カール・フリッツ一代記 ーBefore the Wallー 作:allkeybeadeath
冬、ローゼ王国へのカール・フリッツの侵攻が開始された。
獣と進撃家が皇帝の側に立ち、反皇帝連合戦線は崩れた。
皇帝に反対する側に残ったのは女型と鎧家だけ。
つまりこの二勢力は潜在的にカール・フリッツの側に付く可能性のある勢力だった。
彼らはいずれにせよ支持すべき皇帝を必要とするが、征服王の息子たちはヴィルヘルムとカールだけが残っていた。
ヴィルヘルムを支持しないということは、カール・フリッツの側に立つ可能性があるということだ。
「しかし当面は彼らの支援を期待できない。
南部のローゼ王国が私の足を縛っているからだ。
北のあの家門たちと連合するためには、何よりも南部を平定することが急務だ。」
カールは考えた。
「しかし最も危険なのはやはり······。」
超大型巨人を保有する家門。
ヴィルヘルムの義父であり「赤の公爵」と呼ばれる者が首長を務める家門である。
最近の戦闘で彼は数万の兵士を一瞬で戦死させた。
超大型家だけの力で連合軍を構成した4つの家門のうち2つを自らの味方につけたのだ。
彼の徴兵制度と植民地を基盤とした強大な陸海軍は、名実ともに帝国一の軍隊であった。
カールはリーゼルを思った。
遠い昔、彼女と共に過ごした記憶が、即位式前日に帝都で彼女を最後に見た記憶が蘇った。
超大型家が皇帝と共に動く理由は、まさに皇后リーゼルのためである。
超大型家がなければ、皇帝は帝都周辺の軍勢しか動員できない歯の抜けた虎に過ぎない。
『結局、最終的にはあの家門と対峙せざるを得ないだろう』
カールの軍隊は冬の冷たい風を突き抜け東へ進軍した。
行軍路の土は凍りつき、凍死者が数百名出た。
凍りついた大地は補給を妨げた。
そして下痢と赤痢で多くの兵士が苦しみを味わい、病死者が続出した。
幸い、顎家の領地では民衆がカール・フリッツの侵攻を絶対的に支持していたため、ためらいなく自らの食糧を分け与えた。
軍は大きな反発もなく村々を巡り徴発した。
カール・フリッツに関する名声は全国に広まり、民衆は彼に対して狂信的な賛辞を捧げた。
一方、アウレル2世は戦況を否定的に見ていた。
彼は側近のヴェルナー伯爵を呼び、相談した。
「冬に進軍するなど、ありえぬ話だ。
カール・フリッツは補給すらまともに考えていない。
民衆の食糧に依存して進撃している。
理解に苦しむ。
民衆が主君である私よりも、あの男に仕えているとは。
ヴェルナー伯爵。
今こそ奴を皇帝に引き渡すべきだ。」
「時すでに遅し、公爵様。
一度侵攻を始めた以上、ローゼ王国軍と一戦交えなければ全ての損失が無効になります。」
「この戦争さえ終われば、彼が作り出した全ての問題を一挙に除去する。
彼が私にローゼ王国の王位をもたらしてくれるなら尚良いが、この戦争が失敗しても構わない。」
「民衆は積極的にフリッツ公爵を支持しております。
彼を処理するなら慎重であるべきです。」
「ちくしょう!
軍隊までもがまるであの野郎が主君であるかのように服従を誓っている!
私の直属の近衛隊を除いては。」
「彼らは君主としてあなたに仕えます。
しかしフリッツ家は神の家系。
彼らはフリッツを宗教的に崇拝します。
二つの服従には次元の差があります。」
「神!笑わせるな。
フリッツの血には呪いが宿っているに違いない。
戦争と同胞殺しの血だ。」
アウレル2世にはある種のコンプレックスがあった。
まだ19歳の彼には、軍や民衆を掌握するカリスマ性が欠けていた。
彼の父は優れた君主だった。
他の家門が戦争を繰り広げる間にも、彼は長い太平の世を家門にもたらした。
アウレル2世には賢明な父の治世の平和を継承しなければならないというプレッシャーがあり、そのためカール・フリッツは彼の敵とならざるを得なかった。
軍隊は現地補給の助けを得て、冬の行軍とは思えない速さで進軍した。
果たして過去の戦いは神が創り出した奇跡だった。
果たして彼は今回も奇跡を生み出すのか。
顎家の将軍たちは気になっていた。
ついに彼らはローゼ王国の地を踏んだ。
わずか一日の戦闘の後、あまりにも容易に最初の要塞から降伏を引き出した。
顎家の軍隊の損失はほとんどなかった。
このことがローゼ王国の首都に伝わった。
はるか昔、ユミルの娘ローゼの子孫が首都に定住し、開拓して国を建てた。
その後裔は再び顎家、チャリク家、獣家に分家したが、その中でもチャリク家が現在は王国の継承権を握っていた。
国王ディーターは急いで軍を召集した。
『まさか奴らが冬に侵攻してくるなんて』
彼としては必ず戦争に勝利しなければならなかった。
奴らの手に弟、クラウス公爵がいる。
彼の車力の巨人を失えば、車力家の実質的な力は消える。
そうなれば二体の巨人を保有する顎家が事実上南部で優位に立ち、ローゼ王国は彼らの手に落ちる。
『考えてみれば十年前、敵将の父アウレルが我が王国を侵略したことがあった。
我が父は彼に勇敢に立ち向かったが、一時的に我が首都は陥落したこともあった。
そんなことが再び起こるわけにはいかない!
