エクシリアmore -過ちを犯したからこそ足掻くRPG-   作:あんだるしあ(活動終了)

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第七話 エレンピオス小会議

/???

 

 とある早朝。キジル海瀑を見下ろす崖の上に、その者たちは集っていた。

 

「プレザ。確かに力を失っていたのだな」

「はい」

「すでに〈カギ〉もどこかに隠された可能性があると少し面倒だな」

「ごめんなさい。侮ったわ」

「あの雪ん子がマクスウェルと知っておれば、わしも〈カギ〉のありかを吐かせたのじゃがのう」

「まあいい」

 

 部下たちそれぞれの危惧や反省を、快刀乱麻に許す重厚な声。

 彼らは一糸乱れず傾聴した。それほどの引力を声の主――彼らの王は持っていた。

 

「今となっては奴らを泳がせたほうが都合がよかろう」

「ええ。ラ・シュガルの目を奴らに向けさせ、我らは静かに事を進めるのが得策かと。それと、アグリアからですが、奪われたカギを再び生成する動きがあるとか」

 

 その時、一番に女が、崖下の異変を察知した。

 

「アル?」

 

 朝靄にけぶる海瀑に現れたのは二人の男。片方はそれなりに長い期間、ア・ジュールから密偵に出していた傭兵だ。

 

「あれが報告にあった『仮面の黒い男』か」

「はい。間違いありません」

 

 女と大男にとってはつい昨日に辛酸を舐めさせられた敵だ。女は想い人を、大男は娘同然の少女を、攫って行かれた。

 彼らの私情を抜きにしても、〈カギ〉と最新型〈増霊極(ブースター)〉を掌握する油断ならない男。

 

「さすがに話の内容まではここからは聞こえんな。プレザ、接近できるか」

「やってみるわ」

 

 

 

 

 

 

/Victor

 

「で? こんな場所に呼び出して何の用なんだよ、ご主人サマ?」

「ああ――」

 

 背後の崖に集中する。――いる、な。1…2、3、4。内訳までは分からないが、一つ確かなのは、崖の上にはガイアスがいるという事だ。この隠そうともしない尋常でない覇気。少しでも戦場を知る者が悟れないわけがない。

 

「単刀直入に言う。アルフレド・ヴィント・スヴェント。密偵している全ての組織、政府、個人との関係を切って私たちに付け」

 

 アルヴィンは息を呑んだ。本名で呼ばれたからか、提案か。両方か。

 

 返答は、銃口。

 甘いぞ、アルヴィン。本気で脅したいなら空砲くらい撃ってみせろ。それでは威嚇にもならない。

 

「アンタ……何者だ」

()()()()()()()()()()()()()()()人間だ」

 

 答えを渋る必要もあるまい。“これ”が意味を持つのはアルクノアだけだ。

 

「薄々気づいていたんじゃないか? 私の武器は黒匣(ジン)製だ。リーゼ・マクシアで黒匣を持っているのも知っているのも『私たち』だけだ。違うか」

 

 スカーフピンを外して投げる。アルヴィンは銃を構える腕は水平のまま、ピンをキャッチした。キャッチしただけだ。すぐには検めようとしない。ふむ、なかなか良い警戒心だ。

 

「君は読めるはずだ。母国語だからな。私が働いていた会社の社章だよ」

「“Clan Spear”……? ってあのクランスピア社か!? “ティッシュから空中戦艦まで”がキャッチの、国の政治を裏から牛耳ってるって噂だったあの!?」

「……よく覚えているな。君、こっちに来た頃、5歳だろう」

「ガキの耳聡さなめんなよ。CMでイヤってほど流れてたからな。じゃなくて! え? アンタが?」

「社のトップエージェントとして働いていた時期もある」

 

 アルヴィン、口が金魚みたいだぞ。あと人を指差すな。青くなるな、失礼な。

 

「これで分かってもらえたか? 私は正真正銘のエレンピオス人だ」

「……それが本当だとして、何で俺が密偵をやめるって話に繋がるんだよ」

 

 アルヴィンがスカーフピンを投げ返したので、キャッチした。――食いついたな。

 

「本当の意味で君に仲間になってほしいんだよ、アルヴィン。君は実力があるし弁も立つ。何より〈この世界の本当の事〉を知っているお仲間となると、探すだけでも一苦労だ。そこに君が現れた。大方、アルクノアの指示でマクスウェルを監視しろとでも言われたか。何にせよ私にとって僥倖には違いない」

「俺がアルクノアだってのも承知済みかよ」

「おや、本当にそうだったのか。こちらではアルクノアでないエレンピオス人のほうが珍しいと思ってカマをかけたんだが」

「……アンタ、性格悪いって言われるだろ」

「さてね」

 

