エクシリアmore -過ちを犯したからこそ足掻くRPG-   作:あんだるしあ(活動終了)

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第二十四話 決着、二つの王道

 イル・ファン近くの街道でワイバーンを降り、イル・ファンの都に突入した。

 

『止まれ! 革命軍の人間だな!?』

 

 入ったすぐそばから、国軍兵と革命軍の兵がやり合っていた。

 先に宣戦布告を出して兵を差し向けたんだ。当然といえば当然の結果。しかも、事前にクレインが「国軍兵はなるべく殺すな」という通達を出していたおかげで、革命軍の兵のほうが苦戦している。

 

 そこで、倒れた兵士に駆け寄る第三勢力があった。

 

 制服? まるで医者か看護士のような格好の、若者ばかり。

 その若者たちが、国軍兵も革命軍兵もなく、倒れた兵士を両脇から支えて、戦場から運び出している。

 

「ケガ人はこっちに! タリム医学校の附属病院で治療しますので、こちらに運んでください!」

 

 レイア!? 何故だ。ル・ロンドにいるはずでは。それにその格好は、タリム医学校の制服では……

 

「レイア、こっち、サポートお願い!」

「ジュード! 今行くね」

 

 ジュードまでいるのか? こんな時に限って抜かしていたメンバーが二人もいるとは、どんな世界の皮肉だこれは。

 

「大人しくして。今治すから」

「うっせえ! 気安く触んなクソガキ!」

 

 この声は――そろそろ本気で頭が痛くなってきた。何でアグリアがここにいて、しかもジュードとレイアに手当てされてるなんて珍妙な展開になってるんだ。

 

「同じくらいの歳でしょ! レイア、押さえてるからお願い」

「はいよ。はい、ファーストエイドっ」

「くっそ…!」

 

 同じ六家のローエンやクレインがアグリアに気づく前に離脱するのが吉か。

 

 

「ローエン。ここからどう攻略すればいい。貴方にとってはよく知る地だろう」

 

 どうにかローエンの視線をアグリアから外させることに成功した。

 

「このままオルダ宮へ。ナハティガルの居城まで一気に攻め上がります」

「お、王様のお城、ですよね。様子を見たりしなくて、いいんですか?」

「ああ、エリーゼさんには説明しそびれていましたね。これはうっかりしていました」

 

 ローエンが噛み砕いてオルダ宮攻略についてエリーゼに説明する。エリーゼはティポと一緒に耳を傾け、最後に肯いた。さすがエリーゼ。幼いながらの聡明さは変わらないな。

 

「じゃあ今、王様はこのお城に独りきり、なんですね」『さびしそう~』

「さすがに最低限の守備兵は残っているはずですが…………そうですね。寂しい、かもしれません」

 

 友との決別と敵対。覚えがないわけじゃない。

 

 私の手で殺した友人たち。今でも忘れない。忘れてなんかいない。ジュード、アルヴィン、レイア、エリーゼ、ローエン――

 

「どんな仮定も後悔も、決して時を巻き戻しはしない」

 

 気づけば口を突いて出た。

 

「それでも、心だけなら、あるいは戻ることもあるかもしれない」

「ヴィクトルさん……」

「無駄話をした。急ごう」

 

 何を言ってるんだ私は。私のしでかしたことの罪深さは、私が一番分かっているだろうが。こんな気休め、口にする資格さえないくせに。

 

 

 

 

/Fay

 

 わたしたちはついにオルダ宮に侵入した。

 

 ローエンの言う通り、お城の守りの兵隊さんはほとんどいなかった。たまに兵士さんがいたら、みんなで適当な角とか装飾品の後ろに隠れてやり過ごした。

 わたしとかエリーの精霊術で気絶させようか? って聞いたんだけど、ローエンが「シンショウが悪くなりますので」って言って止めた。シンショウってなんだろ。

 

 進路の途中で結界陣が張ってある扉に行き当たった。わかる、感じ取る。結界が侵入者を感知したら、魔物モドキを出す術式なんだ。でも、ごめんね。どんな内容の術でも、〈妖精〉のフェイには効かないよ。

 

 袖を片手で押さえて掌を向けた。それだけでいい。わたしには詠唱も動作も要らない。

 

「 と お し て 」

 

 蓮の結界陣はガラスが割れるみたいな音をさせて粉々になって消えた。

 

「さすがはフェイさん」

「同じのがあったら全部フェイが壊してあげる」

 

 クレインさまの進む道のジャマなんてさせないんだから。

 

 

 