特に車力の巨人を奪還できなければ、我が家は歴史から消えるのだ!』
車力家門のクラウス公爵の現状は不明だった。
ただスパイが伝えた情報によれば、おそらく彼は継承されなかっただろうことはほぼ確実だった。
そして何より、皇帝ヴィルヘルムが彼に直接手紙を送ってきた。
『敵は貴殿の弟を軽々しく傷つけることはできぬ。
こちらでも奴の姉を人質として拘束しているからな。
心配せず、戦いに全力を注ぎなさい。
この戦いに勝利すれば、敵の領地も、巨人をも貴殿のものとなる』
ディーターは考えた。
『そうだ。
今、我が家は最悪の危機に瀕している。
しかしこの戦争さえ勝てば、我々は古きローゼ王国の栄光を取り戻すだろう。
偉大なる先祖ローゼが開拓した南方の全土を、我が王国が再び掌握するのだ。
眼前の反逆者カール・フリッツを討ち取れば、我が家は皇帝の庇護を得られるだろう』
一つの問題は、敵軍の前進速度があまりにも速かったことだった。
顎家の軍隊は春になると、すぐに首都の目前まで迫っていた。
獣家の軍隊は、先帝との戦いで相当数が北に足止めされた状態。
当面の支援は期待できなかった。
ディーターは五万の軍を、首都を攻め来る敵軍に対抗して出兵させた。
彼らは敵軍が首都に到達する前に最大限の損害を与えるべく防衛線を構築した。
村や川周辺を拠点に鉄角堡と砦を築き、塹壕を掘った。
カール・フリッツは軍をその前に集結させたが、敵の防衛線を突破するには相当な犠牲が予想された。
そこで彼は全軍を二分し、一方には防衛線を攻撃させ、もう一方には首都へ向けて進撃させた。
戦闘が始まると、首都へ向かっていた部隊は方向を変えて防衛線を背後から攻撃した。
両面からの攻勢が続く中、顎の巨人が砦に設置された砲台を攻撃すると、敵軍は容易に殲滅され、味方の死傷者は少なかった。
四日後、カールは首都への攻城戦を開始した。
カール・フリッツが王国の首都前に集結させた軍勢は八万に及んだ。
ローゼ王国の首都は星形要塞となっており、容易に突破することは難しかった。
まず兵士たちは要塞を包囲し、堡塁を構築し、塹壕を掘った。
塹壕は少しずつ要塞に向かって前進した。
ディーター国王は自ら首都の砲兵隊を配置した。
要塞の城壁上に全ての砲を集め、塹壕と堡塁に向けて砲撃を加えた。
両軍の砲門数は合わせて500門を超えた。
重砲と軽砲が互いの陣地と城壁の向こうに向けて炎を吐き出した。
大量の砲弾が飛び交う大混乱の中、兵士たちは次々と倒れていった。塹壕内の兵士たちも例外ではなかった。
彼らは一日中、シャベルを手に塹壕を掘った。
時折、城壁上の狙撃兵が放つ小銃弾に兵士は倒れ、爆発弾が塹壕内に飛び込んできた。
土砂が四方から降り注いだ。
攻城戦は夜も続いた。
照明弾が双方に向けて発射され、砲台に設置された大砲は夜も煙と砲弾を吐き出した。
砲口を水で清掃した後、一斉射撃で押し出された大砲を砲兵たちが再び前方に押し出し、砲台に設置した。
火薬と砲弾を装填棒で詰め込み、砲兵たちは慎重に城壁の向こう側に向けて角度を調整した。
砲台の左側から右側へ一斉に大砲から砲弾が発射された。
砲弾は要塞の壁に跳ね返り衝突しながら、城壁内の兵士を殺し建物を破壊した。
城壁の向こう側からも応酬砲撃があり、要塞の狙撃兵たちが照明弾の光を頼りに砲兵たちに向けて射撃した。
この時、ヴェルナー伯爵が事前に配置しておいた小銃兵たちは狙撃兵たちに向けて一斉射撃し反撃した。
この隙に、迫撃砲を馬と兵士たちが輸送した。
迫撃砲は塹壕に掘られた道に沿って移動した。
城壁の向こう側からは移動する迫撃砲に向けて砲弾が降り注いだ。
突然、塹壕最前線の兵士たちが雄叫びをあげた。
突撃部隊は梯子を数本持ち、城壁に向かって全速力で走った。
突撃部隊の指揮官は城壁の向こうで砲兵隊が装填を始めたことに気づいた。
「急いで壁に向かって突撃せよ!」
軍楽隊が叩く太鼓の音が戦場を響かせた。
照明弾が彼らのいる方向に向けて発射されると、王国の砲兵隊は彼らの位置を一目で把握できた。
彼らは敵に向かって砲撃した。
砲兵隊の一斉射撃は兵士たちの肉体を引き裂いた。
今回は普通の砲弾ではなかった。
それはキャニスター弾——すなわち散弾だった。
至近距離で発射された散弾は一瞬で数十名の命を奪った。
「梯子を上げろ!」
突撃部隊は損失を顧みず、ついに城壁まで到達した。
梯子が上げられ、兵士たちはそれを登った。
しかし彼らを待っていたのは、再びのキャニスター弾の雨だった。
この要塞には砲撃の死角がなかった。
梯子を登ろうとする兵士は、身動きもできず散弾の雨を浴び、体が蜂の巣になるしかなかった。
散弾の雨で突撃は阻止され、恐怖に支配された兵士たちは退却した。
王国の鉄壁の要塞は占領される気配すら見せていなかった。
獣家の援軍がそこへ向けて一刻を争って進軍してきていた。
彼らが要塞を包囲する剣の軍隊を包囲すれば、獣家と車力家によって両面から包囲され、彼らは惨敗を免れなかっただろう。
突破口が必要だった。