六平家のアンジェラさん   作:RK6246

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#4 蒼白な少女

「鏡凪のガキと一緒にいた妖刀を持った傷の男、そして蒼白な女。妖刀もだが、蒼白な女も気になるな」

「蒼白な女に何か惹かれるものあるんですか?」

「18年前•••だったかな、『蒼白な少女の噂』は聞いたことあるか?」

「あぁ〜、無差別殺人鬼•••でしたっけ?」

「あれ、無差別殺人鬼?俺は全知全能って聞いたけど」

 

お付きの2人が話した内容に対して双城は自分が知る情報を話す

 

『蒼白な少女』

斉廷戦争(せいていせんそう)が終結した18年前、まだ混沌が続いていた日本にとある組織がいた。

その組織の具体的な目的は今となってはわからないが、事実としてあらゆる妖術師一族や組織から戦力の貸し出しや資金の援助を受けていた。当然国家に雇われている妖術師組織、神奈備(かむなび)もその組織を危険視し、討伐作戦を練っていた。

しかしその組織の人間全員が突如として消失した。組織員だけでなく貸し出されていた戦力、潜入していた神奈備職員、組織員の家族等、組織関係者の8割が行方不明になった。

彼ら彼女らが行方不明になる直前その場に蒼白な髪色の少女がいた、という目撃証言やカメラ記録が多く出た。

 

「•••偶然とか、じゃないんですか?」

「今時蒼白な髪色自体珍しくないもんな、(さざなみ)家とか」

(さざなみ)家は完全な白髪だろ。で、蒼白な少女がどうしました?」

「18年前、たった2ヶ月の活動でその存在が全国レベルで広まった『蒼白な少女』。しかしその2ヶ月以降、彼女の噂は一切聞かなくなった」

「それが?」

「そのガキがちゃんと人間なら成長する。『少女』と呼ばれるからには当時の年齢を考えて、今も生きているなら20歳以上のはずだ」

「ってことは、妖刀持ちの傷の男と一緒にいた蒼白な女はその『蒼白な少女』だと?」

「さぁな。でも、もしそうなら色々と聞きたいことがあるってだけだ」

 

コンピューターを前に行われていた会話は終わった。

 

『鏡凪シャル』

『蒼白な女』

『傷のある妖刀持ちの男』

 

ーーーーーーーーーー

 

「襲撃者の名前は『(まどか)法炸(のりさく)』。妖術はダルマ型の爆弾を作り出す『不落』。家族構成は母と姉と自分の3人」

「個人情報は今はええわ、社会的繋がりは?」

「雇い主は武器商人の『双城(そうじょう)厳一(げんいち)』、現在は妖刀『刳雲(くれぐも)』契約者でもあるわね」

 

先日襲撃した爻龍組ではなく先ほどの襲撃者の解析を優先させ、まとめ終えた情報を共有していた。

 

「面倒臭いことにあの場に仲間が1人いたみたいなのよね」

「仲間•••ってことは俺たちの情報はもう伝わってる?」

「そう考えてもいいでしょうね」

「みんな大変!!」

 

突然シャルを抱えたヒナオが部屋に入ってきた。彼女の顔を見て緊急事態なのがわかった。

 

「ネット上でシャルちゃん、アンちゃん、チヒロ君の3人に賞金がかけられた!しかも金額は『いくらでも払う』!東京中の妖術師が食いつくよ!」

「ほんまかいな」

「ここに潜伏し続ければ問題ないわね」

「•••そうじゃん!」

「作戦会議か〜?私も混ぜて!」

 

チヒロに飛びつくシャル、チヒロはそれを受け流し隣に座らせる。

 

「いいかげん教えてくれないかシャル。どうしてお前は狙われているんだ?」

 

先ほどまでの消え、口を噤んでしまう。それを見て視線を少女から姉に変える。

 

「そいつの本を解析してわかった?」

「わかったけど•••」

 

双城が狙っているのはシャルの血筋、『鏡凪一族』が保有する特異体質、超再生力にある。

それを話そうと口を動かしたがすぐにやめた。なぜなら思い出したことがあったから。

 