 ジュードたちを殺して以降、私が接した他人など娘と社員くらいだからな。陰口は言われていたかもしれないが。

 

「ぶっちゃけ、アンタの目的って何なんだよ。俺を引き入れてまで何をしたい」

「アルクノア以上に確実かつ人道的で、メリットが一勢力に偏らない方法で断界殻(シェル)の解放を目指している」

「……正気か?」

「至って正気で、本気だ。私とてエレンピオスと完全に隔絶された世界の在り様を良く思ってはいない。それに考えてもみたまえ。〈クルスニクの槍〉で断界殻を破壊してしまえば、莫大なマナが消失するんだぞ? どうせ断界殻を無くすなら、マナ不足に喘ぐエレンピオスに還元したほうが合理的だとは思わないか?」

 

 アルヴィンが銃を再び上げた。が、照準は私ではない。私の後ろにいる誰か。その誰かに向けて、アルヴィンはトリガーを引いた。

 銃弾が肩を掠めた。後ろの何者かが狼狽して離脱した気配。

 

「フリでも避けろよ」

「君が撃たないと銃口の向きで分かっていたからね」

「……しばらくはアンタに付いてやる。ただし俺なりに信用できるか試したいから、猶予は貰うぜ。そうだな。次に行く、人のいる街まで」

「好きにしたまえ。それだけで信用が買えるなら安いものだ」

 

 これでアルヴィンは確保できた。次はエリーゼだ。

 

 

 

 

 

 

/Fay

 

「え…残る、ですか…?」

 

 エリーの顔、ガクゼンとしてる、って感じのがしっくりくる顔。

 

 朝、アルと一緒にどっか出かけたと思ったら、パパは帰ってくるなりエリーに言った。――ニ・アケリアにエリーを置いていく。正確には預けるって。

 

『何で一緒に行っちゃだめなのー!?』

「そ、そうだよ、パパ。急にどうしたの?」

「この先の旅程で我々はサマンガン樹界を越えるルートを取るつもりだ。幼い君に樹界越えは厳しい。だから、樹界を越えた先で目的を果たした上で、君を迎えに来たい」

 

 〈ジュード〉がここで〈エリーゼ〉をどう扱ったかは知らない。でもパパは置いて行くって言う。正史の通りに進むには、エリーを脱落させられないから。

 

「わ、わたし、へいきですっ。タイヘンでも、が、がんばる、ですから。だからっ」

「だめだ」

 

 拒絶のコトバ。こうなったパパは誰の反論も受け入れない。きっとわたしやアルが言ってもムダ。

 

 エリーがうつむく。ティポさえ何も言わない。コトバにならないくらいショック、なんだろうな。

 

土霊小節(プラン)までに必ず迎えに来る。待っていてくれるか?」

「……ぜったい来てくれる、ですか」

「約束する」

 

 ……パパはウソツキだ。お姉ちゃんとした約束さえウソにした。だから「約束する」って言ったって100%信じちゃいけないって、わたし、知ってるのに。

 

「……ヴィクトルが、そう、言う、なら」

「いい子だ」

 

 パパは手袋をした両手でエリーの両頬を包んだ。

 

 止められない。わたしはパパのするヒドイことを止められなかった。

 

 若草色の両目から、ぽろぽろ、涙が落ちて。エリーはしゃくり上げる。カワイソウな子。おいで、ぎゅーしてあげる。

 

「それと、これを君に預けたい」

 

 あ! パパ、それ、〈クルスニクの槍〉の起動キー!

 

「これには、ある人の命が懸かっている。これをエリーゼには守ってほしい」

「わたしが?」

「誰にも知られず、誰にも奪われず。私はエリーゼにならそれができると思った」

 

 小さな円盤はパパからエリーの手に。エリーはまじまじと起動キーを見下ろしてる。

 

「私たちが迎えに来るまでに、それを一人で守れるくらいに強くなりなさい。そうすればきっともっと早く会える」

「はい!」

 

 起動キーを手放していいのか分かんないけど、パパなら何か考えてるよね。

 それより、よかった。エリーが元気になってくれて。

 




 〈カギ〉と呼ぶとクルスニクの鍵とごっちゃになるので、作中では「起動キー」という呼称に統一します。

 ヴィクトルも次女も気づいておりませんが、エリーゼが加入するのはタイミングが早すぎたんですよね。そういう意味では、ヴィクトルの置いていく判断はそのタイミング修正にもなるわけですよ。
 そして作者が考えるオリジナル展開にも繋がるのですよ。
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