六平家のアンジェラさん   作:RK6246

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#1 六平アンジェラその①

俺と父さんは毎朝ご飯の前に鍛刀場で修行を行う。その時の父さんはいつもと違って真面目だ。

 

「今はここまで。飯にしよう」

 

道具を片付け鍛刀場を後にする。庭に焼きたてのパンのような香りがす広がっている。

 

「お〜いい匂いがするなぁ〜。そうだ、今日は外で食べないか?ピクニックだ!」

「いや今天気悪いじゃん。いつ降ってきてもおかしくないでしょ?」

「いやいやいや、降るとは限らないだろ?!そうと決まれば机と椅子を準備するぞチヒロ!」

 

言い終わるが早いか水玉が俺の額に落ちる。忽ち土砂降りの雨が俺たちを襲った。

 

「チヒロ!早く家の中に入るぞ!」

「口より足を動かしなよ父さん!」

 

急いで玄関を潜ると床には畳まれた物と敷かれたタオルが置かれていた。

 

「アンジェラ〜!雨降るってわかってたならなぜ言わなかった!!」

 

髪を拭き、耳が痛くなるほどの大声を出しながら姉さんがいる台所へ向かう。

 

「降るって確信したのついさっきだった。それにお腹が空いてたからご飯を作るのを優先した。むしろタオルを置いただけでも感謝してほしいわ」

「そうかごめん!で、朝ごはんは?」

「ホットケーキよ。この間柴が買ってきた粉があったからちょうどいいと思ってね。あ、やることないんだったらお皿運んでちょうだい」

「承知!」

 

やっと台所に顔を出すと体を拭き終わった父さんとフライパンと向き合う姉さんがいた。

 

「姉さん俺のホットケーキはチーズ入れてね」

「わかってるわよ。でも美味しいのは出来立てだから最後の方ね。あ、お皿は国重が運んでるからあなたは飲み物とかけるものを持っていってちょうだい」

 

はちみつ、バター、3人分のコップとコーヒー。それと父さんが運び忘れたフォークとナイフ、それらをお盆に乗せて食卓へ運ぶ。

 

「できたわよ」

 

たくさんのパンケーキがつまれたお皿を食卓の中心に置く。父さんのお皿、次に俺の皿に、最後に残りのパンケーキを姉さんの皿につまれる。

 

「相変わらずよく食うなアンジェラ」

「食べることが好きなんだからいいでしょ?あ、もしかしてそれじゃあ足りない?」

「俺は十分だけど」

「俺も大丈夫だ」

「ならいいでしょ。さ、食べましょ」

 

みんなで手を合わせ、食べ始める。やかましく、手のかかる父さん。しっかり者だがどこかぬけてる血のつながらない姉さん。そしてこの2人の面倒を見ている俺の3人。我が家、六平家の日常だ。

 

「そうだチヒロ、今日は数学と化学の日だけどどっちからがいい?」

「•••じゃあ数学で」

「わかったわ。国重はいつも通り食器洗いをお願いね」

ひょうふぁい(了解)!」

 

ーーーーー

 

町から離れ、連なる山々。その山の中の一つの奥深く、そこには柴の友人親子の暮らす家が隠されている。お土産を持ちながらその敷地に足を踏み入れる。

 

「あらいらっしゃい柴」

「お〜アンジェラちゃん。相変わらず別嬪さんやな」

 

雨が止み、物干し竿に洗濯物を掛けている蒼白な髪の少女に話しかける。

 

「知ってる。で、手に持ってるそれはお土産?」

「せやで。ほい、お饅頭。()()()()食べるんやで」

「流石に独り占めはしないわよ」

 

そう言いながら彼女は包装を破いて取り出した饅頭を食べ始める。

 

「国重はお昼寝してて、チヒロはイェソドと勉強中。それとこのお饅頭家の中にで置いといて」

「おぉ、わかったわ」

 

家の中に入り食卓がある部屋へ向かう。

 

「ここに先ほど教えた公式を当てはめてください」

 

チヒロの向かいに紫を基調とした青年が勉強を教えていた。

 

「柴さん」

「邪魔するでチヒロくん。イェソドも久しぶりやな」

「お久しぶりです」

 

イェソドと呼ばれた青年はあいさつと共に立ち上がり柴へ近寄る。

 

「おぉ、どしたん?」

「ボタン」

 

言いながら彼は柴の着るポロシャツのボタンをつけ始めた

 

「ボタンが全て外れてるのはだらしないですよ。せめて第二ボタンは嵌めないと」

「ごめんなおかん」

「私はおかんではありません」

 

 

ーーーーー38ヶ月後ーーーーー

 

 

 

電車に揺られ目を覚ますチヒロ。正面には目元に傷跡のある蒼白な女性、姉のアンジェラがいる。

 

「起きたのね。もうそろそろ着くわよ」

「わかった。」

 

流れる景色がゆっくりになってくると遠くで手を上げていた男の姿がはっきりしてくる。

 

「柴ね。持ってるのは•••シシャモ、私の分あるかしら?」

「姉さん•••」

 

呆れた顔をアンジェラに向けるがすぐに表情を戻す。

 

「おぉ2人ともお疲れさん。そんでアンジェラちゃんには、ほいシシャモ」

「ありがとう」

「どういたしまして。チヒロくんは?」

「いりません」

「あそう」

 