 

『お前のその力は一体どんなものなんだ?』

 

肉体的に幼き頃国重からされた質問だった。話すことに躊躇いはなかったが、どう説明すればいいのかわからず悩んだ。

国重はそれを見て話したくないと判断したのだろう、優しくアンジェラの頭に手を乗せた。

 

『話したくないなら話さなくていい』

『なんで?知りたいんじゃないの?』

『そうだな、気になる•••す〜ごく気になる!でも、無理して話さなくていいよ。俺はお前の父親だけど、一緒にいる時間はまだ短い。俺を信用できてないんだろ?だから話さなくていい。でも、もし俺を信用できると、安心して話せると判断できたら、その時に教えてくれ。それまで待ってるから』

 

その時言葉とは対照的に国重は好奇心を抑えられない顔をしていて面白かった。

 

 

「この子が話したくなるまで待ちましょう」

「•••わかった」

「じゃあお出かけしたい!」

「さっき言ったでしょ、私たちは狙われてるって。だから今は我慢しなさい」

「•••ずっと暗い部屋に居たんだもん」

 

それを聞いてアンジェラは読んだ本の内容を思い出す。外へ迂闊に出れない今、この子にできることはなんだろうか。

 

「薊に連絡した。すぐじゃないけどもう時期取り下げられるやろ。ついでにこっちにも来るらしい」

「•••説教かしら?」

「•••説教じゃない?」

「や〜い問題児」

「言われてるよ姉さん」

「あなたのことでしょチヒロ」

「どっちもや」

 

そう言って拳が頭に落とされる2人。しかし近いうちに賞金が取り下げられるなら安心だ。

 

「シャル、賞金が取り下げられ次第おでかけしましょう」

「うん!アイス食べたい!そばを食べた後の終止符を打ちたいから!」

 

シャルがアンジェラに飛び付き、アンジェラはそのまま抱き抱える。

 

「薊に連絡したってことは近いうちにチヒロのことは神奈備バレそうね」

「姉さんのこともね」

「私のことはおそらくもう向こうに伝わってるから。多分上層部の1人に会ったことあるもの」

 

名前はなんだったか。その人物は特徴的なマスクを口元に縫い付けていた記憶はある。

扉に目を向けると何十人か立っていた。

 

「外、誰かいるね」

「早いわね•••でも、実際の人数は2人かしら?」

「お、処す処す?」

「なんでそんなノリノリなんヒナオちゃん?」

 

懐にいるシャルの手の力が増す。アンジェラが本を取り出しページを捲る。

 

「大丈夫だ」

 

チヒロが少女の頭を優しく撫でて刀を抜く。しかしシャルの手の力と反比例するように店の前にいた人間は徐々に減っていった。

 

「お、薊さん仕事が早いな〜」

 

そう言って見せてきた携帯の画面には賞金のサイトはなく、閲覧不可になっていた。

 

「じゃあじゃあ出かけよ!」

「余韻が残ってるだろうからまだだめだ。それに時間も遅いし」

「え〜」

 

不満を持つシャルに申し訳なくなるが、この子が狙われている理由を知るアンジェラからすれば下手に危険な目に合わせたくないのだ。

 

「それなら•••」

 

そう言って取り出したのは絵本だった。それをチヒロに手渡す。

 

「これを読んであげて」

「なんで俺?」

「国重に読んであげてたじゃない」

「国重さん『が』じゃなくて?」

「国重『に』やでヒナオちゃん」

「まぁいいか」

 

シャルがチヒロの膝に乗り絵本を見る。

 

「『誰もが地面から目を逸らさずに生きていた時代、その中に唯一上を見上げ空を眺める者がいました』

 

ーーーーー

 

"カラン"と扉が開閉した音が店内に響く、見るとポケットが無駄に多い上着を着た男がいた。

 

「久しぶりね薊」

 

神奈備の上層部の1人、義父六平国重の友人の1人である薊が手を挙げ、そして床を指差す。

 

「うん、久しぶりアンジェラちゃん。とりあえずそこ、正座。早く」

「•••はい」

「柴、お前もだよ。それとチヒロくんは?」

 

