか?』

「あー……どうかな。行きてぇのは山々だけどよ、今ちょっとバ先が忙しいからさ、明日ヘルプに呼ばれっちまうかもしんねぇや」

『えーマジかよ。オカンもオヤジも、英二のヤツも久々におまえに会いたがってんのに……ちょっと明日一日、外せるか聞いてこれねぇか』

「そうだな……わかった。ちょっと聞いてくるわ」

 

 そう言って、銀我は一度電話を切った。

 

 ……銀我としても、陽一と久々に会いたいとは思う。

 陽一はまさしく無二の親友と言っても良い間柄だ。小3のときに同じクラスになって以来、陽一は友人として色々遊び回っていたし、野球ではバッテリーを組んで共にチームを勝利に導いた。高校こそ、銀我がスポーツ推薦を受けなかったのもあり、別々になってしまったがその友情は今も強くある。

 その上、母を失い家庭が崩壊して荒んだ銀我を、陽一の家族……米山家のみんなが支えてくれた。千鶴さんの料理、拓さんの言葉、陽一との青春に英二との遊び。どれも大切な思い出である。

 ──だが、しかし。

 未熟ではあるが、焚書官である自分が事件を放置して遊びになんて出かけて良いのか? と思う自分がいる。今まさに真白や日常を守ると決意したのに、陽一の誘いに乗るのは酷く怠惰なことに思えてしかたなかった。

 

「……流石に、断るか」

 

 店内に戻りながら、銀我はぽつりと呟く。

 名残惜しいが今はしかたない。人命や大切なモノがかかっている場面なのだ、遊びなんて甘えたことはしていられない。

 

 席に戻ると、テーブルの空気は席を立つ前より冷えていた。玄馬がその手にガラケーを握り、今まさに懐にしまっているあたり、なにかあの異端事件の進展があったのだろうか。

 

「えっと……おかえりなさい。お友だちとなんのお話をしたの?」

「友人に明日遊びに行かないかって誘われたんです。まあ、状況が状況だし、事件が解決するまで流石に断るつもりっすけどね」

「いや……そいつの家庭次第だが、行ってきていいぞ」

「そっすよね……えっ!?」

 

 玄馬が食後のコーヒーを飲みながら面倒そうに、意外な言葉を言った。

 

「家庭次第ってどういうことっすか」

「今さっき調査班と隠蔽班の両方から連絡があった。──市内で5件以上、あちこちの家であの腐敗した屍が発見されているらしい。家庭内で起こった事件である故に、悪臭が表沙汰になるまで発覚が遅れたらしい。もしかしたら、異端事件であることに気づかれずに処理された現場もあっただろうな。死を別として、この事件で異常なのはたった一晩で液状化するほどの腐敗の早さだけだからな」

「……それってつまり実際の被害はもっと沢山あるってことですよね。ヤバいじゃないっすか。だったら尚更遊びに行かずに、巡回でもして阻止しに行った方が良いんじゃ……」

「そうだな。無差別なら俺もそういう。実際そのつもりだった。

 だが、この異端者のターゲットには共通点がある。──それは、被害者が“普通の一家”であるということだ。父親は妻と子どもを愛し、母親は夫と子どもを愛し、そして子どもは両親のことを愛している……そういうありきたりな、普通に幸福な家族が狙われているってことだ。もちろん、祖父母がいるとか、子どもが一人っ子だったり兄弟だったりといった差異はある。家庭内に多少の問題がある家庭も被害の中にはあるが、それでも普通の範疇だ。つまり──」

「今回の異端者は、幸福(ふつう)の家庭に執着している。……その、ヨウイチという人の家族はどうかしら?」

 

 その言葉は、銀我の心に恐怖を染み込ませるものだった。

 銀我にとっての普通……幸福な家庭の姿とは陽一たち、米山家のみんなのことだ。

 それが、あのような普通ではない死に方で、あんなにいい人たちが誰からも記憶されずに処理されてしまう可能性に、銀我は気づいた。

 

「……ああ。母と父、そして息子が2人。母が死んで、クソ親父に放置された俺を救ってくれた……とても良い家族だ」

「住んでいる場所はどこだ」

「隣の地区の……悠丘のとこだ」

「……被害現場の範疇だな。なら、決まりだ。万が一のためにお前は明日、その友人の家で寝ずの番でもしていろ」

 

 ──陽一は、米山のみんなは死なない。あんな死に方をするはずがない、と銀我は否定したい。そんなあるはずのないことに備えるより、俺もつれて別のとこで見回りに出たほうがいい、と言いたくなる。

 

