エクシリアmore -過ちを犯したからこそ足掻くRPG-   作:あんだるしあ(活動終了)

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第二十八話 この手をすり抜ける

/Victor

 

 割れた空の雲を超え、現れるのは無数の空中戦艦。

 戦艦からは武装済みの兵士が空を覆い尽くすほどの数で下降してくる。

 

 ――エレンピオス軍の本格的な攻勢が始まる。

 

 考えろ。エレンピオスが必要とする物は何だ。クルスニクの槍か。エリーゼの増霊極であるティポか。フェイリオの〈妖精〉の異能か。

 

 戦艦からホバークラフトで降りてきた兵士が、ジランドとセルシウスのいる丘に集まった。

 

『アルクノアのジランドさんですね』

「アルクノア……貴様がナハティガルに黒匣(ジン)を伝えたのか」

 

 ジランドの答えは嘲笑だった。

 

「そっちの金髪の女は殺すなよ。台無しになる。白いほうは好きにして構わん」

『装甲重騎兵、前へ』

 

 幾人もの兵装の人間が丘から滑り下りてきては、黒匣の電磁砲を私たちに向けて撃つ。幸い躱せないほど重くはないが……! どうしても、地面の土を攻撃されてしまえば、振動から避けるために距離は離れてしまう。

 

「そのガキも連れていけ。増霊極の適合好例だ」

 

 しまった…! エリーゼとティポが…!

 

「ルタスから手を離せぇ!!」

 

 イバルが二刀を抜いてエレンピオス兵に走り寄る――寸前、ガイアスがイバルに肘鉄を食らわせて後ろまで下がらせた。イバルは咳き込んでいる。

 

「大人しくしていろ。話がややこしくなる」

 

 くっ。かくなる上は私が直接エリーゼを奪還するしかないか。骸殻はもう再使用のためのタイムラグを過ぎた。

 

 だが、エリーゼを抱えた兵と、ティポをぶら下げる兵の前に、私たちの誰でもない者が立ち塞がり、エリーゼを救った。

 

「ジャオ……? 何故」

 

 ジャオはエリーゼを、それこそ我が子のように、逞しい腕に抱き込んだ。

 

「これ、起きんか、娘っ子」

 

 エリーゼが目を覚ましたのか、軽くジャオの腕の中で暴れる。ジャオは気にしたふうもなく、エリーゼを地面に下ろして立たせた。

 

「これ以上、お前を見守ることはできないだろう。だから……生きてくれ」

「…ジャオ…さん…っ」

 

 イバルとフェイと共にエリーゼの後ろへ。

 エリーゼは涙の膜の張った若草色の目でジャオを見上げた。

 

「エリーゼのこと、頼んだ」

 

 無言で肯いた。どんな言葉を返しても、陳腐にしかならないように思えて。

 

 そんな哀愁も――空中戦艦から放たれた砲撃が見事に吹き飛ばしてくれた。

 

「きゃあ!」

「うおっ、くそ!」

 

 ジャオは大槌一本だけで、沼野を埋め尽くすエレンピオス兵へ向かって歩いていく。

 

 非情な決断になる。だが、今をおいてここを脱出するチャンスはない。ない、のに。

 

 ジャオが大槌を地面に打ち込んだ。地面がめくれ上がる。私はとっさにエリーゼとイバルを腕に抱き込んで庇った。

 

 一時的な静寂が訪れる。

 

 戦艦の砲台が地上を向く。その標的の中には、もちろんジャオも含まれている。

 

「ジャオさん!」

「よせ! フェイリオ!」

 

 くっ…届かない…! 砲撃で上がる土柱のせいでフェイリオとの距離が縮められない。フェイリオは私の手をすり抜ける。

 

 仕方……ない。仕方ないんだ。別行動になるが、空爆程度ならあれは何とでもできる。

 

「エリーゼ、イバル! 離脱するぞ!」

「妖精は!」

「フェイなら大丈夫だ!」

 

 背の低い二人を押して走り出す。イバルもエリーゼも不安げにふり返ったが、留まるデメリットを察してか駆け出した。

 

 制空権を取られていてはこちらにできることなどないに等しい。何を措いてもまずはこの戦域を離脱しなければ。

 

「はっ、はっ!」

「はぁ…あぁ…!」『コワイよー! コワイよー!』

 

 もう少し頑張ってくれ、エリーゼ、ティポ。

 

 ――だが、そう簡単に逃がしてくれるほど、エレンピオスの軍事力は易しくはなかった。

 5メートルとない後方で火柱が上がった。衝撃波をモロに背中に受ける。

 

 とっさに前を走っていたイバルとエリーゼを腕の中に抱え込んだ。

 骸殻発動、100%――!

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