 この先、2回ほど同じ結界付き扉があったけど、それも掌いっこで無効化した。

 

 そして辿り着く、最後のトビラ。他のどの扉よりも背が高い。

 

「用意、いい?」

 

 ふり返らないでみんなに聞く。みんながイエスの返事をした。

 

 結界陣を壊して、トビラを開いた。

 

 

 

 中にはおっきい王様――ナハティガル王がいて、玉座に座ってた。

 

「イルベルト。主である儂に本気で逆らうのか? 今なら許してやる。儂の下に戻って来い」

「私の主は、生涯、クレイン様ただお一人です」

 

 おっきい王様の目がクレインさまに移った。視線が向いてるのわたしじゃないのに、潰れそう。真っ向から睨み合えるローエンもクレインさまもスゴすぎだよ。

 

 でも、わたしだって負けちゃダメ。マクスウェルだったら、ミラさまだったら、絶対負けないもん。

 

「その若造が儂と張り合える器だとでも?」

「正直に申し上げるなら、僕は決して貴方には及ばないでしょう。力も、資質も。ここに来るまでにも、僕は多くの人に支えられてきた。家族に、仲間に、同じ志を持つ人々に」

 

 クレインさまがおっきい王様の真正面に立った。

 

「そうやって今日まで来て、僕の願いはただ一つだと悟りました。民の命を弄び、独裁に走る王に、これ以上従うことはできないと思ったのも、だから。――誰もが等しく幸福になれる時代じゃない。それでも、その権利だけは、等しく守られなければならないものです。だからそれをこそ、僕は理想として、あなたに刃を向けます」

 

 クレインさまがサーベルを抜いたのを合図に、みんなが自分の武器を構えた。

 

「貴様ははき違えている。民が幸福になる権利? そんなものありはしない! 民が悩むなど当然。民に安穏と暮らす権利などない! 民は王の力となって潰える些細な犠牲よ」

 

 また、言った。この王様、またギセイをササイって言った。

 耐えるんだ、わたし。ここの主役はわたしじゃない。クレインさまとおっきい王様。口出しも手出しもダメ。

 

「ダメだな――王という立場にいる上で最もすべき『仕事』ができていない。クレインに対して思う所がある私でさえ、これならクレインに頭を挿げ替えるべきだと思うほどだ」

 

 パパ……うん、そうかも、だね。

 

 おっきい王様が立ち上がって、大槍を掲げた。すると、どこからともなくマナの奔流が噴き出して、大槍を、王様を覆った。マナで大槍が強化されてる。

 

「……私はあなたを、同じ道を歩む友だと思っていましたが、どうやらもう引き返す道はないのですね」

 

 ローエンがサーベルを抜いた。

 

「要するに、ラ・シュガルの民の『幸福を創る仕事』にかけては、このクレインが国一番ということだ」

 

 パパが双剣を抜き払う。

 

「マクスウェルの巫子たる俺には、俗世の統治者など知ったことではない。が、この男のほうが貴様より百倍マシだということは分かるぞ!」

 

 イバルが二刀流の構えを取る。

 

「妹さんが死んで、ローエンもいなくなって、今日までずっと寂しかったと思います。シアワセを奪った人たちを憎んだと思います。わたし、分かります。でも、だからこそ選べる自分もあるんです。それを知らないままでいてほしくないです!」

 

 エリーがティポと一緒にロッドを振りかざす。

 

 ――みんなの闘志は本物。みんながみんな、ここに来るまでにおっきい王様と戦うだけの理由を見出した。

 

 じゃあ、わたしは?

 

 裾を引きながら静かに前に出て、おっきい王様をまっすぐ見上げた。

 

()()()()()()は人と精霊の守り手です。人間にも、精霊にも、佳い未来を築いてくれる方ならば、その方に味方します。この世に来て、自分の目と耳と足で、見て、聞いて、感じて。わたしはこちら側に立っています」

 

 王様が集めたマナ。散漫な扱い方で空気中に投げ出されたマナをこっちに手招く。うん。エネルギーはじゅーぶん。

 

 

「ナハティガル・I・ファン。玉座に座るには、()()()()()()()()()()()

 

 

 始めよう。夜明け前の誰も知らない攻防を。

 朝が来る前に。明日が来てしまう前に。

 この座に就くのがふさわしいのがどちらかを決しましょう。




 レイアがいる理由は、革命軍のアレコレの噂で首都にいるジュードは大変だろうと思って急いで上京したからです。レイアがタリム医学校の制服なのは、そのほうが救護活動をする学生に交じりやすいからです。
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