2人揃ってシシャモを食べ始める。外見的特徴に類似点はないのに似ていると思わせる何かがある。

 

「爻龍組って組織が奴らと繋がっている可能性がある。あくまで可能性や。でも飛びつくやろ?」

「そうね。•••ところでその『こうろう組』ってどんな字?」

「上下にカタカナのメ二つの(こう)に龍で爻龍組。名前だけ見るなら生かしとるやろ?」

「それは置いといて、話が通じそうなら交渉を持ち掛けましょうか」

「どうだか•••」

 

柴が斜め前に目を向ける。つられて2人も目を向けるとそこには4人の死者が吊られていた。

 

「見せしめやね。逆らったらこうなるぞってことをわかりやすく示しとる」

 

静かに怒りを見せるチヒロとは対照的に、アンジェラは何の表情を読み取らせない。しかし死者の下へ歩き出す。

 

「姉さん?」

「チヒロ、『クロ』を•••左から順にお願い」

 

それだけ言うとできていた人だかりをかき分けて進んでいく。それを聞いたチヒロは刀を鞘から取り出す。

 

(くろ)

 

その色の金魚に出現と同時に空を切るとその先にある縄が切られる。

 

「よっ、と」

 

下で待機していたアンジェラが落ちてきた死者を受け止め、ゆっくり地面に寝かせる。それを見て、残りの3人も下ろしていく。

並んだ4人の死体にアンジェラは両手を合わせ、哀悼の意を示す。

 

「行きましょう」

「そうだね。柴さん、居場所はわかりますか?」

「あぁ」

「組織同士の関わりってことは社会科学ね」

 

 

ーーーーー

 

 

「あそこや」

 

柴が壁の裏から覗き込む先には大きな倉庫のような建物。そしてその前に計7人程の帯刀する男が見えた。

 

「奇襲か正面突破、どっちにする?俺はどっちでもいいけど」

 

ケセドが柴を壁に覗き見る。

 

「見る限りあの7人は妖術を使えないようね」

 

ケセドを壁にアンジェラが建物を覗き見る。

 

「中にいるであろう他組員はどうかな?」

 

アンジェラを壁にチヒロが少し開かれた扉の奥を見る。

 

「普通の組織ならそこら辺の妖術師を雇ってるだろうけど、毘灼が関わってるならその心配はいらないんじゃない?」

「その根拠は何かしら?」

「毘灼はレベルの高い妖術師だ、それも妖術についての知識が少ない人間でもわかるほど。それと比べてしまうと他の妖術師は見劣りする。いつでも毘灼の手助けを受けられるならわざわざ実力がはっきりわかっていない、忠誠心のない妖術師を雇う意味がない。あ、でも毘灼本人が中にいる可能性もあるね」

 

「ならあの7人には奇襲、それ以降は正面突破で。俺とケセドさんで中に入ります。柴さんは状況を見て加勢を、姉さんは援護をお願い」

「了解〜」

 

チヒロは脇差を抜く。

 

「ところでケセド他4人は?あなた1人でいいの?」

「中に妖術師がいたら呼ぶよ。それまでは俺とチヒロの2人で大丈夫だよ」

 

ーーーーー

 

青年は爻龍組に囚われていた。理由は彼らを侮辱する内容のビラをばら撒いたという理由で仲間が殺された。

 

「妹がいるんだってな」

 

組長である男が青年に告げたそれは死刑宣告に等しかった。

 

「待って、やめてくれ!」

「行ってこい」

 

組長の命令を受け帯刀した部下が扉へ向かう。突如部下たちが扉ごと殴り飛ばされた

 

「お邪魔しまーす」

 

軽い口調で、青を基調とした男が巨大な大槌を振り回して入ってきた。その後ろには赤い瞳が印象的な少年が立っていた。

 

「だ、誰だお前!」

 

扉に巻き込まれなかった部下が刀を振り上げて襲ってきたが、その腕より先に首が切り落とされた。

 

「チヒロ〜、俺たち二人だけで大丈夫そうだよ」

「みたいですね」

「な、何なんだよお前らあ!!行け!!ぶっ殺せ!!」

 

建物内にいた者全員がその二人に襲いかかった。しかしその誰もが二人に指一本ですら触れられずに消えた。

 

「?!」

 

青年は見た。彼ら二人に殺された者は光る紙となって消えていくのを。

 

 

 

蹂躙を終え死体が一つもなく、それなのにあたり一面に血が飛び散った異様な空間だけが残った。

 

「何なんだよぉ•••」

 

組長は情けなく地に尻をつけたまま呟いた。

 

「答える気はない」

 

情けない呟きと共に組長の首が落とされる。血は散っても遺体は光る紙となって消えた。

 

「大丈夫あなた?」

 

青年の腕を拘束する縄が解かれ振り向くと蒼白な女性がいた。

 

「はい。えっと•••、あの•••、あなた達は?」

 

青年が聞くと女はしばらく考えた素振りを見せる。

 

「私はアンジェラ、そして私達は妖術師よ」

 

青年に手を差し出し立たせる

 

「ほんなら東京に戻るわ。二人は?」

「その前にお昼にしましょう。あなた、ここら辺でいい店知らない?」

「姉さん•••」

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