呼ばれたからか、それとも読み終わったことを報告するためかチヒロが奥の部屋から顔を出してきた。

 

「薊さん」

「やあチヒロくん。そこ、正座」

「•••はい」

「こうしてみると2人って姉弟だよね」

 

3人が床に正座をして薊の正面に座る。

 

「まずチヒロくん。街中で妖刀はあまり使わないことにしてただろう?」

「はい」

「あまり目立つような行動をされちゃうと神奈備にごまかすことが難しくなるんだよ」

「はい」

「次にアンジェラちゃん。君に関してはあまり人前、裏の人間の前に出ないって話だったろ?」

「しょうがないでしょ。チヒロが戦う際私もそばにいるんだから。なるべく顔は出さないようにしてても、今回のように思いもよらない場所から見られることもあるんだから」

「はぁ。最後に柴、何やってるんだよ。お前が2人を制御する約束だったろ?」

「制御ね•••それもう潮時やろ。チヒロくんは十分戦えるしアンジェラちゃんも順調に情報を集めてるんやから」

「•••そうだね。でも、これならアンジェラちゃんの話に乗ってた方が良かったんじゃ」

 

3年前六平家襲撃時、姉弟2人の目的は同じでも過程は異なっていた。

チヒロの案は今のように積極的に動いて情報を集める。

アンジェラの案はその逆、言うなれば『座して待つ』に近い。

 

「確かに姉さんの案なら俺の情報は回らなかったと思いますけど•••」

「いいえ、チヒロの案に乗って正解だったわ。私の案だと多分、今ほど情報が集まらなかったと思うから」

「で、わざわざ説教のためだけじゃないやろ今日きたの」

 

チヒロはわかってなかった。しかし柴とアンジェラはわかっていた。

 

「僕が言わなくても耳に入っただろうけど、六平が打った『真打』が裏社会、闇の競売『楽座市(らくざいち)』に出品される。出品者は双城だ」

 

ーーーーー

 

国重の事を詳細に、そして地下に封じられた物の話を聞いた。

 

『これが妖刀ね』

『正確にはこの中身だがな』

 

チヒロを腕に抱えながら話を聞いた。

 

『この6つが「斉廷(せいてい)戦争」で日本を勝利に導いた•••ことになってる』

『含みのある言い方ね。実際は違うの?』

『いや正しい。ただ勝利を導いたのは妖刀だけじゃなくて、その契約者もだ』

『ふ〜ん』

『さてはお前興味ないな?』

 

戦争の話は興味があった。しかしアンジェラは自らの目を引いた()()に集中していたあまり、浮いた返事しか返せなかった。

 

『これは?』

 

しめ縄と串で巻かれた異質な箱に触れる。

 

『それは•••「真打」だ。剣聖が契約した妖刀だ』

 

それ以上話さなかった。おそらくこれが国重が抱える闇の根源なのだろうことはすぐにわかった。

 

(これはE.G.Oではない。でもそれに近しい何かを感じる)

 

箱を紋様に沿ってなぞる。

 

(大勢殺されてるわね。他5本と比べ物にならないくらい)

 

次は縄に沿ってなぞる。

 

(何より他5本との決定的な違いは•••)

 

手を止める。国重に箱をなぞらせていた手を止められた

 

『それ以上は止め『見られてる』?!』

『いや•••正しくは()()()()()()()わね。ねぇ、あなた何を隠してるの?』

 

国重の顔を見る。その顔には困惑、焦り、恐怖等。しかしその中に自分への悪意がないと感じた。

 

『•••まぁいいわ。隠したいことは最低限気づかれないようにしなさい。でなければ裏切りのように感じるから』

 

そう言って顔を箱に戻す。箱の中身の、その奥にいる者を見通す。

 

『話す覚悟ができたら話しなさい。それまでは聞かないから』

 

彼は自分の全てを聞かない。彼女もそれを真似て、彼に聞かない。

 

『•••ありがとう』

 

たかが隠し事一つで感謝されるとは思わず再び国重の顔を見た。顔にあった曇りは少し晴れたように見えた。

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