星の海を走る電車   作:マスク3枚重ね

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第3話 月の都市

 

 

美桜は光る魚がたくさん入った木の籠と共に、荷馬車で揺られている。それを月鼠《つきねずみ》のポルックスが、クレーター内の緩やかな坂を引っ張る。

カラカラと木の車輪が周り、回る度にキラキラと月の砂が舞っては後方へと流れていく。

 

「重くない?手伝おうか?」

 

美桜が体育座りをしながら申し訳なさそうに、ポルックスに問う。

 

「あ?大した事ねぇぜ!月鼠は人間なんかより力持ちなんだ!それよりも…ミオっつたか?お前…」

 

荷馬車を引きながら、ポルックスは神妙な面持ちでこちらに振り返る。

 

「な…なに?」

 

「お前…日本人か?」

 

突然の質問に美桜はほおけた顔をする。まさかこんな不思議な場所で、不思議な動物にこんな質問が飛んでくるとは思わなかったのだ。

 

「そうだけど…それがなに?」

 

するとポルックスはパーッと笑顔になる。

 

「やっぱりそうか!髪も黒いし、日本人特有の顔立ちだ!」

 

なんでこの生き物はそんな事を知っているのだろうか?ポルックス「そうかそうか」と頷いてスキップする様に荷馬車のスピードを上げる。

 

「なんでそんな事が気になるの?」

 

美桜の質問にポルックスは少し考える様に上をむく。

 

「うーん、どっから説明すっかな…月鼠は人間にとっても詳しいんだ!」

 

「どうして…?」

 

ポルックスがニヤリと笑いこう答える。

 

「俺達が人間の記憶を食って、生きてるからだ!」

 

ゾクリと悪寒が走り、冷たい汗が背中を伝う。今すぐ逃げた方が良いだろうか、美桜は辺りを見渡して逃げ道を探す。

何も考えなしに着いてきてしまったが、失敗だったろうか。

そんな事を考えていると、ポルックスはガハハと笑う。

 

「お前の記憶を食べたり何かしないさ!俺達が食うのは死んだ人間の記憶だけだ!」

 

「……どういうこと?」

 

ポルックスはクイッと木の籠を顎で示すと、籠の中で魚たちがピチピチ跳ねる。

 

「その魚だよ!」

 

 

 

しばらく坂を登ると月の島の表面へと出る。空は相変わらずの満点の星空で、流れ星は絶え間なく海の向こう側へと流れていく。月の光を放つ、大きな岩がゴロゴロと転がる中を荷馬車はゆっくりと進んでいく。

 

「俺は日本人の記憶が一番好きなんだ!映画や本の記憶がある奴は当たりだな!最近は多いぜ!ミオも見たりするか?」

 

「あんまり…」

 

父は好きだった。家にいる時は本をよく読んでいたし、休みの日は映画を一緒に見に行ったりしたが、美桜にはどれも難しい話だった。

不服そうな顔をする美桜を見て、父ははにかんだ様な顔で笑っていた。

 

「美桜にはまだ少し難しかったか、ごめんね…」

 

 

 

車輪が岩に乗り上げて、荷馬車大きく揺れて我に返る。

 

「おっと、ごめんよ!」

 

「ねぇ、記憶を食べちゃったらどうなるの…?」

 

ポルックスはチラリとこちらを一瞥《いちべつ》し、前を向く。

 

「食べてもなくならない。それに俺らが食べるのは記憶だけ、それが俺達が貰った役目だかんな」

 

ポルックスはそう言うと黙り、荷馬車は月の粒子を輝かせながら静かに進む。

 

 

 

「おい!見えてきたぞ!」

 

美桜が顔を上げると、ポルックスが下を指さしている。その方向に目をやると、大きな大きなクレーターの中心にこれまた大きな城がたっている。城は金色に輝いて時折、白い光が一筋空へと飛び上がり、上空でほつれ白い粒子になって夜空の彼方へと飛んでいっている。

その城の周りを取り囲むように、月の石をくり抜いた様な建築物が整然と並び城下町を作っていた。

 

「ようこそ!ミオ、俺らが住む月の都市クラビウスだ!」

 

 

つづく

 

 

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