 だが、それは。

 ……ただの現実逃避だ。希望的な観測でしか無い。

 実際にその身で異端の被害にあった銀我は知っている。

 万に一つではあるが、十分起こり得る地獄そのものな死が彼らの周囲に蠢いているのだ。

 これで彼らを見落として、そして本当にあの液状に腐敗しきった陽一たちを見て後悔しないわけがない。

 

「……行ってきなさい。それはあなたにしか、できないこと。あなたの守りたい人が、そこにいるのでしょう?」

「真白……ああ、そうだな。俺は、みんなを守るために行ってくる」

 

 真白はそう、鈴の音の声で優しく背を押してくれる。

 それは死者にはできないことで、銀我はその言葉で無限の勇気が湧いたような気がした。

 銀我はまたスマホを片手に席を立ち、レストランの出入り口近くで電話を始める。自分にしかできないことを、果たすために。

 

「──というわけだ。明日はまるっと休みが取れたぜ」

『おーマジか。だったら朝……は無理だな起きらんねぇや。昼からバッティングセンターとかゲーセン行って遊び倒そうぜ』

「そうだな。久々に俺のバッティング技術でビビらせてやんよ。……それと、久々に千鶴さんのカレーも食いてぇんだけど良いかな。家にはあんま居たくねぇし、もしかしたら泊まるかもしんねぇや」

『ああ、全然構わねぇぞ。むしろ、みんな喜ぶぜ。んじゃ、また明日な』

「ああ、またな」

 

 プツリ、と電話が切れた。こんな状況でなければもっと嬉しかったのに、それ以上に銀我の心は言いようのない不安と“守る”という強い決意が入り混じっていた。

 

 電話が終わり、銀我は席につく。真白らは既に食事が終わっており、残っているのは銀我のグリルチキンだけだった。……これ以上待たせたくなかったので、銀我は二口で冷めたチキンを食い切った。

 

「ごちそうさまでした……っと、この後も現場の安全確認をして回る感じっすか」

「そうだな。とりあえずこの五件はうちらが請け負う。それより後に見つかった現場は他の支部に割り振られるようさっき交渉した」

「わかった。……って真白、どうしたんだ?」

 

 みんなが席を立とうとしたその時だった。

 真白は小さな黒い肩がけポーチの中をガサゴソとまさぐっていた。

 

「あった」

 

 そう待たずに、真白は目当てのものを見つけて銀我に差し出す。それは、スマホだ。カバーを付けていない剥き出しの白いスマートフォン。小型のモデルでありながら、真白の小さな手のせいで大型なモデルに見えてしまう。

 

「連絡先……交換しておきましょう。一応、あなたはわたしの部下なのだもの」

「お、おう……わかった」

「なにぃ~!? 連絡先の交換だと、おまえたちにはまだ早い。連絡先なら俺ウグっ」

「玄馬さんは少し静かにしましょうね~」

 

 にわかに騒ぎ出した玄馬を夏子さんの鋭いフックで黙らせる姿に、銀我は少し薄ら寒いものを覚えたが意図してスルーする。

 それより、真白との連絡先の交換だ。銀我はアプリを立ち上げ、QRコードを表示させる。

 

「やり方分かるよな。これを、読み込んでだな」

「わかっているわ。……これで良いわよね?」

「おう、大丈夫だ。問題ないぜ」

 真白のスマートフォンのレンズが、俺のスマホに表示されたQRを読み込み、友だちの認証手続きを一瞬で終わらせる。

 友だち一覧を見れば一番上に“加賀美真白”、とフルネームで登録された真白のアカウントが表示されている。

 

「ほんとは、もう少し早くに交換したかったのだけどね。タイミングがなかったのよ」

「大丈夫だ。これから、改めてよろしくな」

 

 そう言うと、真白は小さく頷いた。

 なんだかこれで真実、真白と共に戦えている証が得られたような気がした。

 

「うんうん。良い男の子の友だちが出来たわね、真白ちゃん。それじゃあこの後も頑張って現場の調査に行きましょうね」

「けほ、ごほ……夏子ぉ、暴力で黙らせるのはやり過ぎだろうがよ……クソ、俺も着いてくぞ」

「はぁ~い。今後はもう少し考えてみますね?」

 

 レストランを出て銀我らは夏子の運転する軽自動車で現場を全て見て回った。

 現場は全て酷いものだった。田中一家の状態がまだましに思えるほどの腐敗と虫で混沌とした空間もあった。

 それでも銀我が吐かずに真白の側に立っていられたのは……単純に、真白の側でダサいところは見せられない男の子の意地でしかなかった。

 

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